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番外編
兄の寵愛弟の思惑89
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「五歳と七歳、それから成人の時の占い結果も叔父上はご存知なのですか」
エマニュエラの占い結果を思えば、良い結果が出ている筈が無い。
「知っています。五歳の時は『我慢を覚え慈悲の心を育てなければ、幸いは指の間から零れ落ちていく』七歳の時は『愛情は奪い取るものではないと知れ』でした。そして成人の時は……」
エマニュエラとどちらが酷いだろうか、一瞬気が遠くなるのを感じながらジョバンニ叔父上の話の続きを待つ。
「成人の時は『己の欲だけを尊ぶ愚か者よ、己の行いで名を失いその身を焼かれても心から望むものは手に入らない。行いを悔いよ、心を清めよ』と」
「それは、占術師が彼女が処罰される未来をその場で見たとしか思えない」
占術師は本当にすべてを見るのだろうか、あまりにも当たり過ぎている占いに背筋が寒くなる。
「ええ、本当に」
「占術師にそこまで言われても、心を改めることはなかった? あれ、先程「彼女が生んだ子が国の守りを変えるっ切っ掛けになる」と占術師が陛下に言ったというのは?」
「その部分は彼女には伝えなかったそうです。あの人は、守りの魔法陣を否定した。こんな守り方は正しくないと、自分なら変えられると」
「正しくない?」
「ええ、王家の血を引く女性達の魔力を注ぐことが必須の守り、そんなものに頼っていたら国力が弱まると」
ジョバンニ叔父上が悲痛な表情で言う『国力が弱まる』の言葉に、私は兄上の告白を思い出す。
生まれて半年程で守りの魔法陣に兄上は『エマニュエラを自分の妻にし、将来王妃にしなければ守りの魔方陣は消えて無くなり、この国は魔物に呑まれ他国から攻め込まれる』と教えられたと言っていた。
兄上が生まれたばかりということは、当然私もボナクララもエマニュエラも生まれていない。
つまりまだエマニュエラの母親は魔法陣に何も手を加えていない頃だというのに、守りの魔法陣は兄上を魔法陣の間に呼びよせ未来に起こることを見せたのだ。
占術師の占いどころじゃない、人ではない魔法陣がまるで自分の意思があるかのように未来を教える相手を選び知恵を授けるなんて、私にその話をしたのが兄上でなければ嘘を吐かれたと疑うところだ。
「殿下?」
急に私が黙りこんでしまったのを不審に感じたのか、ジョバンニ叔父上がじぃっと私を見ながら呼ぶ。
「魔法使いとして力がどれだけあればそんな傲慢な考えが出るのでしょうと、つい呆れてしまいました。ジョバンニ叔父上には大変申し訳ありませんが、あのエマニュエラの母親だけのことはある」
兄上からの告白を言うわけにはいかないから、そう言って沈黙の理由をごまかす。
「傲慢、そうですね。それはエマニュエラとその母親を表すためにある様な言葉です」
「守りの魔法陣頼りではいけないことは、陛下だって危惧されていると思います。そうでなければ宮廷魔法使いや騎士団を国境近くに常駐させる理由がない」
「ええ、彼らは常に自身を鍛えています。この国を守る為に」
確かにこの国の王侯貴族も民達も、守りの魔法陣の力を過信しているところはあるのかもしれない。
トニエが私達を甘いと指摘する様に、他国よりだいぶ呑気に暮らしているのも事実なのかもしれない。
だからといって守りの魔方陣を正しくないと決めつけるのはおかしい、たった一人の考えで国の守りの仕組みを変えようなんて、許されることではない。
「エマニュエラの母親は、そんな傲慢な考えで自分を王妃だと紐付けしたのでしょうか」
「何を思ってそうしたのか、誰にも分からないでしょう。罪人は既にこの世にいないのですから」
「もし、彼女が生きていたらどうなっていたと思いますか」
王妃の母上が魔方陣にそうと認められていないせいで、王妃の魔力の肩代わりをしている父上の負担が大きくなっている。
王妃の魔力が魔方陣を動かす要で、魔方陣と紐付けした王妃が魔力を注いでいるのなら、ほんの僅かな魔力を皆で魔方陣に供給すればいいけれど、その要の魔力が今全く無い状態だから、必要魔力量が膨大なものになっているのだそうだ。
現在の魔方陣に王妃と紐付けされているのは、まだ王太子妃ですらないエマニュエラだ。
彼女は成人前だし、王太子妃になる儀式も終えていない身たから魔方陣の間には入ることは出来ない。
だから後数年は父上が耐えなければならないのだ。
「彼女が生きていたら、この国は滅んでいたかもしれません」
「どういうことですか」
「彼女の死後、彼女の部屋から魔方陣の研究資料が大量に出てきました。その資料の中に、予め魔方陣に紐付けしていた相手が魔力を魔方陣に注ぐと魔力だけでなく生命そのものまで全て奪い取るというものがあったのです」
「まさか魔方陣を書き換えて、それを行おうとした?」
あまりのことに、声が震えてしまう。
エマニュエラの母親は、なんて恐ろしいことを考えていたのか。
「それだけでなく資料には、まず自分を魔方陣に王妃と紐付け、その後順番に書き換えて行く予定が組まれていました」
「順番、今の話だけではなく?」
「はい、そこには任意の場所に魔物を召喚する、災害を発生させる等もあったのです。彼女はそれらを使いこの国の貴族達を脅しし従えようとしていた」
魔方陣に魔力を注ぐのは、主に王家の血を継ぐ女性達だ。
その女性達の命を脅かすものを魔方陣に組み込み排除した後で、自分が王妃として貴族達を牛耳るつもりだったのか。
そんなことをしていたら、本当に国は滅びていたかもしれない。
エマニュエラの占い結果を思えば、良い結果が出ている筈が無い。
「知っています。五歳の時は『我慢を覚え慈悲の心を育てなければ、幸いは指の間から零れ落ちていく』七歳の時は『愛情は奪い取るものではないと知れ』でした。そして成人の時は……」
エマニュエラとどちらが酷いだろうか、一瞬気が遠くなるのを感じながらジョバンニ叔父上の話の続きを待つ。
「成人の時は『己の欲だけを尊ぶ愚か者よ、己の行いで名を失いその身を焼かれても心から望むものは手に入らない。行いを悔いよ、心を清めよ』と」
「それは、占術師が彼女が処罰される未来をその場で見たとしか思えない」
占術師は本当にすべてを見るのだろうか、あまりにも当たり過ぎている占いに背筋が寒くなる。
「ええ、本当に」
「占術師にそこまで言われても、心を改めることはなかった? あれ、先程「彼女が生んだ子が国の守りを変えるっ切っ掛けになる」と占術師が陛下に言ったというのは?」
「その部分は彼女には伝えなかったそうです。あの人は、守りの魔法陣を否定した。こんな守り方は正しくないと、自分なら変えられると」
「正しくない?」
「ええ、王家の血を引く女性達の魔力を注ぐことが必須の守り、そんなものに頼っていたら国力が弱まると」
ジョバンニ叔父上が悲痛な表情で言う『国力が弱まる』の言葉に、私は兄上の告白を思い出す。
生まれて半年程で守りの魔法陣に兄上は『エマニュエラを自分の妻にし、将来王妃にしなければ守りの魔方陣は消えて無くなり、この国は魔物に呑まれ他国から攻め込まれる』と教えられたと言っていた。
兄上が生まれたばかりということは、当然私もボナクララもエマニュエラも生まれていない。
つまりまだエマニュエラの母親は魔法陣に何も手を加えていない頃だというのに、守りの魔法陣は兄上を魔法陣の間に呼びよせ未来に起こることを見せたのだ。
占術師の占いどころじゃない、人ではない魔法陣がまるで自分の意思があるかのように未来を教える相手を選び知恵を授けるなんて、私にその話をしたのが兄上でなければ嘘を吐かれたと疑うところだ。
「殿下?」
急に私が黙りこんでしまったのを不審に感じたのか、ジョバンニ叔父上がじぃっと私を見ながら呼ぶ。
「魔法使いとして力がどれだけあればそんな傲慢な考えが出るのでしょうと、つい呆れてしまいました。ジョバンニ叔父上には大変申し訳ありませんが、あのエマニュエラの母親だけのことはある」
兄上からの告白を言うわけにはいかないから、そう言って沈黙の理由をごまかす。
「傲慢、そうですね。それはエマニュエラとその母親を表すためにある様な言葉です」
「守りの魔法陣頼りではいけないことは、陛下だって危惧されていると思います。そうでなければ宮廷魔法使いや騎士団を国境近くに常駐させる理由がない」
「ええ、彼らは常に自身を鍛えています。この国を守る為に」
確かにこの国の王侯貴族も民達も、守りの魔法陣の力を過信しているところはあるのかもしれない。
トニエが私達を甘いと指摘する様に、他国よりだいぶ呑気に暮らしているのも事実なのかもしれない。
だからといって守りの魔方陣を正しくないと決めつけるのはおかしい、たった一人の考えで国の守りの仕組みを変えようなんて、許されることではない。
「エマニュエラの母親は、そんな傲慢な考えで自分を王妃だと紐付けしたのでしょうか」
「何を思ってそうしたのか、誰にも分からないでしょう。罪人は既にこの世にいないのですから」
「もし、彼女が生きていたらどうなっていたと思いますか」
王妃の母上が魔方陣にそうと認められていないせいで、王妃の魔力の肩代わりをしている父上の負担が大きくなっている。
王妃の魔力が魔方陣を動かす要で、魔方陣と紐付けした王妃が魔力を注いでいるのなら、ほんの僅かな魔力を皆で魔方陣に供給すればいいけれど、その要の魔力が今全く無い状態だから、必要魔力量が膨大なものになっているのだそうだ。
現在の魔方陣に王妃と紐付けされているのは、まだ王太子妃ですらないエマニュエラだ。
彼女は成人前だし、王太子妃になる儀式も終えていない身たから魔方陣の間には入ることは出来ない。
だから後数年は父上が耐えなければならないのだ。
「彼女が生きていたら、この国は滅んでいたかもしれません」
「どういうことですか」
「彼女の死後、彼女の部屋から魔方陣の研究資料が大量に出てきました。その資料の中に、予め魔方陣に紐付けしていた相手が魔力を魔方陣に注ぐと魔力だけでなく生命そのものまで全て奪い取るというものがあったのです」
「まさか魔方陣を書き換えて、それを行おうとした?」
あまりのことに、声が震えてしまう。
エマニュエラの母親は、なんて恐ろしいことを考えていたのか。
「それだけでなく資料には、まず自分を魔方陣に王妃と紐付け、その後順番に書き換えて行く予定が組まれていました」
「順番、今の話だけではなく?」
「はい、そこには任意の場所に魔物を召喚する、災害を発生させる等もあったのです。彼女はそれらを使いこの国の貴族達を脅しし従えようとしていた」
魔方陣に魔力を注ぐのは、主に王家の血を継ぐ女性達だ。
その女性達の命を脅かすものを魔方陣に組み込み排除した後で、自分が王妃として貴族達を牛耳るつもりだったのか。
そんなことをしていたら、本当に国は滅びていたかもしれない。
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