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見た目ほど怖くない

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「ぇぇええっ!?」


なんで!?どうして!?
なんでそんな事になっているの!?


パニックに陥ってアワアワしている私にかまわず、黒いモヤモヤがまたお兄様に纏わりつこうと近づいて来る。


「ちょ、ちょっと待って!!」


ハッと我に返ってお兄様に近付いたモヤモヤを手で払い除けた。

ヤバイヤバイ……どうしよう……と、取り敢えず、お兄様を守らないと……!!


「邪魔をするな。そこを退け」

「いやいやいや!命を食べるって何!?それってお兄様が死んじゃうってことじゃないの!?」

「まあ、そうだな」

「ダメじゃん!!それダメなヤツじゃん!!やめてよ!!なんでそんな酷いことするの!?そもそもアンタなんなのよ!?お兄様に近付かないで!!」


黒いモヤモヤの淡々とした口調に、恐怖を通り越して段々と怒りが湧いてきた私は思わずモヤモヤに怒鳴り散らしてしまった。

重苦しい空気が漂い、再び沈黙状態が続く。
そして今回の沈黙を破ったのも、また黒いモヤモヤだった。


「…………酷い?……お前たちの方が長きに亘り余程俺へ酷い仕打ちをしてきたではないか」

「…………え?」

「これまで……今日まで耐えた俺に感謝こそすれ、怒るなどもってのほかだ」


その声に、私は体を起こして黒いモヤモヤを見る。もう、体の震えは止まっていた。

ジッと黒いモヤモヤを見つめる。

お兄様の命を食べるだなんてとんでもないことを言っているヤツなのに、不思議ともう怖くなくなっていて。逆に今は、こう……悲しそうというか?なんというか辛そうだ。
まあ黒いモヤモヤなんで表情とか全くわからないし、話している感じで何となくそうかな?って私が勝手に思ってるだけなんだけど。


「あの~……さっき、お前たちって言いました?私……アナタに会うの今日が初めてですよね?」

「…………やはりな。お前たちには俺のことが全く伝わっていなかったというわけか」


恐る恐る尋ねてみた私は黒いモヤモヤに思いっきり大きな溜息を吐かれてしまった。
……黒いモヤモヤなのに溜息とか吐くんですね。


「…………なんか、すみません」


黒いモヤモヤをなんでか落胆させちゃったみたいなので、取り敢えず謝っておく。全く身に覚えがないけど、こっちに非がありそうだもんね。……たぶん。


「ふむ。何も知らない奴の命を喰べるというのは流石に酷か?」

「……そうですね。お兄様の命を食べさせるつもりは全くないですけど、なんでこんな事になってるのかは全力で知りたいです」

「お前……さっきまでプルプルと震えていたのに、グイグイくるな?」


黒いモヤモヤが若干私に引いてるのがわかった。表情がわからないのに引いてるのが伝わってくるのってスゴいよね。

黒いモヤモヤも初めは得体が知れなくてメチャクチャ怖かったけど、今は普通に話せるし、なんならちょっと話せば分かる的な雰囲気が感じられるから、初めの頃よりは全然怖くない。
お兄様は私が全力でお守りしなくては!!


私の意気込みも黒いモヤモヤに伝わったのか、黒いモヤモヤはその場でユラユラと揺らめきながら、私に向けてゆっくりと話し始めたのだった。


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