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城塞都市の怪異
~10~
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妹の安否を確かめるべく、職務を放り出して自宅へ駆け戻った茶髪の若き兵士。
だが、彼が目にしたのは出勤前と寸分違わぬ、あまりにも静まり返った屋内の情景であった。
怪物が跋扈するこの非常事態において、妹が逃げ帰っていないことに戦慄する。
恐る恐る背後を振り返ると、預け先であった向かいの家の扉はわずかに開き、室内から灯りが漏れていた。
「まさか……、まだそこにいるのか?」
彼は吸い寄せられるように、その扉を開けて中を覗き込んだ。
夕餉の最中だったのだろうか。
テーブルの上や床には、皿や料理が散乱している。
そして倒れた椅子の傍らには、数人の物言わぬ人影が転がっていた。
もしやと思いつつも、すぐさま室内に入って確認すると、それはこの家の家族――先ほど人獣として相対した女性の夫や子供たちであった。
首筋に残る噛み跡から、彼らもおそらくは……。
だが、その中に最愛の肉親の姿がなかったことに、青年は不謹慎ながらも微かな安堵を覚えてしまっていた。
「――おい!」
その時、彼を呼ぶ鋭い声が響いた。
驚き振り返った青年の目に映ったのは、家の外で緑髪を振り乱し、肩で息をする上司の姿だった。
彼女は背後に迫った人獣を、振り返りざまの一閃で切り捨てる。
夜番の班長に隊長代理を任じた後、青年の激しい足音を聞きつけて現れる不死者をその都度斬り伏せながら、暴走する部下を追ってきたのだ。
「今すぐ戦列に戻れ」と叱責する緑髪の上司に対し、青年は首を振り拒絶する。
必死に言葉を返そうとした瞬間、自分を連れ戻そうと扉まで詰め寄っていた彼女の背後を、見慣れた薄茶色の髪の少女が笑いながら通り過ぎていくのが見えた。
探していた者の不意な出現にその名を叫び、青年は外へと飛び出そうとする。
だが、脇を通り抜けようとした部下の腕を、隊長は鉄の規律を象徴するかのような力で掴み、押し留めた。
少女は白い花の首飾りを跳ね上げながら軽やかに――兄の声が聞こえていないのか、一度も振り向かずに貧民街の奥まった暗がりの方へと走り去っていく。
この恐ろしい夜を駆ける少女のことは気に掛けながらも、隊長はまず、独断専行を犯した部下に理由を問うた。
青年は、妹とこの家の主婦が昨日の昼間に「施療所」を訪れてから、様子がおかしくなったと必死に訴えた。
「……行くぞ。もしかすると、そこが今回の事件の元凶かもしれん」
「た、隊長……!?」
彼女の思わぬ言葉に青年は驚きながらも、闇に消えた少女を追って、二人は街の深淵へと駆け出した。
だが、彼が目にしたのは出勤前と寸分違わぬ、あまりにも静まり返った屋内の情景であった。
怪物が跋扈するこの非常事態において、妹が逃げ帰っていないことに戦慄する。
恐る恐る背後を振り返ると、預け先であった向かいの家の扉はわずかに開き、室内から灯りが漏れていた。
「まさか……、まだそこにいるのか?」
彼は吸い寄せられるように、その扉を開けて中を覗き込んだ。
夕餉の最中だったのだろうか。
テーブルの上や床には、皿や料理が散乱している。
そして倒れた椅子の傍らには、数人の物言わぬ人影が転がっていた。
もしやと思いつつも、すぐさま室内に入って確認すると、それはこの家の家族――先ほど人獣として相対した女性の夫や子供たちであった。
首筋に残る噛み跡から、彼らもおそらくは……。
だが、その中に最愛の肉親の姿がなかったことに、青年は不謹慎ながらも微かな安堵を覚えてしまっていた。
「――おい!」
その時、彼を呼ぶ鋭い声が響いた。
驚き振り返った青年の目に映ったのは、家の外で緑髪を振り乱し、肩で息をする上司の姿だった。
彼女は背後に迫った人獣を、振り返りざまの一閃で切り捨てる。
夜番の班長に隊長代理を任じた後、青年の激しい足音を聞きつけて現れる不死者をその都度斬り伏せながら、暴走する部下を追ってきたのだ。
「今すぐ戦列に戻れ」と叱責する緑髪の上司に対し、青年は首を振り拒絶する。
必死に言葉を返そうとした瞬間、自分を連れ戻そうと扉まで詰め寄っていた彼女の背後を、見慣れた薄茶色の髪の少女が笑いながら通り過ぎていくのが見えた。
探していた者の不意な出現にその名を叫び、青年は外へと飛び出そうとする。
だが、脇を通り抜けようとした部下の腕を、隊長は鉄の規律を象徴するかのような力で掴み、押し留めた。
少女は白い花の首飾りを跳ね上げながら軽やかに――兄の声が聞こえていないのか、一度も振り向かずに貧民街の奥まった暗がりの方へと走り去っていく。
この恐ろしい夜を駆ける少女のことは気に掛けながらも、隊長はまず、独断専行を犯した部下に理由を問うた。
青年は、妹とこの家の主婦が昨日の昼間に「施療所」を訪れてから、様子がおかしくなったと必死に訴えた。
「……行くぞ。もしかすると、そこが今回の事件の元凶かもしれん」
「た、隊長……!?」
彼女の思わぬ言葉に青年は驚きながらも、闇に消えた少女を追って、二人は街の深淵へと駆け出した。
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