【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

ほのぼの日常編1 再婚を祝う人々10(ダニエラ視点)

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「何だか頭痛がして来ました」

 ヤンデレって、難し過ぎます。
 ディーンの場合、母親に虐待されていた事がヤンデレになった原因だと思います。
 愛されたい人から愛を与えられなかった、それどころか存在を否定され続け、心身ともに傷付けられて来たから他人の気持ちを信じられず、自分に自信がないのだろうと考えていました。
 それにしてもディーンは自分に自信がなさ過ぎる気がしますが、でも彼実はかなり優秀ですよね?
 
「ディーンかなり優秀な方だと思います。その割にどうしてあんなに自信が無いのでしょう」

 彼は優秀な方だと思います。そうでなければ、お父様が後見人になどなる筈がありません。
 そもそもすでに成人しているディーンの後見人というのは、どういう事なのでしょう。

「ディーンは優秀だ。だから魔法師団に入ると決まった時に父上が身元保証人になり、その後ディーンが成人した時にウーゴ叔父上と父上が後見人になった」
「成人したのに後見人? 学生の頃では無く?」

 ディーンが学生の頃からお父様がディーンの後見人になったのなら、その理由は分からないまでも理解出来ます。
 でもすでに成人しているディーンの後見人に王弟二人がなる理由、それが分かりません。

「元々ディーンは能力が高く学生の頃から評価が高かったんだが、魔法師団に入る時父上が保証人となった事で陛下も目を掛けるようになった。それだけならいいんだが、新しい魔法陣を次々に生み出し自分の能力がどれだけ高いか周囲に知らしめるようになって来た」
「通信の魔法陣と転移の魔法陣でしたか」
「ああ、どちらも不可能とされていたものだ。それをあれはたった数年魔法師団にいただけで、不可能と言われてきた魔法陣を作り上げてしまった。そんな優秀な男が侯爵家の次男で婚約者もいない上、ウィンストン公爵家との付き合いもある。当然どの家も欲しがるだろう。それは王妃殿下や第一王子殿下も同じだ。だが、王弟二人がついていると分かれば気安く手を出してはこない。父上のお気に入りを奪おうとすれば陛下の機嫌も損ねるからな」

 王妃殿下は派手好きで自分が一番でいたい人ですし、第一王子殿下は私への俺様発言を考えれば自分の駒だと思えば相手の気持ち等考慮せずに使い捨てるでしょう。
 何故か王家の血が濃ければ濃い程、人に好かれやすく崇拝されやすい傾向にあるというのに、第一王子殿下についてそういう噂を聞かないのは第一王子の性格によるものだと思います。
 婚約者候補として側にいたからこそ第一王子殿下の俺様な性格を知っていますし、私を自分のもの扱いする人なのも分かっています。
 箱入りなダニエラは、自分の結婚はお父様とお兄様が決める事だと考えていて第一王子殿下が相手でも決められたのなら従うだけでしたが、前世の記憶を思い出した今、第一王子殿下は無しです。
 ちなみに誰にも言った事はありませんが、第一王子殿下より第二王子殿下の性格の方が人としては好ましいと思っています。
 
「分かりやすく眉間に皺を寄せるな。みっともない」
「申し訳ありません。第一王子殿下はすでに妃を迎えられているというのに、以前とお変わりない様子だったと思い出してしまいました。あの方の妃として生涯共に生きるのはどんなに辛いことだろうと考えてしまいました」

 夫とするのは嫌ですが、それと同時にあの人がディーンの主になるなど、考えたくありません。
 卑屈で自信がないディーンの気持ち等考えず、思いやりもなく使い捨てる未来が見えてしまいます。

「お父様とウーゴ叔父様は、王妃殿下と第一王子殿下から守る為に後見人になって下さったのですね」
「元々のディーンの能力と為人を評価したからこそだ」
「それでも、そのお陰でディーンは守られたのですね」

 兄上と呼ばせる位、お兄様はディーンを気に入っていらっしゃるのだからお父様も同じ気持ちなのだと思います。
 なんだかんだ言ってお兄様とお父様は、考え方が似ているのですから。

「ふん。ディーンは味方でいれば安心していられるが、敵に回ったら恐ろしい男だからな」
「第一王子殿下は敵でしょうか」

 王妃殿下は敵なのだろうか、お母様との仲はいまいち良く分からないけれど、第一王子殿下も敵だとお父様達が思っているのなら私の娘を彼の息子の婚約者にするのは辛いと考えてしまいます。

「ウィンストン公爵家の者かそうでないかの話だ。この先は分からない」
「そうですね」

 これから先、乙女ゲームが始まったらどうなるのか不安です。
 私は、私の娘はどうなるのでしょう。

「ダニエラ」
「はい」
「ディーンは難しい男だ。おまえは自分の手に余ると思うか」
「……もし手に余ると申し上げたらどうなりますか」
「まだ婚姻の儀式前、取りやめることは可能だ」

 お兄様は私の気持ちを取ると言うのでしょうか、すでにディーンに兄上と呼ばせているというのに。

「お兄様は、ピーターには兄上と呼ばせていませんでしたね。どうしてディーンには許しているのですか」
「……ディーンには呼ばれても不快ではないだけだ」

 ディーンが自ら呼び始める筈はありませんから、お兄様がそう呼ぶように言ったのでしょう。
 つまりお兄様はディーンを弟にしても良いと考えているのです。
 そしてピーターは、お兄様には弟と認められていなかったという事です。

「そうですか、私もディーンから妻と思われる事が不快ではありません。ピーターと比べても第一王子殿下と比べても、ディーンの方が余程好ましい相手だと思います」

 確かに難しすぎる人です。
 どこにバッドエンドの選択肢が隠れているか分からない、地雷の様な人です。
 そんな彼と夫婦として一緒に過ごすのは、疲れを伴う事でしょう。

「そうか、それなら良い」
「ありがとうございます。お兄様、私大丈夫です。きっとディーンとなら幸せになります」
「そうか」
「蜘蛛達と仲良くなれるか、そちらの方が余程心配です」

 蜘蛛、魔物の大魔女郎蜘蛛です。
 彼らと会わなければいけないのは、辛いです。とてもとても怖いです。

「ああ、おまえ大丈夫か。あれはかなり大きいぞ」
「お兄様会ったことがあるのですか」
「ああ、何度かあるな。慣れると面白い奴らだ。さすがディーンの使役獣といった感じだな」

 さすがディーンの使役獣。
 なんて言うパワーワードでしょうか。
 あれ? 今面白いと言いましたか?

「面白いというのは、何か芸でもするのでしょうか」
「そんなわけあるか。魔物だぞ。あいつらはな、会話をするんだ」

 か・い・わ・を・す・る・?

「魔物ですよね」
「魔物だが、ディーンが必要以上に魔力を与え続けたせいか、知能が上がったらしい。苦も無く会話する」
「魔物と会話ですか」

 ますます会うのが怖くなりました。
 会話する魔物なんて、怖すぎます。

「会話、魔物と会話」
「そう恐れる事はないディーンを主と認めている者達だ。外見は虫だが、中身は分かりやすく真っ直ぐだ。あれなら人の方が余程怖い」

 お兄様のなんの慰めにもならない言葉を聞きながら、私の熱は本格的に上がって行ったのです。

※※※※※※
土曜日一日出掛けていたら軽い熱中症になったっぽくて具合悪くなってしまい、昨日の夕方から今日一日ずっと寝ていました。
暑いのは本当苦手です。
皆様もどうぞ暑い中無理なさらずに、ご自愛くださいませ。

ディーンに長く付き合うのって難しいだろうな、ダニエラ頑張れと思いつつ書いていたら同じ様な感想を頂いてしまいました。
そうですよね、ディーンと付き合うのはかなり大変だと思います。
でも悪い子じゃないんですよ、いじめられ続けた末警戒心が強くなっちゃったワンちゃんがイメージとしては近いでしょうか。
乙女ゲーム編では、飼い主のダニエラに沢山愛されて、幸せいっぱいな愛されヤンデレワンちゃんになりますのでどうかそれまでお付き合い頂ければ嬉しいです。
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