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番外編
ほのぼの日常編1 再婚を祝う人々9(ダニエラ視点)
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「ダニエラ、人目の無い馬車の中とはいえその顔は気を抜き過ぎだ」
気を抜き過ぎの顔というのは酷い表現ですが、今の私は見てくれを取り繕うのも難しい精神状態ですから許して欲しいです。
「申し訳ございません、ですがお兄様。私疲れてしまいました。熱が出てきたかもしれませんわ」
もう、もうっ色々あり過ぎていっぱいいっぱいです!
「気持ちは分かるが、そんな調子ではこの先ディーンとやっていけないぞ」
「ディーンは良いのです。いえ、良くありませんが」
「ではなんだ、持参金ならあの程度何でも無い。今まで通り化粧料も月々送る」
「それはありがたく頂きます。でも二度も持参金をいいのでしょうか」
同じ家に嫁ぐのですし、最初の持参金も手付かずで残っているというのに前回よりも多い額になると聞いてしまうと申し訳ない気持ちになってしまいます。
「それより領地と爵位です。公爵家の持つ爵位付きで領地を頂くなんて、本当に良いのですか」
「むしろあんな離れた場所、家に残しておく方が面倒だろう。都合良くネルツ領の隣なんだ、しっかり管理してお前の子に継がせればいい。どうせお前ネルツ領はあの馬鹿の息子に継がせるつもりなんだろう?」
本当にお前はお人よしだ。
お兄様の心の声が聞こえた様な気がしましたが、実際私はロニーにネルツ家を継がせるつもりですから、お人よしと言われても仕方ない話です。
「継がせる土地と爵位があるのはありがたいですが、その土地はどの様な状態なのでしょう」
二年程前ネルツ家の領地の東側に位置する子爵家が、横領や人身売買等はの罪を繰り返し、爵位と領地の返還となったそうなのですが、それを摘発したのがお兄様とウーゴ叔父様だった為その領地と爵位が褒美となったものの、叔父様は今持っている領地で手一杯だからと断った為爵位が叔父様に、領地は公爵家の物になったのだそうです。
今回、私への結婚祝いに叔父様からその爵位を頂き、公爵家からはその土地を管理している役人付きで領地を頂くことになったとさっき聞かされたばかりです。
役人達は子爵家に仕えていた者では無く、お父様が公爵家に仕えている者達を派遣していたそうなので、安心して任せて良いと言われました。
ちなみにウーゴ叔父様はディーンの後見人の一人で、実はお父様もディーンの後見人だとも教えられたのですが、知らないことが多すぎてなんだか私だけ除け者にされていた様な気持ちになったのは、お兄様やディーンには内緒です。
ネルツ侯爵当主であるお義父様は、お義母様のやらかしのお陰で現在使いものにならなくなってしまっている為、後見人のウーゴ叔父様が婚姻について公爵家との取り決めをして下さっていたのだそうです。
叔父様の執務室で色々と聞かされて、私はもうお腹いっぱいな気持ちです。
「叔父上が話されていた通り、あの土地は迷宮があるしネルツ侯爵領との境にある森は大型の魔物が出やすい土地だが、その辺りは今迄通り冒険者ギルドに管理を任せておけばいい。何でもかんでも領主任せでは町も人も育たないからな、それにあそこのギルマスは昔からディーンと魔物を狩っていた人間で、ディーンを上級冒険者に育てた男だ信用していい」
冒険者と聞くと、不思議な気持ちになります。
前世のアニメや小説等では良く出てきた職業ですが、まさか自分の夫が冒険者をしていたとは思いませんでした。
ゲームでそんな描写あったでしょうか? でも大魔女郎蜘蛛はディーンが使役する魔物として出てきます。
あれ? ディーンルートで、冒険者がヒロインを助けるエピソードもあったような覚えが……。
「どうした」
「私、ディーンの事を何も知らないのだなと」
「前の夫と五年夫婦でいても何も知らずにいただろう」
「そうですけれど、ディーンについてはある程度知っておいた方が良いような気がします」
ディーンがお兄様に懐いているのは、叔父様の話を一緒に聞いていた時の様子で良く分かりました。
何せ「ニール兄上」と呼ぶ度にディーンが少し嬉しそうにしているのです。
そしてそれを叔父様が、幼い子供でも見るかの様に見守っている様に感じました。
お兄様が人から慕われ崇拝されているのは、噂で聞いて知っていますが、もしかしてその筆頭がディーンなのでしょうか。
「そんなもの、その内嫌でも分かるだろうから、今すぐ知らなければと慌てる必要はない。あれの性格を把握出来るまでは、ディーンには過剰な貢ぎ癖があるとだけ覚えておけばいい。その時は不要だと思っても持ってきたものを受け取っておくだけでいい。ただし無茶しようとしていると事前に分かったのなら全力で止めろ」
どういう意味でしょう。
お兄様に幻獣の魔石を取って来た話は、行きの馬車の中で聞きましたが、それよりトンデモナイ事をしたことがあるのでしょうか。
「それはどういう時でしょう」
ディーンの行動、私にはいつも無茶をしているように見えますが、それを超える無茶とは一体。
「そうだな、例を一つ上げるなら他国を取ってくる等言い出した時だな」
「あの、それは無茶の範囲を超えているのではないでしょうか」
何をどう話したら、国を取ってくるという結論になるのか意味が分かりません。
「公爵家の縁戚に東の辺境伯がいるだろう」
「はい」
「隣国との境でもあるから、いざこざが絶えない場所なんだが、あそこは必要あれば私か父上かが出向くと盟約がある地だから面倒だと話をしたら。私が気に病む様な国があるのは良くないから、隣国の王の首を私に捧げると言い始めた」
ちょっと待ってください。
それ! そのエピソードはゲームに出てきます。
隣国からの小さな攻撃が続き、王弟であるお父様が出向かなければならなくなったところで、お兄様がという話になり、何故かディーンが王の首を取りに行く。
それは課金追加エピソードの一つで、ディーンは王の首をお兄様の元に届け、その見返りにダニエラの遺体を引き取ろうとする。恐ろしいディーンのヤンデレエピソードがあるのです。
何故私忘れていたんでしょうか、これはヒロインも私もお兄様とエンドを迎えなかった場合の完全バッドエンドだった筈です。
しかも、他の攻略対象者もヒロインもすべて巻き込む、超バッドエンドになってしまうものです。
何せディーンの行動をきっかけに戦が始まり、そのどさくさに紛れて北の国が攻めてきてしまい最終的にこの国が滅ぶのですから。
「そ、それでお兄様は何と」
「王の座等私が一番いらないものだ。それぐらい理解しろと言ったら、王の交代だけ企てようとしているな」
「企てようとしている?」
まさかの現在進行中、嘘でしょ。
じゃあ、この世界はもしやお兄様ルートの世界なのでしょうか。
「どうしたダニエラ、顔色が悪いぞ」
「戦に、戦にはなりませんか?」
まだ乙女ゲームも始まっていないというのに、どうしてルート確定の様な動きになっているのでしょう。
私、ロニーのトラウマとディーンのヤンデレさえ阻止できれば大丈夫だと思っていたから、他のルートまで思い出す必要はないと考えていたのに。
しかも私重要な事を忘れすぎです。
これは全ルートを思い出さなければ。
「戦、何を心配している。そこまでの話ではない」
「でも、王の首とか恐ろしくて」
「あの国の今の王は国を広げたくて仕方がないんだが、うちと隣接している以外は海と山だから、攻めるならうちしかないんだろう。だがこちらは王家が北の国の王女と第一王子殿下との婚姻をまとめたから、軍事力としてはこちらの方が上、本気で手出しは出来ない。そんな事をすれば自国の不利になるだけと分かっているからな」
それなら何故いざこざが起きるのでしょう。
そう言えば、北の国の王女。
確か彼女のエピソードがあった筈です、あれはでもお兄様ルートでは無かったような。
これは、絶対に思い出さなければ駄目な気がします。
「辺境伯はどう考えているのでしょう」
「あの人は向こうに気晴らしをさせている程度に考えているから良いんだが、少し騒ぎが大きくなると父上を呼びたがる。そうすると陛下の機嫌が悪くなるから面倒で、それをディーンに言ったら、国を取ってくるとな」
そう言えば、東の辺境伯はお父様の従兄弟ですが、従兄弟の中でお父様のことが一番好きだと宣言している方ですし、その父親である前辺境伯も甥であるお父様が大のお気に入りでした。
「まさか、辺境伯はお父様に会う理由が欲しいだけなのではありませんよね?」
確か辺境伯家に婿入りするまでは、魔法師団の団長で、歴代の団長の中でも最強と言われていた方だった様な覚えがあります。
「だから陛下も機嫌が悪くなる」
それは、お兄様が面倒だと言うのも分かります。
隣国が面倒なのでは無く、辺境伯家と陛下が面倒なのですから。
でもそれを知らないディーンは、お兄様を煩わせる隣国憎しの考えで動こうとしているというわけで、そんな些細なきっかけで戦を始められたら泣くになけません。
「まあ陛下も辺境伯も戦は望んでいないから、安心していていい。父上があの国が欲しいと言い出したら別だろうがな」
お父様は王になりたいのでしょうか。
お父様は私がピーターと結婚する時「王妃になる娘を産みなさい」の命じられたけれど、本当はお父様もお兄様を王にしたいと考えているのでしょうか。
「お父様が望んだら? あの、お兄様は王になりたいと考えた事はないのでしょうか」
「私は小さな場所を整え守りたいと望んでいるだけだ。最上の椅子に座りたいと思ったことはない」
「何故と聞いても」
「私はこれでも平凡な男だからな。平凡な者が守れるものは限られていると知っている」
お兄様が平凡な人だと言うなら、私なんてそれ以下ですが、何をもって平凡と言うのでしょう。
「平凡」
「安心しろ、ディーンには他国に手は出させない。戦にもならない」
「ディーンは好戦的な方、というわけではないのですね」
「あれの発言は貢ぎ癖が過ぎただけだ」
貢ぎ癖。
色々恩恵を頂いている身で言うのはあれですが、貢ぎ癖ですべて済ませて良い話でしょうか。
「王の首は兎も角、ディーンから貢がれた物に対価を支払う等決して言うなよ」
「どうしてですか」
頂いたらお礼を、しかも高価な物をもらい続けるのは人として問題がある気がします。
「期待に添えなかったのか、それとも失敗したのかとあいつが絶望するからだ」
「は?」
どうしてディーンの関係は、聞き違えたのかと思う話になるのでしょうか。
気を抜き過ぎの顔というのは酷い表現ですが、今の私は見てくれを取り繕うのも難しい精神状態ですから許して欲しいです。
「申し訳ございません、ですがお兄様。私疲れてしまいました。熱が出てきたかもしれませんわ」
もう、もうっ色々あり過ぎていっぱいいっぱいです!
「気持ちは分かるが、そんな調子ではこの先ディーンとやっていけないぞ」
「ディーンは良いのです。いえ、良くありませんが」
「ではなんだ、持参金ならあの程度何でも無い。今まで通り化粧料も月々送る」
「それはありがたく頂きます。でも二度も持参金をいいのでしょうか」
同じ家に嫁ぐのですし、最初の持参金も手付かずで残っているというのに前回よりも多い額になると聞いてしまうと申し訳ない気持ちになってしまいます。
「それより領地と爵位です。公爵家の持つ爵位付きで領地を頂くなんて、本当に良いのですか」
「むしろあんな離れた場所、家に残しておく方が面倒だろう。都合良くネルツ領の隣なんだ、しっかり管理してお前の子に継がせればいい。どうせお前ネルツ領はあの馬鹿の息子に継がせるつもりなんだろう?」
本当にお前はお人よしだ。
お兄様の心の声が聞こえた様な気がしましたが、実際私はロニーにネルツ家を継がせるつもりですから、お人よしと言われても仕方ない話です。
「継がせる土地と爵位があるのはありがたいですが、その土地はどの様な状態なのでしょう」
二年程前ネルツ家の領地の東側に位置する子爵家が、横領や人身売買等はの罪を繰り返し、爵位と領地の返還となったそうなのですが、それを摘発したのがお兄様とウーゴ叔父様だった為その領地と爵位が褒美となったものの、叔父様は今持っている領地で手一杯だからと断った為爵位が叔父様に、領地は公爵家の物になったのだそうです。
今回、私への結婚祝いに叔父様からその爵位を頂き、公爵家からはその土地を管理している役人付きで領地を頂くことになったとさっき聞かされたばかりです。
役人達は子爵家に仕えていた者では無く、お父様が公爵家に仕えている者達を派遣していたそうなので、安心して任せて良いと言われました。
ちなみにウーゴ叔父様はディーンの後見人の一人で、実はお父様もディーンの後見人だとも教えられたのですが、知らないことが多すぎてなんだか私だけ除け者にされていた様な気持ちになったのは、お兄様やディーンには内緒です。
ネルツ侯爵当主であるお義父様は、お義母様のやらかしのお陰で現在使いものにならなくなってしまっている為、後見人のウーゴ叔父様が婚姻について公爵家との取り決めをして下さっていたのだそうです。
叔父様の執務室で色々と聞かされて、私はもうお腹いっぱいな気持ちです。
「叔父上が話されていた通り、あの土地は迷宮があるしネルツ侯爵領との境にある森は大型の魔物が出やすい土地だが、その辺りは今迄通り冒険者ギルドに管理を任せておけばいい。何でもかんでも領主任せでは町も人も育たないからな、それにあそこのギルマスは昔からディーンと魔物を狩っていた人間で、ディーンを上級冒険者に育てた男だ信用していい」
冒険者と聞くと、不思議な気持ちになります。
前世のアニメや小説等では良く出てきた職業ですが、まさか自分の夫が冒険者をしていたとは思いませんでした。
ゲームでそんな描写あったでしょうか? でも大魔女郎蜘蛛はディーンが使役する魔物として出てきます。
あれ? ディーンルートで、冒険者がヒロインを助けるエピソードもあったような覚えが……。
「どうした」
「私、ディーンの事を何も知らないのだなと」
「前の夫と五年夫婦でいても何も知らずにいただろう」
「そうですけれど、ディーンについてはある程度知っておいた方が良いような気がします」
ディーンがお兄様に懐いているのは、叔父様の話を一緒に聞いていた時の様子で良く分かりました。
何せ「ニール兄上」と呼ぶ度にディーンが少し嬉しそうにしているのです。
そしてそれを叔父様が、幼い子供でも見るかの様に見守っている様に感じました。
お兄様が人から慕われ崇拝されているのは、噂で聞いて知っていますが、もしかしてその筆頭がディーンなのでしょうか。
「そんなもの、その内嫌でも分かるだろうから、今すぐ知らなければと慌てる必要はない。あれの性格を把握出来るまでは、ディーンには過剰な貢ぎ癖があるとだけ覚えておけばいい。その時は不要だと思っても持ってきたものを受け取っておくだけでいい。ただし無茶しようとしていると事前に分かったのなら全力で止めろ」
どういう意味でしょう。
お兄様に幻獣の魔石を取って来た話は、行きの馬車の中で聞きましたが、それよりトンデモナイ事をしたことがあるのでしょうか。
「それはどういう時でしょう」
ディーンの行動、私にはいつも無茶をしているように見えますが、それを超える無茶とは一体。
「そうだな、例を一つ上げるなら他国を取ってくる等言い出した時だな」
「あの、それは無茶の範囲を超えているのではないでしょうか」
何をどう話したら、国を取ってくるという結論になるのか意味が分かりません。
「公爵家の縁戚に東の辺境伯がいるだろう」
「はい」
「隣国との境でもあるから、いざこざが絶えない場所なんだが、あそこは必要あれば私か父上かが出向くと盟約がある地だから面倒だと話をしたら。私が気に病む様な国があるのは良くないから、隣国の王の首を私に捧げると言い始めた」
ちょっと待ってください。
それ! そのエピソードはゲームに出てきます。
隣国からの小さな攻撃が続き、王弟であるお父様が出向かなければならなくなったところで、お兄様がという話になり、何故かディーンが王の首を取りに行く。
それは課金追加エピソードの一つで、ディーンは王の首をお兄様の元に届け、その見返りにダニエラの遺体を引き取ろうとする。恐ろしいディーンのヤンデレエピソードがあるのです。
何故私忘れていたんでしょうか、これはヒロインも私もお兄様とエンドを迎えなかった場合の完全バッドエンドだった筈です。
しかも、他の攻略対象者もヒロインもすべて巻き込む、超バッドエンドになってしまうものです。
何せディーンの行動をきっかけに戦が始まり、そのどさくさに紛れて北の国が攻めてきてしまい最終的にこの国が滅ぶのですから。
「そ、それでお兄様は何と」
「王の座等私が一番いらないものだ。それぐらい理解しろと言ったら、王の交代だけ企てようとしているな」
「企てようとしている?」
まさかの現在進行中、嘘でしょ。
じゃあ、この世界はもしやお兄様ルートの世界なのでしょうか。
「どうしたダニエラ、顔色が悪いぞ」
「戦に、戦にはなりませんか?」
まだ乙女ゲームも始まっていないというのに、どうしてルート確定の様な動きになっているのでしょう。
私、ロニーのトラウマとディーンのヤンデレさえ阻止できれば大丈夫だと思っていたから、他のルートまで思い出す必要はないと考えていたのに。
しかも私重要な事を忘れすぎです。
これは全ルートを思い出さなければ。
「戦、何を心配している。そこまでの話ではない」
「でも、王の首とか恐ろしくて」
「あの国の今の王は国を広げたくて仕方がないんだが、うちと隣接している以外は海と山だから、攻めるならうちしかないんだろう。だがこちらは王家が北の国の王女と第一王子殿下との婚姻をまとめたから、軍事力としてはこちらの方が上、本気で手出しは出来ない。そんな事をすれば自国の不利になるだけと分かっているからな」
それなら何故いざこざが起きるのでしょう。
そう言えば、北の国の王女。
確か彼女のエピソードがあった筈です、あれはでもお兄様ルートでは無かったような。
これは、絶対に思い出さなければ駄目な気がします。
「辺境伯はどう考えているのでしょう」
「あの人は向こうに気晴らしをさせている程度に考えているから良いんだが、少し騒ぎが大きくなると父上を呼びたがる。そうすると陛下の機嫌が悪くなるから面倒で、それをディーンに言ったら、国を取ってくるとな」
そう言えば、東の辺境伯はお父様の従兄弟ですが、従兄弟の中でお父様のことが一番好きだと宣言している方ですし、その父親である前辺境伯も甥であるお父様が大のお気に入りでした。
「まさか、辺境伯はお父様に会う理由が欲しいだけなのではありませんよね?」
確か辺境伯家に婿入りするまでは、魔法師団の団長で、歴代の団長の中でも最強と言われていた方だった様な覚えがあります。
「だから陛下も機嫌が悪くなる」
それは、お兄様が面倒だと言うのも分かります。
隣国が面倒なのでは無く、辺境伯家と陛下が面倒なのですから。
でもそれを知らないディーンは、お兄様を煩わせる隣国憎しの考えで動こうとしているというわけで、そんな些細なきっかけで戦を始められたら泣くになけません。
「まあ陛下も辺境伯も戦は望んでいないから、安心していていい。父上があの国が欲しいと言い出したら別だろうがな」
お父様は王になりたいのでしょうか。
お父様は私がピーターと結婚する時「王妃になる娘を産みなさい」の命じられたけれど、本当はお父様もお兄様を王にしたいと考えているのでしょうか。
「お父様が望んだら? あの、お兄様は王になりたいと考えた事はないのでしょうか」
「私は小さな場所を整え守りたいと望んでいるだけだ。最上の椅子に座りたいと思ったことはない」
「何故と聞いても」
「私はこれでも平凡な男だからな。平凡な者が守れるものは限られていると知っている」
お兄様が平凡な人だと言うなら、私なんてそれ以下ですが、何をもって平凡と言うのでしょう。
「平凡」
「安心しろ、ディーンには他国に手は出させない。戦にもならない」
「ディーンは好戦的な方、というわけではないのですね」
「あれの発言は貢ぎ癖が過ぎただけだ」
貢ぎ癖。
色々恩恵を頂いている身で言うのはあれですが、貢ぎ癖ですべて済ませて良い話でしょうか。
「王の首は兎も角、ディーンから貢がれた物に対価を支払う等決して言うなよ」
「どうしてですか」
頂いたらお礼を、しかも高価な物をもらい続けるのは人として問題がある気がします。
「期待に添えなかったのか、それとも失敗したのかとあいつが絶望するからだ」
「は?」
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