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再会は突然に!?
しおりを挟むグレイソンさんに見送られてから2時間後。
私とフータは大きな町の中にある大きな宿に着いた。
いつもはもっと小さな宿に泊まるのに、今日はなんだか豪華な宿だし最上階の景色のとっても良い煌びやかな部屋だし。
部屋に入って早々に首を傾げている私を見て人間の姿のフータがククッと可笑そうに笑う。
「いつもの宿とは様子が違っておかしいか?」
「うん……どうしたの?こんなに豪華だとなんだか調子が狂っちゃうよ」
肌触りの良い布を使ったフカフカのベッドを触りながら周りをキョロキョロと見てしまう。
何処もかしこも豪華な造りで居心地が悪い。
今住んでいるお屋敷も大きいが、内装はこんなにキラキラとしたモノではなく質素な感じで、私はその方が生活しやすくて好きだ。
「まあそう言うな。確かに此度の宿は我が選んだものではないが、この宿を選んだ者がユーカの為を思って予約してくれたのだからのう。有り難く利用させてもらおうではないか」
「?この宿を選んだ者?」
ますます首を傾げる私を笑うフータの笑い声に、もうひとつ、扉の方から笑い声が重なった。
振り返ると、扉に寄り掛かってクスクスと笑う美少年の姿が目に映る。
「久しぶりだね、ユーカ。元気だったかい?」
「ジル!!」
その姿は、以前別れた頃よりも随分と成長し、少年というよりももはや青年というのに相応しいくらいだった。
「1年ぶり?いや……もっとかな?」
そう言いながら部屋に入り近付いてくるジルの声もすっかり声変わりしていてかなり低くなっている。
目の前にいるのは確かにジルのはずなのに、なんだか違う人みたいな、そんな変な感じがする。
「ジル……すっかり男の子になっちゃって……」
「うん、僕は元から男の子なんだけどね……って、このやり取り昔もしたよね?」
「うん、したした~!」
ジルと顔を見合わせてお互いにクスクスと笑い合えば、獣人の国で一緒に過ごした記憶が一気に甦った。
…………あの頃は、楽しかったな。
もう、戻れないけど。
ふと、言いようの無い寂しさが込み上げてきて目頭が熱くなる。
そんな私の様子を察したのか、ジルが私の頭をポンポンと優しく撫でながら目を細めた。
「ユーカは今どこに住んでいるの?獣人の国から姿を消したって聞いたけど、本当にそうなの?」
「我と旅に出ておるだけだ。宿り木に言伝もしておいたしな。城の者達にはちゃんと伝わっているはずだぞ」
「……随分と長い旅なんですね?」
含みのある笑みを浮かべるフータを見てジルが眉間に皺を寄せる。
おや?なんだか不穏な空気が……。
「大丈夫だよ。私なんか居なくなっても、皆これまで通りで変わりない筈だもん」
「……それ、本気で言ってるの?」
「え?うん……」
私の1人や2人居なくなったって何も変わらないよ。
そんなの当たり前なのに、なんでかジルに難しい顔をされて思わず首を傾げた。
「サイラスにはちゃんと連絡してる?サイラスは寂しがってるんじゃない?」
ーーサイラス。その名前を聞いただけで私の心臓はドキンと高鳴る。
もう、1年以上も会っていないのに、名前を聞いただけでドキドキしちゃうとか……私ってば、まだまだダメだなぁ。
私は自嘲気味に笑いながら首を横に振った。
「サイラスにも連絡はしていないよ。でも、きっともうサイラスの横には綺麗な婚約者がいるんじゃないかなぁ。……あ、もしかしたら、もうお嫁さんになってるかもしれないね」
「……それも、本気で言ってるの?自分で確かめた?」
「え……ううん、確かめてないけど……だってサイラスはもうとっくに成人してるし、王太子だし……」
私の言葉を聞いてどんどん眉間の皺を濃くするジルは、私からフータに目を移して恨めしそうにジト、と睨んだ。
ジルに睨まれても全く動じる気配の無いフータは、むしろ楽しそうにニヤリと笑ってジルを見つめ返している。
「我に何か物言いたげな顔をしておるのう。遠慮せずに言うが良いぞ」
「貴方はサイラスの現状をご存知なのでは?」
「ふむ。まあ知っておるな」
「ご存知なのに、放っておくのですか?」
ジルは更にフータを睨みつけた。
「放っておる訳ではない。だからこうしてユーカを此処に連れて来たのだ」
「……と仰るには、何かお考えがあって此方にいらしたのですね?」
「まあな。……でも」
そこまで言ってフータが視線を私に向ける。
「己の生きる道をどう切り拓くのかは、ユーカとサイラス次第だがな」
「…………そうですか。わかりました」
フータに続いてジルまで私をジッと見つめて2人でよく分からない事を話している。
「何?どういう意味?」
2人の会話が理解出来なくて首を傾げるとジルに「頑張れ」と言わんばかりに肩をポンポンと叩かれた。
そしてこの話は終わったというようにジルがパンッ!と両手を打ち合わせ微笑む。
「よし!せっかく来てくれたからには、この国を楽しんでいってもらわないとね。僕が2人を案内するよ」
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4/20ようやく誤字チェックが完了しました
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いったん終了します
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