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裁きの行方
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「王妃よ。余の最愛よ。そなたをあの茶会の席で余の妃と望み、そなたは余の手を取った」
王妃様はきっと陛下のお声など聞こえてはいないでしょう。
額飾りを外そうともがき、印の熱に苦しみの声を上げながら目の前に立つ王太子殿下を睨みつけています。
「アダム、あなたはそんなにこの母が憎いの。あなたはいつもそうだった。私が腹を痛めて産んだというのに、可愛げの欠片もない憎らしい子。私はお前に憎まれても構わないわ。ああ、ラッセルもいるのね。本当に憎らしい可愛げのない子供達。お前達などどんな理由があっても愛せないわ。陛下そっくりの顔なんだもの。顔を見る度に吐き気がする」
なんて酷い言い方をされるのでしょうか。
もしかすると王妃様は、神聖契約を破った印の熱による苦しみの為もう正気ではないのでしょうか。
実の母親である王妃様に酷い言葉を投げつけられた王太子殿下と第二王子殿下のお気持ちを思い、私は眉をひそめながら神にお二人の心をお守りくださる様祈りました。
例えどんなに不仲であろうと、母親に疎まれて喜ぶ子はいないでしょう。
それが成人を過ぎた大人であっても同じだと、私は思うのです。
「王妃よ」
「さっさと毒杯を下さいませ、陛下。それを飲んで苦しんで死んでみせましょう。ええ、それは私にとっては幸せの盃にございます。王家を陛下を謀りフィリップを授かった私とお義兄様は毒杯を賜って当然ですもの。愛するお義兄様と同じ罰を受けるなど、私には幸せなだけです。ええ、褒美ですとも」
死が王妃様の褒美になるのでしょうか。
喜びの罰を王妃様に与えるのでしょうか。
「そんな事を言えるのは今だけだ。この毒は、死んだ方がマシだと思う苦痛を死ぬまでの間与え続ける。朝も昼も夜も、ずっとずっとそなたに与え続けるのだ。そして額飾り、それもそなたを苦しめるだろう。神との約束を破った王妃には何よりの罰だ。美貌が老いさらばえて、自慢の銀髪が白髪に、艶々とした肌がカサカサの砂土の様になり、皺だらけになっているのだから」
「そうですね。母上の自慢の美貌が老いにより衰えて、母上の義兄はどれだけ嫌悪しているでしょうね」
嫌悪の言葉に王妃様はぐるりとフィリエ伯爵の方に顔を向け、そうして喚き始めました。
「嘘よね。お義兄様、私の顔を嫌悪しているの?」
「……あなたの顔は醜い。見るのも苦痛な程だ」
「そんなっ。そんなお義兄様っ」
「元々周囲が言う様な美貌を私はあなたに感じていなかった。あなたは一般的には美しかったのかもしれないけれど、自分の欲の為には他人を陥れることを躊躇わず、人の真心を踏みにじって平気な顔をしていた。その本性を知る私にはそなたの顔等美しくもなんともなかった。むしろ醜いと感じていた。ずっと」
フィリップ殿下の年齢分、いいえもっと長い間王妃様に脅されて、罪の意識に苛まれて生きてきたのですからフィリエ伯爵の王妃様への恨みは相当なものでしょう。
どんなに恨みがあっても、それを公に出来なかったのは彼女がこの国の王妃だったからなのでしょう。
どんな理不尽な要求も、私を人質に取られて従うしかなかった私の両親と同じ苦しみを伯爵も味わっていたのだと思います。
「そんなお義兄様。私はずっとお義兄様だけを愛し続けていたというのに」
「私は愛していなかった。むしろ憎んでいた」
冷たいとすら感じる程のフィリエ伯爵の答えは、王妃様の心を折るには十分な衝撃があったのでしょうか。
王妃様は俯き言葉を発しなくなってしまいました。
「王妃よ。そなたはなぜ余の母上を殺める様、アヌビートに指示したのだ」
「憎かったからよ。私のフィリップを、存在を隠しお義兄様へ託したあの子を否定したからよ」
「否定」
「正しくない子だと。神に存在を許されない子だと否定したのよ。王太后様は陛下との子ではないと疑っていたから
そう言っていたのだろうけれど。私にとってはお義兄様との子だから正しくないのだと聞こえたの。そんなの殺すしかないでしょう? 私の子を否定するなんて、神ですら許されない行いよ。そんな人生きていていいはずがないわ」
王妃様の言葉を誰か共感出来た人はいるのでしょうか。
そんな逆恨みの様な思いから、王太后様の命を儚くさせたのでしょうか。
「死がそなたの救いになるのかもしれないが、神の裁きはそんなに甘いものではない。これよりこの国一番の大罪人である王妃に神の裁きを与える。余と王妃以外は部屋を出る様に」
死が王妃様の救いになるとしても、それ以上の裁きがこの国にはありません。
ですから私達は小さな敗北感を胸に抱きながら小さな盃を持つ陛下の姿を横目に、私達は部屋を出るしかなかったのです。
王妃様はきっと陛下のお声など聞こえてはいないでしょう。
額飾りを外そうともがき、印の熱に苦しみの声を上げながら目の前に立つ王太子殿下を睨みつけています。
「アダム、あなたはそんなにこの母が憎いの。あなたはいつもそうだった。私が腹を痛めて産んだというのに、可愛げの欠片もない憎らしい子。私はお前に憎まれても構わないわ。ああ、ラッセルもいるのね。本当に憎らしい可愛げのない子供達。お前達などどんな理由があっても愛せないわ。陛下そっくりの顔なんだもの。顔を見る度に吐き気がする」
なんて酷い言い方をされるのでしょうか。
もしかすると王妃様は、神聖契約を破った印の熱による苦しみの為もう正気ではないのでしょうか。
実の母親である王妃様に酷い言葉を投げつけられた王太子殿下と第二王子殿下のお気持ちを思い、私は眉をひそめながら神にお二人の心をお守りくださる様祈りました。
例えどんなに不仲であろうと、母親に疎まれて喜ぶ子はいないでしょう。
それが成人を過ぎた大人であっても同じだと、私は思うのです。
「王妃よ」
「さっさと毒杯を下さいませ、陛下。それを飲んで苦しんで死んでみせましょう。ええ、それは私にとっては幸せの盃にございます。王家を陛下を謀りフィリップを授かった私とお義兄様は毒杯を賜って当然ですもの。愛するお義兄様と同じ罰を受けるなど、私には幸せなだけです。ええ、褒美ですとも」
死が王妃様の褒美になるのでしょうか。
喜びの罰を王妃様に与えるのでしょうか。
「そんな事を言えるのは今だけだ。この毒は、死んだ方がマシだと思う苦痛を死ぬまでの間与え続ける。朝も昼も夜も、ずっとずっとそなたに与え続けるのだ。そして額飾り、それもそなたを苦しめるだろう。神との約束を破った王妃には何よりの罰だ。美貌が老いさらばえて、自慢の銀髪が白髪に、艶々とした肌がカサカサの砂土の様になり、皺だらけになっているのだから」
「そうですね。母上の自慢の美貌が老いにより衰えて、母上の義兄はどれだけ嫌悪しているでしょうね」
嫌悪の言葉に王妃様はぐるりとフィリエ伯爵の方に顔を向け、そうして喚き始めました。
「嘘よね。お義兄様、私の顔を嫌悪しているの?」
「……あなたの顔は醜い。見るのも苦痛な程だ」
「そんなっ。そんなお義兄様っ」
「元々周囲が言う様な美貌を私はあなたに感じていなかった。あなたは一般的には美しかったのかもしれないけれど、自分の欲の為には他人を陥れることを躊躇わず、人の真心を踏みにじって平気な顔をしていた。その本性を知る私にはそなたの顔等美しくもなんともなかった。むしろ醜いと感じていた。ずっと」
フィリップ殿下の年齢分、いいえもっと長い間王妃様に脅されて、罪の意識に苛まれて生きてきたのですからフィリエ伯爵の王妃様への恨みは相当なものでしょう。
どんなに恨みがあっても、それを公に出来なかったのは彼女がこの国の王妃だったからなのでしょう。
どんな理不尽な要求も、私を人質に取られて従うしかなかった私の両親と同じ苦しみを伯爵も味わっていたのだと思います。
「そんなお義兄様。私はずっとお義兄様だけを愛し続けていたというのに」
「私は愛していなかった。むしろ憎んでいた」
冷たいとすら感じる程のフィリエ伯爵の答えは、王妃様の心を折るには十分な衝撃があったのでしょうか。
王妃様は俯き言葉を発しなくなってしまいました。
「王妃よ。そなたはなぜ余の母上を殺める様、アヌビートに指示したのだ」
「憎かったからよ。私のフィリップを、存在を隠しお義兄様へ託したあの子を否定したからよ」
「否定」
「正しくない子だと。神に存在を許されない子だと否定したのよ。王太后様は陛下との子ではないと疑っていたから
そう言っていたのだろうけれど。私にとってはお義兄様との子だから正しくないのだと聞こえたの。そんなの殺すしかないでしょう? 私の子を否定するなんて、神ですら許されない行いよ。そんな人生きていていいはずがないわ」
王妃様の言葉を誰か共感出来た人はいるのでしょうか。
そんな逆恨みの様な思いから、王太后様の命を儚くさせたのでしょうか。
「死がそなたの救いになるのかもしれないが、神の裁きはそんなに甘いものではない。これよりこの国一番の大罪人である王妃に神の裁きを与える。余と王妃以外は部屋を出る様に」
死が王妃様の救いになるとしても、それ以上の裁きがこの国にはありません。
ですから私達は小さな敗北感を胸に抱きながら小さな盃を持つ陛下の姿を横目に、私達は部屋を出るしかなかったのです。
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