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番外編
ほのぼの日常編2 くもさんはともだち55(蜘蛛視点)
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「ダニエラ、ロニーを連れて来たよ」
まだ罪を犯していない第一王子を排除するのが駄目なら、蜘蛛の分身を常時あの男に張り付かせておくのは駄目だろうか。その提案をしようとしたところで扉が開き主とロニーが部屋に入って来てしまった。
ダニエラの周囲には常に誰かがいるから、込み入った話を人払いせずに出来る機会は少ないのだが残念だ。
主にダニエラの不安を話すと大事になりそうだし、不安の理由も話さないといけなくなる。
今はまだ子供達を王宮に連れて行く事もないから、マチルディーダが六歳になり国王との謁見がある年まで考えていけばいいだろう。
第一王子の『ダニエラより夫に似ている娘なんて』の失言に激怒した父上殿は、ダニエラと子供達を理由なく王宮に連れてこないと宣言しているから、国王も安易にダニエラ達を呼び出せないだろうからまだ時間はある筈だ。
ダニエラは主の姿を見てすぐに気持ちを切り替えたのか、蜘蛛に微笑んでみせた後はロニーに意識を移してしまった。
「ロニー、リボンタイが曲がっているわ」
「お義母様、ありがとうございます」
ダニエラの前に近付いてきたロニーは、大人しくダニエラに服装を整えられている。
どちらかといえば普段飾り気の無い服装を好んでいるロニーだが今日は大魔絹を惜しげもなく使って仕立てた礼服を着ている。
これはダニエラがこの日の為に用意したものだ。
蜘蛛の糸を織った布は大魔絹と呼ばれていて、高級品らしい。
ネルツ領の森には蜘蛛の子達が沢山住んでいて、常時大量の糸を吐き出しているから今やネルツ領は大魔絹の産地として有名になっている。ダニエラや子供達の服はすべで大きい魔絹製だし、ダニエラが用意したロニーの服も同じく大魔絹で揃えてある。
その中でもこの礼服は力を入れて仕立てたものだ。
華美な飾りは無く、シャツの胸元を幅広のリボンタイで結び、紺色の丈の短い上着と膝丈のズボンというものだが、大魔絹特有の上品な艶は蜘蛛が胸を張って自慢できる一品だ。
「とても良く似合っているわ、ロニー」
「ありがとうございます。お義母様」
「ダニエラ」
「ディーン今日何度も言っているけれど、とても素敵よ。ディーンとロニー二人共とても似合っているわ」
「ありがとうございます。お義母様」
「ダニエラに褒めて貰えて嬉しいよ。何て言うか気恥ずかしいものがあるけれど」
ダニエラは無邪気に喜んでいるが、主とロニーは居心地が悪そうに互いを見ている。
「ダニエラ、揃いの服というのはどうなんだ」
「あらくぅちゃん、今日はこれから養父になるとはいえロニーが初めて他家の人の前に出るのよ。父親と揃いの服を着るのは当然でしょう?」
「そうなのか?」
そんな貴族の仕来りを蜘蛛は知らない。
ダニエラは主とロニーの礼服を揃いで仕立てていた。
主はリボンタイではなくクラバットで、ロニーのズボンは膝丈だ。それ以外はほぼ同じと言っていい。
ちらりと応接室に視線を向けると、父上殿とニール様はどちらも略礼服を着ているが揃いにしている感じはない。ブレガ侯爵は厳めしい礼服で左胸に勲章まで着けている。
「そうなのよ。男の子はね父親と揃いの礼服を着て六歳の謁見の式に出るの。お兄様は生後半年になる前に王宮に呼ばれてしまったから初めての揃いの礼服が不本意な出来だったとお母様は今でも言っている位、最初の礼服というのは大切なのよ」
「僕がお義父様と揃いだなんて、ルカ―リオがいるのに。僕が先になんて」
ダニエラの説明に、ロニーの顔が青くなる。
主の息子はルカ―リオだけだが、ダニエラとしてはロニーも本当の息子として扱いたいのだろう。。
「あら、ロニーは私達の子なのだから当たり前でしょう。これから先はブレガ侯爵が養父となるけれど、それでも私達はあなたの親なの。それは忘れないで」
「……お義母様」
ロニーの目に涙が浮かぶ。
「ロニー」
「はい、お義父様」
「私は成人の式で後見人であるウーゴ叔父上と式に参列した。揃いの礼服を仕立てて下さったのも叔父上だ」
そう言えばそうだった。
蜘蛛はあの頃王家の森にいたが、その話は魔法師団の者達から聞いた。
主の成人の式は、主の後見人の一人魔法師団長が主の父代わりとして参列してくれたのだ。
魔法師団長と揃いの礼服、だがそれだけでは説明が足りないぞ主。
「主、それでは言葉が足りないだろう。正しくは父上殿とニール様と魔法師団長と揃いだっただ」
「まあ、そうなの? 知らなかったわ」
蜘蛛の指摘に主は照れた様な顔をしながらこちらを睨み、ダニエラは驚いた様な声を上げる。
「蜘蛛、父上殿とニール兄上は厳密には揃いとは言わないだろう。色が違っていたのだから」
「それは主が恐れ多いと言ったんだろう?」
主の実の両親は主の礼服を用意する等考えもしていなかったから、ニール様達の好意がなければ主は惨めに制服を着て参列する事になっただろう。
それを考えると、ニール様達にどれだけ感謝しても足りないんだ。
まだ罪を犯していない第一王子を排除するのが駄目なら、蜘蛛の分身を常時あの男に張り付かせておくのは駄目だろうか。その提案をしようとしたところで扉が開き主とロニーが部屋に入って来てしまった。
ダニエラの周囲には常に誰かがいるから、込み入った話を人払いせずに出来る機会は少ないのだが残念だ。
主にダニエラの不安を話すと大事になりそうだし、不安の理由も話さないといけなくなる。
今はまだ子供達を王宮に連れて行く事もないから、マチルディーダが六歳になり国王との謁見がある年まで考えていけばいいだろう。
第一王子の『ダニエラより夫に似ている娘なんて』の失言に激怒した父上殿は、ダニエラと子供達を理由なく王宮に連れてこないと宣言しているから、国王も安易にダニエラ達を呼び出せないだろうからまだ時間はある筈だ。
ダニエラは主の姿を見てすぐに気持ちを切り替えたのか、蜘蛛に微笑んでみせた後はロニーに意識を移してしまった。
「ロニー、リボンタイが曲がっているわ」
「お義母様、ありがとうございます」
ダニエラの前に近付いてきたロニーは、大人しくダニエラに服装を整えられている。
どちらかといえば普段飾り気の無い服装を好んでいるロニーだが今日は大魔絹を惜しげもなく使って仕立てた礼服を着ている。
これはダニエラがこの日の為に用意したものだ。
蜘蛛の糸を織った布は大魔絹と呼ばれていて、高級品らしい。
ネルツ領の森には蜘蛛の子達が沢山住んでいて、常時大量の糸を吐き出しているから今やネルツ領は大魔絹の産地として有名になっている。ダニエラや子供達の服はすべで大きい魔絹製だし、ダニエラが用意したロニーの服も同じく大魔絹で揃えてある。
その中でもこの礼服は力を入れて仕立てたものだ。
華美な飾りは無く、シャツの胸元を幅広のリボンタイで結び、紺色の丈の短い上着と膝丈のズボンというものだが、大魔絹特有の上品な艶は蜘蛛が胸を張って自慢できる一品だ。
「とても良く似合っているわ、ロニー」
「ありがとうございます。お義母様」
「ダニエラ」
「ディーン今日何度も言っているけれど、とても素敵よ。ディーンとロニー二人共とても似合っているわ」
「ありがとうございます。お義母様」
「ダニエラに褒めて貰えて嬉しいよ。何て言うか気恥ずかしいものがあるけれど」
ダニエラは無邪気に喜んでいるが、主とロニーは居心地が悪そうに互いを見ている。
「ダニエラ、揃いの服というのはどうなんだ」
「あらくぅちゃん、今日はこれから養父になるとはいえロニーが初めて他家の人の前に出るのよ。父親と揃いの服を着るのは当然でしょう?」
「そうなのか?」
そんな貴族の仕来りを蜘蛛は知らない。
ダニエラは主とロニーの礼服を揃いで仕立てていた。
主はリボンタイではなくクラバットで、ロニーのズボンは膝丈だ。それ以外はほぼ同じと言っていい。
ちらりと応接室に視線を向けると、父上殿とニール様はどちらも略礼服を着ているが揃いにしている感じはない。ブレガ侯爵は厳めしい礼服で左胸に勲章まで着けている。
「そうなのよ。男の子はね父親と揃いの礼服を着て六歳の謁見の式に出るの。お兄様は生後半年になる前に王宮に呼ばれてしまったから初めての揃いの礼服が不本意な出来だったとお母様は今でも言っている位、最初の礼服というのは大切なのよ」
「僕がお義父様と揃いだなんて、ルカ―リオがいるのに。僕が先になんて」
ダニエラの説明に、ロニーの顔が青くなる。
主の息子はルカ―リオだけだが、ダニエラとしてはロニーも本当の息子として扱いたいのだろう。。
「あら、ロニーは私達の子なのだから当たり前でしょう。これから先はブレガ侯爵が養父となるけれど、それでも私達はあなたの親なの。それは忘れないで」
「……お義母様」
ロニーの目に涙が浮かぶ。
「ロニー」
「はい、お義父様」
「私は成人の式で後見人であるウーゴ叔父上と式に参列した。揃いの礼服を仕立てて下さったのも叔父上だ」
そう言えばそうだった。
蜘蛛はあの頃王家の森にいたが、その話は魔法師団の者達から聞いた。
主の成人の式は、主の後見人の一人魔法師団長が主の父代わりとして参列してくれたのだ。
魔法師団長と揃いの礼服、だがそれだけでは説明が足りないぞ主。
「主、それでは言葉が足りないだろう。正しくは父上殿とニール様と魔法師団長と揃いだっただ」
「まあ、そうなの? 知らなかったわ」
蜘蛛の指摘に主は照れた様な顔をしながらこちらを睨み、ダニエラは驚いた様な声を上げる。
「蜘蛛、父上殿とニール兄上は厳密には揃いとは言わないだろう。色が違っていたのだから」
「それは主が恐れ多いと言ったんだろう?」
主の実の両親は主の礼服を用意する等考えもしていなかったから、ニール様達の好意がなければ主は惨めに制服を着て参列する事になっただろう。
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