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番外編
兄の寵愛弟の思惑108
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何かがまとわりつくような不快感に眉をひそめる、皮膚の上を何かが這いまわるどうしようもなく不快なものが私の中に入り込もうとしているから声を上げて抵抗しようと魔力を体に巡らせる。
魔力を巡らせながら何か策をと考える、目を開こうとしているのに開けない。
今自分はどこにいるのか、それより今まで私は何をいていたのか、思い出せない。
「デルロイ、デルロイ」
兄上の声? それでは今王宮にいるのか? 違う気がする。
でも聞こえて来るのは、兄上の声?
「デルロイ、目を開けよ。デルロイ、大神官、デルロイは何故目を開かない。デルロイの守りの魔道具が壊れたのは本当に精神操作の魔法に抵抗したせいなのか」
「はい、王太子殿下、私の鑑定魔法によれば第二王子殿下が身につけられている聖なる守り具に精神操作魔法の攻撃に対し抵抗し破損した形跡がございます。僅かな時間に軽い精神操作魔法を繰り返し受けたのかと」
精神操魔法とはつまり闇属性の魔法のことだ、その使い手といえばエマニュエラがすぐに思い浮かぶけれど、彼女は確か強い闇魔法が使えないよう制御の魔道具の腕輪をつけさせられている筈だ。
では誰が、私は最後に誰と話していた?
確か、あれは……アルティエロ・ビンダールに対してだっただろうか。
彼に校内で声を掛けられ、手に触れられ、それがとても不快で、いつもなら聞き流せるどうでもいい話も不快すぎて私は声を荒げようとして……そうだ、そこで私は自分のおかしさに気が付いた。
正気ではなかったと気が付いて、レモに兄上に連絡させようとして、そこで気を失ったのか。
「デルロイ、気が付いたのかデルロイ!」
目を開けようとして開けず、指一本動かすことも出来ず、兄上の声を聞きながら抱きしめられる。
ああ、これは兄上の魔力だ。
兄上の魔力が私に流れて来る、それがとても心地よい。
渇いている喉を甘い果実水を飲んで、優しく癒している様な気持ちがする。
「あに……う、え」
どれくらいの時間だろう、兄上から流れて来る魔力を受けていると漸く瞼が開いた。
目の前に、兄上の顔、どれだけ兄上が私に密着していればこうなるのかという距離に、目を見開く。
「デルロイ! デルロイデルロイッ!!」
ギュウギュウと抱きしめられた瞬間、ぽとりと何かが頬に落ちるのを感じた。
落ちたものがなにか分からないまま兄上の腕の力に耐えていると、不意に見えた兄上の瞳に涙が溢れていた。
「兄上」
「デルロイ、お前が校内で意識を失ったと聞いて、倒れたお前が宮に運ばれてどれだけ驚いたか分かるか」
「申し訳ありません」
校内で突然倒れたら、それは驚くだろう。
私だって兄上が倒れたと聞いたらとても驚くと思う。
それにしても、やはり私はあの時倒れたのか、でもなぜ私は倒れたのだろう。
「兄上、私はどうしたのでしょうか、校内にいたのは覚えています。何か自分がおかしいような、正気ではない気がしてすぐ、頭の中で光が発して何かが弾けたような感覚が、それで……」
そこまで言って口を閉じる、その後の記憶がない。
「落ち着きなさい、レモ水を」
「畏まりました、殿下お体に触れますことお許しください」
兄上とは別の方向からレモの声がして、そちらに視線を向けると私を注意深く見ている大神官の姿があった。
私達兄弟が幼い頃から定期的に精神浄化の魔法と祝福を授けに来てくれている人だ、昔から白い髪と髭が特徴的な年齢不詳な人だ。
「デルロイ体を起こせるか」
「はい」
兄上とレモに支えられ、体をゆっくりと起こすと背中に枕が当てられる。
ここは兄上の宮にある、私の為に用意されている寝室だ。
最近では使うことはあまりないけれど兄上の宮で夕食を頂く時、時間を気にせずに過ごせるようにと用意してくれている部屋だ。
王子宮はまとまって建てられているとはいえ、各宮への移動は馬車になる。
それぞれの宮が大きく、庭も広いのだから当たり前だが、勝手気ままに移動するのは出来ない。馬車や騎士や従者の用意も必要なのだ。
気軽に私の宮にやってくるエマニュエラがおかしいのだ、あの人は本当に私の都合など考えずに来るのだから。
本当に自分勝手な人、あれ? 私は最近エマニュエラについてこんな風に考えていただろうか、むしろ私はエマニュエラは知識が豊富で、ちゃんと話してみるとそれほど酷い人間ではないと思うようになっていなかったか?
確かに彼女と会うととても疲れてしまうから、彼女と頻繁に会わなければならない兄上や母上が心配にはなったが、それでも彼女を拒絶したいような気持ちは無くなっていた?
それは、いつからだ?
「デルロイ、どうした」
レモが用意した水を飲まずに考え込んでいる私を、兄上が心配そうに見ているけれど、それに答えずじっと大神官を見つめる。
「大神官、私の精神は無事か?」
私は正気では無かった、何かがおかしかったのは確かだ。
校内で倒れた時、私の中で発した光は多分私が常に身に着けている大神官の力を込めた守り具の力だろう。
あれは悪いものを浄化する力だと聞いている、神官の言う悪いものそれは瘴気とか、闇属性の魔法の中でも悪とされている呪いなどだ。
「私は、呪いか何かの攻撃を受けていたのか? 兄上、倒れる直前ではありません。多分これは」
「デルロイ、心当たりがあるのか、お前が話していた者は拘束してあるが」
「彼じゃない、いいえ断言は出来ませんが恐らく元凶は」
大神官の前でエマニュエラの話をしていいのだろうか、躊躇していると突然扉を叩く音がした。
魔力を巡らせながら何か策をと考える、目を開こうとしているのに開けない。
今自分はどこにいるのか、それより今まで私は何をいていたのか、思い出せない。
「デルロイ、デルロイ」
兄上の声? それでは今王宮にいるのか? 違う気がする。
でも聞こえて来るのは、兄上の声?
「デルロイ、目を開けよ。デルロイ、大神官、デルロイは何故目を開かない。デルロイの守りの魔道具が壊れたのは本当に精神操作の魔法に抵抗したせいなのか」
「はい、王太子殿下、私の鑑定魔法によれば第二王子殿下が身につけられている聖なる守り具に精神操作魔法の攻撃に対し抵抗し破損した形跡がございます。僅かな時間に軽い精神操作魔法を繰り返し受けたのかと」
精神操魔法とはつまり闇属性の魔法のことだ、その使い手といえばエマニュエラがすぐに思い浮かぶけれど、彼女は確か強い闇魔法が使えないよう制御の魔道具の腕輪をつけさせられている筈だ。
では誰が、私は最後に誰と話していた?
確か、あれは……アルティエロ・ビンダールに対してだっただろうか。
彼に校内で声を掛けられ、手に触れられ、それがとても不快で、いつもなら聞き流せるどうでもいい話も不快すぎて私は声を荒げようとして……そうだ、そこで私は自分のおかしさに気が付いた。
正気ではなかったと気が付いて、レモに兄上に連絡させようとして、そこで気を失ったのか。
「デルロイ、気が付いたのかデルロイ!」
目を開けようとして開けず、指一本動かすことも出来ず、兄上の声を聞きながら抱きしめられる。
ああ、これは兄上の魔力だ。
兄上の魔力が私に流れて来る、それがとても心地よい。
渇いている喉を甘い果実水を飲んで、優しく癒している様な気持ちがする。
「あに……う、え」
どれくらいの時間だろう、兄上から流れて来る魔力を受けていると漸く瞼が開いた。
目の前に、兄上の顔、どれだけ兄上が私に密着していればこうなるのかという距離に、目を見開く。
「デルロイ! デルロイデルロイッ!!」
ギュウギュウと抱きしめられた瞬間、ぽとりと何かが頬に落ちるのを感じた。
落ちたものがなにか分からないまま兄上の腕の力に耐えていると、不意に見えた兄上の瞳に涙が溢れていた。
「兄上」
「デルロイ、お前が校内で意識を失ったと聞いて、倒れたお前が宮に運ばれてどれだけ驚いたか分かるか」
「申し訳ありません」
校内で突然倒れたら、それは驚くだろう。
私だって兄上が倒れたと聞いたらとても驚くと思う。
それにしても、やはり私はあの時倒れたのか、でもなぜ私は倒れたのだろう。
「兄上、私はどうしたのでしょうか、校内にいたのは覚えています。何か自分がおかしいような、正気ではない気がしてすぐ、頭の中で光が発して何かが弾けたような感覚が、それで……」
そこまで言って口を閉じる、その後の記憶がない。
「落ち着きなさい、レモ水を」
「畏まりました、殿下お体に触れますことお許しください」
兄上とは別の方向からレモの声がして、そちらに視線を向けると私を注意深く見ている大神官の姿があった。
私達兄弟が幼い頃から定期的に精神浄化の魔法と祝福を授けに来てくれている人だ、昔から白い髪と髭が特徴的な年齢不詳な人だ。
「デルロイ体を起こせるか」
「はい」
兄上とレモに支えられ、体をゆっくりと起こすと背中に枕が当てられる。
ここは兄上の宮にある、私の為に用意されている寝室だ。
最近では使うことはあまりないけれど兄上の宮で夕食を頂く時、時間を気にせずに過ごせるようにと用意してくれている部屋だ。
王子宮はまとまって建てられているとはいえ、各宮への移動は馬車になる。
それぞれの宮が大きく、庭も広いのだから当たり前だが、勝手気ままに移動するのは出来ない。馬車や騎士や従者の用意も必要なのだ。
気軽に私の宮にやってくるエマニュエラがおかしいのだ、あの人は本当に私の都合など考えずに来るのだから。
本当に自分勝手な人、あれ? 私は最近エマニュエラについてこんな風に考えていただろうか、むしろ私はエマニュエラは知識が豊富で、ちゃんと話してみるとそれほど酷い人間ではないと思うようになっていなかったか?
確かに彼女と会うととても疲れてしまうから、彼女と頻繁に会わなければならない兄上や母上が心配にはなったが、それでも彼女を拒絶したいような気持ちは無くなっていた?
それは、いつからだ?
「デルロイ、どうした」
レモが用意した水を飲まずに考え込んでいる私を、兄上が心配そうに見ているけれど、それに答えずじっと大神官を見つめる。
「大神官、私の精神は無事か?」
私は正気では無かった、何かがおかしかったのは確かだ。
校内で倒れた時、私の中で発した光は多分私が常に身に着けている大神官の力を込めた守り具の力だろう。
あれは悪いものを浄化する力だと聞いている、神官の言う悪いものそれは瘴気とか、闇属性の魔法の中でも悪とされている呪いなどだ。
「私は、呪いか何かの攻撃を受けていたのか? 兄上、倒れる直前ではありません。多分これは」
「デルロイ、心当たりがあるのか、お前が話していた者は拘束してあるが」
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