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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑54 (デルロイ視点)
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「……ボナクララ、彼女の足は本当に痛みがあったのかな」
エマニュエラを置いて、ボナクララと並んで歩きながら問うと「……痛みはあった様ですが、多分新しい靴のせいでしょう」と小声で言った。
「靴のせい?」
「ええ、あの靴は実は私のものなのです。先日出来上がり届いたばかりなのですが、自分の方が似合うと」
ボナクララの言葉に頭痛を感じ額を抑えたくなるけれど、エマニュエラのそういう行為は昔からだったと思い出した。
エマニュエラは一度気に入ったら、自分の物にするまで大騒ぎするらしい。
ボナクララの両親がいくら諫めても聞かないから、最後にボナクララが折れるのが常だ。
その筆頭が姉か妹かという、なんとも呆れることだ。
「エマニュエラ嬢は相変わらずだな、君を妹だと言い張っているし、気に入ればボナクララの靴も取り上げてしまうのだから」
本来はボナクララが姉だと届けを出していて、実際生まれもボナクララが数日早いらしいが、エマニュエラは自分が姉だと言い張り周囲にもそう言っているのだから呆れてしまう。
自分より劣るボナクララが姉なのは許せないのだそうだ。
「私に合わせ作った靴ですから、エマニュエラにはもしかすると少しキツイのかもしれませんが、新しいドレスと色味が似ていますから靴も新しいものが欲しかったのでしょう」
学校には通わず王宮通いし母上から様々なことを習う、と決めたのは兄上だ。
エマニュエラが学校に通って、諫められる者がいない環境で何をしでかすか心配だったのと、私に彼女が近づこうとするのを兄上が阻止したかったかららしい。
確かに王宮内でもこんな風に女官に嫌がらせするのだから、ボナクララと共に学校に入ったら何をしでかすか分からない。
「相変わらず困った人だな」
「ええ、本当に」
「ボナクララはいいのか? 靴、折角新しいものを作ったのに」
「……内緒にしてくださいませね、本当は二足作ってあるんです。エマニュエラが好みそうな一足はエマニュエラが届いたと気が付く様に届けて頂いたのですけれど、もう一足はこっそりと。さすがに一度私が履いたものは奪おうとしませんから」
にこりと笑い話すボナクララに、私達の前を歩いていた女官が堪え切れず吹き出し「し、失礼致しました」と立ち止まって私達に向かい謝罪した。
「いいよ。でも絶対に他言無用だ、お前達も心得ておきなさい」
「畏まりました」
女官と護衛と侍女が揃って頭を下げるが、皆の肩が震えている。
すでにエマニュエラの姿は遠くなり、私達の近くを歩いている者はいないけれど、私達がエマニュエラを笑っていた等噂になるのは困る。
「ボナクララは賢いな」
「今まで散々奪われ続けましたから、両親と一緒に考えましたのよ。エマニュエラはなぜか私が持っているものの方が良いものだと言うもので、好みの差はあれど優劣など無いというのに」
公爵家に出入りする仕立て屋達が質の悪いものを作るわけはないし、いくらエマニュエラの出生の秘密があるとしても二人を差別して育てる家ではない。
ボナクララの両親は、娘達に向ける愛情に偏りはあるのかもしれないが、それを表に出す様な二人ではないだろうし、他の兄弟もそれは同様だろう。
「ボナクララの兄君達は、エマニュエラ嬢との関わりは?」
「兄達は私にもエマニュエラにも同じ態度で接しています。エマニュエラは優秀ですから、色々注意はしても仲は悪くありません。話しをするのは楽しいと言っていますエマニュエラは政治の話等も出来ますから」
ボナクララの兄弟を思い出すと、長兄は公爵そっくりの性格で一見穏やかそうに見えて腹の中で何を考えているのか分からない人だし、次兄は剣術好きでさっぱりとした性格だ。二人はそれぞれイトコと婚約している。
私が言えたことでは無いが、王家の血筋は、それ以外には惹かれないのかもしれない。皆がイトコやハトコと縁を結んでいるのだから。
「そうか。エマニュエラは確かに賢い。優秀過ぎるほどに」
エマニュエラは見目麗しく優秀で、人の心を掴むのが上手い。これでもう少し心根が良ければ何の問題もないのだが、彼女は自分の機嫌だけが大切で目下の者はいくら虐げても良い存在だと考えている。
あの人がこのまま王太子妃になり、王妃になったらこの国はどうなってしまうのか。
父上のお体のため、守りの魔法陣のためとはいえ、それを考えるとため息しか出なかった。
エマニュエラを置いて、ボナクララと並んで歩きながら問うと「……痛みはあった様ですが、多分新しい靴のせいでしょう」と小声で言った。
「靴のせい?」
「ええ、あの靴は実は私のものなのです。先日出来上がり届いたばかりなのですが、自分の方が似合うと」
ボナクララの言葉に頭痛を感じ額を抑えたくなるけれど、エマニュエラのそういう行為は昔からだったと思い出した。
エマニュエラは一度気に入ったら、自分の物にするまで大騒ぎするらしい。
ボナクララの両親がいくら諫めても聞かないから、最後にボナクララが折れるのが常だ。
その筆頭が姉か妹かという、なんとも呆れることだ。
「エマニュエラ嬢は相変わらずだな、君を妹だと言い張っているし、気に入ればボナクララの靴も取り上げてしまうのだから」
本来はボナクララが姉だと届けを出していて、実際生まれもボナクララが数日早いらしいが、エマニュエラは自分が姉だと言い張り周囲にもそう言っているのだから呆れてしまう。
自分より劣るボナクララが姉なのは許せないのだそうだ。
「私に合わせ作った靴ですから、エマニュエラにはもしかすると少しキツイのかもしれませんが、新しいドレスと色味が似ていますから靴も新しいものが欲しかったのでしょう」
学校には通わず王宮通いし母上から様々なことを習う、と決めたのは兄上だ。
エマニュエラが学校に通って、諫められる者がいない環境で何をしでかすか心配だったのと、私に彼女が近づこうとするのを兄上が阻止したかったかららしい。
確かに王宮内でもこんな風に女官に嫌がらせするのだから、ボナクララと共に学校に入ったら何をしでかすか分からない。
「相変わらず困った人だな」
「ええ、本当に」
「ボナクララはいいのか? 靴、折角新しいものを作ったのに」
「……内緒にしてくださいませね、本当は二足作ってあるんです。エマニュエラが好みそうな一足はエマニュエラが届いたと気が付く様に届けて頂いたのですけれど、もう一足はこっそりと。さすがに一度私が履いたものは奪おうとしませんから」
にこりと笑い話すボナクララに、私達の前を歩いていた女官が堪え切れず吹き出し「し、失礼致しました」と立ち止まって私達に向かい謝罪した。
「いいよ。でも絶対に他言無用だ、お前達も心得ておきなさい」
「畏まりました」
女官と護衛と侍女が揃って頭を下げるが、皆の肩が震えている。
すでにエマニュエラの姿は遠くなり、私達の近くを歩いている者はいないけれど、私達がエマニュエラを笑っていた等噂になるのは困る。
「ボナクララは賢いな」
「今まで散々奪われ続けましたから、両親と一緒に考えましたのよ。エマニュエラはなぜか私が持っているものの方が良いものだと言うもので、好みの差はあれど優劣など無いというのに」
公爵家に出入りする仕立て屋達が質の悪いものを作るわけはないし、いくらエマニュエラの出生の秘密があるとしても二人を差別して育てる家ではない。
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「ボナクララの兄君達は、エマニュエラ嬢との関わりは?」
「兄達は私にもエマニュエラにも同じ態度で接しています。エマニュエラは優秀ですから、色々注意はしても仲は悪くありません。話しをするのは楽しいと言っていますエマニュエラは政治の話等も出来ますから」
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「そうか。エマニュエラは確かに賢い。優秀過ぎるほどに」
エマニュエラは見目麗しく優秀で、人の心を掴むのが上手い。これでもう少し心根が良ければ何の問題もないのだが、彼女は自分の機嫌だけが大切で目下の者はいくら虐げても良い存在だと考えている。
あの人がこのまま王太子妃になり、王妃になったらこの国はどうなってしまうのか。
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