64 / 119
本編
メールの送信者は誰だ
しおりを挟む
「ごめんね、迷惑掛けてたんだ」
「大丈夫。あのお陰で問題なく日付を前倒しできたんだから」
「つまり、小姓になったから雅の部屋に泊った」
「そういうこと」
こんな怖いメールの話をしているのに、雅は何だかご機嫌だ。
僕が怖くてずっと泣いていたのに、雅にとっては大したことないんだろう。
「このメールって木村君なのかな」
雅がモブという言葉を知らないのなら、この世界の人が日常で使う言葉じゃないと言う事だ。文面から言っても、モブという言葉からもこのメールの差し出し人は木村君だと分る。
でも、この写真は一体どうやって撮ったんだろう。
「写真を撮ったのは別な人間だろうけれど。メールはそうかもしれないな」
「写真は違う?」
大林君達がいたから、確かに木村君が撮るのは難しかっただろう。
だってそもそもこんな事が起きてるとは、思わなかった? いや、思っていた?
「ハルは保健室のドアを背にしていた。大林達が来た方向からこの角度は撮れない。つまり、撮ったのは保険医だろうな。あの時他に人影は無かった」
「保険医、どういうこと」
「保険医とあの男と木村の共謀ってことだろうな」
三人の共謀。
でもどうやって三人が知り合った? イベント、まさか主人公がイベントを無理矢理起そうと計画して二人に声を掛けた?
「木村君が二人に?」
「可能性はあるが、そもそも保健室に行かなければこの写真は撮れない。ハルが気を失ったのは谷崎に頬を打たれたショックで気を失ったからだ。そんなの計画しようにも出来ないだろう」
「そうだけど」
「ただ、機会を窺っていてたまたま保健室にハルが行ったから今日計画を行動に移したのかもしれない」
でも、イベント。木村君はそう言ったから。
保健室でそういうイベントがあるんだ。僕は記憶にないけど、そのイベントの為に木村君が上手く周囲を誘導していたとしたら?
「あの人、木村君は僕を保健室に連れて行こうとしてたんだ。僕が拒否してあの騒ぎが起きたけどそうじゃなく素直に木村君に保健室に連れて行って貰ったとしたら」
「俺はハルの側にはいなかった」
想像で背筋が寒くなる。
雅がいなくて、木村君はイベントを起そうとしていた本人で、保険医とあの人が実行犯だとしたら、僕は助けを呼べない保健室に誘いこまれそうになっていた?
「雅」
震えながら雅にしがみつく。
もしあの時、想像するだけでも怖くなる。
「大丈夫だ、落ち着け。ハルはもう俺の小姓になったんだ。俺にはハルを守る義務も権利もある」
「どんな時も?」
「ああ、側に居られない時は必ず俺の配下がハルの側に居る。だから大丈夫だ」
「ごめんね、僕弱くて」
もっとしっかりしていたら、雅にこんな迷惑掛けずに済むのに。
僕は弱すぎる。
「いいんだ。そういう弱いところも含めてハルなんだから」
「でも」
「頼られて喜んでるよ、俺は。佐々木には夕飯後の時間にでも話をしてくるし、ハルには明日から供を付ける。腕に覚えがあるメイドだから安心していい」
腕に覚えがあるって、どんなメイドさんなんだろう。
というか、男の僕のお供がメイドさんなのかと思うと余計に落ち込む。
「気持ちが落ち着いたら、向こうでお茶でもしようか」
「うん。今何時?」
「もう授業が終わった頃だ。夕食には少し早いかな」
「そんな時間なの、僕結構寝てたんだ」
寝て、メール見て泣いてたせいか、なんだか少し頭が痛い。
「顔洗いたいかも、雅?」
「ん」
「手、離してくれないと、お茶にするんじゃないの?」
洗面所を借りたいし、その為にはベッドから出ないと行けないんだけど、雅の両腕がそれを阻む。
「うん」
「うんって言うなら、手を」
「もう少しだけ、こうしてようか」
こうしてようかと言いながら、雅の片手は僕の背中を撫でてもう片方は僕の頭を抱きしめている。
「今日からハル、ここで暮らすんだなって思ったら嬉しくて。離れがたい」
「暮らす? 僕ここに今日から住むの?」
「なんでそこで驚くかな。側に居たいって自分で言ってたくせに」
体を離して、雅が笑いながら僕をからかう。
「だって」
僕用の部屋、ベッド置いてなかったよ。
あれ? 寝室は別なのかな。いや、そうじゃなくて、もしかして。
「僕、もしかしてこのベッドで寝るとか?」
「なんで疑問系? ここで暮らすのにどこで寝るつもりなのかな」
「え、え、え」
あれ、小姓って。あれ、閨事って。
どうしよう、またパニックだ。
「そういえば教えてなかったか。さっきそんな話しなかったもんな」
どうしよう。心臓がバクバクしてる。
一緒に寝るの? 同じベッドで、毎晩? 死んじゃうよ、心臓壊れちゃうよ。
「み、雅。僕」
「焦らなくていいよ。ハルの知識がお子様なのは理解したから、ゆっくりすると決めたから。だから安心して……」
僕をからかう雅の笑顔は、ドアをノックする音で切り替わった。
「どうした」
「大林様がいらっしゃいましたが如何いたしますか」
「すぐに行く。ハルに着替えを」
ドア越しに会話した後、メイドさんはドアを開き中に入ってきた。
大林様って、大林君? 部屋に来るなんて何かあったんだろうか。
僕の不安は、まさかな展開に繋がっていたんだ。
「大丈夫。あのお陰で問題なく日付を前倒しできたんだから」
「つまり、小姓になったから雅の部屋に泊った」
「そういうこと」
こんな怖いメールの話をしているのに、雅は何だかご機嫌だ。
僕が怖くてずっと泣いていたのに、雅にとっては大したことないんだろう。
「このメールって木村君なのかな」
雅がモブという言葉を知らないのなら、この世界の人が日常で使う言葉じゃないと言う事だ。文面から言っても、モブという言葉からもこのメールの差し出し人は木村君だと分る。
でも、この写真は一体どうやって撮ったんだろう。
「写真を撮ったのは別な人間だろうけれど。メールはそうかもしれないな」
「写真は違う?」
大林君達がいたから、確かに木村君が撮るのは難しかっただろう。
だってそもそもこんな事が起きてるとは、思わなかった? いや、思っていた?
「ハルは保健室のドアを背にしていた。大林達が来た方向からこの角度は撮れない。つまり、撮ったのは保険医だろうな。あの時他に人影は無かった」
「保険医、どういうこと」
「保険医とあの男と木村の共謀ってことだろうな」
三人の共謀。
でもどうやって三人が知り合った? イベント、まさか主人公がイベントを無理矢理起そうと計画して二人に声を掛けた?
「木村君が二人に?」
「可能性はあるが、そもそも保健室に行かなければこの写真は撮れない。ハルが気を失ったのは谷崎に頬を打たれたショックで気を失ったからだ。そんなの計画しようにも出来ないだろう」
「そうだけど」
「ただ、機会を窺っていてたまたま保健室にハルが行ったから今日計画を行動に移したのかもしれない」
でも、イベント。木村君はそう言ったから。
保健室でそういうイベントがあるんだ。僕は記憶にないけど、そのイベントの為に木村君が上手く周囲を誘導していたとしたら?
「あの人、木村君は僕を保健室に連れて行こうとしてたんだ。僕が拒否してあの騒ぎが起きたけどそうじゃなく素直に木村君に保健室に連れて行って貰ったとしたら」
「俺はハルの側にはいなかった」
想像で背筋が寒くなる。
雅がいなくて、木村君はイベントを起そうとしていた本人で、保険医とあの人が実行犯だとしたら、僕は助けを呼べない保健室に誘いこまれそうになっていた?
「雅」
震えながら雅にしがみつく。
もしあの時、想像するだけでも怖くなる。
「大丈夫だ、落ち着け。ハルはもう俺の小姓になったんだ。俺にはハルを守る義務も権利もある」
「どんな時も?」
「ああ、側に居られない時は必ず俺の配下がハルの側に居る。だから大丈夫だ」
「ごめんね、僕弱くて」
もっとしっかりしていたら、雅にこんな迷惑掛けずに済むのに。
僕は弱すぎる。
「いいんだ。そういう弱いところも含めてハルなんだから」
「でも」
「頼られて喜んでるよ、俺は。佐々木には夕飯後の時間にでも話をしてくるし、ハルには明日から供を付ける。腕に覚えがあるメイドだから安心していい」
腕に覚えがあるって、どんなメイドさんなんだろう。
というか、男の僕のお供がメイドさんなのかと思うと余計に落ち込む。
「気持ちが落ち着いたら、向こうでお茶でもしようか」
「うん。今何時?」
「もう授業が終わった頃だ。夕食には少し早いかな」
「そんな時間なの、僕結構寝てたんだ」
寝て、メール見て泣いてたせいか、なんだか少し頭が痛い。
「顔洗いたいかも、雅?」
「ん」
「手、離してくれないと、お茶にするんじゃないの?」
洗面所を借りたいし、その為にはベッドから出ないと行けないんだけど、雅の両腕がそれを阻む。
「うん」
「うんって言うなら、手を」
「もう少しだけ、こうしてようか」
こうしてようかと言いながら、雅の片手は僕の背中を撫でてもう片方は僕の頭を抱きしめている。
「今日からハル、ここで暮らすんだなって思ったら嬉しくて。離れがたい」
「暮らす? 僕ここに今日から住むの?」
「なんでそこで驚くかな。側に居たいって自分で言ってたくせに」
体を離して、雅が笑いながら僕をからかう。
「だって」
僕用の部屋、ベッド置いてなかったよ。
あれ? 寝室は別なのかな。いや、そうじゃなくて、もしかして。
「僕、もしかしてこのベッドで寝るとか?」
「なんで疑問系? ここで暮らすのにどこで寝るつもりなのかな」
「え、え、え」
あれ、小姓って。あれ、閨事って。
どうしよう、またパニックだ。
「そういえば教えてなかったか。さっきそんな話しなかったもんな」
どうしよう。心臓がバクバクしてる。
一緒に寝るの? 同じベッドで、毎晩? 死んじゃうよ、心臓壊れちゃうよ。
「み、雅。僕」
「焦らなくていいよ。ハルの知識がお子様なのは理解したから、ゆっくりすると決めたから。だから安心して……」
僕をからかう雅の笑顔は、ドアをノックする音で切り替わった。
「どうした」
「大林様がいらっしゃいましたが如何いたしますか」
「すぐに行く。ハルに着替えを」
ドア越しに会話した後、メイドさんはドアを開き中に入ってきた。
大林様って、大林君? 部屋に来るなんて何かあったんだろうか。
僕の不安は、まさかな展開に繋がっていたんだ。
176
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
【完結】腹黒王子と俺が″偽装カップル″を演じることになりました。
Y(ワイ)
BL
「起こされて、食べさせられて、整えられて……恋人ごっこって、どこまでが″ごっこ″ですか?」
***
地味で平凡な高校生、生徒会副会長の根津美咲は、影で学園にいるカップルを記録して同人のネタにするのが生き甲斐な″腐男子″だった。
とある誤解から、学園の王子、天瀬晴人と“偽装カップル”を組むことに。
料理、洗濯、朝の目覚まし、スキンケアまで——
同室になった晴人は、すべてを優しく整えてくれる。
「え、これって同居ラブコメ?」
……そう思ったのは、最初の数日だけだった。
◆
触れられるたびに、息が詰まる。
優しい声が、だんだん逃げ道を塞いでいく。
——これ、本当に“偽装”のままで済むの?
そんな疑問が芽生えたときにはもう、
美咲の日常は、晴人の手のひらの中だった。
笑顔でじわじわ支配する、“囁き系”執着攻め×庶民系腐男子の
恋と恐怖の境界線ラブストーリー。
【青春BLカップ投稿作品】
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる