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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑29(トニエ視点)
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留学した国での学生生活は、思っていたよりも順調に日々過ごせている。
そう思っていた昨日までの自分、ロマーノ・トニエの考えの甘さを笑ってやりたい。
今日はついてないいや神に見放された日という奴なのだろうと、私は「冒険者として剣術の見本を」と上級組の剣術の授業に呼び出された時に感じたがそれが間違いでは無かったと、今目の前の光景を見つめながら思う。
私の家はモロウールリ国で子爵位を賜っている下級貴族だ。
一族の殆どが薬師か錬金術師という変わった家系に生まれた私は幼い頃から薬師と錬金術師の修行に明け暮れ、その合間に冒険者としての修行、さらに将来の領主になるための勉強をしていた。
私は領主の勉強より薬師の勉強が好きだった。
勿論嫡男として生まれた自分が将来トニエ領を治めるのは決定事項、その責任を疎かにするつもりはない。だが私の父はまだまだ働き盛りだから私はもっともっと学びたい。
その思いで学校卒業後にこの国に留学を決めたのは、この国独自の薬の製法を学びたかったのと、魔法陣を極めたかったからだ。
私は目立たぬように大人しく平和に留学生活を満喫し望みの知識を得るのを楽しみにしているだけなのに、なぜ剣術の見本を私が見せないといけなくなった。
しかも上級貴族の子供ばかりの授業で、それを行うのは少々どころかだいぶ気が進まなかった。
渋々鍛錬場に向かい、終始控えめな態度で見本を終わらせたまでは良かったが、なぜか昼休みにマーニ先生の部屋に呼ばれた。
そこで突然この国の第二王子殿下からの質問に答えることになり、落ち着いて質問に答えた筈の私は、一番やってはいけないことをしたと後々気がついてしまった。
私は治癒師でもない人、しかも魔力を使うことに慣れてなさそうな子どもにうっかり魔力譲渡という治療方法を教えてしまったのだ。
子供が薬を手に入れるには、大人に頼む必要がある。相手は第二王子殿下、自分で薬師に交渉し薬を求めたりはしないというより出来ないだろう。だけど魔力譲渡は魔法の勉強を少しでもしていれば子供でも簡単に出来る。
つまり、試そうと思えば簡単に出来てしまう。
予想外の王族との会談に冷静を欠いていた私は、自分の失敗に動揺しその上マーニ先生からこの国では魔力譲渡は婚姻の儀式の時位しかしないものと聞かされて血の気が引いた。
私はなんということを王族に教えてしまったのか。
これを知られたら不敬罪で処刑されかねない、だが後悔してももう遅い。
処刑覚悟で王宮に行くことをマーニ先生に告げれば、先生は私も悪かったと同行を決めてくれた。
先生と共に王宮に向かい、婚約者候補とお茶会をしている途中の王太子殿下に時間を頂き経緯を伝えている途中、陛下の侍従が王太子殿下を呼びに来た。
そして今に至る。
私は平和に留学生活を満喫する筈だったのに、何故かいまこの国の国王陛下の私的な部屋で陛下と王子殿下お二人を前にしている。
神に見放された日だ、私にとって今日はまさしくそれだ。
内心の絶望を表に出さない様に気を付けながら、私は冷静にと自分に言い聞かせながら魔力回復薬を飲んだ第二王子殿下の顔を観察した。
「殿下、ご気分はいかがでしょう」
ベッドの上で体を起こしてこちらを見ている第二王子殿下は、今日学校でお会いした時よりやつれている様に見える。それは魔力切れを起こしたからだろうが、そのお姿は煽情的過ぎて目に毒だ。
ベッドの傍にいらっしゃる王太子殿下も、ソファーに座っていらっしゃる陛下も美形ではあるけれど、第二王子殿下の美しさとは方向が違う気がする。まだ成長期途中だからなのか、痩せ型というより華奢といった方が良い体つきで女性的ではないのに妙な色気がある方だと思う。
同学年にいらっしゃる第二王子殿下は女神の化身と言われる程に美しい方で、一目見たら誰でも魅了されてしまうのだと噂されていた。
そうは言っても男性であるのだからと軽く考えていた私は、噂以上の外見に驚き過ぎて薬師として絶対にしてはいけない失敗をしてしまったのだ。
「急に体が楽になった。この薬を君が作ったのか素晴らしく腕がいいのだね」
綺麗すぎるほど綺麗な方は、心まで綺麗なのだと思う。
王族としてどうなのかと思うが、平伏したくなるほどの眩しい笑顔で私を褒めてくれるのだから。
「恐れ多いお言葉にございます」
第二王子殿下が私を褒めた途端、その傍に立つ王太子殿下から殺気を向けられすぐさま頭を下げる。
余計なことを第二王子殿下に教えて、命の危険に晒したのだから処刑されても仕方がない。
国には戻れないかもしれない、と私は内心覚悟を決めていた。
「君は治癒師では無く薬師だったね」
「はい。私は薬師であり錬金術師でもあります」
「そうか、君が教えてくれた日薬草? あれは誰でも育てられるものなのかな」
「はい、魔素が濃い場所であれば簡単に育てられます」
視線を動かさない様に顔を下に向け、答える。
第二王子殿下が日薬草を使いたい相手は、ソファーに座っていらっしゃる陛下なのだろう。
背筋を伸ばし座っていらっしゃるが、顔色が悪いし離れた場所からも肌がかさついているのが分かるし、白目の部分が黄色く濁っているし、爪の色も悪い。
第二王子殿下が魔力切れを起こすほど魔力譲渡した相手は陛下なのだろうが、それだけの魔力を譲渡されて尚この状態というのは何かの病……。
薬師としての失敗だけでなく、それに気がついてしまった私は生きてこの部屋を出られないかもしれない。
「そう、ならば問題は一刻で使えなくなるという点」
「デルロイ何を言っている」
「とても体に良い薬草についてです。兄上は日薬草という薬草をご存知ですか?」
「知っている。上級の体力回復に含まれる貴重な薬草だろう」
王太子殿下は博識らしい。
日薬草を知っていても、それが何の薬に使われるものか知らない者が殆どだろうに考えるそぶりもなく第二王子殿下に即答していらっしゃる。
「兄上は凄いですね! 私は今日教えてもらったばかりです」
第二王子殿下は嬉しそうに王太子殿下を褒めると、少しだけ殺気が和らぎ呼吸が楽になる。
こんな恐ろしい殺気、魔物と対峙しても感じたことがない。
いいや、相手が魔物の方がどれだけマシだろう。魔物相手なら思う存分剣を振るうことが出来るが王族相手にそんな馬鹿な真似は出来ないのだから。
「そうか、それで日薬草をどうする」
「はい、第二王子殿下は病気まではいかないものの疲労が酷い方に薬以外で良いものをとお尋ねでした。日薬草は栄養豊富な薬草でございますので提案させて頂きました」
「なるほど、他には」
「はい、魔物肉、迷宮産の野菜を姿が無くなるまで煮込んだもの、虹のユニコーンのたてがみを織った布、ユニコーンの魔石等についてお話しました。けれどこれらは体力を回復するためのもの、魔力の回復はあまり期待できませんんので、私の国ではそれなりに広まっている治療方法である魔力譲渡についてもお話致しました」
虹のユニコーンのたてがみを織った布なんて、貴重過ぎるが王族なら持っているかもしれない。
何せ虹のユニコーンは、めったに出てこないし狩るのが大変なのだ。
私は過去に迷宮で何度か狩った経験があるだけだ。
「虹のユニコーンのたてがみの織物に体力回復の効果があるのか」
「はい。たてがみを身に着けるだけでも効果はありますが、織物にして例えば寝具としたり天蓋を覆う布に使うことで眠っている間に体力回復が出来ます。このたてがみは寝ている間の方が効果が出やすいと言わているのです」
他国の者である私が知ってはいけないことを知ってしまったのだから、命は捨てたと思っていた方がいい。
だが、薬師として私は患者を前に逃げ出すわけにはいかない。
少しでも患者が良くなるのなら、私の知識はすべてさらけ出そう。
そう心に決めて、王太子殿下に話し続けた。
※※※※※※
え、ダニエラパパこんなのなの? と驚いている読者の方がいらっしゃるかと思うのですが、この頃のデルロイさんは世間知らずの王子なのです。
ここから決心して今のダニエラパパになるのです。
十五歳の世間知らずな箱入り王子が今のダニエラパパなので、えええっとドン引きされる可能性もあるかと思いちょっと心配している作者です。
見た目で言えば、十五歳のデルロイ様は、綺麗、可愛い、華奢、儚い。コンプリートしています。
けれど性格は、俺様で、本人的には兄上を超えて成長したい!! (キリッ)です(笑)。
思った以上に長引いていますが、今後もお付き合い頂ければ幸いです。
そう思っていた昨日までの自分、ロマーノ・トニエの考えの甘さを笑ってやりたい。
今日はついてないいや神に見放された日という奴なのだろうと、私は「冒険者として剣術の見本を」と上級組の剣術の授業に呼び出された時に感じたがそれが間違いでは無かったと、今目の前の光景を見つめながら思う。
私の家はモロウールリ国で子爵位を賜っている下級貴族だ。
一族の殆どが薬師か錬金術師という変わった家系に生まれた私は幼い頃から薬師と錬金術師の修行に明け暮れ、その合間に冒険者としての修行、さらに将来の領主になるための勉強をしていた。
私は領主の勉強より薬師の勉強が好きだった。
勿論嫡男として生まれた自分が将来トニエ領を治めるのは決定事項、その責任を疎かにするつもりはない。だが私の父はまだまだ働き盛りだから私はもっともっと学びたい。
その思いで学校卒業後にこの国に留学を決めたのは、この国独自の薬の製法を学びたかったのと、魔法陣を極めたかったからだ。
私は目立たぬように大人しく平和に留学生活を満喫し望みの知識を得るのを楽しみにしているだけなのに、なぜ剣術の見本を私が見せないといけなくなった。
しかも上級貴族の子供ばかりの授業で、それを行うのは少々どころかだいぶ気が進まなかった。
渋々鍛錬場に向かい、終始控えめな態度で見本を終わらせたまでは良かったが、なぜか昼休みにマーニ先生の部屋に呼ばれた。
そこで突然この国の第二王子殿下からの質問に答えることになり、落ち着いて質問に答えた筈の私は、一番やってはいけないことをしたと後々気がついてしまった。
私は治癒師でもない人、しかも魔力を使うことに慣れてなさそうな子どもにうっかり魔力譲渡という治療方法を教えてしまったのだ。
子供が薬を手に入れるには、大人に頼む必要がある。相手は第二王子殿下、自分で薬師に交渉し薬を求めたりはしないというより出来ないだろう。だけど魔力譲渡は魔法の勉強を少しでもしていれば子供でも簡単に出来る。
つまり、試そうと思えば簡単に出来てしまう。
予想外の王族との会談に冷静を欠いていた私は、自分の失敗に動揺しその上マーニ先生からこの国では魔力譲渡は婚姻の儀式の時位しかしないものと聞かされて血の気が引いた。
私はなんということを王族に教えてしまったのか。
これを知られたら不敬罪で処刑されかねない、だが後悔してももう遅い。
処刑覚悟で王宮に行くことをマーニ先生に告げれば、先生は私も悪かったと同行を決めてくれた。
先生と共に王宮に向かい、婚約者候補とお茶会をしている途中の王太子殿下に時間を頂き経緯を伝えている途中、陛下の侍従が王太子殿下を呼びに来た。
そして今に至る。
私は平和に留学生活を満喫する筈だったのに、何故かいまこの国の国王陛下の私的な部屋で陛下と王子殿下お二人を前にしている。
神に見放された日だ、私にとって今日はまさしくそれだ。
内心の絶望を表に出さない様に気を付けながら、私は冷静にと自分に言い聞かせながら魔力回復薬を飲んだ第二王子殿下の顔を観察した。
「殿下、ご気分はいかがでしょう」
ベッドの上で体を起こしてこちらを見ている第二王子殿下は、今日学校でお会いした時よりやつれている様に見える。それは魔力切れを起こしたからだろうが、そのお姿は煽情的過ぎて目に毒だ。
ベッドの傍にいらっしゃる王太子殿下も、ソファーに座っていらっしゃる陛下も美形ではあるけれど、第二王子殿下の美しさとは方向が違う気がする。まだ成長期途中だからなのか、痩せ型というより華奢といった方が良い体つきで女性的ではないのに妙な色気がある方だと思う。
同学年にいらっしゃる第二王子殿下は女神の化身と言われる程に美しい方で、一目見たら誰でも魅了されてしまうのだと噂されていた。
そうは言っても男性であるのだからと軽く考えていた私は、噂以上の外見に驚き過ぎて薬師として絶対にしてはいけない失敗をしてしまったのだ。
「急に体が楽になった。この薬を君が作ったのか素晴らしく腕がいいのだね」
綺麗すぎるほど綺麗な方は、心まで綺麗なのだと思う。
王族としてどうなのかと思うが、平伏したくなるほどの眩しい笑顔で私を褒めてくれるのだから。
「恐れ多いお言葉にございます」
第二王子殿下が私を褒めた途端、その傍に立つ王太子殿下から殺気を向けられすぐさま頭を下げる。
余計なことを第二王子殿下に教えて、命の危険に晒したのだから処刑されても仕方がない。
国には戻れないかもしれない、と私は内心覚悟を決めていた。
「君は治癒師では無く薬師だったね」
「はい。私は薬師であり錬金術師でもあります」
「そうか、君が教えてくれた日薬草? あれは誰でも育てられるものなのかな」
「はい、魔素が濃い場所であれば簡単に育てられます」
視線を動かさない様に顔を下に向け、答える。
第二王子殿下が日薬草を使いたい相手は、ソファーに座っていらっしゃる陛下なのだろう。
背筋を伸ばし座っていらっしゃるが、顔色が悪いし離れた場所からも肌がかさついているのが分かるし、白目の部分が黄色く濁っているし、爪の色も悪い。
第二王子殿下が魔力切れを起こすほど魔力譲渡した相手は陛下なのだろうが、それだけの魔力を譲渡されて尚この状態というのは何かの病……。
薬師としての失敗だけでなく、それに気がついてしまった私は生きてこの部屋を出られないかもしれない。
「そう、ならば問題は一刻で使えなくなるという点」
「デルロイ何を言っている」
「とても体に良い薬草についてです。兄上は日薬草という薬草をご存知ですか?」
「知っている。上級の体力回復に含まれる貴重な薬草だろう」
王太子殿下は博識らしい。
日薬草を知っていても、それが何の薬に使われるものか知らない者が殆どだろうに考えるそぶりもなく第二王子殿下に即答していらっしゃる。
「兄上は凄いですね! 私は今日教えてもらったばかりです」
第二王子殿下は嬉しそうに王太子殿下を褒めると、少しだけ殺気が和らぎ呼吸が楽になる。
こんな恐ろしい殺気、魔物と対峙しても感じたことがない。
いいや、相手が魔物の方がどれだけマシだろう。魔物相手なら思う存分剣を振るうことが出来るが王族相手にそんな馬鹿な真似は出来ないのだから。
「そうか、それで日薬草をどうする」
「はい、第二王子殿下は病気まではいかないものの疲労が酷い方に薬以外で良いものをとお尋ねでした。日薬草は栄養豊富な薬草でございますので提案させて頂きました」
「なるほど、他には」
「はい、魔物肉、迷宮産の野菜を姿が無くなるまで煮込んだもの、虹のユニコーンのたてがみを織った布、ユニコーンの魔石等についてお話しました。けれどこれらは体力を回復するためのもの、魔力の回復はあまり期待できませんんので、私の国ではそれなりに広まっている治療方法である魔力譲渡についてもお話致しました」
虹のユニコーンのたてがみを織った布なんて、貴重過ぎるが王族なら持っているかもしれない。
何せ虹のユニコーンは、めったに出てこないし狩るのが大変なのだ。
私は過去に迷宮で何度か狩った経験があるだけだ。
「虹のユニコーンのたてがみの織物に体力回復の効果があるのか」
「はい。たてがみを身に着けるだけでも効果はありますが、織物にして例えば寝具としたり天蓋を覆う布に使うことで眠っている間に体力回復が出来ます。このたてがみは寝ている間の方が効果が出やすいと言わているのです」
他国の者である私が知ってはいけないことを知ってしまったのだから、命は捨てたと思っていた方がいい。
だが、薬師として私は患者を前に逃げ出すわけにはいかない。
少しでも患者が良くなるのなら、私の知識はすべてさらけ出そう。
そう心に決めて、王太子殿下に話し続けた。
※※※※※※
え、ダニエラパパこんなのなの? と驚いている読者の方がいらっしゃるかと思うのですが、この頃のデルロイさんは世間知らずの王子なのです。
ここから決心して今のダニエラパパになるのです。
十五歳の世間知らずな箱入り王子が今のダニエラパパなので、えええっとドン引きされる可能性もあるかと思いちょっと心配している作者です。
見た目で言えば、十五歳のデルロイ様は、綺麗、可愛い、華奢、儚い。コンプリートしています。
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