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安易に行ったことへの後悔3 (ルーシー視点)
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「そんなことを無意識に?」
「知っての通り、ミルフィ様は元々無意識に魔法を使ってしまいます。それにセドリック様のお体をとても心配されていますから、眠っている間に魔法を発動してしまったとしても不思議はありません」
キム先生は自信があるのかそう断言しているけれど、睡眠中に魔力の加減など出来るのだろうかと心配になってしまう。無意識に魔法を使ってしまった時に魔力を使いすぎていたらどうなってしまうのだろう。
ミルフィーヌ様の熱の原因はまさか魔力の使い過ぎということはないのだろうか。
「ミルフィ様が先程いつもより多くお菓子を召し上がっていたのであれば、十分ではなくとも魔力の回復はされている筈です。ただ、元々パティの件で気落ちされていたところに、いつもより魔力を多く使われたことで体力が急に落ちて熱を出されたのかもしれません。彼女は私が思っている以上に繊細なようだな、そもそも治癒魔法が得意な人は繊細で優しい傾向にあるからな……」
私が熱を出した理由は魔法の発動時の魔力の使い過ぎではないか、と尋ねる。するとキム先生は私に説明するように話し始めたけれど、途中から自分の考えに没頭し始めてしまった。
「……ミルフィ様は繊細過ぎる様に見えるのが問題だ。虐待を受け育った子供は他人の感情の変化に敏感になりがちだと聞いた事はあるし、ミルフィ様にもその傾向があるな……他人の負の感情を自分の痛みの様に感じてしまうこともあると……あぁそれなのに私は配慮が足りなかった。お二人とも幼いけれど理解力があるからと強引な解決策を提案してしてはいけなかった……」
他人の感情の変化に敏感、自分の痛みの様に感じてしまう。
私が近くにいるのを忘れてしまったかの様にブツブツと自分の考えを呟いているキム先生のその言葉に私はハッとして先生の顔を見つめる。
キム先生が私の兄の名前を出した時、私は自分と母のことを考え悲しくなってしまった。ミルフィ様はそれを察したのか急に話題を変えてしまった。
あの時私は話をされるのが嫌だと顔に出したつもりはなかったのに、それでもミルフィーヌ様はそれを察して話題を変えようとして下さった。
私のほんの少しの変化を気にして私が辛いだろうと気遣って下さる方なのだから、私とグレタの会話が聞こえていたとしたらとても辛かっただろうことは簡単に想像が出来る。
ただでさてリボンのことで悲しんでおられたというのに、自分の悪い噂を流されていたと知ったらどれだけ傷付いたことだろう。
グレタの話を聞いた時私だって衝撃を受けた、お仕えする方の物を盗み、意図的に悪い噂を広め自分の立場を優位にしようとするなんて、パティは成人前の子供だというのに大人の私が驚く様な悪意をあんな幼い子供に向けるなんて信じられない。
「どうしたらいいのでしょう、私はお嬢様に聞かせるべきではない話を無理矢理聞かせてしまったのかもしれない。お嬢様を傷付けて、だから熱を出してしまったのかも」
心を守るために意識を失うことがあると聞いていたのに、私はミルフィーヌ様の前で魔道具を使うべきではなかったのに。
「ルーシー」
「どうしたらいいのでしょう。ミルフィーヌ様、お嬢様を傷付けるつもりなんて無かったのに」
「……ミルフィ様はあなたに悪意があったとは思っていないでしょう。だから彼女が目覚めてもその話はしてはいけませんよ」
「謝罪してはいけないのですか?」
私は今すぐ謝りたいというのに、それすら許されないのだろうか。
「……ミルフィ様からお話をだされたのなら別ですが、もし聞こえていなかったフリをされているのなら、本人が聞いていたことを隠したいと考えているのにわざわざ話をするのは酷というものです」
そう言われて俯いてしまう。
「あの方は優しいから、謝罪されれば受け入れ許すでしょうが、それで楽になるのは私達だけ、そう思いませんか」
謝罪して楽になるのは謝罪した側、傷付いたミルフィーヌ様は辛い思いのまま。
「私はどうしたら?」
「これ以上ミルフィ様が傷付くことが無いようにお守りする。パティの件を早く解決する策を見つけ動くしかないでしょう」
「解決策」
「リボン一つとはいっても、貴族の物を盗んだ罪は罪です。それにミルフィ様にとってあのリボンは、金より宝石より大切な物だった筈です。たかがリボン一つの問題ではないのだと、ミルフィ様の近くにいる私達が理解して動かなければならない。私にはそれが足りなかった。私の安易な考えがミルフィ様を傷付けてしまった」
キム先生の言葉に私は項垂れてしまう。
私もキム先生も、取り返しのつかないことをしてしまったのだから。
「知っての通り、ミルフィ様は元々無意識に魔法を使ってしまいます。それにセドリック様のお体をとても心配されていますから、眠っている間に魔法を発動してしまったとしても不思議はありません」
キム先生は自信があるのかそう断言しているけれど、睡眠中に魔力の加減など出来るのだろうかと心配になってしまう。無意識に魔法を使ってしまった時に魔力を使いすぎていたらどうなってしまうのだろう。
ミルフィーヌ様の熱の原因はまさか魔力の使い過ぎということはないのだろうか。
「ミルフィ様が先程いつもより多くお菓子を召し上がっていたのであれば、十分ではなくとも魔力の回復はされている筈です。ただ、元々パティの件で気落ちされていたところに、いつもより魔力を多く使われたことで体力が急に落ちて熱を出されたのかもしれません。彼女は私が思っている以上に繊細なようだな、そもそも治癒魔法が得意な人は繊細で優しい傾向にあるからな……」
私が熱を出した理由は魔法の発動時の魔力の使い過ぎではないか、と尋ねる。するとキム先生は私に説明するように話し始めたけれど、途中から自分の考えに没頭し始めてしまった。
「……ミルフィ様は繊細過ぎる様に見えるのが問題だ。虐待を受け育った子供は他人の感情の変化に敏感になりがちだと聞いた事はあるし、ミルフィ様にもその傾向があるな……他人の負の感情を自分の痛みの様に感じてしまうこともあると……あぁそれなのに私は配慮が足りなかった。お二人とも幼いけれど理解力があるからと強引な解決策を提案してしてはいけなかった……」
他人の感情の変化に敏感、自分の痛みの様に感じてしまう。
私が近くにいるのを忘れてしまったかの様にブツブツと自分の考えを呟いているキム先生のその言葉に私はハッとして先生の顔を見つめる。
キム先生が私の兄の名前を出した時、私は自分と母のことを考え悲しくなってしまった。ミルフィ様はそれを察したのか急に話題を変えてしまった。
あの時私は話をされるのが嫌だと顔に出したつもりはなかったのに、それでもミルフィーヌ様はそれを察して話題を変えようとして下さった。
私のほんの少しの変化を気にして私が辛いだろうと気遣って下さる方なのだから、私とグレタの会話が聞こえていたとしたらとても辛かっただろうことは簡単に想像が出来る。
ただでさてリボンのことで悲しんでおられたというのに、自分の悪い噂を流されていたと知ったらどれだけ傷付いたことだろう。
グレタの話を聞いた時私だって衝撃を受けた、お仕えする方の物を盗み、意図的に悪い噂を広め自分の立場を優位にしようとするなんて、パティは成人前の子供だというのに大人の私が驚く様な悪意をあんな幼い子供に向けるなんて信じられない。
「どうしたらいいのでしょう、私はお嬢様に聞かせるべきではない話を無理矢理聞かせてしまったのかもしれない。お嬢様を傷付けて、だから熱を出してしまったのかも」
心を守るために意識を失うことがあると聞いていたのに、私はミルフィーヌ様の前で魔道具を使うべきではなかったのに。
「ルーシー」
「どうしたらいいのでしょう。ミルフィーヌ様、お嬢様を傷付けるつもりなんて無かったのに」
「……ミルフィ様はあなたに悪意があったとは思っていないでしょう。だから彼女が目覚めてもその話はしてはいけませんよ」
「謝罪してはいけないのですか?」
私は今すぐ謝りたいというのに、それすら許されないのだろうか。
「……ミルフィ様からお話をだされたのなら別ですが、もし聞こえていなかったフリをされているのなら、本人が聞いていたことを隠したいと考えているのにわざわざ話をするのは酷というものです」
そう言われて俯いてしまう。
「あの方は優しいから、謝罪されれば受け入れ許すでしょうが、それで楽になるのは私達だけ、そう思いませんか」
謝罪して楽になるのは謝罪した側、傷付いたミルフィーヌ様は辛い思いのまま。
「私はどうしたら?」
「これ以上ミルフィ様が傷付くことが無いようにお守りする。パティの件を早く解決する策を見つけ動くしかないでしょう」
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キム先生の言葉に私は項垂れてしまう。
私もキム先生も、取り返しのつかないことをしてしまったのだから。
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