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本編
やっぱり、諦められない
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「あれ、雅」
応援すると誓った傍からその誓いを破らせたいのかという事が起きるのは、どうしたらいいんだろう。
寮を出て少し歩いた先で待っていた雅を見つけ、僕はこっそりため息をついた。
「一人?」
主人公の姿は無かった。
ちょっと離れた先にパステルピンクの頭が見える。隣は誰だろう。主人公よりだいぶ背が高い人と並んで歩いている。
「ああ、川島がいたから一緒に行かせた。あいつは面倒見がいいからな」
そっけない雅の言い方にドキッとする。
昨日の学園案内イベントも川島君がしてるのに、いくらイベントじゃないとは言え一緒に登校するなんて好感度上がって川島君ルートに入っちゃうじゃないか。
「そうなんだ。雅も先に行ってて良かったのに」
言った傍から後悔する。
可愛くない、折角待っててくれたのに。
こういう言い方本当可愛くない。素直に待っててくれて嬉しいって言えばいいのに。
諦めようとしてるのに、なんで優しくするんだよという気持ちが先に立ってしまう。
「悪い、一人で行きたかったか?」
「そうじゃないよ。あの、転校生。木村君だけ先に行かせるの悪かったなって、待っててくれたんでしょ?」
どうして雅と一緒にいたのか分らない。
僕に挨拶したかったとしても、教室ですればいい話だ。
遠くに見えるパステルピンクの髪に、なんだか気持ちがもやもやする。
基本は黒色、でも色んな髪色があるこの世界でも、あのパステルピンクは目立つ。
雅は栗色の髪の美形だけど、他の攻略対象者は赤とか青とかの髪色だったりするから、主人公と並んだスチルは結構派手だった覚えがある。
「待ってた? ああ、そうだな俺が入り口でハルを待っていたらあいつが声を掛けてきたんだ」
雅の答えに驚いて「え」と声を出してしまう。
昨日出会ったばかりの平民が、雅に声を掛け立ち話をする。それって凄い度胸だ。
雅は銀縁眼鏡で目付きもちょっと鋭い。何せ二重に切れ長の目の迫力がある美形だ。
美形な上に背も高いし、上位貴族嫡男という彼には余程親しくなければ気安く声を掛けて立ち話なんてする人はいない。
他のクラスの人は、用事があってクラスに尋ねて来てもなかなか雅に声を掛けられない人だっている位なのだ。
「挨拶がしたかったというよりハルの体調を心配していたみたいだな」
「話した事もない人間の心配までしてくれちゃうなんて、優しい人なんだね」
気持ちがもやもやして、つい意地悪な言い方をしてしまう。
本当は雅と話をする切っ掛けが欲しかったんじゃないのかと、邪推したくなるのはモブの僕の心が狭いせいだ。
「優しいのか、何か企みがあるのか分らないけどな」
「企み?」
遅刻しないように、今日は普通の速度で歩きながら雅の言葉に首を傾げる。
「昨日、早退したから心配だと言いながら、ハルの姿が見えなくなった途端「早く行きましょう。山城様と二人きりでお話出来るの嬉しいです」だぞ。あからさま過ぎるだろう」
険のある言い方をしながら、眉間に皺を寄せ雅は遙か先を歩く転校生の姿を睨み付ける。
転校生は彼の隣を歩く川島君に寄り添う様に歩いている。あれって友達とかクラスメイトの距離感じゃない。
手が触れそうな距離にちょっとだけ不安になる。もう川島君ルートに入ってるんじゃ無いよね?
「それは素直な感想なんじゃない?」
「は?」
普通の速度で歩いてるつもりなのに、少し歩みが遅いのか後ろから何人も僕達を追い越して歩いていく。
すれ違いざま雅に挨拶をしていくけれど雅は軽く頷く程度で、声には出さない。
雅の知り合いというより、ただ一方的に向こうが雅を知っているだけなんだろう。
「心配してたのも本当。だけど元気な僕の顔を確認出来たし、挨拶も出来たから僕への関心はそこで薄れた。僕は先に行ってと言ったし、彼にしたら少しでも早くクラスメイトと仲良くなりたいから、雅と話せるのが嬉しいって言っただけ。違うかな」
転校生へのフォローなんてしたくないけれど。
雅が転校生を好きになる未来があるなら、気は進まないけれど応援しないといけないよね。
「ハルは優しいな」
「平民の子が貴族ばかりの学校に馴染むのは大変そうだなって思っただけだよ」
優しくなんかない。
雅が本気で転校生を好きになるなんて未来が、来ないといいと願ってるんだから。
「そう考えるところが優しいって言うんだよ」
立ち止まり、雅は僕の頭を撫でる。
「雅、髪ぐしゃぐしゃになるよ」
昨日と違って周囲に人がいるから、気になってしまう。
「ハルの髪サラサラだから、大丈夫だよ」
笑いながら雅は僕のくしゃくしゃになったであろう前髪を直してくれる。
「大丈夫じゃないよ。癖が付くと直すの大変なんだよ」
「悪い悪い」
笑いながら雅が歩き出すから、僕は慌てて動き出す。
ああ、もう。なんか顔が熱い。
「ああ、ハル」
「何?」
「俺はハルと二人きりで話せるのが嬉しいよ」
「え」
「だから明日からも一緒に登校しよう」
「え」
雅が何を言っているのか理解出来ない。
いや、理解できるけどでも理解出来ない。
「駄目か」
「駄目じゃないけど」
「じゃあ、明日からは部屋に迎えに行く」
駄目じゃ無いけれど、良くないよね。
雅と親しくなればなる程、転校生と雅が上手くいった時に辛くなってしまう。
「いいよね」
「……うん」
だけど断れない、断りたくない。
諦めないといけないと分ってるのに、雅と少しでも一緒にいられる時間が増えるなら嬉しいと思ってしまうんだ。
ああ、僕は馬鹿だ。
雅と並んで歩きながら、僕は自分の馬鹿さ加減が嫌になっていた。
応援すると誓った傍からその誓いを破らせたいのかという事が起きるのは、どうしたらいいんだろう。
寮を出て少し歩いた先で待っていた雅を見つけ、僕はこっそりため息をついた。
「一人?」
主人公の姿は無かった。
ちょっと離れた先にパステルピンクの頭が見える。隣は誰だろう。主人公よりだいぶ背が高い人と並んで歩いている。
「ああ、川島がいたから一緒に行かせた。あいつは面倒見がいいからな」
そっけない雅の言い方にドキッとする。
昨日の学園案内イベントも川島君がしてるのに、いくらイベントじゃないとは言え一緒に登校するなんて好感度上がって川島君ルートに入っちゃうじゃないか。
「そうなんだ。雅も先に行ってて良かったのに」
言った傍から後悔する。
可愛くない、折角待っててくれたのに。
こういう言い方本当可愛くない。素直に待っててくれて嬉しいって言えばいいのに。
諦めようとしてるのに、なんで優しくするんだよという気持ちが先に立ってしまう。
「悪い、一人で行きたかったか?」
「そうじゃないよ。あの、転校生。木村君だけ先に行かせるの悪かったなって、待っててくれたんでしょ?」
どうして雅と一緒にいたのか分らない。
僕に挨拶したかったとしても、教室ですればいい話だ。
遠くに見えるパステルピンクの髪に、なんだか気持ちがもやもやする。
基本は黒色、でも色んな髪色があるこの世界でも、あのパステルピンクは目立つ。
雅は栗色の髪の美形だけど、他の攻略対象者は赤とか青とかの髪色だったりするから、主人公と並んだスチルは結構派手だった覚えがある。
「待ってた? ああ、そうだな俺が入り口でハルを待っていたらあいつが声を掛けてきたんだ」
雅の答えに驚いて「え」と声を出してしまう。
昨日出会ったばかりの平民が、雅に声を掛け立ち話をする。それって凄い度胸だ。
雅は銀縁眼鏡で目付きもちょっと鋭い。何せ二重に切れ長の目の迫力がある美形だ。
美形な上に背も高いし、上位貴族嫡男という彼には余程親しくなければ気安く声を掛けて立ち話なんてする人はいない。
他のクラスの人は、用事があってクラスに尋ねて来てもなかなか雅に声を掛けられない人だっている位なのだ。
「挨拶がしたかったというよりハルの体調を心配していたみたいだな」
「話した事もない人間の心配までしてくれちゃうなんて、優しい人なんだね」
気持ちがもやもやして、つい意地悪な言い方をしてしまう。
本当は雅と話をする切っ掛けが欲しかったんじゃないのかと、邪推したくなるのはモブの僕の心が狭いせいだ。
「優しいのか、何か企みがあるのか分らないけどな」
「企み?」
遅刻しないように、今日は普通の速度で歩きながら雅の言葉に首を傾げる。
「昨日、早退したから心配だと言いながら、ハルの姿が見えなくなった途端「早く行きましょう。山城様と二人きりでお話出来るの嬉しいです」だぞ。あからさま過ぎるだろう」
険のある言い方をしながら、眉間に皺を寄せ雅は遙か先を歩く転校生の姿を睨み付ける。
転校生は彼の隣を歩く川島君に寄り添う様に歩いている。あれって友達とかクラスメイトの距離感じゃない。
手が触れそうな距離にちょっとだけ不安になる。もう川島君ルートに入ってるんじゃ無いよね?
「それは素直な感想なんじゃない?」
「は?」
普通の速度で歩いてるつもりなのに、少し歩みが遅いのか後ろから何人も僕達を追い越して歩いていく。
すれ違いざま雅に挨拶をしていくけれど雅は軽く頷く程度で、声には出さない。
雅の知り合いというより、ただ一方的に向こうが雅を知っているだけなんだろう。
「心配してたのも本当。だけど元気な僕の顔を確認出来たし、挨拶も出来たから僕への関心はそこで薄れた。僕は先に行ってと言ったし、彼にしたら少しでも早くクラスメイトと仲良くなりたいから、雅と話せるのが嬉しいって言っただけ。違うかな」
転校生へのフォローなんてしたくないけれど。
雅が転校生を好きになる未来があるなら、気は進まないけれど応援しないといけないよね。
「ハルは優しいな」
「平民の子が貴族ばかりの学校に馴染むのは大変そうだなって思っただけだよ」
優しくなんかない。
雅が本気で転校生を好きになるなんて未来が、来ないといいと願ってるんだから。
「そう考えるところが優しいって言うんだよ」
立ち止まり、雅は僕の頭を撫でる。
「雅、髪ぐしゃぐしゃになるよ」
昨日と違って周囲に人がいるから、気になってしまう。
「ハルの髪サラサラだから、大丈夫だよ」
笑いながら雅は僕のくしゃくしゃになったであろう前髪を直してくれる。
「大丈夫じゃないよ。癖が付くと直すの大変なんだよ」
「悪い悪い」
笑いながら雅が歩き出すから、僕は慌てて動き出す。
ああ、もう。なんか顔が熱い。
「ああ、ハル」
「何?」
「俺はハルと二人きりで話せるのが嬉しいよ」
「え」
「だから明日からも一緒に登校しよう」
「え」
雅が何を言っているのか理解出来ない。
いや、理解できるけどでも理解出来ない。
「駄目か」
「駄目じゃないけど」
「じゃあ、明日からは部屋に迎えに行く」
駄目じゃ無いけれど、良くないよね。
雅と親しくなればなる程、転校生と雅が上手くいった時に辛くなってしまう。
「いいよね」
「……うん」
だけど断れない、断りたくない。
諦めないといけないと分ってるのに、雅と少しでも一緒にいられる時間が増えるなら嬉しいと思ってしまうんだ。
ああ、僕は馬鹿だ。
雅と並んで歩きながら、僕は自分の馬鹿さ加減が嫌になっていた。
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