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番外編
ほのぼの日常編2 くもさんはともだち53(蜘蛛視点)
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「ディーン、ブレガ侯爵に会う前にロニーと話をしたいわ」
失言を悔いているのだろう、主は情けない顔をしながらダニエラに「すぐロニーを連れてきます」と叫ぶように言って部屋を出て行ってしまった。
主、ダニエラは主がどんな失言をしても広い心で許してくれると思うから大丈夫だぞ、大丈夫だよな?
「くぅちゃん、どうしたの?」
「ダニエラ、主の失言を怒っていないか」
「失言?」
子供が四人もいるとは思えない少女の様な顔で、ダニエラは首を傾げている。
「もしかして、ディーンがお兄様に心酔しているのを否定しなかった事?」
「あぁ、嫌では無いのか」
「嫌ならそう言うわ。私そういうところ我慢なんてしないわよ」
ダニエラは何でもない様にそう言うが、蜘蛛にはブレガ侯爵と主はある意味同じ様に見える。
「ブレガ侯爵はどう思う」
「あの方は、どうなのかしら。お父様への気持ちが行き過ぎて、ロニーを苦しめたりしないか心配になるわ」
ブレガ侯爵は心配でも、主は問題では無いのか。
蜘蛛には違いが良く分からない。
「ふふ、くぅちゃん困っている?」
「蜘蛛には主もブレガ侯爵も同じに見えるのだが、ダニエラは違うのか」
「お父様はブレガ侯爵を信用していると思うわ。自分の孫の婚約者候補を預ける位には信用している」
ネルツ家の跡継ぎの夫となる者を育てて貰うのだから、信頼関係になければ頼めないだろう。
「その信用は自分を裏切らないだろうと考えているから。配下への信用と同じ。でもね、お兄様はディーンを理解しているし信用しているし家族としても友としても大切に思っている。ね、違うでしょう?」
家族で友か、それは蜘蛛と出会ったばかりの頃の主が欲しくて欲しくてたまらなかったものだ。
主は、ニール様と出会わなければ孤独なままだっただろう。
ずっと孤独の中で生きていた筈だ。
「ダニエラ、蜘蛛はニール様に感謝している。主をニール様の友にしてくれた事、ダニエラと主の結婚を許してくれた事、主の家族になってくれた事、どれだけ感謝しても足りない」
「ふふ、どうしたの急に」
ダニエラは驚いた様に目を見開いた後くすくすと笑い始めたが、笑われても蜘蛛は今礼を言いたくなったのだ。
「ニール様が主を認めてくれなければ、主もあのブレガ侯爵の様になっていただろうと考えたのだ」
「……あれはあれで幸せだと思うけれど、陛下もブレガ侯爵も一方通行の思いね」
ちらりと応接室の方に視線を向けると、ブレガ侯爵はまだ父上殿の前に跪いている。
まだじゃないな、とうとう跪いてしまった。
応接室とこの部屋は特殊な魔道具の壁で遮られていて、向こうからこちらの様子は分からないそうだが、こちらから応接室は丸見えなのだから何と言うか、いたたまれない。
「あれでも大きな領地を治める大貴族なのだろう?」
「ええ、ブレガ侯爵領は海に面しているから常に海賊の脅威にさらされているから、侯爵領は立派な海軍を持ってい
るそうなの。それをまとめているのがブレガ侯爵なのだそうよ」
「海軍。蜘蛛は海は見た事が無い」
「私も……実際には無いわ」
実際に、という事は夢のダニエラでは海を見たことがあるのだろうか。
一度も見た事がない物を夢に見ると言うのは出来るものなのだろうか。
「……ダニエラ」
「夢なのに、ブレガ侯爵の顔が同じなの。くぅちゃん」
ダニエラが疲れた様な顔をしていたのは、父上殿に対するブレガ侯爵の言動を見ての事では無かったのか。
ルチアナとルカ―リオを産んだ時に見た夢、ダニエラ曰くもう一つの未来でダニエラの夫だったブレガ侯爵の顔が同じだと言うのか。
「夢だ、現実ではない」
「ええ、夢よ。だって私はディーンの妻だもの。私が産んだ子はディーンの子供」
ダニエラは、自分で自分を抱きしめる様にしながら、壁の向こうで跪いたまま父上殿を陶酔した顔で見上げているブレガ侯爵を見ていた。
「私、今日ブレガ侯爵に会ったら、くぅちゃんに夢は夢でしかなかったと笑い話に出来るかもしれないって思っていたのよ。夢で見た顔と実際の顔が同じ筈が無いもの」
「同じなのか」
「ええ。同じなの頬にある傷まで全部」
言われて蜘蛛はダニエラが指さすブレガ侯爵の顔を凝視した。
右の頬にあるのはかなり大きな傷だ。
殆どの傷は、怪我をした直後なら回復魔法や薬で痕を残すことなく治療出来る。
回復魔法や薬を使わずに自然治癒してしまったものは痕が残ってしまうが、そんな傷痕も何度も繰り返し回復魔法を掛ければ薄くする事は可能だから、貴族が顔に傷を残す等普通ならしない。
「……それでも夢だ。ダニエラは主の妻だ。全く違う。ルチアナだってダニエラの一人娘ではない、姉も弟もいる」
「ええ、そうね。全く違うわね、だって私ディーンの傍で毎日幸せに暮らしているもの」
幸せだと言いながら、ダニエラは不安そうにブレガ侯爵を見つめていたんだ。
失言を悔いているのだろう、主は情けない顔をしながらダニエラに「すぐロニーを連れてきます」と叫ぶように言って部屋を出て行ってしまった。
主、ダニエラは主がどんな失言をしても広い心で許してくれると思うから大丈夫だぞ、大丈夫だよな?
「くぅちゃん、どうしたの?」
「ダニエラ、主の失言を怒っていないか」
「失言?」
子供が四人もいるとは思えない少女の様な顔で、ダニエラは首を傾げている。
「もしかして、ディーンがお兄様に心酔しているのを否定しなかった事?」
「あぁ、嫌では無いのか」
「嫌ならそう言うわ。私そういうところ我慢なんてしないわよ」
ダニエラは何でもない様にそう言うが、蜘蛛にはブレガ侯爵と主はある意味同じ様に見える。
「ブレガ侯爵はどう思う」
「あの方は、どうなのかしら。お父様への気持ちが行き過ぎて、ロニーを苦しめたりしないか心配になるわ」
ブレガ侯爵は心配でも、主は問題では無いのか。
蜘蛛には違いが良く分からない。
「ふふ、くぅちゃん困っている?」
「蜘蛛には主もブレガ侯爵も同じに見えるのだが、ダニエラは違うのか」
「お父様はブレガ侯爵を信用していると思うわ。自分の孫の婚約者候補を預ける位には信用している」
ネルツ家の跡継ぎの夫となる者を育てて貰うのだから、信頼関係になければ頼めないだろう。
「その信用は自分を裏切らないだろうと考えているから。配下への信用と同じ。でもね、お兄様はディーンを理解しているし信用しているし家族としても友としても大切に思っている。ね、違うでしょう?」
家族で友か、それは蜘蛛と出会ったばかりの頃の主が欲しくて欲しくてたまらなかったものだ。
主は、ニール様と出会わなければ孤独なままだっただろう。
ずっと孤独の中で生きていた筈だ。
「ダニエラ、蜘蛛はニール様に感謝している。主をニール様の友にしてくれた事、ダニエラと主の結婚を許してくれた事、主の家族になってくれた事、どれだけ感謝しても足りない」
「ふふ、どうしたの急に」
ダニエラは驚いた様に目を見開いた後くすくすと笑い始めたが、笑われても蜘蛛は今礼を言いたくなったのだ。
「ニール様が主を認めてくれなければ、主もあのブレガ侯爵の様になっていただろうと考えたのだ」
「……あれはあれで幸せだと思うけれど、陛下もブレガ侯爵も一方通行の思いね」
ちらりと応接室の方に視線を向けると、ブレガ侯爵はまだ父上殿の前に跪いている。
まだじゃないな、とうとう跪いてしまった。
応接室とこの部屋は特殊な魔道具の壁で遮られていて、向こうからこちらの様子は分からないそうだが、こちらから応接室は丸見えなのだから何と言うか、いたたまれない。
「あれでも大きな領地を治める大貴族なのだろう?」
「ええ、ブレガ侯爵領は海に面しているから常に海賊の脅威にさらされているから、侯爵領は立派な海軍を持ってい
るそうなの。それをまとめているのがブレガ侯爵なのだそうよ」
「海軍。蜘蛛は海は見た事が無い」
「私も……実際には無いわ」
実際に、という事は夢のダニエラでは海を見たことがあるのだろうか。
一度も見た事がない物を夢に見ると言うのは出来るものなのだろうか。
「……ダニエラ」
「夢なのに、ブレガ侯爵の顔が同じなの。くぅちゃん」
ダニエラが疲れた様な顔をしていたのは、父上殿に対するブレガ侯爵の言動を見ての事では無かったのか。
ルチアナとルカ―リオを産んだ時に見た夢、ダニエラ曰くもう一つの未来でダニエラの夫だったブレガ侯爵の顔が同じだと言うのか。
「夢だ、現実ではない」
「ええ、夢よ。だって私はディーンの妻だもの。私が産んだ子はディーンの子供」
ダニエラは、自分で自分を抱きしめる様にしながら、壁の向こうで跪いたまま父上殿を陶酔した顔で見上げているブレガ侯爵を見ていた。
「私、今日ブレガ侯爵に会ったら、くぅちゃんに夢は夢でしかなかったと笑い話に出来るかもしれないって思っていたのよ。夢で見た顔と実際の顔が同じ筈が無いもの」
「同じなのか」
「ええ。同じなの頬にある傷まで全部」
言われて蜘蛛はダニエラが指さすブレガ侯爵の顔を凝視した。
右の頬にあるのはかなり大きな傷だ。
殆どの傷は、怪我をした直後なら回復魔法や薬で痕を残すことなく治療出来る。
回復魔法や薬を使わずに自然治癒してしまったものは痕が残ってしまうが、そんな傷痕も何度も繰り返し回復魔法を掛ければ薄くする事は可能だから、貴族が顔に傷を残す等普通ならしない。
「……それでも夢だ。ダニエラは主の妻だ。全く違う。ルチアナだってダニエラの一人娘ではない、姉も弟もいる」
「ええ、そうね。全く違うわね、だって私ディーンの傍で毎日幸せに暮らしているもの」
幸せだと言いながら、ダニエラは不安そうにブレガ侯爵を見つめていたんだ。
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