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番外編
ほのぼの日常編2 くもさんはともだち56(蜘蛛視点)
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「そうなの……」
「ダニエラどうした」
照れている主を見ながらダニエラはなんだか残念そうな顔で、主とロニーを見ている。
「お兄様の成人の時の礼服姿はとても素敵だったわ。お父様とお揃いの礼服が本当に良く似あっていて、私はお父様とお兄様に見惚れた程なのよ」
「それは父上とニール兄上が素敵で無い筈がありません」
主、そこで言い切るのはどうなんだ。
いや、これが主だから仕方ない、ロニーが驚いて二人を見ているなんて蜘蛛は気が付かない。
「ディーンの礼服も見たかったわ。成人の祝いの式にそのころ子供だった私が参列するのは出来なかったでしょうけれど、私もディーンの成人のお祝いしたかったわ」
「ダニエラ」
ダニエラには教えられていないらしいが、父上殿とニール様はダニエラが第一王子の婚約者候補から正式に外れるまで、ダニエラに他家の令息を最低限以下の接触もさせなかったそうだ。
第一王子はダニエラを幼い頃から自分のもの扱いしていて、茶会等でダニエラが他家の令息と会話するだけで癇癪を起していたらしくその癇癪をダニエラ本人に向け暴力を振るおうとしていたらしい。
ダニエラが第一王子と会う時はニール様か母上殿のどちらかが必ず側にいて、陛下の側には父上殿が向かいダニエラを守っていたのだそうだ。
だから成人の祝いとはいえ、ダニエラを主に会わせるなんて出来る筈が無い。
「仕方ないだろう。その頃ダニエラは主を知らない」
「そうなのよ。本当に残念だわ。その頃からディーンを知っていたら成人のお祝いも卒業のお祝いも出来たのに」
「ダニエラ、ああ、私はあなたが今そう思ってくれるだけで幸せです」
ダニエラが主を祝ってくれたら、蜘蛛だってそう思う。
成人の祝いは兎も角、卒業のあの日、主はどれだけ悲しかっただろう。
実の母親からの暴言を、周囲に人がいる場所で受け止めなければならなかった主。
ニール様達が主を助けてくれたとはいえ、それでも主には苦しく悲しい思いをしていたんだ。
ダニエラがあの場にいたら、主を抱きしめ慰めてくれただろう。
主の努力した日々は素晴らしかった、その結果成績優秀者として表彰された事は素晴らしかったときっと主を褒めてくれただろう。
蜘蛛は主の母親の暴言を聞いて、あの女を殺せない自分の立場を呪った。
主の使役獣である蜘蛛は、主の命令がなければ人を殺められない。
主と血の繋がりがある者を勝手に殺せない。
それが悔しくてたまらなかった。
主が望めばすぐに蜘蛛が殺したというのに、あの頃の主は母親に絶望しても悲しんでも恨んではいなかった、死を望んだりしていなかったのだ。
主はただ悲しみ、それでもまだ母親から愛されたいと願っていた。
どうして自分は兄と同じく愛して貰えないのか、努力をどれだけしても駄目なのかと絶望していただけなんだ。
「ダニエラ、蜘蛛もあの時ダニエラが主を祝ってくれたらどれだけ嬉しいかっただろう。でもその気持ちが嬉しい主の使役獣として礼を言う。ありがとうダニエラ」
ダニエラが主を祝いたかったと言ってくれるだけで、あの時の主の寂しさが、悲しさが癒される気がする。
「……私ロニーのお祝いも出来ないのね。ロニーはブレガ侯爵の義息子として成人の式に出るのですもの」
そうか、ロニーはブレガ家の養子として成人する。
「それはロニー次第ですよ。ダニエラ」
「どういう事?」
「申し訳ありません。その話をしようとしていたのに、つい自分の思い出に浸ってしまいました」
主は何が言いたいのだろう。ダニエラもロニーも蜘蛛も、疑問を持った顔で主の言葉の続きを待った。
「ロニーが成人までに父上殿とニール兄上からマチルディーダの婚約者に相応しいと認められたなら、ロニーの婚約者の父である私とロニーが揃いの礼服を着て成人の式に出られる。私の妻であるダニエラは勿論、婚約していればマチルディーダだって一緒にロニーの成人を祝える」
「まあ、そうよ、そうだわ」
「お義父様、それは本当ですか」
「ああ、勿論婚約するにはマチルディーダの気持ちが最優先だが、マチルディーダに求婚するにはまず父上殿とニール兄上に認められなければ駄目だ」
ロニーの目が大きく見開かれて、主とダニエラを交互に見ている。
「僕が努力すれば、ディーダに相応しくなる様に努力すれば、僕は本当に彼女と婚約出来るのですか」
ロニーの声が震えている。
婚約者候補になる為にブレガ侯爵の養子になるのに、ロニーにはその未来が信じられていなかったのだろう。
「ロニーの努力次第だ」
主がこう言い切るなら、それは父上殿とニール様がそう決めたと言う事だ。
婚約者候補の一人ではなく、ロニーこそがマチルディーダの婚約者として育てられる。
そういうことなんだ。
「努力します。どれだけ辛くても諦めません、投げ出しません。僕にその許しを下さるのなら、僕は精一杯努力し続けます」
「ロニー、頑張って。私信じているわ。あなたが私の本当の義息子になる日を信じて待っているわ」
主とダニエラに誓うロニーの小さな体を、ダニエラがぎゅうっと抱きしめた。
そして主も、ダニエラとロニーの体を抱きしめたんだ。
「ダニエラどうした」
照れている主を見ながらダニエラはなんだか残念そうな顔で、主とロニーを見ている。
「お兄様の成人の時の礼服姿はとても素敵だったわ。お父様とお揃いの礼服が本当に良く似あっていて、私はお父様とお兄様に見惚れた程なのよ」
「それは父上とニール兄上が素敵で無い筈がありません」
主、そこで言い切るのはどうなんだ。
いや、これが主だから仕方ない、ロニーが驚いて二人を見ているなんて蜘蛛は気が付かない。
「ディーンの礼服も見たかったわ。成人の祝いの式にそのころ子供だった私が参列するのは出来なかったでしょうけれど、私もディーンの成人のお祝いしたかったわ」
「ダニエラ」
ダニエラには教えられていないらしいが、父上殿とニール様はダニエラが第一王子の婚約者候補から正式に外れるまで、ダニエラに他家の令息を最低限以下の接触もさせなかったそうだ。
第一王子はダニエラを幼い頃から自分のもの扱いしていて、茶会等でダニエラが他家の令息と会話するだけで癇癪を起していたらしくその癇癪をダニエラ本人に向け暴力を振るおうとしていたらしい。
ダニエラが第一王子と会う時はニール様か母上殿のどちらかが必ず側にいて、陛下の側には父上殿が向かいダニエラを守っていたのだそうだ。
だから成人の祝いとはいえ、ダニエラを主に会わせるなんて出来る筈が無い。
「仕方ないだろう。その頃ダニエラは主を知らない」
「そうなのよ。本当に残念だわ。その頃からディーンを知っていたら成人のお祝いも卒業のお祝いも出来たのに」
「ダニエラ、ああ、私はあなたが今そう思ってくれるだけで幸せです」
ダニエラが主を祝ってくれたら、蜘蛛だってそう思う。
成人の祝いは兎も角、卒業のあの日、主はどれだけ悲しかっただろう。
実の母親からの暴言を、周囲に人がいる場所で受け止めなければならなかった主。
ニール様達が主を助けてくれたとはいえ、それでも主には苦しく悲しい思いをしていたんだ。
ダニエラがあの場にいたら、主を抱きしめ慰めてくれただろう。
主の努力した日々は素晴らしかった、その結果成績優秀者として表彰された事は素晴らしかったときっと主を褒めてくれただろう。
蜘蛛は主の母親の暴言を聞いて、あの女を殺せない自分の立場を呪った。
主の使役獣である蜘蛛は、主の命令がなければ人を殺められない。
主と血の繋がりがある者を勝手に殺せない。
それが悔しくてたまらなかった。
主が望めばすぐに蜘蛛が殺したというのに、あの頃の主は母親に絶望しても悲しんでも恨んではいなかった、死を望んだりしていなかったのだ。
主はただ悲しみ、それでもまだ母親から愛されたいと願っていた。
どうして自分は兄と同じく愛して貰えないのか、努力をどれだけしても駄目なのかと絶望していただけなんだ。
「ダニエラ、蜘蛛もあの時ダニエラが主を祝ってくれたらどれだけ嬉しいかっただろう。でもその気持ちが嬉しい主の使役獣として礼を言う。ありがとうダニエラ」
ダニエラが主を祝いたかったと言ってくれるだけで、あの時の主の寂しさが、悲しさが癒される気がする。
「……私ロニーのお祝いも出来ないのね。ロニーはブレガ侯爵の義息子として成人の式に出るのですもの」
そうか、ロニーはブレガ家の養子として成人する。
「それはロニー次第ですよ。ダニエラ」
「どういう事?」
「申し訳ありません。その話をしようとしていたのに、つい自分の思い出に浸ってしまいました」
主は何が言いたいのだろう。ダニエラもロニーも蜘蛛も、疑問を持った顔で主の言葉の続きを待った。
「ロニーが成人までに父上殿とニール兄上からマチルディーダの婚約者に相応しいと認められたなら、ロニーの婚約者の父である私とロニーが揃いの礼服を着て成人の式に出られる。私の妻であるダニエラは勿論、婚約していればマチルディーダだって一緒にロニーの成人を祝える」
「まあ、そうよ、そうだわ」
「お義父様、それは本当ですか」
「ああ、勿論婚約するにはマチルディーダの気持ちが最優先だが、マチルディーダに求婚するにはまず父上殿とニール兄上に認められなければ駄目だ」
ロニーの目が大きく見開かれて、主とダニエラを交互に見ている。
「僕が努力すれば、ディーダに相応しくなる様に努力すれば、僕は本当に彼女と婚約出来るのですか」
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「ロニーの努力次第だ」
主がこう言い切るなら、それは父上殿とニール様がそう決めたと言う事だ。
婚約者候補の一人ではなく、ロニーこそがマチルディーダの婚約者として育てられる。
そういうことなんだ。
「努力します。どれだけ辛くても諦めません、投げ出しません。僕にその許しを下さるのなら、僕は精一杯努力し続けます」
「ロニー、頑張って。私信じているわ。あなたが私の本当の義息子になる日を信じて待っているわ」
主とダニエラに誓うロニーの小さな体を、ダニエラがぎゅうっと抱きしめた。
そして主も、ダニエラとロニーの体を抱きしめたんだ。
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