ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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…….私がお姫様でもいいですか?

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突然のプロポーズに頭が真っ白になり、固まってしまった。
動かなくなった私の顔を心配そうにサイラスが覗き込む。鼻と鼻がくっ付きそうなくらい顔が近くて思わず後ろにのけ反った。


「ユーカ?聞こえてる?」

「うん、あの、ちょっと顔が近い……」

「じゃあ返事は?」

「え?」

「ユーカの気持ちが聞きたい」


大好きな銀色の瞳でそんなにジッと見つめられたままでいたら、心臓がドキドキし過ぎてもたないよ。
胸が苦しくて私は早々に観念すると後ろにのけ反ったままの姿勢を正してきちんと座り直した。


「す、好きだよ。サイラスが私にとって一番大切で、一番大好きな人っていうのは、出会ってから今もずっと変わらないんだけどね……その……こ、こ、こい、恋してるって意味でも、サイラスが好き」

「うん。嬉しい。俺もユーカが好き。ずっとずっと、そういう意味でユーカが好きだった」

「え?!ずっと?」


ずっとって何??いつから??何で?!どうして??!!
盛大にパニくって挙動不審な私の頬をサイラスがペロリと舐める。


「うん、ずっと。ユーカと出会ってから、俺の一番はずっとユーカだ。ユーカが傍に居てくれるなら他には何もいらない。この気持ちは昔も今もこれから先もずっと変わらなよ」


真っ直ぐに私を見つめ、そう言ってくれるサイラスから目が逸らせない。
サイラスはジッと私を見つめたまま、もう一度さっきの、あの言葉を口にした。


「ユーカ、愛してる。俺と結婚してください」


……あぁ、やっぱりサイラスはカッコいいなぁ。狼の姿でも、私には絵本から抜け出てきた王子様みたいにキラキラと輝いて見えるよ。……あ、本物の王子様だった。


「…………はい」


ポ~ッと見惚れながら頷くと、サイラスは嬉しそうに目を細め顔を近付けてくる。

ハッと我に返った私は超至近距離にあるサイラスの顔を反射的に押し退けてしまった。
そのせいで、サイラスの嬉しそうだった表情が一変してムスッと不満げになる。


「ちょっとユーカ。ここはキスするところなんじゃないの?プロポーズ、受けてくれたよね?教えてくれた絵本とかいうお話みたいに、俺を人の姿に戻してよ」

「う、うん、そうなんだけどね?私なんかがお姫様とかヒロイン的なポジションっていうのは、おこがましいっていうか、なんていうかその……っうひゃあっ!!」


サイラスを押し退けながらブツブツ言っている私に痺れを切らしたのか、サイラスが体当たりしてきてベッドに押し倒される。
そして、ビックリしてそのまま動けないでいる私の上へ跨がると、サイラスは綺麗な銀色の瞳を悲しげに細めて私を見下ろした。


「ユーカ。ユーカは俺の"唯一"だよ。世界中の誰よりも一番大切な人なんだ。だからなんて言わないで。愛してるよ……俺のお姫様」


サイラスの顔がゆっくりと近付き、そっと私の唇にキスを落とした。
すると、狼だったサイラスが、だんだんと人の姿に戻っていき…………やっぱり絵本の中から飛び出てきた王子様みたいにカッコいいサイラスが私に跨がって見下ろしている。…………裸で。
一年前に別れた時よりも髪が伸び、体も前より筋肉がついて逞しくなったサイラスに見つめられ、私の心臓がドキドキし過ぎてヤバイ。破裂しちゃう。


「フフッ、元に戻れた。やっぱりユーカは俺の……俺だけのお姫様だ。嬉しい」

「サ、サイラス……んんっ……」


私に跨ったままのサイラスの顔が近付いてきて、また私の唇にキスをした。今度はちょっと強めの、優しいんだけど頭がクラクラしちゃうくらい甘い?キス。

うひゃ~!!ヤバイ、ヤバイ!!本当にヤバイから~!!……息、息が出来ない!!!

初めてのキスに動揺しまくりで息の仕方が分からずにもがいている私から、人間の姿になったフータがサイラスをベリッと引き離す。
おかげで息を吸えるようになって有り難い。


「此処で試せとは言ったがそこまでしろとは言っておらぬわ」

「邪魔するなよ。ユーカは俺の婚約者になったんだ。キスくらいいいだろ」

「戯け者。全裸でユーカに覆い被さっておればお主が襲っているようにしか見えぬのだ。まずこれを着ろ」


私はのっそりと体を起こしてサイラスとフータのやり取りをボ~ッと眺めていた。

ーーサイラスが、戻った。

  私のキスで、戻れたんだ……。

フータに手渡されたシャツを不貞腐れながら着ているサイラスに思わず手を伸ばし、シャツの袖をキュッと掴んで見上げる。
それに気付いたサイラスが私を見つめふわりと微笑んでくれた。……ああ、ヤバイ。好き。大好き。


「…………私が……サイラスのお姫様になっても、いいの?」

「勿論。っていうか、出会った時から、ユーカは俺のお姫様だし。これからも、ずっとずっとそうだよ」


私は、気付かないうちにボロボロと涙を零していたようで、サイラスが優しく頬を伝う涙を手で拭ってくれている。

そんなサイラスの手にそっと自分の手を重ね合わせて、スリッと頬を寄せた。


「……大好き」


改めて言うのがとっても恥ずかしくって、でもどうしても言いたくて、小さな声でボソッと呟いてみたのだけれど。

それはしっかりとサイラスにも聞こえていたみたいで。

サイラスは顔を真っ赤にしてベッドに突っ伏し悶えていた。


「あ~ヤバイ。ユーカが可愛すぎて俺の理性がヤバイ。え、もういいかな?婚約者になったんだし、もう俺、我慢しなくてもいいかな?いいよね?」

「いいわけあるか。この戯け者めが!」


突っ伏しながらブツブツと何かを呟いていたサイラスの頭を、フータが思い切り叩く。あ、凄い音。今のは結構痛いんじゃない?大丈夫?


「痛いだろうが!何するんだよ、バカフータ!!」

「お主の暴走を止めてやったのだ。ユーカはまだお主にはやらん」

「はあ?お前はユーカの親かよ!」

「ユーカは我の愛し子だ。我が子も同然」

「はあ?!」


ギャイギャイと言い争う2人がなんだか可笑しくて笑っていると、2人から同時に頭を撫でられた。

2人を見ると、サイラスもフータも嬉しそうに笑っていて。

そんな2人の笑顔が私も嬉しくて、幸せで……また、ちょっとだけ、泣いてしまった。








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