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落ち着かない私と初めてのお出掛け
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「はあぁ、カレンは大丈夫かしら」
慌ただしく日は過ぎて、とうとう顔合わせの日がやって来ました。
カレンは両親と共に王宮に向かいました。
今頃は昼食会を兼ねた顔合わせをしている最中です。
「今日のカレンはいつも以上に愛らしくて可愛くて、物語に出てくる妖精姫の様だったわ。あの外見なら少し何かやらかしても誤魔化せるとは思うのよ、だけど!」
刺繍をしても、お茶を頂いても落ち着かずに部屋の中をウロウロと歩いている私を、ディアス兄様は呆れて見ています。
「ここが領地なら気分転換に魔物狩りに行けるというのに、王都じゃ何も出来ないのが辛いわ」
「魔物狩りを気分転換にしようとする辺り、ジョーシーは豪胆過ぎるね」
「女らしくないと言いたいのね」
婚約者になっても、ディアス兄様は何も変わりません。
そのせいで私は内心苛々していて、ついでに心の中で兄様呼びをするのも止められません。
互いに婚約している意識になれていないのです。
「そんなに落ち着かないなら、どこかに出掛けようか」
「どこか?」
「カレンの婚約が発表されれば、ジョーシーもあちこちの家から茶会だ夜会だって招待が増えて忙しくなるだろ。それはつまり俺も同じってことだ。のんびり出掛けられるのも僅かじゃないのか」
言われて気が付きました。
私はカレンの希望で一緒に王都に来たのですから、自分の為に出掛ける等考えてもいなかったのです。
「これから一緒に出掛けて下さるのかしら?」
これが婚約後の初めてのお出掛け、二人だけのお出掛けだとディアス兄様は気が付いているのでしょうか。
反応が見たくて、わざと気取って尋ねればあっさりと頷かれてしまいました。
「じゃあ、国立植物園に行きたいわ。今は薔薇が沢山咲いているそうよ。異国風の喫茶室があって、その窓辺から丁度薔薇園が見渡せるらしいの」
「そうか、今から用意して出掛ければ丁度お茶を飲むにいい時間になるな」
「じゃあすぐに用意するわ」
私の返事にディアス兄様は片手を挙げて返事をし、その様子を見て慌ただしくメイド達が動き始めます。
その内の一人は裏庭の方へ向かったので、馬車の準備を言い付けに行ったのでしょう。
「どうしましょう。何を着たらいいかしら、黄色地に白いレースを重ねたドレスはどうかしら」
自室に向かいながら、私はメイドに話しかけました。
今言ったドレスは私のお気に入りです。
「植えられている物の枝などにスカートの裾が引っかかってしまう恐れもございますので、あのドレスは適さないかと思います」
「そうね。あれはスカートが膨らんでいるし植物園向きではないわね。長く歩くでしょうから、華奢な靴も良くないわね」
かといってあまりに地味なドレスも味気ない気がします。
「靴は踵がしっかりした編み上げの物がいいわね。あれに合わせていいのは白い襟の緑のドレスかしら」
襟と袖口が白く全体は緑色、スカート部分はスカートを重ねて膨らませるのでは無く、柔らかな生地を細かく沢山ヒダを取って体に沿うようになっています。
特徴は胸の辺りの切り替えに付けられたレースです。
レース編みの職人渾身の作で、とても凝った意匠なのです。
「髪は巻いて下ろし、横側だけ耳のあたりから細いリボンを編み込むのは如何でしょうか」
「そんな髪型したことがないわ。カレンなら似合うでしょうけれど可愛すぎないかしら」
私は華奢とは程遠い筋肉質な体つきですし、お世辞にも可愛らしい外見をしていませんし、書類仕事をするには長い髪を下ろしているのは邪魔になります。
ですから髪型は高い位置で一つに束ねてリボンを結ぶか、一つに三編みにし肩に垂らす程度です。
「僭越ですが、お嬢様のお顔立ちは可愛らしいというより美しいと申し上げた方が正しいかと存じますので、先程申し上げた髪型はカレンお嬢様の方がお似合いになると思われるのかもしれません」
今話しているメイドは王都の屋敷で働いている者で、日頃私付いている者ではありません。私付きの者達は皆私の好みを尊重しようとするので、こんなにはっきりとした意見を言うことはありません。
「ですが凛々しい顔立ちの美人なお嬢様が、敢えて優しげな髪型をすることで甘やかな雰囲気が追加されると思うのです」
「そういうものかしら」
部屋に入り一人がドレスを用意し、もう一人は鏡台の前で髪を巻く用意を始めました。
「お嬢様は婚約されたばかりですし、私もたまには甘やかなお姿も良いかと思いますわ」
「お前もそう言うの。分かったわじゃああなた達の好きなようにしなさい。でも時間を掛けるのは駄目よ。ディアスあ、待たせているのですからね」
メイド達の前でも兄様を付けそうになり、ギリギリで止めて微笑みました。
「ではまずお召し変えから致しましょう」
心なしメイド達の声がはずんでいるように感じました。
でも、私はそれ以上にこれからのお出掛けに、心がはずんでいたのです。
慌ただしく日は過ぎて、とうとう顔合わせの日がやって来ました。
カレンは両親と共に王宮に向かいました。
今頃は昼食会を兼ねた顔合わせをしている最中です。
「今日のカレンはいつも以上に愛らしくて可愛くて、物語に出てくる妖精姫の様だったわ。あの外見なら少し何かやらかしても誤魔化せるとは思うのよ、だけど!」
刺繍をしても、お茶を頂いても落ち着かずに部屋の中をウロウロと歩いている私を、ディアス兄様は呆れて見ています。
「ここが領地なら気分転換に魔物狩りに行けるというのに、王都じゃ何も出来ないのが辛いわ」
「魔物狩りを気分転換にしようとする辺り、ジョーシーは豪胆過ぎるね」
「女らしくないと言いたいのね」
婚約者になっても、ディアス兄様は何も変わりません。
そのせいで私は内心苛々していて、ついでに心の中で兄様呼びをするのも止められません。
互いに婚約している意識になれていないのです。
「そんなに落ち着かないなら、どこかに出掛けようか」
「どこか?」
「カレンの婚約が発表されれば、ジョーシーもあちこちの家から茶会だ夜会だって招待が増えて忙しくなるだろ。それはつまり俺も同じってことだ。のんびり出掛けられるのも僅かじゃないのか」
言われて気が付きました。
私はカレンの希望で一緒に王都に来たのですから、自分の為に出掛ける等考えてもいなかったのです。
「これから一緒に出掛けて下さるのかしら?」
これが婚約後の初めてのお出掛け、二人だけのお出掛けだとディアス兄様は気が付いているのでしょうか。
反応が見たくて、わざと気取って尋ねればあっさりと頷かれてしまいました。
「じゃあ、国立植物園に行きたいわ。今は薔薇が沢山咲いているそうよ。異国風の喫茶室があって、その窓辺から丁度薔薇園が見渡せるらしいの」
「そうか、今から用意して出掛ければ丁度お茶を飲むにいい時間になるな」
「じゃあすぐに用意するわ」
私の返事にディアス兄様は片手を挙げて返事をし、その様子を見て慌ただしくメイド達が動き始めます。
その内の一人は裏庭の方へ向かったので、馬車の準備を言い付けに行ったのでしょう。
「どうしましょう。何を着たらいいかしら、黄色地に白いレースを重ねたドレスはどうかしら」
自室に向かいながら、私はメイドに話しかけました。
今言ったドレスは私のお気に入りです。
「植えられている物の枝などにスカートの裾が引っかかってしまう恐れもございますので、あのドレスは適さないかと思います」
「そうね。あれはスカートが膨らんでいるし植物園向きではないわね。長く歩くでしょうから、華奢な靴も良くないわね」
かといってあまりに地味なドレスも味気ない気がします。
「靴は踵がしっかりした編み上げの物がいいわね。あれに合わせていいのは白い襟の緑のドレスかしら」
襟と袖口が白く全体は緑色、スカート部分はスカートを重ねて膨らませるのでは無く、柔らかな生地を細かく沢山ヒダを取って体に沿うようになっています。
特徴は胸の辺りの切り替えに付けられたレースです。
レース編みの職人渾身の作で、とても凝った意匠なのです。
「髪は巻いて下ろし、横側だけ耳のあたりから細いリボンを編み込むのは如何でしょうか」
「そんな髪型したことがないわ。カレンなら似合うでしょうけれど可愛すぎないかしら」
私は華奢とは程遠い筋肉質な体つきですし、お世辞にも可愛らしい外見をしていませんし、書類仕事をするには長い髪を下ろしているのは邪魔になります。
ですから髪型は高い位置で一つに束ねてリボンを結ぶか、一つに三編みにし肩に垂らす程度です。
「僭越ですが、お嬢様のお顔立ちは可愛らしいというより美しいと申し上げた方が正しいかと存じますので、先程申し上げた髪型はカレンお嬢様の方がお似合いになると思われるのかもしれません」
今話しているメイドは王都の屋敷で働いている者で、日頃私付いている者ではありません。私付きの者達は皆私の好みを尊重しようとするので、こんなにはっきりとした意見を言うことはありません。
「ですが凛々しい顔立ちの美人なお嬢様が、敢えて優しげな髪型をすることで甘やかな雰囲気が追加されると思うのです」
「そういうものかしら」
部屋に入り一人がドレスを用意し、もう一人は鏡台の前で髪を巻く用意を始めました。
「お嬢様は婚約されたばかりですし、私もたまには甘やかなお姿も良いかと思いますわ」
「お前もそう言うの。分かったわじゃああなた達の好きなようにしなさい。でも時間を掛けるのは駄目よ。ディアスあ、待たせているのですからね」
メイド達の前でも兄様を付けそうになり、ギリギリで止めて微笑みました。
「ではまずお召し変えから致しましょう」
心なしメイド達の声がはずんでいるように感じました。
でも、私はそれ以上にこれからのお出掛けに、心がはずんでいたのです。
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