ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

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獣人国のお魚料理事情1

「うにゃ?」

 なんか夢を見ていた覚えがあるけど、全部派覚えていなかった。
 ゲルトさんが歌を歌ってくれた様な? あぁ、なんで俺そんなご褒美みたいな夢をちゃんと覚えてないんだろ。

「あったかい」

 ゲルトさんに抱え込まれる様にして眠っていた俺は、体を包むゲルトさんの体温に幸せな気持ちになって、ついその胸に自分の頬を押し付けてしまった。
 なんというか幸せな時間だ。
 ゲルトさんを独り占め、甘え放題だ。
 こういうの、俺がまだ幼い子供だと見られているからしてくれてるんだよなぁ。いつかは別々の部屋で眠る様になって、ゲルトさんが結婚しちゃったら家も別々になっちゃうんだ。
 悲しいけど、俺もゲルトさんも男で、俺はゲルトさんが大好きだけどゲルトさんはきっと女の子の方が好きなんだろうな。

 あーあ、幸せな時間に何後ろ向きになってるんだろ。
 同性なのはどうしようもないし、仮に異性だったとしても俺が恋愛対象に見てもらえる様になるにはだいぶ時間がかかる。
 その間にゲルトさんが好きな人見つけてしまったら、それで終わりだし、俺そしたら笑ってお祝い言えるようにしなきゃなぁ。

 ヤバイ、想像だけで泣きそうだ。
 でも好きな人が幸せになるなら、応援しなきゃ。その時がきたらちゃんと笑って、笑って。

 うわぁぁん。笑える自信ないよ。
 今から覚悟決めておかなきゃ、だってゲルトさんは絶対にもてるもん。きっとその日はあっという間に来ちゃうんだ。

 駄目だ本気で泣きそう。
 気持ちを切り替えなくちゃ、ええと。そうだ今って何時くらいだろ、部屋の中何となく明るいから朝なのかな?
 そう言えば、魔力どうなったかな?
 鑑定すると、体力は戻ってなかったけれど、魔力は完全回復していた。状態は空腹。そりゃそうだ。結局眠っちゃったから夕食食べてないもんね。

「起きよ」

 毎朝の誘惑、ゲルトさんの体温。
 離れがたい気持ちを無理矢理心の底に押し込んで、ゲルトさんが起きない様にそっとそっとベッドから抜け出す。
 実は毎朝、気がついて「もう少し寝ていろ」とか言ってくれないか、なんて馬鹿な期待をしてるのは誰にも言えない秘密だ。
 こんなの考えてるって、自分でも引いちゃう気持ちの悪さだ。
 そういうのが許されるのって、恋人とか特別な人だけなんだから。

「ふう」

 部屋を出て扉を閉じると息を吐く。
 
「やっぱり明るくなってるなあ、何時なんだろ」

 この世界、時間を知らせるのは教会の鐘っていうのが困るんだよね。

「トイレ行って、台所見てみようかな」

 ロッタさんが台所にいるなら朝食の用意を手伝って、そうじゃないなら裏庭に行って朝練しよう。
 そうと決まればまずはトイレだ。
 


「ふうっ、スッキリ」

 トイレに行ってから台所にやって来た。
 ロッタさんの姿は無いから、まだちょっと早いのかな?
 外は明るい気がするんだけど、まあいいか朝練しよう。

「う、お腹すいた」

 裏庭に向かって歩きながら、クウウと鳴ったお腹をおさえる。
 空腹なんて昔は当たり前だったのに、この世界でニルスさん達からお腹いっぱい食べさせてもらってるから、空腹が凄く辛く感じるようになっちゃったみたいだ。
 俺、今の所タダ飯食らいな立場なのに、お腹すいたって自己主張だけ激しいのって何だかなあ。

「ニルスさんせめて食費だけでも受け取ってくれないかな」

 養い子なんだから部屋代も食費もいらないと言われて、受け取って貰えない。
 寝間着とかはあの後有耶無耶になっててまだ買ってないけど、俺のための椅子を作ってもらったし、初依頼の昨日はお弁当も作ってもらえた。
 俺、甘えまくってるんだよなあ。

 どうやって恩返ししたらいいんだろ。
 裏庭で朝練を始めながら、俺はちょっと悩んでいたんだ。

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