【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

目覚めた僕は

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「あれ」

 目を開けたらサロンの天井が見えた。
 なんで僕サロンで寝てるんだろ?
 お昼休みだったかな?と惚けた頭で視線を動かしたら、メイドさんが近付いてきた。

「千晴様、お気づきになられましたか。ご気分は如何でしょうか」
「ええと?痛っ」

 左手を支えに体を起こそうとして、指先の痛みに顔をしかめた。
 なんでこんな痛みが?そこまで考えてやっと思い出した。

「千晴様、傷が深いのです。左手はなるべくお使いになりませんよう」
「わかった、結構痛いかも」
「数針縫っておりますので、お食事されてから痛み止をお飲みくださいと医師より指示が出ておりますが、何か召し上がれますか」
「ううん今はいいです。あ、授業。今何時かな?」

 部屋の中を見渡しても雅の姿は無いから、授業を受けているんだろう。
 雅の姿がないと何だか不安になる。
 でも、ほんの少し離れただけで不安になるとか、子どもじゃないんだから、もっと強くならないと駄目だよね。

「十時半を過ぎたばかりです。ご主人様は授業を受けていらっしゃいます」
「そう」
「部分麻酔をしておりますが、痛みが出ているということは麻酔が切れてきたのでしょう。感覚は如何ですか」
「えっと、なんか痛いけれど。指先の感覚はあるよ」

 包帯が巻かれた指に触れると、鈍く痛みが走るし、指先に触れた時にも感覚がある。
 切ったのは左手の人差し指、親指側の爪先から第二間接の辺り、四、五センチ程度切れていた様に見えた。

「なんとなくジクジクって感じに痛いかも」

 なんであんなに簡単に切れちゃったのか分からないけれど、感覚的にはスパッと切れた感じだった。

「申し訳ございません。あの方が机に触れていたのですから、中を確認すべきでした。私共の落ち度でございます」
「そ、そんなことないよ。あの時先生が来たからそんな暇無かったんだし、僕も気にせず手を入れちゃったのが悪かったんだよ」
「ですが」
「それより、何か飲み物貰えるかな。さっぱりしたものがいいな」
「それでしたら、炭酸水の無糖のもの、ジンジャーエール、柑橘類のスカッシュ、ウーロン茶にハーブティもございます」
「じゃあ、ジンジャーエールかな。氷無しでグラスに半分だけお願いします」
「畏まりました」

 メイドさんが一礼して下がっていくのを見届けて、僕はじっと左手を見る。
 包帯が巻かれた指、メイドさんの話によれば何針か塗っているらしい。
 自分の指を縫うなんて、想像するだけで貧血起こしそうだ。

「雅にまた迷惑掛けちゃったな」

 怪我した。それだけで気を失う僕。
 きっと凄く心配掛けたし、迷惑も掛けた。
 雅自身大変だったのに、僕は足を引っ張るしか出来ないのかと自己嫌悪に陥ってしまう。

「はあぁっ」

 雅はそんなこと思っていないと分かってるのに、今側に居てくれない、その事実が僕を追い詰める。

 もしかしたら僕を面倒に思ってるんじゃないか、小姓にしたのを後悔しているんじゃないか、という不安。

 あれだけ僕を大切にしてくれているのに、それなのに不安になる僕を、僕自身嫌悪してしまう。

「雅、助けて」

 僕を不安にするのも、安心させるのも雅なんだ。

「雅、雅」

 どうしてこんなに不安なんだろう。
 雅が側にいないなんて、ほんの一ヶ月前には当たり前だったというのに、今は雅の不在が不安で仕方ない。

「こんなのおかしいよ。依存しすぎでしょ」

 おかしいと思うのに、僕はもう雅無しには生きていけないと思う。
 依存しまくりだ、こんなのおかしいと思うのに止められない。

「なんで、こんなの変だよ」

 不安で不安で不安で。
 今すぐに雅に会いたいと願ってしまう僕は、もう、おかしいのかもしれない。

「雅助けて」 

 何故こんなに不安なのか。
 どうして僕はこんなに弱いのか。

 分からないまま僕は、ここにはいない雅に助けを求めていたんだ。
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