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思っていた以上に相手は屑でした
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「毒」
私が発した声は、想像以上に低く冷え切ったものになりました。
毒、それを私に使うのは、食事では不可能です。
私の有能な侍女達は、常に毒に気を付けています。
私が日常口にするお茶や食事は常に彼女達が監視していますから、私は安全だと分かっているものしか口にしていません。
社交で出向いた茶会や晩餐会でも同じです。
それは王弟の娘たる私の日常でした。
「私が口にするすべてはあなた達が監視しているのよ。それ以外の何に使っていたというの」
言いながら頭の隅に浮かんだものは、私の気持ちを踏みにじるものでした。
「あなた達が確認出来ない、でも彼が私に毒を盛るのならあなた達を気にせずに出来る場所」
そんなことがあるでしょうか。
私は現陛下の弟である王弟殿下の娘です。
現在の王たる陛下のお子は二人、どちらも王子です。
彼らが次代を継ぐまでの予備を産める、それが私の価値です。
王弟である父の子である私が、それなりの血統の貴族に嫁ぎ子を儲けることが何よりの課題で、父からも伯父である陛下からも望まれる未来でした。
それを義父母も良く理解していたからこそ、私達の結婚は成ったというのに。
「毒など、そんな」
「でもありえるわ。夫である筈の彼には愛する人もその人が産んだ子もいたのだから」
納得できない。納得したくない。
それが本音で、それ以上、それ以下の感情はありません。
「奥様」
「これの詳細を鑑定してもらえるようにすぐにお兄様に依頼して、鑑定した結果本当に毒だというのなら今から解毒できる薬があるのかどうかを一緒に聞いて。私は何も困っていないわ。ただ夫との間に子が出来なかっただけ」
それはどれだけ屈辱的で、惨めなことだったでしょう。
健康である筈の私が嫁いで五年、子を授かれなかったのですから。
「いい、これは重要なことよ」
「畏まりました。すぐに連絡し確認して頂きます」
「ありがとう。鑑定してもすぐに解毒薬まではわからないでしょう。でも、事重要よ私達はすぐに動かなくてはいけないわ」
「奥様」
これは夫だけの行いでしょうか。
夫の両親が関与していたしたら、私が何を言おうと無駄になります。
私の実家がなんであろうと、私の父親が誰であろうと。
彼らがすでに決めてしまったのだとしたら、そんなものに意味はないのです。
でも。
「これは私の憶測にすぎないけれど、お義父様達は関与していないと思うの。これは夫と、多分リチャードだけが知る事。もしお義父様達が知っているとしたら、この荷物の中に離縁状もこの薬も存在しない筈よ」
離縁状はわざと拙い筆跡で書かれていましたが、それでも書き手の癖は残っています。
「ここ、この文字の払いは独特よ。普通ならこんな風な文字にはならないわ」
これはリチャードが書く癖だと私は知っています。
彼が書く書類を何千枚も確認してきた私だから分かることです。
「私の署名を偽装したのはリチャードよ。そして、夫はこれを真実として自分の両親を騙そうとしたのよ」
夫は優秀では無くとも、勤勉であったと思います。
学園を卒業後、文官として真面目に長年勤めていた彼の功績は派手さは無くとも周囲には正しく理解されていた筈です。
「リチャードと話すわ。用意して」
「畏まりました。奥様、何か召し上がられますか、スープだけではお体が持ちません」
私の優秀な配下は、私以上に体の事について敏感な様です。
お腹は全く空いていませんが、何か食べなければ敵には勝てないでしょう。
「そうね。先程はスープを頂いただけだから少しお腹がすいている気がするわ。何か力が付くものを用意してもらえるように言ってきてくれるかしら」
目が覚めてから口にしたのは、野菜の旨味が出ているであろうコンソメスープのみです。これでは力なんて出る筈がありません。
これから私はこの屋敷を掌握している執事と対峙するのですから、空腹で考えがまとまらない等あってはならないのです。
「誰かと会うのは食事の後よ。それを周知して」
私が何を言おうと無駄なのかもしれませんが、信用できない相手に準備も無しに立ち向かう等そんな術は私には無かったのです。
私が発した声は、想像以上に低く冷え切ったものになりました。
毒、それを私に使うのは、食事では不可能です。
私の有能な侍女達は、常に毒に気を付けています。
私が日常口にするお茶や食事は常に彼女達が監視していますから、私は安全だと分かっているものしか口にしていません。
社交で出向いた茶会や晩餐会でも同じです。
それは王弟の娘たる私の日常でした。
「私が口にするすべてはあなた達が監視しているのよ。それ以外の何に使っていたというの」
言いながら頭の隅に浮かんだものは、私の気持ちを踏みにじるものでした。
「あなた達が確認出来ない、でも彼が私に毒を盛るのならあなた達を気にせずに出来る場所」
そんなことがあるでしょうか。
私は現陛下の弟である王弟殿下の娘です。
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彼らが次代を継ぐまでの予備を産める、それが私の価値です。
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それを義父母も良く理解していたからこそ、私達の結婚は成ったというのに。
「毒など、そんな」
「でもありえるわ。夫である筈の彼には愛する人もその人が産んだ子もいたのだから」
納得できない。納得したくない。
それが本音で、それ以上、それ以下の感情はありません。
「奥様」
「これの詳細を鑑定してもらえるようにすぐにお兄様に依頼して、鑑定した結果本当に毒だというのなら今から解毒できる薬があるのかどうかを一緒に聞いて。私は何も困っていないわ。ただ夫との間に子が出来なかっただけ」
それはどれだけ屈辱的で、惨めなことだったでしょう。
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「畏まりました。すぐに連絡し確認して頂きます」
「ありがとう。鑑定してもすぐに解毒薬まではわからないでしょう。でも、事重要よ私達はすぐに動かなくてはいけないわ」
「奥様」
これは夫だけの行いでしょうか。
夫の両親が関与していたしたら、私が何を言おうと無駄になります。
私の実家がなんであろうと、私の父親が誰であろうと。
彼らがすでに決めてしまったのだとしたら、そんなものに意味はないのです。
でも。
「これは私の憶測にすぎないけれど、お義父様達は関与していないと思うの。これは夫と、多分リチャードだけが知る事。もしお義父様達が知っているとしたら、この荷物の中に離縁状もこの薬も存在しない筈よ」
離縁状はわざと拙い筆跡で書かれていましたが、それでも書き手の癖は残っています。
「ここ、この文字の払いは独特よ。普通ならこんな風な文字にはならないわ」
これはリチャードが書く癖だと私は知っています。
彼が書く書類を何千枚も確認してきた私だから分かることです。
「私の署名を偽装したのはリチャードよ。そして、夫はこれを真実として自分の両親を騙そうとしたのよ」
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「そうね。先程はスープを頂いただけだから少しお腹がすいている気がするわ。何か力が付くものを用意してもらえるように言ってきてくれるかしら」
目が覚めてから口にしたのは、野菜の旨味が出ているであろうコンソメスープのみです。これでは力なんて出る筈がありません。
これから私はこの屋敷を掌握している執事と対峙するのですから、空腹で考えがまとまらない等あってはならないのです。
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