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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑64 (ボナクララ視点)
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「え、エマニュエラが怪我?」
夕食を頂くため服を着替えていると、侍女がこそりと耳打ちした話に私は目を丸くした。
屋敷に戻った私は王宮から派遣されている教師の授業を受けた後で、お母様とお茶を頂きながら町でエマニュエラに似た女性の話をした。
エマニュエラがあんな地味なドレスを着てどこかに行く筈が無いし、そもそも彼女が侍女や騎士を連れずに町を歩くわけがない。
そう思っても胸のざわつきが収まらず、お母様に相談したのだ。
その結果、お母様の配下と私の侍女で今日のエマニュエラの行動を確認することに決まった。
「はい、エマニュエラお嬢様は先日王宮から屋敷に戻る途中に宝飾店に行かれたそうなのですが……」
侍女の話は、宝飾店に寄ったエマニュエラは、そこで知り合いの令嬢とその令嬢の婚約者と出会った時に、令嬢の家に遊びに来て欲しいと誘われていた。その約束の日が今日であり、エマニュエラは王宮での王太子妃教育が終った後で令嬢の家を訪ね、その帰りに馬車の事故が起きて怪我をしたというものだった。
怪我と言っても左手首を少し捻挫した程度だったらしいが、エマニュエラは屋敷に戻らずになぜか令嬢の婚約者の屋敷で治療を受け帰ってきたのだという。怪我をしたため当然町に出掛けてはいないらしい。
「エマニュエラは少し捻挫しただけなのね、馬車の事故でその程度で済んで良かったわ。そういえば御者やエマニュエラの侍女も怪我をしたのかしら? 馬車も壊れてしまったの?」
エマニュエラが王宮に行く時に使っている馬車は、王太子殿下から見事な馬と共に贈られたものだ。
婚約が決まって贈られたばかりの馬車を壊してしまったとあっては、どういう経緯で事故が起きたのか分からないけれど、エマニュエラが御者を責めるかもしれない。
「いいえ、馬車は全く壊れておらず、エマニュエラお嬢様以外は誰も怪我をしていないそうです」
エマニュエラが怪我をする程の事故なのに、馬車はどこも壊れていない。
そんな不思議な事故があるだろうか、私が考え込んでいると侍女も「おかしな話ですので、更に詳しく調べております」と言いながら私の髪を整えた。
「エマニュエラは今どうしているの」
「お部屋にいらっしゃいます。夕食はお部屋で取る様にと旦那様が」
「そう」
いつものエマニュエラなら、ほんの少しの怪我でも大袈裟に皆に話して同情を買おうとするだろうにどうしたのだろう。誰かの屋敷に招かれる場合、朝から大騒ぎで着飾るのというのに、お義母様の指示でいつものエマニュエラの装いに比べたら幾分地味な姿で王宮には通っているのに、その姿のまま友人であろう令嬢の屋敷に招かれるというのもいつもの彼女の行動とは思えない。
なんだか今日のエマニュエラはおかしいことだらけの様に思えてしまう。
「夕食の後、エマニュエラのお見舞いに行こうかしら」
「エマニュエラお嬢様は、少し気が立っていらっしゃるようですが……本当にお見舞いに」
私が常日頃からエマニュエラに八つ当たり気味に当たられていると知っている侍女は、心配そうに私に聞く。
確かに怪我をして気が立っているなら、私が部屋を訪ねただけでさらに機嫌が悪くなるだろう、けれど怪我の具合も心配だし馬車の事故なんて恐ろしい思いをしたのだから慰めてあげたいとも思う。
これは夕食の席でお母様達に相談した方がいいだろう。
「お母様達に確認して了承を得たら、エマニュエラの部屋にお見舞いに行くわ」
「はい……」
「どうしたの、何かあるの?」
「実はエマニュエラお嬢様がお帰りになった時、御者が馬の操り方を失敗したのが悪いのだと激昂されていて、同乗していたエマニュエラお嬢様の侍女と御者をその場で鞭打ちしようとし、丁度お帰りになった旦那様がエマニュエラ様を宥め部屋で落ち着かせるようにと」
歩ける程度の怪我のエマニュエラが、部屋に籠っているのはおかしいと感じたのは間違いではなさそうだった。
「エマニュエラは事故を起こした馬車で戻ったの?」
「いえ、令嬢の婚約者の家の馬車に送られて戻られたそうで、御者と侍女はエマニュエラお嬢様を心配して玄関で待っていたのだそうです」
「つまり、侍女すら伴わず、友人の令嬢の婚約者の家に行き治療を受けたということ?」
屋敷の者を伴わずに、怪我の治療のためとはいえ独身の男性の家を訪ね、その家の馬車に送られて戻ってすぐ使用人を鞭打とうとするなんて。
眩暈の様なものを感じながら、この話が出るであろう夕食の席に私は憂鬱な気持ちで向かうしかなかった。
夕食を頂くため服を着替えていると、侍女がこそりと耳打ちした話に私は目を丸くした。
屋敷に戻った私は王宮から派遣されている教師の授業を受けた後で、お母様とお茶を頂きながら町でエマニュエラに似た女性の話をした。
エマニュエラがあんな地味なドレスを着てどこかに行く筈が無いし、そもそも彼女が侍女や騎士を連れずに町を歩くわけがない。
そう思っても胸のざわつきが収まらず、お母様に相談したのだ。
その結果、お母様の配下と私の侍女で今日のエマニュエラの行動を確認することに決まった。
「はい、エマニュエラお嬢様は先日王宮から屋敷に戻る途中に宝飾店に行かれたそうなのですが……」
侍女の話は、宝飾店に寄ったエマニュエラは、そこで知り合いの令嬢とその令嬢の婚約者と出会った時に、令嬢の家に遊びに来て欲しいと誘われていた。その約束の日が今日であり、エマニュエラは王宮での王太子妃教育が終った後で令嬢の家を訪ね、その帰りに馬車の事故が起きて怪我をしたというものだった。
怪我と言っても左手首を少し捻挫した程度だったらしいが、エマニュエラは屋敷に戻らずになぜか令嬢の婚約者の屋敷で治療を受け帰ってきたのだという。怪我をしたため当然町に出掛けてはいないらしい。
「エマニュエラは少し捻挫しただけなのね、馬車の事故でその程度で済んで良かったわ。そういえば御者やエマニュエラの侍女も怪我をしたのかしら? 馬車も壊れてしまったの?」
エマニュエラが王宮に行く時に使っている馬車は、王太子殿下から見事な馬と共に贈られたものだ。
婚約が決まって贈られたばかりの馬車を壊してしまったとあっては、どういう経緯で事故が起きたのか分からないけれど、エマニュエラが御者を責めるかもしれない。
「いいえ、馬車は全く壊れておらず、エマニュエラお嬢様以外は誰も怪我をしていないそうです」
エマニュエラが怪我をする程の事故なのに、馬車はどこも壊れていない。
そんな不思議な事故があるだろうか、私が考え込んでいると侍女も「おかしな話ですので、更に詳しく調べております」と言いながら私の髪を整えた。
「エマニュエラは今どうしているの」
「お部屋にいらっしゃいます。夕食はお部屋で取る様にと旦那様が」
「そう」
いつものエマニュエラなら、ほんの少しの怪我でも大袈裟に皆に話して同情を買おうとするだろうにどうしたのだろう。誰かの屋敷に招かれる場合、朝から大騒ぎで着飾るのというのに、お義母様の指示でいつものエマニュエラの装いに比べたら幾分地味な姿で王宮には通っているのに、その姿のまま友人であろう令嬢の屋敷に招かれるというのもいつもの彼女の行動とは思えない。
なんだか今日のエマニュエラはおかしいことだらけの様に思えてしまう。
「夕食の後、エマニュエラのお見舞いに行こうかしら」
「エマニュエラお嬢様は、少し気が立っていらっしゃるようですが……本当にお見舞いに」
私が常日頃からエマニュエラに八つ当たり気味に当たられていると知っている侍女は、心配そうに私に聞く。
確かに怪我をして気が立っているなら、私が部屋を訪ねただけでさらに機嫌が悪くなるだろう、けれど怪我の具合も心配だし馬車の事故なんて恐ろしい思いをしたのだから慰めてあげたいとも思う。
これは夕食の席でお母様達に相談した方がいいだろう。
「お母様達に確認して了承を得たら、エマニュエラの部屋にお見舞いに行くわ」
「はい……」
「どうしたの、何かあるの?」
「実はエマニュエラお嬢様がお帰りになった時、御者が馬の操り方を失敗したのが悪いのだと激昂されていて、同乗していたエマニュエラお嬢様の侍女と御者をその場で鞭打ちしようとし、丁度お帰りになった旦那様がエマニュエラ様を宥め部屋で落ち着かせるようにと」
歩ける程度の怪我のエマニュエラが、部屋に籠っているのはおかしいと感じたのは間違いではなさそうだった。
「エマニュエラは事故を起こした馬車で戻ったの?」
「いえ、令嬢の婚約者の家の馬車に送られて戻られたそうで、御者と侍女はエマニュエラお嬢様を心配して玄関で待っていたのだそうです」
「つまり、侍女すら伴わず、友人の令嬢の婚約者の家に行き治療を受けたということ?」
屋敷の者を伴わずに、怪我の治療のためとはいえ独身の男性の家を訪ね、その家の馬車に送られて戻ってすぐ使用人を鞭打とうとするなんて。
眩暈の様なものを感じながら、この話が出るであろう夕食の席に私は憂鬱な気持ちで向かうしかなかった。
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