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どうしたら勝てるのか
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「魔道具が陛下のお子でないと断言したとしても、陛下がそれを否とするなら、それの意味はないのですね」
フィリップ殿下の魔力系統の違い、赤子の頃から陛下に似たところが全くない赤子。
それを考慮せず、懐妊せず王太后の宮に滞在していたからという事実だけで陛下はフィリップ殿下は自分の子であると信じた。
その意味は大きいのです。
「おばあ様、私がしようとしているのは、陛下への謀反ととらえられる行ないなのでしょうか」
「そんなことはありませんよ。王位を継ぐ子ではないとはいえ、血筋を偽ろうとした王妃様への罪は許しがたいもなのですから」
おばあ様は慰める様にそう言うと、そっと私を抱きしめて下さいました。
私がしようとしている事は、陛下が望んでいないものを暴く行為です。
これによって、我が侯爵家とそれに連なる物の行く末が決まると言っても過言ではありません。
お母様の実家である、伯爵家もその影響を受けない筈がないというのに。
「申し訳ありません、おばあ様。私が殿下のお心を止めておけなかったのがすべての原因であるというのに」
私の家もおばあ様が守るこの伯爵家も、私がフィリップ殿下のお心を自分に向けられていればなんの憂いも無くいられたのです。
そう考えると、不甲斐ない自分が情けなくなってしまいます。
私がもっとしっかりとしていれば。私が殿下にもっと媚びへつらっていれば変わっていたかもしれないのです。
「フローリア」
「はい」
「私達は、お前の笑顔を失ってまで安易な未来を欲していませんよ」
「おばあ様」
私を抱きしめて、髪を撫でながらおばあ様は呟きました。
「私にとっても、お前の両親にとっても。お前は宝なのよ。大切な大切な宝なの」
「ですが」
大切に、愛情をかけ育てて頂いた自覚は勿論あります。
フィリップ殿下は私の家に婿入りするからだったのでしょうか、私は王子妃教育の一部しか受けていません。
王子妃教育と称してずっと王妃様の宮に伺っていましたが、王宮での時間の殆どはフィリップ殿下との交流に使われていました。
最初は王妃様から直接のご指導がありましたが、それはやがて書物を持ち帰りをし勉強するだけになりました。
殿下とまともに交流すら出来ないものに、王妃様からの直接指導や王宮の用意した師から指導を受ける資格など無いと言われた為です。
ですから王妃様の宮ではフィリップ殿下との交流に時間を使うしかありませんでした。
ああ、交流とは言いませんね。
交流を目標とし挫折するための時間に使われていたというのが正しいのでしょう。
王妃様とフィリップ殿下と私の三人の茶会を開き。無意味な時間を過ごし王妃様に嫌みとも取れる助言を受け帰るを繰り返していました。
王家に対する私の立場は、今考えると微妙な位置にあったのだと思います。
王太子殿下はすでに結婚され、お子も数人いらっしゃいます。
第二王子は結婚はまだですが、婚約者との仲は良好です。
王女殿下達は国内、国外、それぞれに嫁ぎすでに数人のお子を得ています。
つまり、フィリップ殿下は王家の血を継ぐと言う意味では、いてもいなくて問題ない立場においでなのです。
「フローリア。あなたはずっとフィリップ殿下にしばられて生きてきたわね」
「……そうなのでしょうか」
「そうよ。でも、もうその必要はないの。まず、そのことをあなた自身が理解しなければいけないのよ。あなたはもう自由なの。何をしてもいい。何を望んでもいい。そういう立場になったの」
「何をしても、何を望んでもいい」
それは私にとって、想像を超える言葉でした。
私の立場はフィリップ殿下の婚約者。
家を継ぐというのは、どうやっても崩れない未来でしたが、その未来にはフィリップ殿下の存在が常にあって覆せないものだったのです。
「おばあ様。私は誰を自分の夫と望んでもいいのでしょうか」
「勿論よ。あなたは自分で自分の夫を選べるのよ」
自分で自分の夫を選べる未来。
そんな事を想像したことすらありませんが、それを望める未来があるのだと。
浅はかながら、実感して夢想してしまったのです。
フィリップ殿下の魔力系統の違い、赤子の頃から陛下に似たところが全くない赤子。
それを考慮せず、懐妊せず王太后の宮に滞在していたからという事実だけで陛下はフィリップ殿下は自分の子であると信じた。
その意味は大きいのです。
「おばあ様、私がしようとしているのは、陛下への謀反ととらえられる行ないなのでしょうか」
「そんなことはありませんよ。王位を継ぐ子ではないとはいえ、血筋を偽ろうとした王妃様への罪は許しがたいもなのですから」
おばあ様は慰める様にそう言うと、そっと私を抱きしめて下さいました。
私がしようとしている事は、陛下が望んでいないものを暴く行為です。
これによって、我が侯爵家とそれに連なる物の行く末が決まると言っても過言ではありません。
お母様の実家である、伯爵家もその影響を受けない筈がないというのに。
「申し訳ありません、おばあ様。私が殿下のお心を止めておけなかったのがすべての原因であるというのに」
私の家もおばあ様が守るこの伯爵家も、私がフィリップ殿下のお心を自分に向けられていればなんの憂いも無くいられたのです。
そう考えると、不甲斐ない自分が情けなくなってしまいます。
私がもっとしっかりとしていれば。私が殿下にもっと媚びへつらっていれば変わっていたかもしれないのです。
「フローリア」
「はい」
「私達は、お前の笑顔を失ってまで安易な未来を欲していませんよ」
「おばあ様」
私を抱きしめて、髪を撫でながらおばあ様は呟きました。
「私にとっても、お前の両親にとっても。お前は宝なのよ。大切な大切な宝なの」
「ですが」
大切に、愛情をかけ育てて頂いた自覚は勿論あります。
フィリップ殿下は私の家に婿入りするからだったのでしょうか、私は王子妃教育の一部しか受けていません。
王子妃教育と称してずっと王妃様の宮に伺っていましたが、王宮での時間の殆どはフィリップ殿下との交流に使われていました。
最初は王妃様から直接のご指導がありましたが、それはやがて書物を持ち帰りをし勉強するだけになりました。
殿下とまともに交流すら出来ないものに、王妃様からの直接指導や王宮の用意した師から指導を受ける資格など無いと言われた為です。
ですから王妃様の宮ではフィリップ殿下との交流に時間を使うしかありませんでした。
ああ、交流とは言いませんね。
交流を目標とし挫折するための時間に使われていたというのが正しいのでしょう。
王妃様とフィリップ殿下と私の三人の茶会を開き。無意味な時間を過ごし王妃様に嫌みとも取れる助言を受け帰るを繰り返していました。
王家に対する私の立場は、今考えると微妙な位置にあったのだと思います。
王太子殿下はすでに結婚され、お子も数人いらっしゃいます。
第二王子は結婚はまだですが、婚約者との仲は良好です。
王女殿下達は国内、国外、それぞれに嫁ぎすでに数人のお子を得ています。
つまり、フィリップ殿下は王家の血を継ぐと言う意味では、いてもいなくて問題ない立場においでなのです。
「フローリア。あなたはずっとフィリップ殿下にしばられて生きてきたわね」
「……そうなのでしょうか」
「そうよ。でも、もうその必要はないの。まず、そのことをあなた自身が理解しなければいけないのよ。あなたはもう自由なの。何をしてもいい。何を望んでもいい。そういう立場になったの」
「何をしても、何を望んでもいい」
それは私にとって、想像を超える言葉でした。
私の立場はフィリップ殿下の婚約者。
家を継ぐというのは、どうやっても崩れない未来でしたが、その未来にはフィリップ殿下の存在が常にあって覆せないものだったのです。
「おばあ様。私は誰を自分の夫と望んでもいいのでしょうか」
「勿論よ。あなたは自分で自分の夫を選べるのよ」
自分で自分の夫を選べる未来。
そんな事を想像したことすらありませんが、それを望める未来があるのだと。
浅はかながら、実感して夢想してしまったのです。
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