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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑63 (ボナクララ視点)
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「ボナクララお嬢様、エマニュエラお嬢様にはお薬のことはお話しない方がいいでしょうか」
授業が終わり屋敷に戻る為の馬車の中で侍女のヨナが確認してきたのは、先程トニエ様から頂いた塗り薬についてだった。
塗り薬の材料は陛下のお体の為に育てている日薬草という薬草だと説明を受けた。
日薬草は陛下のお体の為に育て、マーニ先生が密かに王宮内に運び陛下へ届けているのは公にはされていないし、専任の治癒師がついているにもかかわらず、他国の留学生が育てた薬草を陛下が使われているその理由を私は知らない。
私はデルロイ様と正式に婚約したけれど、王家の秘密をすべて教えられているわけではないし、それは王太子殿下の婚約者になったエマニュエラも同じだと思う。
エマニュエラに塗り薬の件を話したら、どうして私がそれを贈られたのかと詳しく聞いてくるかもしれない、そうなったらトニエ様が塗り薬を作り私の手にこれが渡るまでの経緯を話すまで私に付きまとうだろう。
エマニュエラは、自分の都合よく事実を捻じ曲げて理解する癖がある。
トニエ様から使った感想を聞きたいと言われて塗り薬を頂いた、その時デルロイ様が側にいて私に使ってみてはと勧めてくれていたのだと言っても、陛下の為の薬草を私が薬師に強要し自分の為の薬にしたと言い出しかねない。
「エマニュエラに知られずに、毎晩使えるかしら」
「私の知り合いの平民の薬師から譲り受けたことにするのは如何でしょうか」
購入したと言えば、エマニュエラは購入先を知りたがるだろう。でも相手が平民の薬師だと知ればどうだろう。
「わざわざ平民の薬師を探して邪魔しようとはしないかもしれないわね」
「はい。エマニュエラ様は仕立て屋の身分が低いのもご不満のご様子でしたから」
そう言えば、エマニュエラの婚約披露のドレスを仕立てる為に王宮から派遣されてきた仕立て屋はある男爵家の分家の者だったと言っていた。
私のドレスは王宮のお針子達が、デルロイ様の式服と共に仕立ててくれることになった。
王宮に勤めるお針子達は平民が多いけれど、王妃様や王女様方のドレスも陛下や王子殿下達の服だけでなく、王宮に仕える方々のお仕着せ等も仕立てているし、その技術はとても素晴らしい。
けれど、エマニュエラは彼らの殆どが平民であることが不満で、王都内に店を構える高級な仕立て屋が良いと言い始めた。
王妃様もたまに王宮のお針子以外の作るドレスを着ることはあるから、エマニュエラが選んだ仕立て屋とも付き合いがあり、すぐに我が家に仕立て屋を派遣してくれた。
だけれど、やってきたのが腕は良いと評判でも家が男爵家の分家の平民だったものだから、エマニュエラは機嫌を損ねてしまったのだ。
「王妃……お義母様から話を聞かされて、とても恥ずかしかったわ」
「ご自分で選んだ店だというのに、態度が悪いと追い出してしまわれたのですから」
侍女と顔を見合わせため息を吐く。
どうもエマニュエラは、その店にいる伯爵家の次女だという女性にドレスを仕立てさせたかったのだそうだが、人気のお針子らしく都合がつかなかったらしい。
「結局エマニュエラは希望の方にドレスを任せることになったのよね」
「はい。奥様が店に婚約披露のための特別なドレスだからと頼み込まれたようです」
「お母様、珍しいわね」
お母様は私とエマニュエラの躾に大変厳しい方ですから、エマニュエラの今回の我儘を通したのは以外でした。
「エマニュエラ様のご希望がとても凝った刺繍とレース飾りなのです。早く仕立て始めませんと間に合わなくなってしまいますから」
「それにしても……あら?」
あまりのエマニュエラの我儘に、頭痛を感じながら馬車の小窓から外を眺めると、今まさに話をしていたエマニュエラそっくりの女性と見知った顔が視界に飛び込んで来た。
「エマニュエラ?」
「お嬢様?」
思わず小窓に顔を近づけましたが、既に過ぎ去った後、戻るわけにもいかず「気の所為ね」と首を横に振った。
エマニュエラが地味なドレスを着て町中にいるわけが無いし、一緒にいたのエマニュエラとは接点が全く無い筈の男性に見えた。
「なんでもないわ、見間違いよ」
そう言いながら、胸の奥が妙にザワついて落ち着かない。
「ね、今日エマニュエラが何をしていたか、それとなく確認してもらえる?」
「畏まりました」
念の為の確認、エマニュエラはいつもの様に屋敷から王宮に行き、真っ直ぐ屋敷に戻ってきた。それが分かればこの気持ちは落ち着く筈。
だけど、侍女が調べてきたエマニュエラの行動は予想外のものだった。
授業が終わり屋敷に戻る為の馬車の中で侍女のヨナが確認してきたのは、先程トニエ様から頂いた塗り薬についてだった。
塗り薬の材料は陛下のお体の為に育てている日薬草という薬草だと説明を受けた。
日薬草は陛下のお体の為に育て、マーニ先生が密かに王宮内に運び陛下へ届けているのは公にはされていないし、専任の治癒師がついているにもかかわらず、他国の留学生が育てた薬草を陛下が使われているその理由を私は知らない。
私はデルロイ様と正式に婚約したけれど、王家の秘密をすべて教えられているわけではないし、それは王太子殿下の婚約者になったエマニュエラも同じだと思う。
エマニュエラに塗り薬の件を話したら、どうして私がそれを贈られたのかと詳しく聞いてくるかもしれない、そうなったらトニエ様が塗り薬を作り私の手にこれが渡るまでの経緯を話すまで私に付きまとうだろう。
エマニュエラは、自分の都合よく事実を捻じ曲げて理解する癖がある。
トニエ様から使った感想を聞きたいと言われて塗り薬を頂いた、その時デルロイ様が側にいて私に使ってみてはと勧めてくれていたのだと言っても、陛下の為の薬草を私が薬師に強要し自分の為の薬にしたと言い出しかねない。
「エマニュエラに知られずに、毎晩使えるかしら」
「私の知り合いの平民の薬師から譲り受けたことにするのは如何でしょうか」
購入したと言えば、エマニュエラは購入先を知りたがるだろう。でも相手が平民の薬師だと知ればどうだろう。
「わざわざ平民の薬師を探して邪魔しようとはしないかもしれないわね」
「はい。エマニュエラ様は仕立て屋の身分が低いのもご不満のご様子でしたから」
そう言えば、エマニュエラの婚約披露のドレスを仕立てる為に王宮から派遣されてきた仕立て屋はある男爵家の分家の者だったと言っていた。
私のドレスは王宮のお針子達が、デルロイ様の式服と共に仕立ててくれることになった。
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けれど、エマニュエラは彼らの殆どが平民であることが不満で、王都内に店を構える高級な仕立て屋が良いと言い始めた。
王妃様もたまに王宮のお針子以外の作るドレスを着ることはあるから、エマニュエラが選んだ仕立て屋とも付き合いがあり、すぐに我が家に仕立て屋を派遣してくれた。
だけれど、やってきたのが腕は良いと評判でも家が男爵家の分家の平民だったものだから、エマニュエラは機嫌を損ねてしまったのだ。
「王妃……お義母様から話を聞かされて、とても恥ずかしかったわ」
「ご自分で選んだ店だというのに、態度が悪いと追い出してしまわれたのですから」
侍女と顔を見合わせため息を吐く。
どうもエマニュエラは、その店にいる伯爵家の次女だという女性にドレスを仕立てさせたかったのだそうだが、人気のお針子らしく都合がつかなかったらしい。
「結局エマニュエラは希望の方にドレスを任せることになったのよね」
「はい。奥様が店に婚約披露のための特別なドレスだからと頼み込まれたようです」
「お母様、珍しいわね」
お母様は私とエマニュエラの躾に大変厳しい方ですから、エマニュエラの今回の我儘を通したのは以外でした。
「エマニュエラ様のご希望がとても凝った刺繍とレース飾りなのです。早く仕立て始めませんと間に合わなくなってしまいますから」
「それにしても……あら?」
あまりのエマニュエラの我儘に、頭痛を感じながら馬車の小窓から外を眺めると、今まさに話をしていたエマニュエラそっくりの女性と見知った顔が視界に飛び込んで来た。
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「お嬢様?」
思わず小窓に顔を近づけましたが、既に過ぎ去った後、戻るわけにもいかず「気の所為ね」と首を横に振った。
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