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私をお城に呼ばないでっ!
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よく晴れた空の下。
お城の中庭では王女の名で開かれたお茶会が催されていた。
「外で飲むお茶もいいわねー。天気も良いし、気持ちがいいわ。」
「私はここ以外でなら、どこで飲んでも美味しいよ。」
「フフッ。エリーヌはいつも可愛いけど、今みたいに不貞腐れてるエリーヌも可愛いね。」
「セディは目が悪いんだね。……この世界に眼医者っていないよなぁ。視力って魔法で回復するものなのか……?」
私はこの現状から逃避するべく、思考を全く関係ない方向へ飛ばしてみるも、飛び交う会話にすぐに現実に引き戻されてしまう。
「ねえ、何この素敵な光景は!ウチの子達とお前の子が、私と一緒にお茶をしてくれているなんて!これはご褒美か?日頃頑張っている私へのご褒美なのか!?」
「煩い。お前の為などでは無いわ。エリーヌが、私と一緒じゃ無いとお茶会へは参加しないと言うので私が同行しているのだ。お前は勝手に付いてきただけではないか。」
言い合う国王と父様にイラッとして、ついつい父様にも冷たい態度をとってしまう。
「そもそもさー、父様がお茶会の招待を断ってくれないからこんな事になってるんだよね。私ってば病弱設定になってるんだから、王女のお誘いなんて断ってくれたらいいのに。お城なんかに来ちゃったらさー、セディに会う可能性が高くなっちゃうでしょ?」
「エリーヌ、これでも父様は頑張ったほ方だと思うぞ。可愛い娘の為なら、王家の頼みなんていくらでも断れるがな……城で働く者達のエリーヌの登城を切望する声には、流石の私も抗えなかったのだ……!」
「ねえ、エリーヌは病弱なのが設定だってサラッと言っちゃってるの分かってる?……宰相も、国王の側近とは思えない言い草だよね。フフッ。本当に面白いなぁ。」
父様に文句を言う私に、必死に弁明する父様。そしてそれを楽しそうに見ているセディ。
国王様と王女はご機嫌でお茶を飲んでいる。
ーーそう、このお茶会の参加者はこれで全員なのだ。
あれから何故か王女に気に入られた私は、頻繁にお茶会へ招待され、断り続けていた。
けれど、本日は嫌々ながら父様と一緒に登城させられている。
理由は、さっき父様が述べた通り。
お城で働く人達からの要望が凄かったから。
王女と初対面し大喧嘩した時から、私の勇気ある?言動が称賛され、お城で私はちょっとした有名人だったらしい。
その上、おの我儘放題だった王女が侍女に謝ったり、癇癪を起こすことも無くなったりで、それらが全て私のおかげになっているのだ。
国王様にも感謝され、お城で働く人達には尊敬の眼差しを向けられ、お城での私の立ち位置的には、王家を救ったスーパーヒーロー……じゃないヒロインのようだ。
周りに控える侍女や護衛達の様子をチラリと伺えば、誰もが嬉々とした様子でこちらを見守っていた。
…………やめてよ。私は、ただ王女と派手に喧嘩をやらかしただけなんですけど?
…………はぁ。
深い溜息を吐くと視線を感じ、国王様と目が合った。
「ねえ、エリーヌ。ウチの子達もとっても君を気に入っているようだし、この際セディと婚約なんてど……」
「却下。」
上機嫌で言う国王様の言葉を途中で遮り、瞬殺で断る。
冗談じゃない!!
私の平穏な生活を奪われてたまるか!
「父上。無理強いしては、エリーヌがもう城に来てくれなくなりますからやめて下さい。」
「そうよ!私からお友達を奪わないでよね!」
セディと王女が国王様に抗議してるけど……。
「ん?私ってば、いつから王女の友達になったの?」
「酷いわね!喧嘩して仲を深めたじゃないの!エリーヌには特別に私の名前を呼ぶことを許してあげるわ!」
首を傾げる私に、王女が怒りながらも特別だと言う名前呼びを許可してくれる。
「え~?別にいいよ。王女の名前なんて知らないし。それにお城にも、もう余程のことが無い限り来ないと思うから。」
「……ねえ、もう少し王家に関心を持ってくれない?私の名前はアシュティンよ。アシュでいいわ。お兄様のことをセディって呼んでいるんだから、私のこともアシュって呼んで。エリーヌは特別よ。」
「え?…………愛称呼びって特別なの?」
「そうね。私のことをアシュって呼ぶのはお父様とお兄様だけだし、お兄様のことをセディって呼ぶのもお父様とエリーヌしかいないわ。」
それを聞いて、私はサッと青褪めた。
…………ヤバイ。私、自分でフラグ立てちゃってない?特別なんて要らないよ!急いで回収しなくては!!
「そ、そうなんだね!私なんかが王家の人達を愛称呼びとか恐れ多いよね。これからは私もセディじゃなくて、王太……」
「王太子って呼ぶのなら、強制的に婚約してもらおうかな。」
セディがニッコリと私に微笑む。
「…………セディとアシュって呼びます。」
…………フラグ回収、出来ませんでした。
でも!これからは出来るだけ関わらないようにすればいいんだもんね!
私はフラグ回収出来なかったショックから自分を奮い立たせ、改めて強く決意したのだった。
お城の中庭では王女の名で開かれたお茶会が催されていた。
「外で飲むお茶もいいわねー。天気も良いし、気持ちがいいわ。」
「私はここ以外でなら、どこで飲んでも美味しいよ。」
「フフッ。エリーヌはいつも可愛いけど、今みたいに不貞腐れてるエリーヌも可愛いね。」
「セディは目が悪いんだね。……この世界に眼医者っていないよなぁ。視力って魔法で回復するものなのか……?」
私はこの現状から逃避するべく、思考を全く関係ない方向へ飛ばしてみるも、飛び交う会話にすぐに現実に引き戻されてしまう。
「ねえ、何この素敵な光景は!ウチの子達とお前の子が、私と一緒にお茶をしてくれているなんて!これはご褒美か?日頃頑張っている私へのご褒美なのか!?」
「煩い。お前の為などでは無いわ。エリーヌが、私と一緒じゃ無いとお茶会へは参加しないと言うので私が同行しているのだ。お前は勝手に付いてきただけではないか。」
言い合う国王と父様にイラッとして、ついつい父様にも冷たい態度をとってしまう。
「そもそもさー、父様がお茶会の招待を断ってくれないからこんな事になってるんだよね。私ってば病弱設定になってるんだから、王女のお誘いなんて断ってくれたらいいのに。お城なんかに来ちゃったらさー、セディに会う可能性が高くなっちゃうでしょ?」
「エリーヌ、これでも父様は頑張ったほ方だと思うぞ。可愛い娘の為なら、王家の頼みなんていくらでも断れるがな……城で働く者達のエリーヌの登城を切望する声には、流石の私も抗えなかったのだ……!」
「ねえ、エリーヌは病弱なのが設定だってサラッと言っちゃってるの分かってる?……宰相も、国王の側近とは思えない言い草だよね。フフッ。本当に面白いなぁ。」
父様に文句を言う私に、必死に弁明する父様。そしてそれを楽しそうに見ているセディ。
国王様と王女はご機嫌でお茶を飲んでいる。
ーーそう、このお茶会の参加者はこれで全員なのだ。
あれから何故か王女に気に入られた私は、頻繁にお茶会へ招待され、断り続けていた。
けれど、本日は嫌々ながら父様と一緒に登城させられている。
理由は、さっき父様が述べた通り。
お城で働く人達からの要望が凄かったから。
王女と初対面し大喧嘩した時から、私の勇気ある?言動が称賛され、お城で私はちょっとした有名人だったらしい。
その上、おの我儘放題だった王女が侍女に謝ったり、癇癪を起こすことも無くなったりで、それらが全て私のおかげになっているのだ。
国王様にも感謝され、お城で働く人達には尊敬の眼差しを向けられ、お城での私の立ち位置的には、王家を救ったスーパーヒーロー……じゃないヒロインのようだ。
周りに控える侍女や護衛達の様子をチラリと伺えば、誰もが嬉々とした様子でこちらを見守っていた。
…………やめてよ。私は、ただ王女と派手に喧嘩をやらかしただけなんですけど?
…………はぁ。
深い溜息を吐くと視線を感じ、国王様と目が合った。
「ねえ、エリーヌ。ウチの子達もとっても君を気に入っているようだし、この際セディと婚約なんてど……」
「却下。」
上機嫌で言う国王様の言葉を途中で遮り、瞬殺で断る。
冗談じゃない!!
私の平穏な生活を奪われてたまるか!
「父上。無理強いしては、エリーヌがもう城に来てくれなくなりますからやめて下さい。」
「そうよ!私からお友達を奪わないでよね!」
セディと王女が国王様に抗議してるけど……。
「ん?私ってば、いつから王女の友達になったの?」
「酷いわね!喧嘩して仲を深めたじゃないの!エリーヌには特別に私の名前を呼ぶことを許してあげるわ!」
首を傾げる私に、王女が怒りながらも特別だと言う名前呼びを許可してくれる。
「え~?別にいいよ。王女の名前なんて知らないし。それにお城にも、もう余程のことが無い限り来ないと思うから。」
「……ねえ、もう少し王家に関心を持ってくれない?私の名前はアシュティンよ。アシュでいいわ。お兄様のことをセディって呼んでいるんだから、私のこともアシュって呼んで。エリーヌは特別よ。」
「え?…………愛称呼びって特別なの?」
「そうね。私のことをアシュって呼ぶのはお父様とお兄様だけだし、お兄様のことをセディって呼ぶのもお父様とエリーヌしかいないわ。」
それを聞いて、私はサッと青褪めた。
…………ヤバイ。私、自分でフラグ立てちゃってない?特別なんて要らないよ!急いで回収しなくては!!
「そ、そうなんだね!私なんかが王家の人達を愛称呼びとか恐れ多いよね。これからは私もセディじゃなくて、王太……」
「王太子って呼ぶのなら、強制的に婚約してもらおうかな。」
セディがニッコリと私に微笑む。
「…………セディとアシュって呼びます。」
…………フラグ回収、出来ませんでした。
でも!これからは出来るだけ関わらないようにすればいいんだもんね!
私はフラグ回収出来なかったショックから自分を奮い立たせ、改めて強く決意したのだった。
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