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第101話 危険な戦い②
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「ぐぅっ……!」
「クッ……!」
グリッツとアルバートは、巨人から後退すると共に、小さくうめき声を上げた。
「師匠……っ!」
スゥは二人に駆け寄ろうとしたが、足の痛みが動きを鈍らせ、膝をついた。
「ごめんなさいなのだ……スゥが、スゥが……」
「ヘッ、気にすんな。この程度、屁でもねぇぜ。」
「……巻き込まれないように、貴方はなるべく遠くに離れていてください。」
二人はこちらを向かずにそれだけ言うと、再び巨人へと向かっていった。
結論から言えば、スゥは無事だった。
手をすりむき、足首を痛めたものの、他に大したダメージはない。
その理由は――二人が、スゥを、巨人の攻撃から庇ったからだ。
そしてその結果、グリッツは右腕、アルバートは左脚に、深い傷を負っていた。
「ぐあっ!」
「がっ……」
巨人の腕の一振りで、それぞれ逆方向に弾き飛ばされる二人。
どうにか立ち上がり、武器を構えるが、動きは明らかに鈍くなっていた。
二人の攻撃で巨人にもいくつもの傷ができたが、それも黒い霧が集まったかと思うと、見る見るうちにふさがっていく。
まさに、絶望的な状況だった。
「スゥは……スゥは、どうしたら……」
かすれた声で、スゥは力なく手を伸ばした。
助けなきゃ、いけないのに。
何とかしなきゃ、いけないのに。
このままじゃ、負けちゃう。
スゥのせいで。
スゥが、弱いせいで。
スゥの目から、乾いた涙がこぼれた。
滲む視界の中、伸ばした手の先に、青い蝶が舞い込んだ。
「誰……か……師匠たちを……助けて……」
刹那。
一つの黒い影が、スゥの上を飛び越した。
+++
エトは木々の間を飛び移りながら、森の中を進んでいた。
そしてついに、前方の開けた場所に、目的の人影を見つけた。
「スゥちゃん!!」
膝立ち状態のスゥの近くに着地し、駆け寄る。
「エ……ト……?」
「大丈夫?! すぐ、皆も来るから!」
スゥは呆然としているようだったが、大きな怪我などは無いようだった。
そしてエトの姿を見た途端、糸が切れたようにふらりと前に倒れた。
「よかった……のだ……師……匠……」
「!」
急いで抱きとめたエトの手の中で、スゥは眠ってしまったようだった。
スゥが無事だったことに安堵したのもつかの間、周囲を見渡して、エトは目を見開いた。
その目の前には、幻想的ともいえる、壮絶な光景が広がっていた。
地面の一部は白に染まり、綺麗に切り飛ばされた木々に変わって、地面からは巨大な氷柱がいくつも生えている。
月明かりを受け、虹色に輝くそれらの中心には、竜に乗ったアインの後ろ姿があった。
風に揺れる長い銀髪と、その隙間から見える、真横に伸ばした腕。
そこに握られているのは長剣で、しかし厚い氷に覆われたそれは、まるで巨大な槍のように姿を変えていた。
そしてその奥には――半分凍り付いた巨大な魔物が、うなだれるように硬直していた。
「……凄い。」
エトは思わず、息を飲んだ。
直接、戦うところを見たわけじゃないのに。
それなのに、強さがびりびりと肌に伝わってくるような、そんな感覚。
脳裏に、マイアの言葉が、熱を持って蘇ってくる。
『アイン様は……『《王の矛|キングハルバード》』のギルドマスター、つまり……王国最強の騎士と言われている方です。』
これが、最強。
王国で一番の――強さ。
言葉にできない感情がこみあげ、エトは大剣の柄を強く握りこんだ。
その刀身に、微かに、黒い霧が揺らめいていた。
「クッ……!」
グリッツとアルバートは、巨人から後退すると共に、小さくうめき声を上げた。
「師匠……っ!」
スゥは二人に駆け寄ろうとしたが、足の痛みが動きを鈍らせ、膝をついた。
「ごめんなさいなのだ……スゥが、スゥが……」
「ヘッ、気にすんな。この程度、屁でもねぇぜ。」
「……巻き込まれないように、貴方はなるべく遠くに離れていてください。」
二人はこちらを向かずにそれだけ言うと、再び巨人へと向かっていった。
結論から言えば、スゥは無事だった。
手をすりむき、足首を痛めたものの、他に大したダメージはない。
その理由は――二人が、スゥを、巨人の攻撃から庇ったからだ。
そしてその結果、グリッツは右腕、アルバートは左脚に、深い傷を負っていた。
「ぐあっ!」
「がっ……」
巨人の腕の一振りで、それぞれ逆方向に弾き飛ばされる二人。
どうにか立ち上がり、武器を構えるが、動きは明らかに鈍くなっていた。
二人の攻撃で巨人にもいくつもの傷ができたが、それも黒い霧が集まったかと思うと、見る見るうちにふさがっていく。
まさに、絶望的な状況だった。
「スゥは……スゥは、どうしたら……」
かすれた声で、スゥは力なく手を伸ばした。
助けなきゃ、いけないのに。
何とかしなきゃ、いけないのに。
このままじゃ、負けちゃう。
スゥのせいで。
スゥが、弱いせいで。
スゥの目から、乾いた涙がこぼれた。
滲む視界の中、伸ばした手の先に、青い蝶が舞い込んだ。
「誰……か……師匠たちを……助けて……」
刹那。
一つの黒い影が、スゥの上を飛び越した。
+++
エトは木々の間を飛び移りながら、森の中を進んでいた。
そしてついに、前方の開けた場所に、目的の人影を見つけた。
「スゥちゃん!!」
膝立ち状態のスゥの近くに着地し、駆け寄る。
「エ……ト……?」
「大丈夫?! すぐ、皆も来るから!」
スゥは呆然としているようだったが、大きな怪我などは無いようだった。
そしてエトの姿を見た途端、糸が切れたようにふらりと前に倒れた。
「よかった……のだ……師……匠……」
「!」
急いで抱きとめたエトの手の中で、スゥは眠ってしまったようだった。
スゥが無事だったことに安堵したのもつかの間、周囲を見渡して、エトは目を見開いた。
その目の前には、幻想的ともいえる、壮絶な光景が広がっていた。
地面の一部は白に染まり、綺麗に切り飛ばされた木々に変わって、地面からは巨大な氷柱がいくつも生えている。
月明かりを受け、虹色に輝くそれらの中心には、竜に乗ったアインの後ろ姿があった。
風に揺れる長い銀髪と、その隙間から見える、真横に伸ばした腕。
そこに握られているのは長剣で、しかし厚い氷に覆われたそれは、まるで巨大な槍のように姿を変えていた。
そしてその奥には――半分凍り付いた巨大な魔物が、うなだれるように硬直していた。
「……凄い。」
エトは思わず、息を飲んだ。
直接、戦うところを見たわけじゃないのに。
それなのに、強さがびりびりと肌に伝わってくるような、そんな感覚。
脳裏に、マイアの言葉が、熱を持って蘇ってくる。
『アイン様は……『《王の矛|キングハルバード》』のギルドマスター、つまり……王国最強の騎士と言われている方です。』
これが、最強。
王国で一番の――強さ。
言葉にできない感情がこみあげ、エトは大剣の柄を強く握りこんだ。
その刀身に、微かに、黒い霧が揺らめいていた。
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