108 / 119
本編
助けてくれた裏切り者
しおりを挟む
「ハルッ!」
ドアが開いた途端駆け込んできた雅達は、一斉に僕に駆け寄り保険医の拘束から助けてくれた。
「雅」
「離せっ、それは私のだ。ずっと目を付けていた、私のものだっ!」
「そんなモブより、僕にしてよぉ。僕の方がみやピーを幸せに出来るよぉ」
佐々木様やメイドさん達に拘束された二人は、大声で騒ぎ暴れながら、外へと連れ出された。
「ハル、すまない。守れなくて」
「大丈夫、ちゃんと来てくれた」
破れたシャツで縛られた腕をほどき、雅が上着を着せてくれる。
「雅、雅」
踏みつけられた指も蹴られた体も痛くてたまらなかったけれど、それよりも今は雅が側にいる安堵感でいっぱいだった。
「千晴様、お守りできず申し訳ございません」
「ううん、僕の用心が足りなかったんだよ。油断しちゃってたから、でもこれがあったから助かったんだよ」
指輪を見せると、青ざめた顔をしたメイドさんは少しだけ笑ってくれたんだ。
「ざーんねん。正気だな」
「何が言いたい。お前が裏切るなんて」
僕を抱き締めながら、雅が声を絞り出す。
悲しそうな声、本当に信頼してた筈なのに。
「そんな弱い奴のお守りを一生するつもりかよ。社交も出来ない、子供も生めない奴を」
「だからなんだ。ハルがいいんだ。ハル以外俺はいらない」
「俺の方が近くにいたのに、ずっとお前の近くにっ」
え、それって。まさか。
「もっと優秀な人なら、諦められたよ。女にお前を取られるなら仕方ないって思えたよ。なのに、なんでそんな奴を選ぶんだよ。馬鹿でお人好しで、自分が危ないって時にお前の為に裏切るなとかいう馬鹿なんて、どうしようもないだろ、馬鹿すぎるだろ。そんなのにお前を取られて、どうやって諦めろって言うんだよ」
へなへなとしゃがみこんで、頭を抱える。
これって何? 混乱する頭で白井さんを見下ろせば「お前なんか消えてしまえばいいんだ」と恨めしそうな声が僕を責め始めた。
「甘えて、弱いからと守ってもらえて。何も努力しないくせに愛情もらえて、ずるいだろそんなの。なんでお前なんだよ、なんで、なんで」
「話しにならないな、ハル行こう。手の傷も医者に診て貰わないと。この姿はまずいか、おい予備のシャツが置いてあるだろ」
もう雅にとって白井さんはどうでもいい人になってしまったんだろうか?
興味すらない様子で、メイドさんに保健室に備えてある簡易シャツを持ってこさせると僕に着せかけた。
「雅」
「サイズが大きいが、部屋に帰るまで我慢してくれ」
「雅、ねえ聞いて」
「ここに医者を呼んでもいいが、あんなことがあった部屋じゃ落ち着かないだろ。早く戻ろう」
「ねえ、雅、お願い」
床に投げ捨てられていた僕の上着を拾い雅は無言で埃を払う。
白井さんは頭を抱えたまま泣いている。
僕は上着を着て、指輪を外して雅に手渡す。
「指輪、まさかこんな風に役に立つとはな」
「念のための防犯って渡されたの。助かったよ、ありがとう」
「想定していた相手ではありませんでしたが、お役に立てて幸いでした」
まだ気にしているのか、しょんぼりしているメイドさんはそれでも少し笑ってくれた。
想定していた相手って、白井さんなのかな?
だとしたら、それに気付かずに意識失っちゃった僕が間抜けってことなのか。
防衛手段あったのにね。
「ねえ、雅。僕は彼女達と部屋に戻ってるから、白井さんと話をして」
「必要ない」
「あるよ。ちゃんと話して、これからどうするのか。今回の件、白井さんはどうでもいいよ、僕にとっての悪はあの二人だから、二人は雅の判断に任せるよ。最低限僕は彼らが一生僕と関わらなければそれでいい」
助けられた安堵感からなのだろうか、僕は自分の事よりも雅の気持ちを優先したかったんだ。
ドアが開いた途端駆け込んできた雅達は、一斉に僕に駆け寄り保険医の拘束から助けてくれた。
「雅」
「離せっ、それは私のだ。ずっと目を付けていた、私のものだっ!」
「そんなモブより、僕にしてよぉ。僕の方がみやピーを幸せに出来るよぉ」
佐々木様やメイドさん達に拘束された二人は、大声で騒ぎ暴れながら、外へと連れ出された。
「ハル、すまない。守れなくて」
「大丈夫、ちゃんと来てくれた」
破れたシャツで縛られた腕をほどき、雅が上着を着せてくれる。
「雅、雅」
踏みつけられた指も蹴られた体も痛くてたまらなかったけれど、それよりも今は雅が側にいる安堵感でいっぱいだった。
「千晴様、お守りできず申し訳ございません」
「ううん、僕の用心が足りなかったんだよ。油断しちゃってたから、でもこれがあったから助かったんだよ」
指輪を見せると、青ざめた顔をしたメイドさんは少しだけ笑ってくれたんだ。
「ざーんねん。正気だな」
「何が言いたい。お前が裏切るなんて」
僕を抱き締めながら、雅が声を絞り出す。
悲しそうな声、本当に信頼してた筈なのに。
「そんな弱い奴のお守りを一生するつもりかよ。社交も出来ない、子供も生めない奴を」
「だからなんだ。ハルがいいんだ。ハル以外俺はいらない」
「俺の方が近くにいたのに、ずっとお前の近くにっ」
え、それって。まさか。
「もっと優秀な人なら、諦められたよ。女にお前を取られるなら仕方ないって思えたよ。なのに、なんでそんな奴を選ぶんだよ。馬鹿でお人好しで、自分が危ないって時にお前の為に裏切るなとかいう馬鹿なんて、どうしようもないだろ、馬鹿すぎるだろ。そんなのにお前を取られて、どうやって諦めろって言うんだよ」
へなへなとしゃがみこんで、頭を抱える。
これって何? 混乱する頭で白井さんを見下ろせば「お前なんか消えてしまえばいいんだ」と恨めしそうな声が僕を責め始めた。
「甘えて、弱いからと守ってもらえて。何も努力しないくせに愛情もらえて、ずるいだろそんなの。なんでお前なんだよ、なんで、なんで」
「話しにならないな、ハル行こう。手の傷も医者に診て貰わないと。この姿はまずいか、おい予備のシャツが置いてあるだろ」
もう雅にとって白井さんはどうでもいい人になってしまったんだろうか?
興味すらない様子で、メイドさんに保健室に備えてある簡易シャツを持ってこさせると僕に着せかけた。
「雅」
「サイズが大きいが、部屋に帰るまで我慢してくれ」
「雅、ねえ聞いて」
「ここに医者を呼んでもいいが、あんなことがあった部屋じゃ落ち着かないだろ。早く戻ろう」
「ねえ、雅、お願い」
床に投げ捨てられていた僕の上着を拾い雅は無言で埃を払う。
白井さんは頭を抱えたまま泣いている。
僕は上着を着て、指輪を外して雅に手渡す。
「指輪、まさかこんな風に役に立つとはな」
「念のための防犯って渡されたの。助かったよ、ありがとう」
「想定していた相手ではありませんでしたが、お役に立てて幸いでした」
まだ気にしているのか、しょんぼりしているメイドさんはそれでも少し笑ってくれた。
想定していた相手って、白井さんなのかな?
だとしたら、それに気付かずに意識失っちゃった僕が間抜けってことなのか。
防衛手段あったのにね。
「ねえ、雅。僕は彼女達と部屋に戻ってるから、白井さんと話をして」
「必要ない」
「あるよ。ちゃんと話して、これからどうするのか。今回の件、白井さんはどうでもいいよ、僕にとっての悪はあの二人だから、二人は雅の判断に任せるよ。最低限僕は彼らが一生僕と関わらなければそれでいい」
助けられた安堵感からなのだろうか、僕は自分の事よりも雅の気持ちを優先したかったんだ。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
2,056
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる