43 / 73
大きくなりました
しおりを挟む
あっという間に時は流れ、私は10歳になりました。
こちらの世界に来てから早いもので5年が経ち、日本で暮らしていた頃と同じくらいの時間をこちらの世界で過ごした。
最近では、日本での暮らしが夢だったのではないかと思うくらいに、昔の記憶が朧気になって思い悩んだりもしたけれど……。
龍斗さんがいつものように私の頭をガシガシと撫でながら
「大丈夫。それは今が幸せだからそう思えるんだぜ。」
って笑って言ってくれたから、それもあまり悪い事じゃないのかな、なんて今では思う。
「彩菜が今までも、これからもずっと父さんと母さんを大好きなら、それでいいじゃねえか。」
うん、そうだね。それはずっと変わらないから。
パパ、ママ、大好き。
この思いだけでも届くといいのに。
私は10歳になって、心も体もすくすくと成長したお陰か、何とか伯爵令嬢らしくなってきたんじゃないかと……自分では思ってます!
そして私より成長が著しいのが、なんといってもリスターなのだ!!
昔からカッコ良かったのに今では更にカッコ良くなっちゃって、私は気が気じゃない。
背なんてお父様と頭一つ分も変わらないくらいに高くなってるのに、まだまだ伸びるんだって。
美少年から美青年に成長途中のリスターは、なんだかとっても魅力的で、すごくドキドキする。
でも、そう思っているのは私だけじゃないみたいで……。騎士団の訓練に今も参加しているリスターを見る為に、訓練場には女性の見学人が増えているらしい。
リスター本人は無視しているみたいだけど、キャーキャーと歓声が煩いんだって。
情報源はダナンさんと龍斗さん。2人はこの状況が面白いのか、ニヤニヤとしながら私に報告してくれる。
ダナンさんと龍斗さんって、ちょっと性格が似てるんだよね……。
「なんでお城の中にあるのに、見学客がいっぱい来るの~?」
私はブーッと膨れてダナンさんと龍斗さんに文句を言う。
最近では、ほぼ毎日2人がお母様とのティータイムの時間に訓練から戻って来ては報告してくれるから、4人でお茶をするのが日常になりつつあった。
「しょうがないだろ。訓練場は国民にも騎士団に親しんでもらう為に一般開放しているんだから。」
「……そうだけどさ~。」
「そんなに心配しなくても大丈夫さ。あいつ、彩菜以外の女に興味ないからな。まあ、見物客も、そんなリスターにお構いなしにキャーキャー煩えんだけどよ。」
それが心配なんですけど!
私はテーブルに肘をついて手に顎を乗せると、深くため息を吐いた。
「ふふっ。お行儀が悪いですよ。そんなに不貞腐れないの。」
お母様に注意されて私の機嫌は益々悪くなる。
「だって……リスターは私のなのに。」
口を尖らせてブツブツ文句を言う私は、後ろから近づく人影に全く気付かなかった。
「嬉しいな。僕はアヤナだけのものだし、アヤナも僕だけのものでしょう?」
急に声がしたかと思えば、尖らせたままの私の唇にチュッとリスターの唇が触れた。
「リスター!」
私はリスターに会えた嬉しさと、キスされた恥ずかしさで顔が赤くなる。
リスターは蕩けるような笑顔で私を見つめて髪を梳く。
「アヤナは今日も可愛いね。大好きだよ。」
「……お前なぁ、見てるこっちが恥ずかしいわっ!」
「じゃあ見ないで下さい。」
リスターは、小言を言う龍斗さんを見向きもせずに、うっとりと私を見つめていた。
「もしかして……もしかしなくてもやきもちを妬いてくれてるのかな?」
「当たり前だよ!リスターはどんどんカッコ良く成長しているのに、私は全然で……後をついて行くのに必死で……でも、リスターの横に私以外の誰かが並ぶのなんて絶対に嫌なんだもん!!」
私が目をウルウルさせながら言うと、リスターは何回も私の唇にキスを落として悶えていた。
「ヤバイ……!アヤナが可愛すぎてヤバイ!」
「……リスター。アヤナはまだ10歳だからな?ちゃんと加減しろよ?」
「大丈夫ですよ。結婚するまではキスだけで我慢しますから。」
ねっ?と、首を傾げて微笑むリスターに、私もよく分からないけど同意する。
加減て何を加減するの?
私の眉間に寄った皺を楽しそうに指で伸ばしながら、リスターがチラリとダナンさんと龍斗さんを見た。
「近頃、2人の姿が訓練終わりにすぐ消えるなと思っていたら、僕より先にアヤナに会いに来ては不安にさせるような事を吹き込んでいたんですね。」
「いやいや、俺達は事実を報告してるまでたぜ。」
「報告して、アヤナを不安にさせて、僕達を別れさせようとでも?僕はそんな事で絶対に別れませんけどね。」
ニッコリ笑って断言してくれるリスターに嬉しくて、私はまたウルッとしてしまう。
「私、もっともっと頑張ってリスターの隣にいても恥ずかしくないよう、ちょっとでも綺麗になるから!」
目を潤ませながら見つめる私を、リスターは私の頬を撫でながら見つめ返した。
「相変わらず、アヤナは自己評価が低すぎるね。君は今でも十分綺麗だから、これ以上頑張らないで?」
ダナンさんと龍斗さんもウンウンと大きく頷いているけど、それは身内贔屓ってヤツですよ?
私が疑いの目を向けていると、リスターは眉尻を下げながら苦笑しつつ私をギュッと抱き締めた。
「大好きだよ、アヤナ。僕の……僕だけのお姫様。ずっと側にいてね。」
こちらの世界に来てから早いもので5年が経ち、日本で暮らしていた頃と同じくらいの時間をこちらの世界で過ごした。
最近では、日本での暮らしが夢だったのではないかと思うくらいに、昔の記憶が朧気になって思い悩んだりもしたけれど……。
龍斗さんがいつものように私の頭をガシガシと撫でながら
「大丈夫。それは今が幸せだからそう思えるんだぜ。」
って笑って言ってくれたから、それもあまり悪い事じゃないのかな、なんて今では思う。
「彩菜が今までも、これからもずっと父さんと母さんを大好きなら、それでいいじゃねえか。」
うん、そうだね。それはずっと変わらないから。
パパ、ママ、大好き。
この思いだけでも届くといいのに。
私は10歳になって、心も体もすくすくと成長したお陰か、何とか伯爵令嬢らしくなってきたんじゃないかと……自分では思ってます!
そして私より成長が著しいのが、なんといってもリスターなのだ!!
昔からカッコ良かったのに今では更にカッコ良くなっちゃって、私は気が気じゃない。
背なんてお父様と頭一つ分も変わらないくらいに高くなってるのに、まだまだ伸びるんだって。
美少年から美青年に成長途中のリスターは、なんだかとっても魅力的で、すごくドキドキする。
でも、そう思っているのは私だけじゃないみたいで……。騎士団の訓練に今も参加しているリスターを見る為に、訓練場には女性の見学人が増えているらしい。
リスター本人は無視しているみたいだけど、キャーキャーと歓声が煩いんだって。
情報源はダナンさんと龍斗さん。2人はこの状況が面白いのか、ニヤニヤとしながら私に報告してくれる。
ダナンさんと龍斗さんって、ちょっと性格が似てるんだよね……。
「なんでお城の中にあるのに、見学客がいっぱい来るの~?」
私はブーッと膨れてダナンさんと龍斗さんに文句を言う。
最近では、ほぼ毎日2人がお母様とのティータイムの時間に訓練から戻って来ては報告してくれるから、4人でお茶をするのが日常になりつつあった。
「しょうがないだろ。訓練場は国民にも騎士団に親しんでもらう為に一般開放しているんだから。」
「……そうだけどさ~。」
「そんなに心配しなくても大丈夫さ。あいつ、彩菜以外の女に興味ないからな。まあ、見物客も、そんなリスターにお構いなしにキャーキャー煩えんだけどよ。」
それが心配なんですけど!
私はテーブルに肘をついて手に顎を乗せると、深くため息を吐いた。
「ふふっ。お行儀が悪いですよ。そんなに不貞腐れないの。」
お母様に注意されて私の機嫌は益々悪くなる。
「だって……リスターは私のなのに。」
口を尖らせてブツブツ文句を言う私は、後ろから近づく人影に全く気付かなかった。
「嬉しいな。僕はアヤナだけのものだし、アヤナも僕だけのものでしょう?」
急に声がしたかと思えば、尖らせたままの私の唇にチュッとリスターの唇が触れた。
「リスター!」
私はリスターに会えた嬉しさと、キスされた恥ずかしさで顔が赤くなる。
リスターは蕩けるような笑顔で私を見つめて髪を梳く。
「アヤナは今日も可愛いね。大好きだよ。」
「……お前なぁ、見てるこっちが恥ずかしいわっ!」
「じゃあ見ないで下さい。」
リスターは、小言を言う龍斗さんを見向きもせずに、うっとりと私を見つめていた。
「もしかして……もしかしなくてもやきもちを妬いてくれてるのかな?」
「当たり前だよ!リスターはどんどんカッコ良く成長しているのに、私は全然で……後をついて行くのに必死で……でも、リスターの横に私以外の誰かが並ぶのなんて絶対に嫌なんだもん!!」
私が目をウルウルさせながら言うと、リスターは何回も私の唇にキスを落として悶えていた。
「ヤバイ……!アヤナが可愛すぎてヤバイ!」
「……リスター。アヤナはまだ10歳だからな?ちゃんと加減しろよ?」
「大丈夫ですよ。結婚するまではキスだけで我慢しますから。」
ねっ?と、首を傾げて微笑むリスターに、私もよく分からないけど同意する。
加減て何を加減するの?
私の眉間に寄った皺を楽しそうに指で伸ばしながら、リスターがチラリとダナンさんと龍斗さんを見た。
「近頃、2人の姿が訓練終わりにすぐ消えるなと思っていたら、僕より先にアヤナに会いに来ては不安にさせるような事を吹き込んでいたんですね。」
「いやいや、俺達は事実を報告してるまでたぜ。」
「報告して、アヤナを不安にさせて、僕達を別れさせようとでも?僕はそんな事で絶対に別れませんけどね。」
ニッコリ笑って断言してくれるリスターに嬉しくて、私はまたウルッとしてしまう。
「私、もっともっと頑張ってリスターの隣にいても恥ずかしくないよう、ちょっとでも綺麗になるから!」
目を潤ませながら見つめる私を、リスターは私の頬を撫でながら見つめ返した。
「相変わらず、アヤナは自己評価が低すぎるね。君は今でも十分綺麗だから、これ以上頑張らないで?」
ダナンさんと龍斗さんもウンウンと大きく頷いているけど、それは身内贔屓ってヤツですよ?
私が疑いの目を向けていると、リスターは眉尻を下げながら苦笑しつつ私をギュッと抱き締めた。
「大好きだよ、アヤナ。僕の……僕だけのお姫様。ずっと側にいてね。」
98
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる