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呪縛からの解放
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「私は婚約破棄をして、神聖契約で二度とフィリップ殿下と縁を結ばないとしたにも関わらずまだ縛られていたのですね」
婚約破棄をした時、私は自由になったと感じました。
神聖契約をして、もう王家から解放されたと信じました。
それでも心の奥底にはまだ、フィリップ殿下の婚約者だった私が残っていたのかもしれません。
「そうね。婚約していた期間が長かったのですもの、たった数日でその呪縛が消えるわけではないのよ。あなたはフィリップ殿下を将来の夫として、一緒に領地を治めていく未来しか選べなかった。貴族の子供の多くは政略結婚が当り前で親に婚約者を決められるのが当り前だとしても、あなたから嫌だと言える婚約では無かった」
「はい」
「あなたは殿下と少しでも親しくなろうと努力をしていたわ。でも、王都から遠い場所にいる私にも殿下があなたを虐げているという噂は届く程だったのよ」
おばあ様のお話に私は眼を丸くしました。
学校でも夜会でも殿下は私を周囲の眼すら気にせずに、気が利かないとか優しさの欠片も無いとお話され夜会ではエスコートもまともにされませんでした。
「殿下がダンスの途中で何度もお前を置き去りにして離れてしまったというのは最初の頃かしら、その後はエスコートすらまともにされず、ダンスをフローリアとはなさらなくなったとか、学校でもお前を貶める発言をされるとか」
「それは、はい」
ダンスの途中で置き去りにされたのは、夜会に参加をする様になってすぐのことです。
努力がお嫌いな殿下は当然ダンスの練習もお嫌いで、夜会の場で披露出来る程ではありませんでしたが、夜会に婚約者と出席してダンスを踊らない等出来る筈もなく渋々私を相手に踊っていました。
たった一度ダンスをする間、何度も私は足を踏まれ、動きを間違えた殿下に「お前が下手なせいだ」と叱られ、その内に癇癪を起した殿下が「やっていられるか」と私を突き放し去って行ってしまったのが真相です。
どちらのダンスが悪かったのか、それは周囲から見れば一目瞭然だったらしく後日王太子殿下に注意を受けたフィリップ殿下は、その後何度か夜会で私とダンスをして下さいましたが、その度に同じ状態になりました。
そしてその度に王太子殿下に注意され、陛下に注意されを繰り返し、私とダンスは踊らないと宣言されてしまう様になったのです。
今はそれなりにダンスを踊れる様になった殿下は、私以外の女性を相手にダンスをされていて、私は基本壁の花です。
「ケネスは従兄弟だというのに、彼とのダンスも許さなかったとも聞いたわ。エスコートを断っておきながら、ケネスがそれをすれば周囲に誰が居ようとフローリアを罵倒したと」
「はい」
私が夜会でダンスを踊れるのはお父様か親族だけでしたが、ケネスとのダンスは許されませんでした。
殿下がエスコートを断った夜会にケネスと共に参加すれば「俺がエスコート出来ない夜会に参加しているお前が悪いのだ」と罵るのです。
「侯爵家の次期当主なのだから、フローリアは人脈作りの為にも夜会に出るのは当たり前、婚約者がエスコート出来なければ、年の近い従兄弟がその役割を引き受けるのは当然だというのにねぇ」
「常識が通じる方ではありせんから」
酷い婚約者でした。
良かったと思うこと、楽しかった記憶が一つもありません。
「私は、お父様とお母様の様にお互いを思いやれる相手と添い遂げたいです」
「ええ、きっとそうなれますよ。その為にも王妃様にはお前のことも侯爵家のことも諦めて頂かないとね」
「はい。なんとか、頑張ります」
「神殿から連絡が来たら知らせます。それまでお休み、そうだ湯浴みはどう? 疲れが取れるわ」
おばあ様に心配そうにそう言われ、私は小さく頷きました。
婚約破棄をした時、私は自由になったと感じました。
神聖契約をして、もう王家から解放されたと信じました。
それでも心の奥底にはまだ、フィリップ殿下の婚約者だった私が残っていたのかもしれません。
「そうね。婚約していた期間が長かったのですもの、たった数日でその呪縛が消えるわけではないのよ。あなたはフィリップ殿下を将来の夫として、一緒に領地を治めていく未来しか選べなかった。貴族の子供の多くは政略結婚が当り前で親に婚約者を決められるのが当り前だとしても、あなたから嫌だと言える婚約では無かった」
「はい」
「あなたは殿下と少しでも親しくなろうと努力をしていたわ。でも、王都から遠い場所にいる私にも殿下があなたを虐げているという噂は届く程だったのよ」
おばあ様のお話に私は眼を丸くしました。
学校でも夜会でも殿下は私を周囲の眼すら気にせずに、気が利かないとか優しさの欠片も無いとお話され夜会ではエスコートもまともにされませんでした。
「殿下がダンスの途中で何度もお前を置き去りにして離れてしまったというのは最初の頃かしら、その後はエスコートすらまともにされず、ダンスをフローリアとはなさらなくなったとか、学校でもお前を貶める発言をされるとか」
「それは、はい」
ダンスの途中で置き去りにされたのは、夜会に参加をする様になってすぐのことです。
努力がお嫌いな殿下は当然ダンスの練習もお嫌いで、夜会の場で披露出来る程ではありませんでしたが、夜会に婚約者と出席してダンスを踊らない等出来る筈もなく渋々私を相手に踊っていました。
たった一度ダンスをする間、何度も私は足を踏まれ、動きを間違えた殿下に「お前が下手なせいだ」と叱られ、その内に癇癪を起した殿下が「やっていられるか」と私を突き放し去って行ってしまったのが真相です。
どちらのダンスが悪かったのか、それは周囲から見れば一目瞭然だったらしく後日王太子殿下に注意を受けたフィリップ殿下は、その後何度か夜会で私とダンスをして下さいましたが、その度に同じ状態になりました。
そしてその度に王太子殿下に注意され、陛下に注意されを繰り返し、私とダンスは踊らないと宣言されてしまう様になったのです。
今はそれなりにダンスを踊れる様になった殿下は、私以外の女性を相手にダンスをされていて、私は基本壁の花です。
「ケネスは従兄弟だというのに、彼とのダンスも許さなかったとも聞いたわ。エスコートを断っておきながら、ケネスがそれをすれば周囲に誰が居ようとフローリアを罵倒したと」
「はい」
私が夜会でダンスを踊れるのはお父様か親族だけでしたが、ケネスとのダンスは許されませんでした。
殿下がエスコートを断った夜会にケネスと共に参加すれば「俺がエスコート出来ない夜会に参加しているお前が悪いのだ」と罵るのです。
「侯爵家の次期当主なのだから、フローリアは人脈作りの為にも夜会に出るのは当たり前、婚約者がエスコート出来なければ、年の近い従兄弟がその役割を引き受けるのは当然だというのにねぇ」
「常識が通じる方ではありせんから」
酷い婚約者でした。
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「私は、お父様とお母様の様にお互いを思いやれる相手と添い遂げたいです」
「ええ、きっとそうなれますよ。その為にも王妃様にはお前のことも侯爵家のことも諦めて頂かないとね」
「はい。なんとか、頑張ります」
「神殿から連絡が来たら知らせます。それまでお休み、そうだ湯浴みはどう? 疲れが取れるわ」
おばあ様に心配そうにそう言われ、私は小さく頷きました。
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