侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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みんな仲良く

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ペガサスの背中に乗って移動するなんて夢のような出来事に浮かれちゃってるのは私だけじゃなかったようで。

私の前に乗るアーク兄様は目をキラッキラさせながら辺りをキョロキョロと見渡し「凄い!凄い!」と連呼していた。

なんなら感動し過ぎてプルプルと震えているくらいだ。
いつも私達兄妹の誰より冷静で落ち着きのあるアーク兄様がこんな状態になるなんて珍しい。

まあ、この世界で人が空を飛ぶなんてあり得ないから、兄様の気持ちは分からないでもない。

私も人のこと言えないくらい興奮しちゃってるし。


空を飛び魔国の各地を巡る間、クロとサミュエルさんが色々と説明をしてくれていた。

町並みや行き交う人々の様子は、私達の国とさほど変わっているようには見えず、至って普通だ。

魔国と言うだけあって、もっと見た事も無いような人外な生物や魔物がそこら辺にウジャウジャいるんだと思っていたんだけど、全然違った。

魔族は、みんな人の姿で生活をしているんだって。
人の姿になれない下級な魔物は森とかで生活しているみたい。
中級レベル以上の魔族にもなると、人の姿の方が膨大な魔力を維持したりコントロールしたりしやすいんだって。

魔物の姿だと、力は強くなるけど魔力の消費が激しいらしい。

前にクロも言ってたもんね。
私のダダ漏れしていた魔力をクロが吸収してくれてた時は、魔物の姿の方が魔力を沢山使うからずっとフェレットの姿のままだったって。




途中、町へ下りてティータイム。
天気が良かったのでお店には入らずに屋台?みたいなところで飲み物を買って飲むことにした。

「適当に買って来るからここで待ってろ。」

「僕も行くよ。」

町の広場にある噴水横のベンチに私とサミュエルさんを座らせて、クロとアーク兄様が飲み物を買いに行く。

「サミュエルさん、ありがとう。みんなを乗せて飛び回って疲れてない?」

「フフッ、エリーヌは優しいね。大丈夫だよ。楽しかったかい?」

「うんっ!とっても楽しかったよ!!」

「良かった。」

サミュエルさんが目を細めながら、優しく頭を撫でてくれる。

サミュエルさんはとっても良い人だ。
クロも頼りにしてるみたいだし。

「さっき、魔王様が言ってたことは本当なのかな?次の魔王を決めるって。」

「うん、多分そうなるかな。」

「もしそうなったら…………兄弟同士で争いになっちゃったりするの?」

「う~ん、どうかな?アイザック兄上は王になれると思い込んでいるから激怒して暴れると思うけど……そんな事をしたら父上が黙っていないだろうし、僕も兄上より魔力は強いからね。兄上なんかには負けないよ?」

頭を撫で続けて私を安心させようと優しい口調で話してくれるサミュエルさんは、頼れるお兄ちゃんって感じでホッとする。
もしもサミュエルさんが魔王になったら、魔国は安泰だろうな。そうなる可能性はかなり高そうだけど。
でも、自分が魔王に選ばれなかったらアイザックさんは本当に暴れそうだよね。
っていうか、絶対暴れるでしょ。

「内乱とかになっちゃったりしないよね?みんな大丈夫だよね?もしアイザックさんが暴れちゃってもすぐに魔王様と止めてね?なるべく穏便に……は無理かもしれないけど、みんな怪我とかしないでね?」

色々考え不安になった私は、思わずサミュエルさんの腕にギュッとしがみ付いてしまった。

サミュエルさんは一瞬目を瞠ったけど、フワリと優しく微笑んで私を見つめる。

「エリーヌはアイザック兄上の心配もしているの?あんなに嫌なことを言われたのに?」

「う……そりゃ嫌なこと言われたし、とっても感じ悪いし、嫌な人だとは思うけど……それでもクロのお兄さんなんだもん。どんなに嫌な人でもクロの家族が傷ついたり怪我したりするのはやっぱり嫌だよ……。」

サミュエルさんの腕をギュッと掴むと、サミュエルさんは私をヒョイっと自分の膝の上に乗せて抱き締めた。


っっっ!!!!!

いきなりイケメンの膝上抱っこですか!?
ヤバイ!!私の心臓がヤバイから!!

「はぁ……。エリーヌが可愛過ぎる。クロフォードがエリーヌの側を離れたがらない理由がよく分かったよ。こんなに可愛くて優しくて良い子の側を離れるなんて出来ないよね。僕もずっと側にいたいよ。」

言いながらサミュエルさんは私の額や頬にチュッチュッとキスを落とす。


…………ヤバイ。私の心臓、ドキドキし過ぎてもう保ちません。


「フフッ、本当に可愛い。」

サミュエルさんの膝の上で真っ赤になって固まっている私を見て、サミュエルさんは嬉しそうに私の頭上に更にチュッチュッとキスを落とした。

「兄上。何をしてるんだ。」

突然、後ろから低い声が聞こえて振り返る。

クロとアーク兄様が飲み物を手に持ち、私達を見てワナワナと震えていた。

「うん?何ってクロフォードのご主人様との仲を深めているだけじゃないか。ねえ、エリーヌ?」

「どんな仲の深め方をしているんだ。離せ。」

クスクスと笑いながら、また私にキスをしようとしたサミュエルさんから、クロがサッと私を引き離す。

アーク兄様がすぐさま私に駆け寄り、私の頭や頬をゴシゴシと擦ってきて少し痛い。

「兄上。エリーヌで遊ぶのはやめてくれ。」

「酷いなぁ。遊んでなんかいないよ。エリーヌがあまりにも可愛かったから、つい抱き締めてキスをしたくなったっちゃったんだもん。」 

「エリーヌが可愛いのは当たり前……可愛いからって抱き締めてキスをするな。エリーヌは俺の主だ。」

クロがジト目でサミュエルさんを睨むと、サミュエルさんはキョトンと目を丸くした後、あははと笑い声を上げた。

「いや~、クロフォードがここまで誰かに執着心を燃やすとはね。これも従魔契約が影響しているのかな?にしても良い事だよ。」

サミュエルさんは立ち上がり、まだ笑いながら嬉しそうにクロが持っていた飲み物を受け取る。

「クロフォードは今まで何に対しても関心が無かったからね。僕はそれがずっと心配だったんだ。でも、もう大丈夫かな?」

「兄上…………。」

サミュエルさんは受け取ったそれをひと口飲むと、クロの頭をワシャワシャと撫でた。

「エリーヌと出会えて良かったね。大切にするんだよ。」

「ああ。」



ーークロの頭を撫でるサミュエルさんは優しいお兄ちゃんの顔に、頭を撫でられ照れながらも素直に頷くクロはお兄ちゃんに甘える弟の顔になっていて、なんだかとっても微笑ましかった。

「アーク兄様~。」

サミュエルさんとクロを見ていたら、私も無性にアーク兄様に甘えたい気分になってしまって……アーク兄様に抱きつき兄様の胸に頭をグリグリと擦り付ける。

「フフッ。どうしたの?急に甘えん坊になって。」

「アーク兄様~、大好き~!」

「僕も大好きだよ。」


はぁ~、幸せ…………。


アーク兄様に抱き締め返され、愛情をいっぱい注がれる私は本当に幸せ者だね。


「え~、いいなぁ~。クロフォード、僕もエリーヌにあれやってもらいたいなぁ。」

「……駄目です。」


呟くサミュエルさんにジト目を向けるクロ。
そんな2人を横目にたっぷりとアーク兄様に甘えた私は、買ってきてもらったジュースを飲み干した後、再びペガサスに変身したサミュエルさんの背中に乗ってみんなの待つ魔王城へと戻ったのだった。










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