神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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夢の世界でした

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「やあ、アヤナ。今日もとっても可愛いね。」

家に到着するなり、リスターが頬を染めてうっとりと私を見た。
パーティーには、婚約報告も兼ねているからリスターと一緒に行く。


「ありがとう!リスターもカッコイイよ!」

リスターは黒のタキシードをビシッと着こなしている。
タキシード姿のリスターは、いつも以上に大人っぽくてドキドキするよ。


私は白のドレスに金色の刺繍が沢山されている豪華なドレスだ。
ドレスのチョイスはエリーゼおばさまで、私の為にわざわざ仕立ててくれたんだって。

髪は両サイドをクルクルっとして後ろで纏めてハーフアップにしている。
髪留めはおばあさま達に貰った物を付けた。

私も、リスターの横に並んでも文句を言われないくらいにはなってるかな?


「キャーッ!アヤナってば、なんて可愛らしいの!!やっぱりこのドレスを作って正解だったわね。可愛過ぎてキラキラと眩しいわ!ねえ、あなた?」

リスターの後に続いて馬車を降りたエリーゼおばさまが、凄い勢いで私の側までやって来る。

エリーゼおばさまにギュウギュウと抱き締められ、苦しくて意識が遠退きそうな私を、リスターが慌てて引き剥がしてくれた。

ゲホゲホッ。ありがとう、リスター。危うく気絶するところだったよ。

「なによリスター。貴方だけいつもアヤナを独り占めしてズルいじゃないの。」

頬を膨らませるエリーゼおばさま。その横では、ラントおじさまが私に向かって手を広げている。

「母上。その年で頬を膨らませても可愛くありませんよ。」

リスターが冷ややかにエリーゼおばさまを見て苦言を呈している間も、ラントおじさまはジッと私を見つめ手を広げて動かない。

……これはあれか?
私がその手の中に自ら飛び込むのを待っているのか?

ラントおじさまが無表情過ぎて分からない……。

私は恐る恐るラントおじさまに近づいて手を伸ばす。
すると、おじさまがヒョイッと私を抱き上げて頭を撫でてくれた。

良かった。正解だったみたいだ。

「あ、父上。なんでアヤナを抱っこしてるんですか。すぐに降ろしてください。」

「……嫌だ。」

「まあまあリスター、ちょっとくらいいいじゃないか。父上の後は僕に抱っこさせてね。」

「兄上!!」

ラントおじさまの後ろでは、フレイにーさまが私を抱っこする順番待ちをしていた。

リスター家族がワイワイしている横から、とーさまがラントおじさまに抱っこされてる私をサッと奪還した。

「兄上達……。人の家に来て騒がないで下さい。」

「とーさま!」

私はとーさまの首にギュッとしがみ付く。
とーさまの後ろにはクスクスと笑っているかーさまがいた。


おや?

なんだか眩しいと思ったら、今日はみんなパーティーに行くから煌びやかな格好をしているんだったね!

かーさまが着ているのは、いつも微笑んでいるかーさまのイメージにピッタリのふんわりと大人可愛い菫色のドレスだ。

エリーゼおばさまは紫色で、大人の色気溢れる魅力的なドレスを着ている。

とーさまとラントおじさま、フレイにーさまもリスターと同じくタキシードで、
それぞれグレー、シルバー、紺色のタキシードをこれまたリスターと同じく格好良く着こなしている。

こんな美男美女の煌びやかな集団の中で抱っこされてるとか、どんなご褒美ですか!ありがとうございます!!



「おじいさまって、どんなひと?」

私は馬車に揺られながら、隣に座っているリスターに尋ねた。

「そうだね……。」

リスターは向かい合わせで座っているとーさまを見る。
とーさまは少し困り顔で肩を竦めた。

「良く言えば社交的かな。良く言えばね……。まあ、悪い人ではないから大丈夫だよ。」

リスターがニッコリ笑って言う。

……ニッコリじゃないよ。なんか気になる言い方なんですけど。

ならばこっちのおじいさまはどうだ!

「かーさま、おじいさまってどんなひと?」

「見た目はとっても怖いけれど、とっても優しい人ですよ。」

かーさまもニッコリ笑って言った。

……だから、ニッコリじゃないよ。とっても怖いってなに?すごく気になるんですけど!?

2人の返事に首を傾げながら考えてる私を見て、とーさまが苦笑する。

「心配しなくても大丈夫だよ。会えば分かるから。」


そんな会話をしているうちにお城に到着した。

門の前ではちょっとした馬車渋滞ができていて、ズラリと豪華な馬車が並んでいる。

こんなに沢山の馬車がいるのは初めて見るから楽しくて窓からキョロキョロしていたら3人に笑われた。

馬車を降りてパーティー会場に向かえば、そこはもう別世界だった。

何百人と入るであろう迎賓の広間には、キラキラと輝くシャンデリアが幾つも天井から吊り下げられている。

その天井や壁や柱には見事な絵画や彫刻が施されていてとても綺麗だった。

私は広間に入った瞬間から驚きで開いた口が塞がらなかった。
口をポカンと開けたまま天井を見上げたり辺りをキョロキョロしたり……リスターと手を繋いでいなかったら、何度転んでいたか分からないくらいだ。

それでもリスターはニコニコしながら私のしたいようにさせてくれている。

「ふふっ。そんな呆けた顔も可愛いね。」

とーさまとかーさまの後について歩いて行くと、一際賑わう人の群れが目に入った。

とーさまが私を振り返り、その群れの方を指差した。

「あそこに、お祖父様とお祖母様がいるよ。」

とーさまに言われたけれど、人が多過ぎてよく見えない。
私は背伸びをしたり、体を移動させたりして何とか見ようとしたけどやっぱり見えない。

思わずピョンピョンと跳ぼうとして、ガシッと力強くリスターに手を握られた。

「ここでジャンプはマズいからね?」

おっと、そうだった!いつもすぐに忘れちゃう。

そんな私に苦笑しながら、とーさまが私を抱き上げてくれた。

「ほら。」


視界が広がり見えた先には、いつも優しいおばあさま2人とーーその横には対照的な2人の男性がいた。









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