侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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不穏な空気

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プロポーズを受けてからの日々はあっという間に過ぎていった。

父様や兄様達にはセディからのプロポーズを受けたと話した時、最初はやっぱり反対されたけど最後にはエリーヌが決意したんならと認めてくれた。

「寂しくなっちゃうな。王太子が嫌になったらすぐに帰って来ていいんだからね?僕達はいつでも大歓迎だよ。ねえマリア?」

「勿論です。王太子様が嫌にならなくてもすぐに帰って来て下さい。」

「エリーしゃまいかないれっ!」

「ついに王太子のしつこさにエリーヌは負けちゃったね。まあ、あの執念深いというか重た過ぎる王太子の想いからは逃げられなかったと思うけど。僕が王太子の側にいて悪さをしないように見張ってるからエリーヌは安心しなよ。」

「俺も見習い期間が終わって正式に騎士団に入るから城勤めになるし、エリーヌになんかあったらすぐに駆け付けてやるからな!」


ーーありがとう。みんなが家族で本当に私は幸せだよ。


お城でも、セディが報告をすると長年この朗報を待ち侘びていたみんなが歓喜に沸いたそうだ。

報せを聞いたアシュにはお城に呼び出され泣いて喜ばれた。

「おめでとう!エリーヌと姉妹になれるなんて嬉しいわ!!」

その日は結局興奮しまくっているアシュに帰してもらえず、そのままアシュの部屋でお泊まりする事になった。

そしてウチに帰る際にはお城で働く人達にもすれ違う度にお祝いの言葉をかけられ、アシュの部屋から馬車の待つ場所までいつもなら5分もしないで行けるのに、着くまでに30分以上かかってしまった。

そんなこんなでバタバタと慌ただしく毎日が過ぎて行く。
そんな中、サミュエルさんは相変わらずいつもウチにやってくるし、キリナムさんもウチに居てエドワードの遊び相手になってくれている。
そこはいつもと変わりないのだけれど、最近2人の顔色が良くない。笑顔にも元気がないように見える。
2人して体調を崩してしまったのだろうか。

2人には「大丈夫?」って聞いても「少し疲れているだけだ。」と口を揃えて言われてしまったから、それ以上は深く追及できなかった。

けれどセディとの婚約を発表するパーティーまで後1ヶ月となった頃には2人の具合は益々悪くなっているようで、顔色が更に良くないように見えるのは私だけではない筈だ。

国の境に何か問題でもあるのかな。

私がいくら2人に聞いても「大丈夫だ。心配ない。」の一点張りで埒があかないから、クリフォードさんにも聞いてみた。
クリフォードさんはジッと私の目を見て黙ったまま何か考え込んでしまった。
私もクリフォードさんが答えてくれるのを期待しながらジッと待っていたんだけど、数分後にフイッと目を逸らされ「問題ない。」と2人と同じように躱されてしまった。


そりゃあさ、私は見た目はまだまだ子供だけどさ。みんなが思ってる程子供じゃないよ。実年齢は12歳だけど前世では高校生だったんだからね。入学式にしか行けなかったけど。

そんなある日、日課になっているエドワードとの庭の散歩を終えて屋敷の中に入ると、父様が凄い剣幕で書斎から出てくるところにかち合った。

「どうしたの?父様。」

「エ、エリーヌ……!」

私が驚き目を丸くしているのを見て、明らかに父様が動揺している。

「い、いつからそこに?中の話しが聞こえて……?」

「?いいえ?今、エドワードと中へ入ったところだけど。」

「そ、そうか。」

私の返事に父様がホッと息を吐いた。

「何かあったの?」

今日はキリナムさん、サミュエルさん、クリフォードさんの3人に話しがあると言われて、父様は1時間程前から書斎にみんなで籠っていたのだ。

……この慌てよう……何かあったな。そしてそれを私には知られたくないらしい。

「ねえ、父様。キリナムさん達には私の魔力の事でとってもお世話になったわ。どの魔力も均等に操れるようになったし、キリナムさん達のおかげだって本当に感謝してる。だから、みんなが困っているなら少しでも力になりたいの。」

「……エリーヌ。」

「私に何か出来ることはない?」

私の真剣な眼差しに、父様は眉を顰め苦い表情をして俯いてしまう。 

「…………ない。こ、子供に出来る事など何もない!」

「父様!!」

私と目を合わせずに、父様は踵を返して私とエドワードの前から足早に去って行ってしまった。

「エリーしゃま……おじいしゃま、ろうしたの?」

「…………うん……どうしたんだろうね……。」

明らかに、いつもの父様らしくなかった。
様子がおかしい。…………そしてその原因となっているのは、多分私なんだよね?

……私が関係しているんだ。私に言えないような事が、きっと。



「あれ、エリーヌ?どうしたの?こんな所で立ち尽くして。」


ハッと我に返り声のした方へ振り向くと、嬉しそうに微笑みながらこちらへ歩いて来るセディの姿があった。

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