26 / 123
これから
「私はお父様に手紙を書くけれど、ケネスはおじ様に何か知らせることはある?」
少し一人で考えたいと言うおばあ様を残し、おばあ様の侍女の案内で今晩ケネスが使う予定の客間に向かいました。
男性客向けの調度品で整えられた客間は、落ち着いた雰囲気で長距離の移動と先程の会話で心身共に疲れきった私達を出迎えてくれましたが、まだ休むわけにはいきませんでした。
「あー、そうだな。フローリアがどうしたいかによるかな」
私はお父様と手紙のやり取りが出来る魔道具を持っています。
この魔道具は、手紙を入れて魔道具に付いている魔石に魔力を込める事で発動し、対となった魔道具に手紙を送ります。
手紙を送るにも受け取るにも魔力が必要で、しかも元々魔道具に記憶させている魔力を持つ者しか上出来ませんし、対になる魔道具を持つ者同士で無ければ使えません。
つまり私がお父様とお母様にそれぞれ手紙を送りたい場合、私とお父様、私とお母様、それぞれ対になる魔道具が必要になりますが、手紙を送付する魔道具はとても高価なので、私はお父様向けのを持っているのみです。
「分かったわ。必要な時はお父様に送るからいつでも遠慮せずに言ってね」
「その時は遠慮なく頼むよ」
「いつでも遠慮なく。さて、手紙を書く前に少し落ち着きたいわね。何か軽く摘まめる物と紅茶をお願いでいるかしら」
案内してくれた侍女に告げると、優雅に一礼して部屋を出ていきました。
これで部屋の中は、私とケネス、ユウナの三人です。
「ユウナ」
「畏まりました。足音が聞こえたらすぐにお伝え致します」
「ありがとう」
部屋を案内してくれた侍女は、おばあ様との話の場には居なかった人です。
おばあ様付きの侍女ですから信用していいとは思いますが、詳細を知る人が少ない方がいいのは確かです。
用心するに越したことはありません。
「ケネス、私はもしお兄様が本当に王妃様に殺されたのなら、その罪は償わせたいわ」
「それは、そうだが」
「勿論侯爵家も領地も私自身も、皆の事も守った上での話よ。相討ちでは意味がないわ」
一言で言えば、今まで私は守られていただけです。
お兄様の死について何も知らず、お父様が用意して下さった沢山の魔道具に守られ、婚約破棄についてもお父様が無理を通して権利をもぎ取って下さったのです。
「侯爵領で魔道具作りが盛んなのは、私を守るためもあったと以前聞いたことがあるの。それは第三王子の婚約者だからではなく、王妃様から守る為だったのよね」
「そうだな、そう聞いている。フローリアには伝えていなかったが、おじさん達は常に王妃様からの刺客を気にしていたから」
「そうだったのね」
一番最初に私がお父様から贈られたのは、毒を中和する腕輪でした。
その後、毒を無効、呪いを術者に跳ね返す、物理的な攻撃から守る等、多種多様な魔道具が産み出され、最終的には手紙を送る魔道具まで完成させたのです。
数々の魔道具は、侯爵領の特産品となり領地を潤す要因となっています。
魔道具を専門に作る魔道具師と魔石に魔法を付与する付与師等を育成する為の組織を作り、様々な研究を行っているのも、元は私を守る魔道具が必要だったからだと、ケネスのお父様から聞いたのは学校に入学する前日でした。
『フローリアを守る為に作り始めた魔道具が、結果侯爵領の富を産み力を付けている。お前は自分の為に苦労を掛けたと思う必要はない。お前は私達の希望だ、お前が誰にも害される事なく健やかに育ち、大人になり幸せになる。私達はそう願っているのだから、それだけは覚えていて欲しい』
言われた時は意味が分からなかったけれど、あれは王妃様から害されず大人になれる様にと、そういう意味があったのでしょう。
「ねえ、ケネス。どうしたら王妃様に対抗できるかしら。お父様に伝えるだけじゃ駄目よ、何か私達で出来る事はないのかしら」
「対抗か」
「まずはフィリップ殿下のエミリアさんの噂を広めるとかどうでしょうか?」
「ユウナ?」
「貴族にも王都に住む平民にも、フィリップ殿下が浮気をして、相愛ならとお嬢様が泣く泣く身を引いて、心痛から体調を崩されているという、噂です」
ユウナは興奮したように頬を赤くしながら、話し続けます。
「お嬢様が身を引いたというのが大切です。そして今までどの位お嬢様が殿下に尽くしていたか、殿下がどれだけ酷い婚約者だったかも噂として流すんです」
「それは、学校では周知の事実だけれど」
「そうか、じゃあその後は殿下の性格は陛下と違いすぎる。本当に殿下は陛下のお子なのか、そう広めると」
フィリップ殿下の噂を広める事が、王妃様への断罪に繋がるのでしょうか?
少し疑問が残りながら、私達は計画をまとめ始めたのです。
少し一人で考えたいと言うおばあ様を残し、おばあ様の侍女の案内で今晩ケネスが使う予定の客間に向かいました。
男性客向けの調度品で整えられた客間は、落ち着いた雰囲気で長距離の移動と先程の会話で心身共に疲れきった私達を出迎えてくれましたが、まだ休むわけにはいきませんでした。
「あー、そうだな。フローリアがどうしたいかによるかな」
私はお父様と手紙のやり取りが出来る魔道具を持っています。
この魔道具は、手紙を入れて魔道具に付いている魔石に魔力を込める事で発動し、対となった魔道具に手紙を送ります。
手紙を送るにも受け取るにも魔力が必要で、しかも元々魔道具に記憶させている魔力を持つ者しか上出来ませんし、対になる魔道具を持つ者同士で無ければ使えません。
つまり私がお父様とお母様にそれぞれ手紙を送りたい場合、私とお父様、私とお母様、それぞれ対になる魔道具が必要になりますが、手紙を送付する魔道具はとても高価なので、私はお父様向けのを持っているのみです。
「分かったわ。必要な時はお父様に送るからいつでも遠慮せずに言ってね」
「その時は遠慮なく頼むよ」
「いつでも遠慮なく。さて、手紙を書く前に少し落ち着きたいわね。何か軽く摘まめる物と紅茶をお願いでいるかしら」
案内してくれた侍女に告げると、優雅に一礼して部屋を出ていきました。
これで部屋の中は、私とケネス、ユウナの三人です。
「ユウナ」
「畏まりました。足音が聞こえたらすぐにお伝え致します」
「ありがとう」
部屋を案内してくれた侍女は、おばあ様との話の場には居なかった人です。
おばあ様付きの侍女ですから信用していいとは思いますが、詳細を知る人が少ない方がいいのは確かです。
用心するに越したことはありません。
「ケネス、私はもしお兄様が本当に王妃様に殺されたのなら、その罪は償わせたいわ」
「それは、そうだが」
「勿論侯爵家も領地も私自身も、皆の事も守った上での話よ。相討ちでは意味がないわ」
一言で言えば、今まで私は守られていただけです。
お兄様の死について何も知らず、お父様が用意して下さった沢山の魔道具に守られ、婚約破棄についてもお父様が無理を通して権利をもぎ取って下さったのです。
「侯爵領で魔道具作りが盛んなのは、私を守るためもあったと以前聞いたことがあるの。それは第三王子の婚約者だからではなく、王妃様から守る為だったのよね」
「そうだな、そう聞いている。フローリアには伝えていなかったが、おじさん達は常に王妃様からの刺客を気にしていたから」
「そうだったのね」
一番最初に私がお父様から贈られたのは、毒を中和する腕輪でした。
その後、毒を無効、呪いを術者に跳ね返す、物理的な攻撃から守る等、多種多様な魔道具が産み出され、最終的には手紙を送る魔道具まで完成させたのです。
数々の魔道具は、侯爵領の特産品となり領地を潤す要因となっています。
魔道具を専門に作る魔道具師と魔石に魔法を付与する付与師等を育成する為の組織を作り、様々な研究を行っているのも、元は私を守る魔道具が必要だったからだと、ケネスのお父様から聞いたのは学校に入学する前日でした。
『フローリアを守る為に作り始めた魔道具が、結果侯爵領の富を産み力を付けている。お前は自分の為に苦労を掛けたと思う必要はない。お前は私達の希望だ、お前が誰にも害される事なく健やかに育ち、大人になり幸せになる。私達はそう願っているのだから、それだけは覚えていて欲しい』
言われた時は意味が分からなかったけれど、あれは王妃様から害されず大人になれる様にと、そういう意味があったのでしょう。
「ねえ、ケネス。どうしたら王妃様に対抗できるかしら。お父様に伝えるだけじゃ駄目よ、何か私達で出来る事はないのかしら」
「対抗か」
「まずはフィリップ殿下のエミリアさんの噂を広めるとかどうでしょうか?」
「ユウナ?」
「貴族にも王都に住む平民にも、フィリップ殿下が浮気をして、相愛ならとお嬢様が泣く泣く身を引いて、心痛から体調を崩されているという、噂です」
ユウナは興奮したように頬を赤くしながら、話し続けます。
「お嬢様が身を引いたというのが大切です。そして今までどの位お嬢様が殿下に尽くしていたか、殿下がどれだけ酷い婚約者だったかも噂として流すんです」
「それは、学校では周知の事実だけれど」
「そうか、じゃあその後は殿下の性格は陛下と違いすぎる。本当に殿下は陛下のお子なのか、そう広めると」
フィリップ殿下の噂を広める事が、王妃様への断罪に繋がるのでしょうか?
少し疑問が残りながら、私達は計画をまとめ始めたのです。
あなたにおすすめの小説
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。