ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

文字の大きさ
85 / 96

再会は突然に!?

しおりを挟む

グレイソンさんに見送られてから2時間後。
私とフータは大きな町の中にある大きな宿に着いた。

いつもはもっと小さな宿に泊まるのに、今日はなんだか豪華な宿だし最上階の景色のとっても良い煌びやかな部屋だし。

部屋に入って早々に首を傾げている私を見て人間の姿のフータがククッと可笑そうに笑う。


「いつもの宿とは様子が違っておかしいか?」

「うん……どうしたの?こんなに豪華だとなんだか調子が狂っちゃうよ」


肌触りの良い布を使ったフカフカのベッドを触りながら周りをキョロキョロと見てしまう。
何処もかしこも豪華な造りで居心地が悪い。
今住んでいるお屋敷も大きいが、内装はこんなにキラキラとしたモノではなく質素な感じで、私はその方が生活しやすくて好きだ。


「まあそう言うな。確かに此度の宿は我が選んだものではないが、この宿を選んだ者がユーカの為を思って予約してくれたのだからのう。有り難く利用させてもらおうではないか」

「?この宿を選んだ者?」


ますます首を傾げる私を笑うフータの笑い声に、もうひとつ、扉の方から笑い声が重なった。

振り返ると、扉に寄り掛かってクスクスと笑う美少年の姿が目に映る。


「久しぶりだね、ユーカ。元気だったかい?」

「ジル!!」


その姿は、以前別れた頃よりも随分と成長し、少年というよりももはや青年というのに相応しいくらいだった。


「1年ぶり?いや……もっとかな?」


そう言いながら部屋に入り近付いてくるジルの声もすっかり声変わりしていてかなり低くなっている。

目の前にいるのは確かにジルのはずなのに、なんだか違う人みたいな、そんな変な感じがする。


「ジル……すっかり男の子になっちゃって……」

「うん、僕は元から男の子なんだけどね……って、このやり取り昔もしたよね?」

「うん、したした~!」


ジルと顔を見合わせてお互いにクスクスと笑い合えば、獣人の国で一緒に過ごした記憶が一気に甦った。

…………あの頃は、楽しかったな。

もう、戻れないけど。


ふと、言いようの無い寂しさが込み上げてきて目頭が熱くなる。

そんな私の様子を察したのか、ジルが私の頭をポンポンと優しく撫でながら目を細めた。


「ユーカは今どこに住んでいるの?獣人の国から姿を消したって聞いたけど、本当にそうなの?」

「我と旅に出ておるだけだ。宿り木に言伝もしておいたしな。城の者達にはちゃんと伝わっているはずだぞ」

「……随分と長い旅なんですね?」


含みのある笑みを浮かべるフータを見てジルが眉間に皺を寄せる。

おや?なんだか不穏な空気が……。


「大丈夫だよ。私なんか居なくなっても、皆これまで通りで変わりない筈だもん」

「……それ、本気で言ってるの?」

「え?うん……」


私の1人や2人居なくなったって何も変わらないよ。
そんなの当たり前なのに、なんでかジルに難しい顔をされて思わず首を傾げた。


「サイラスにはちゃんと連絡してる?サイラスは寂しがってるんじゃない?」


ーーサイラス。その名前を聞いただけで私の心臓はドキンと高鳴る。

もう、1年以上も会っていないのに、名前を聞いただけでドキドキしちゃうとか……私ってば、まだまだダメだなぁ。

私は自嘲気味に笑いながら首を横に振った。


「サイラスにも連絡はしていないよ。でも、きっともうサイラスの横には綺麗な婚約者がいるんじゃないかなぁ。……あ、もしかしたら、もうお嫁さんになってるかもしれないね」

「……それも、本気で言ってるの?自分で確かめた?」

「え……ううん、確かめてないけど……だってサイラスはもうとっくに成人してるし、王太子だし……」


私の言葉を聞いてどんどん眉間の皺を濃くするジルは、私からフータに目を移して恨めしそうにジト、と睨んだ。

ジルに睨まれても全く動じる気配の無いフータは、むしろ楽しそうにニヤリと笑ってジルを見つめ返している。


「我に何か物言いたげな顔をしておるのう。遠慮せずに言うが良いぞ」

「貴方はサイラスの現状をご存知なのでは?」

「ふむ。まあ知っておるな」

「ご存知なのに、放っておくのですか?」


ジルは更にフータを睨みつけた。


「放っておる訳ではない。だからこうしてユーカを此処に連れて来たのだ」

「……と仰るには、何かお考えがあって此方にいらしたのですね?」

「まあな。……でも」


そこまで言ってフータが視線を私に向ける。


「己の生きる道をどう切り拓くのかは、ユーカとサイラス次第だがな」

「…………そうですか。わかりました」


フータに続いてジルまで私をジッと見つめて2人でよく分からない事を話している。


「何?どういう意味?」


2人の会話が理解出来なくて首を傾げるとジルに「頑張れ」と言わんばかりに肩をポンポンと叩かれた。

そしてこの話は終わったというようにジルがパンッ!と両手を打ち合わせ微笑む。


「よし!せっかく来てくれたからには、この国を楽しんでいってもらわないとね。僕が2人を案内するよ」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

処理中です...