【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

なんでここで出てくるの?

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「じゃあ、お会計しよっか」

 舞の幸せ可愛い顔に勇気を貰った気持ちになった僕は、凄く雅に会いたくなってしまった。
雅に会いたい。さっきのがイベントで、雅の攻略がすすんで好感度が上がってるのが怖いけれど。

「佐々木様待ってるんじゃない?」
「四時までに帰って来いと言われましたので、まだ時間あります」

 授業が終わるのが三時、そこから帰る準備して舞と学校を出たのが三時十五分。
 のんびり話ながら歩いてコンビニ到着が三時二十五分頃、四時ってあっという間だ。

「愛だね」

 いいいなあ、舞。僕もそんな風に雅に束縛されたい。
 淋しい僕は買い物したものを部屋に置いたらシャワーを浴びて着替えてから雅の部屋に行こう、メイドさん達は僕を覚えてくれていて例え雅が居なくても部屋に通してくれるから、その時は一人で勉強していればいいや。と思い直し舞を会計に誘う。

「千晴様は他にお買い物はありませんか」
「うん、僕は大丈夫。舞は?」
「僕のものは、藤四郎様が用意してくださっていますので」

 そういう舞はとっても幸せそうで、僕も幸せな気持ちになる。
 舞が笑っていると僕も幸せだ。
 怖い思いをしたけれど、あの夜佐々木様の部屋に行って良かったと本当に思う。

「舞は佐々木様に愛されているね」

 舞の幸せな顔を見て喜べる自分が嬉しいと思いながらそう言って、レジの前の棚に釘付けになった。

「ま、舞っ」
「はいっ」
 
 僕の勢いにビックリした舞は体をぶるっと振るわせた後、僕が指差した方向を見た。

「あ、あれ。雅、みや、雅だよ!」
「え」

 理解が出来ないという顔で、舞は僕と棚を交互に見る。
言動が可笑しいのは自覚済み、でも仕方ないよ。
 だって、こんなのがこの世界あるなんて、一体誰が思った? これ、これっ!

「あれ、あの狼。雅に見えない?」

 悲鳴に近い声を出しながら指差した。
 だって、だってなんでこれがここにあるの。

「落ち着いて下さい、千晴様。あれは犬? 狼なのですか? 分かりませんが動物のイラストで山城様では……藤四郎様?」

 僕が指差した先にあったのは、BLゲーム「華乙男のラブ日和」のゲーム内にあったグッズだった。

「一回七百円。空くじ無し? これなんでしょう」

 箱入りな舞はコンビニのくじを知らないらしく首を傾げている。僕も前世の記憶を思い出してなければ同じ反応だったろう。

「動物だって分かってるよ。でも僕にはこれ雅にしか見えない」
「僕も藤四郎様にしか見えません。でも、どうして」

 僕が指差しているのは、銀縁眼鏡をして学園の制服を着て二本足で立ちポーズをしている狼のアクリルスタンドとアクリルキーホルダーとコースターだ。
 舞が呆然と見つめているのは、濃い緑色の体をしたドラゴン、こちらは首もとにシャツの襟とネクタイだけを付けている姿のアクリルスタンドとアクリルキーホルダーとコースター。全部絵柄が違うのが凄い。そういえば佐々木様の髪色は濃い緑色だった。

「分らないけど、僕これやる」

 これはゲームの終盤近くに学園のコンビニに現れるくじだった
 それぞれの攻略対象者をテーマとした動物のグッズがあり、主人公がくじを引くとその時点で攻略間近の人が分るのだ。
 一人だけ攻略完了間近なら当たるグッズも攻略対象者のみ描かれたグッズ、お友達エンドの場合は全員が描かれているグッズが当たる。
攻略具合が分かり易いのが利用者に受けていた。
 ちなみに攻略対象者のみのグッズはアクスタとアクキーとコースターの合計三つあり、それが全部当たれば攻略確定三つの内一つでも全員バージョンだとまだ攻略が終わっていないという目安にもなる。

「舞もやって」
「僕ですか?」
「だって、舞そのドラゴンが佐々木様に見えるんでしょ。だったら舞が当てないと」

 他の動物(残りは狐、ウサギ、ライオンだ)も全部あるから、まだ主人公はくじをやってないんだろう。攻略対象者単独のもの以外は、学園のエンブレムが入ったステッカーやコースター等で攻略対象者全員バージョンは無いみたいだ。この辺りはゲームと違う。
 だったら今現在佐々木様の小姓である舞が、彼のグッズをくじで当てた方がいいと思う。

「藤四郎様に見えるものを、他の人に使われたくありません」
「だよね、だよね。やろう、舞」

もしこの世界が本当にゲームだとしたら、このくじが今出てくるのは早すぎる。
だってゲームなら序盤の時期なのだ。だから、例え三つ全部当たったとしても攻略完了の目安にならないのかもしれない。
でも、もしドラゴンを主人公である木村春が当ててしまったら。
 もしかしたら、ゲーム補正で今後佐々木様×木村春ルートが確立してしまうかもしれない。それが怖かった。

「僕やります。ええと。ドラゴンのグッズは三つですから三回ひきます」
「いいの、舞」
「はい。私が自信を持つにはこの位強気でなければいけないかと。千晴様、僕が先に引かせて頂いてもいいでしょうか」

 舞は決心した顔で僕に聞いてくる。
 分るよ、舞。
 佐々木様の思いを舞はまだ全部受け入れられていないんだろう。
 自分の身分不相応だと思っている。そんな事無いのに。
 このくじが舞の自信に繋がるなら、それで良いと僕は頷く。

「勿論、頑張って舞」
「はい。スミマセンこちらのお会計とくじを三回お願いします」

 キッと舞はドラゴンを睨み付け、レジの人にチョコレートを差し出し三回くじを引くと宣言した。

「では、こちらを三回引いて下さい」
「舞、頑張って」

 会計を終え真剣な顔で舞は、くじを三枚引いた。
 僕は祈る。舞が選んだくじが佐々木様のドラゴンである様に。

「ええと、ドラゴンのD、A、B。全部ドラゴンです」
「やったね、舞!」

 嬉しくてぴょんぴょん跳びはねながら、僕は大声を出した。
 このくじマジだ。つまり僕が引いたら???

「僕もひきます。三回」

 チョコレートと一緒に、くじを引く宣言。
 三回引いた結果は、全部狼だった。嘘、僕当たっちゃった。

「千晴様!」

 舞が感激の声を上げるけれど、店員さんは「あ~」とため息をついた。

「狼狙いかあ。残念」
「え、どうしてですか。狼のみの賞品は全部当てているのでは?」
「ラストワン賞が狼なんだよ。これ、くじを引けるのは一日三回までなんだ。まだくじは残ってるから、でも今はラストワンは当たらないんだよねえ」

 三品のグッズを手渡されながら、大きな狼のぬいぐるみを見つめる。
 グレーの毛並みに前髪だけ茶色。そして銀縁眼鏡の狼のぬいぐるみ。
 これがラストワン賞なのか。でも賞品はまだ棚にあるし、くじを引けるのは三回までじゃラストワン賞にはたどり着けない。

「お金なら出せます。どうしても駄目ですか」

 僕はダメ元で必死に店員さんにお願いする。

「悪いね。この学園皆さんお金持ってるでしょ。だから、一人で全部のくじ引くなんて事が無いように、学園の決まりで制限されてるんだよ」
「そうですか、じゃあ仕方ないですね」
「千晴様」
「仕方ないよ。僕は三種類のグッズが貰えただけで嬉しいから」

 店員さんが渡してくれたグッズは、どれも可愛くて。僕の気持ちがキュンキュンしてしまう。

「でも、千晴様」
「仕方ないよ。僕は雅のグッズが当たっただけで嬉しいんだから。いいの」

 だってしょうがないよね。
 それがゲームの仕様なんだから。
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