ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

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お家はいいな3

「ゲルトさん、あの今のは無し。いい間違いました。ほら牛の乳とか赤の実とか軽いものなら夕食に響かないかなって」

 獣人の国は、お菓子らしいお菓子って売ってるの見たことがないだよね。砂糖が高価だからだと思うけど、甘みと言えば干した果物的な感じなんだ。
 ちなみに、人族の国にはあるらしい。

「……はぁ。ウヅ、お前は気を遣い過ぎる」
「気を遣ってるつもりはないですよ。今のは本当に言い間違いしただけですもん」

 それにしてもなんでこんなにお腹空いてるんだろ、何かどんどん空腹が酷くなっていく気がするんだけど、それになんか疲れてきた感じ。
 俺ゲルトさんに抱っこされて、歩いてすらいないのに。

「分かった。言い間違いだな。じゃあ、いつものところは魔物肉使っているから体を回復させるには一番なんだが、他に串焼きの店探すかそれとも家に戻って何か軽く食べさせて貰うか」

 そう言いながらゲルトさんはあまり気が進まなそうだ。
 ゲルトさんはニルスさんの家に下宿していて、部屋代を支払っている。
 食事代もその部屋代に含まれているらしいのだけど、部屋代と食事代を足すと全然その料金に見合ってないのだそうだ。
 まだゲルトさんが稼げる冒険者になっていない頃に決めた金額だから安くしてくれていて、今もそんなに変わっていない。
 だからゲルトさんは、依頼で魔物を多く狩った時には差し入れたりしているらしいし、急に早く帰って何か食べさせてとは言い難いのかもしれない。

「そうですね」

 なんでこんなに疲れてるんだろ。
 自分を鑑定したら理由が分かった、
 体力が物凄い勢いで減り続けてるんだ、そして魔力が回復している。しかも総魔力量が2500から3000に増えてるんだ。
 しかも魔力がまだ100にもなってない。

「どうしたウヅ」
「ゲルトさん」

 レベルは変わってないのに、魔力だけ増えるってあるんだろうか?
 誰に聞いたら教えてくれるだろう、大神様かな。
 兎に角栄養のあるもの食べないと、俺体力減り続けて倒れちゃうかもしれない。

「ゲルトさん、あれなんですか?」

 この辺りで一番匂いを漂わせまくっている屋台を指さした。

「あれは、匂いからすると魚だな」
「魚、いい匂いです」

 クンクンと行儀悪く匂いを嗅ぐと、ぐうううっとお腹が自己主張する。

「分かった。オヤジ、魚今すぐ食えるのは何かあるか?」
「子供が食うには少し骨が多いが、これは旨いよ。一匹銀貨一枚だ」
「へえ、珍しいな。ウヅ魔物魚の岩角だ」
「美味しいの?」
「あぁ、オヤジこれ二匹くれ」
「あいよ、ここで食うならそこの椅子に座っていいぜ」

 ゲルトさんがお金を払い、俺は串に刺さった魚を受け取った。

「ウヅ、骨に気を付けろよ」
「はい。いただきますっ! うわぁ」

 岩角という魚は、ゴツゴツした鱗と頭に角みたいなコブがある魚だった。
 大きさは俺の両掌合わせた位で、かぶり付くとじゅわっと口の中に魚の甘みが広がった。脂が乗ったって形容がぴったりかもしれない。

「美味しいです!」

 美味しい上になんだか凄く体に何かが染みてくる。

岩角魚の塩焼き:魔物魚岩角魚を塩を付け串に刺し焼いたもの。
魔力回復効果がある。

「どうしたウヅ」
「ううん。あの何か上手く言えないんですが、何かがひゅーって入ってくる感じがして」

 ゲルトさんには俺が何となく鑑定が使えること気が付かれていると思う、一度俺がボロを出しだから多分気がついてる。
 だけど決定的な事は言ってないから、どうしようか悩んでるからこんな説明になる。
 何かが入ってくるというか染みてくる感じがしたのは本当だし、嘘は言ってないよね?

「ああ、それは魔力だろう」
「魔力?」
「岩角には魔力回復作用があると言われているんだ」
「そうなんですか、凄いですね」

 今の俺には焼け石に水的な回復程度だけど、魔力回復してお腹もいっぱいになるのはありがたい。

「美味しいし、魔力回復するなら助かります」
「骨と鱗が難点だがな」
「そうですね」

 行儀悪いけど、鱗と骨は手で取り除きながら食べるしかない。
 鱗取りにくいのかなぁ、これだけでも無いと食べやすいのに。

「鱗どうして取らないのかな」

 旅の途中でニルスさんと魚釣りをした時も、鱗取りないで内臓だけ取って焼いてた気がする。
 あれって外で調理していたからだと思ってたけど、もしかしてお魚の鱗を取るってやらないのかな?

「ウヅ?」
「ゲルトさん、生のお魚って買えますか?」
「気に入ったのか? オヤジ焼く前の奴はあるか?」
「あるにはあるが、ただ」
「勿論値段は串焼きと同じで良い六匹貰えるか」
「ありがとうございます!」

 ゲルトさんがお金を払おうとするから、慌てて俺のお金をおじさんに渡そうとしてゲルトさんに止められる。

「オヤジ、これで」
「はいはい、今包みますね」
「ウヅは、それ全部食べろよ」

 お金をしっかり手に握らされ、食べかけの魚に視線を向けられる。

「食べます、美味しいです」

 お腹はいっぱいになりつつあるのに、まだまだ食べられそうという不思議な感覚で、俺は鱗と骨に苦労しながら何とか食べきったのだった。

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