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第111話 悪夢の飛来①
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「……あれ。僕は……」
「ん……。目が覚めましたか、レン。」
ベッドから状態を起こしたレンは、こちらを見て、両目を大きく瞬かせた。
ちょうど『目』を使って、体に異常がないか見ていたので、レンの体との距離は少し近い。
窓から差し込む夕日が、そんな二人の姿を赤く照らしていた。
「ま、まま、マイアさん?! なん……っ、なんで、こここ……ここに?!」
そういってレンは高速で後ずさり、壁に張り付いた。
十分に元気そうなので、マイアはほっと息を吐いて、ベッド脇の椅子に座り直した。
どうやら、先ほどの倉庫では慌てていたせいか、マイアがいたことまで気づいていなかったらしい。
マイアは自分が今、トワイライトに属していること、そしてそのギルドがここに呼び出されたこと、先ほどまでリリィの説明を受けていたことなどを、簡単に伝えた。
「つまり……偶然、ここに戻ってきたのですよ。」
「そ、そうだったんですね……びっくりしたぁ……」
「ふふ、驚かせてごめんなさい、レン君。」
レンも話しているうちに落ち着いたようで、いそいそとベッドから降り、椅子へと移動した。
そしてふと、悲しそうな、寂しそうな、複雑な顔をした。
「でも……羨ましいな。」
「え?」
「あっ……いや、マイアさんみたいに才能があって、ちゃんと自分の夢も見つけて、頑張ってるのって……なんだか、凄いなって、いうか……その。」
レンはハッとして誤解だと両手を振り、申し訳なさそうに首をすくめた。
そして、再びうつむいた。
「僕は……全然、ダメで。なにか目標があるわけじゃないし、才能も、無いし……いつも、リリィに引っ張ってもらうばかりだから。」
「……レン……」
マイアは何か言おうとして差し出した手を、そのまま静かに降ろした。
レンは、無魔力症――つまり、マスターと同じく、生まれつき一切の魔法が使えない。彼の言う『才能』とは、そのことだ。
同じく研究者のリリィと幼馴染で、その勧めで研究者になったそうなので、文字通り彼女に引っ張られてこの場にいるのだろう。
もちろん彼に才能がないなどとは思ってないし、むしろそのハンデを背負ってなおクインシールドで結果を残しているという事実に、尊敬の念すらある。
それでも声をかけられなかったのは、レンの言葉が、自分にも刺さっていたからだ。
『冒険者になって、怪我する前に助けちゃおう!』
……それは、エトの言葉。エトの夢。
リーシャは育ての親のマーガレットさんを、スゥはキングハルバードの師匠たちを、みんなそれぞれ目標を持って、努力している。
だから、強い。きっと、もっともっと、強くなっていく。
――でも、私は?
周囲の景色が、色褪せた治療室に変わる。
ベッドには、少年が一人、寝かされている。
何度も悪夢に見た、光景。
救えなかった、いや、救おうともしなかった、過去の事実。
一歩、また一歩と後ずさる。
ついには背を向けて、暗闇に向かって走り出す。
どこに向かってるのかなんてわからない。
私は、まだ、逃げているだけ――。
「……ア……さん、マイアさんっ?!」
「!」
気が付くと、自分の体をレンがゆすっていた。
ばっと起き上がると、強いめまいに襲われた。倒れていた椅子に手をついたことで、今まで自分が床に倒れていたことに気づく。
「マイアさん! 良かった……話してたら急に倒れて、どうしたんです……?!」
「私が……急に……?」
突然妙な頭痛がして、反射的に『目』を使う。
周囲の空間に魔力の波、この現象……何かの魔法……!
マイアがどうにか立ち上がるのと同時に、ガシャン! という音がドアの外から聞こえた。
レンと顔を見合わせ、急いで廊下に出ると、ひっくり返されたティーセットと、倒れているリリィの姿があった。
「リリィ?! どっ……どうしたの?!」
すぐさまレンが駆け寄り、抱き起こす。
しかし、リリィはぐったりとしたまま動かなかった。
「ううん……すぅ……」
「これ……寝て……る……?」
二人が驚いていると、向こうからもう一人、走ってくる人影が見えた。
「マイア! 大丈夫か!?」
「マスター……! 他のみんなは?!」
駆け寄ってきたロルフはリリィとレンを見て、顔をしかめた。
「恐らく、そのリリィさんと同じだ。最初はスゥが、そのあとエトとリーシャも寝てしまって、目を覚まさない。他の部屋も見たが、全員が眠っているみたいだ。」
「……!」
レンと目を合わせるが、何かを知っている様子は無く、ただ首を横に振るばかり。
マイアはロルフに、この現象が広域魔法である可能性があること、自分も気づいたら眠っていたが、レンに起こしてもらったことを伝えた。
ロルフはしばらく考え込んでいたが、先に口を開いたのはレンだった。
「あの……それで、どうして僕らは大丈夫なんですか……?」
「ううむ……何か共通点でもあれば、分かりやすいんだが……」
「共通、点……」
その言葉を聞いて、マイアはハッとして顔を上げた。
「マスター、レンは……いやレン『も』、無魔力症なのです。」
「えっ」
レンはそれを聞いて、驚いて目を丸くしたが、マイアは構わず話を進めた。
「この魔法、体内の魔力に干渉して、対象を眠らせているのかもしれません。」
「そうか! それなら、マイアが一度眠ってしまった理由も説明がつく。恐らく今は自分の能力で、魔法を継続的に打ち消してるんだ。」
「! 魔法を……?」
咄嗟に目を抑える。
そういわれてみると確かに、力が発動している感覚があった。
「じゃあ、私の力を使えば、他の人も……!」
「いや、それはダメだ。自分の体と他人の体じゃ、訳が違う。継続的な魔法の打ち消しなんかしたら、すぐに魔力切れを起こすぞ。」
「……そう、ですね……」
魔力が尽きれば、私もまた眠ってしまうだろう。
今の状態だってどれくらいの時間保っていられるのか、予想もできない。
事態は思ったよりも深刻だった。
「とにかく、魔法の発生源を特定しないとな。レンさん、何か心当たりはないか?」
「えっ、あっ、いや……こんなこと、僕も初めてで……。あっ、でも、マイアさんなら、魔力の流れから方向がわかるかも……?」
「確かに。試してみますね。」
そういって、目に集中しようとした時だった。
突然、三人のいる廊下に、大きな影がかかった。
咄嗟に窓の外へ視線を走らせる。
「……?!」
夕日を背に、大きな影となった、巨大な二対の羽。
そして、一対の触角と、三対の脚。ふさふさとした、丸い体。
きらきらとした鱗粉のようなものをまき散らしながら、ゆっくりと優雅に飛行するそれは、あまりにも大きな『蛾』だった。
魔力の波は、まさにその鱗粉のようなものから広がっていた。
「な、なんだよ……あんな魔物、見たことないよ……!」
「あれが……原因、なのですか……?!」
「……まずいぞ。」
ロルフが苦虫を嚙み潰したような顔で、その魔物の進む先へと目をやった。
「あの方向は街だ。あれが魔力のある全員を強制的に眠らせてしまうなら、火事なんかの二次災害で、とんでもない被害が出るぞ……!」
「!!」
それを聞いて、考えるよりも早く、マイアの体は駆け出していた。
レンとロルフが驚いて、その背に顔を向ける。
「マイアさん!?」
「どこに行く気だ、マイア!!」
「――弓をっ!」
マイアは前に飛び出す体を止めぬまま、二人に向かって叫んだ。
「私が……射ち落とします!!」
「ん……。目が覚めましたか、レン。」
ベッドから状態を起こしたレンは、こちらを見て、両目を大きく瞬かせた。
ちょうど『目』を使って、体に異常がないか見ていたので、レンの体との距離は少し近い。
窓から差し込む夕日が、そんな二人の姿を赤く照らしていた。
「ま、まま、マイアさん?! なん……っ、なんで、こここ……ここに?!」
そういってレンは高速で後ずさり、壁に張り付いた。
十分に元気そうなので、マイアはほっと息を吐いて、ベッド脇の椅子に座り直した。
どうやら、先ほどの倉庫では慌てていたせいか、マイアがいたことまで気づいていなかったらしい。
マイアは自分が今、トワイライトに属していること、そしてそのギルドがここに呼び出されたこと、先ほどまでリリィの説明を受けていたことなどを、簡単に伝えた。
「つまり……偶然、ここに戻ってきたのですよ。」
「そ、そうだったんですね……びっくりしたぁ……」
「ふふ、驚かせてごめんなさい、レン君。」
レンも話しているうちに落ち着いたようで、いそいそとベッドから降り、椅子へと移動した。
そしてふと、悲しそうな、寂しそうな、複雑な顔をした。
「でも……羨ましいな。」
「え?」
「あっ……いや、マイアさんみたいに才能があって、ちゃんと自分の夢も見つけて、頑張ってるのって……なんだか、凄いなって、いうか……その。」
レンはハッとして誤解だと両手を振り、申し訳なさそうに首をすくめた。
そして、再びうつむいた。
「僕は……全然、ダメで。なにか目標があるわけじゃないし、才能も、無いし……いつも、リリィに引っ張ってもらうばかりだから。」
「……レン……」
マイアは何か言おうとして差し出した手を、そのまま静かに降ろした。
レンは、無魔力症――つまり、マスターと同じく、生まれつき一切の魔法が使えない。彼の言う『才能』とは、そのことだ。
同じく研究者のリリィと幼馴染で、その勧めで研究者になったそうなので、文字通り彼女に引っ張られてこの場にいるのだろう。
もちろん彼に才能がないなどとは思ってないし、むしろそのハンデを背負ってなおクインシールドで結果を残しているという事実に、尊敬の念すらある。
それでも声をかけられなかったのは、レンの言葉が、自分にも刺さっていたからだ。
『冒険者になって、怪我する前に助けちゃおう!』
……それは、エトの言葉。エトの夢。
リーシャは育ての親のマーガレットさんを、スゥはキングハルバードの師匠たちを、みんなそれぞれ目標を持って、努力している。
だから、強い。きっと、もっともっと、強くなっていく。
――でも、私は?
周囲の景色が、色褪せた治療室に変わる。
ベッドには、少年が一人、寝かされている。
何度も悪夢に見た、光景。
救えなかった、いや、救おうともしなかった、過去の事実。
一歩、また一歩と後ずさる。
ついには背を向けて、暗闇に向かって走り出す。
どこに向かってるのかなんてわからない。
私は、まだ、逃げているだけ――。
「……ア……さん、マイアさんっ?!」
「!」
気が付くと、自分の体をレンがゆすっていた。
ばっと起き上がると、強いめまいに襲われた。倒れていた椅子に手をついたことで、今まで自分が床に倒れていたことに気づく。
「マイアさん! 良かった……話してたら急に倒れて、どうしたんです……?!」
「私が……急に……?」
突然妙な頭痛がして、反射的に『目』を使う。
周囲の空間に魔力の波、この現象……何かの魔法……!
マイアがどうにか立ち上がるのと同時に、ガシャン! という音がドアの外から聞こえた。
レンと顔を見合わせ、急いで廊下に出ると、ひっくり返されたティーセットと、倒れているリリィの姿があった。
「リリィ?! どっ……どうしたの?!」
すぐさまレンが駆け寄り、抱き起こす。
しかし、リリィはぐったりとしたまま動かなかった。
「ううん……すぅ……」
「これ……寝て……る……?」
二人が驚いていると、向こうからもう一人、走ってくる人影が見えた。
「マイア! 大丈夫か!?」
「マスター……! 他のみんなは?!」
駆け寄ってきたロルフはリリィとレンを見て、顔をしかめた。
「恐らく、そのリリィさんと同じだ。最初はスゥが、そのあとエトとリーシャも寝てしまって、目を覚まさない。他の部屋も見たが、全員が眠っているみたいだ。」
「……!」
レンと目を合わせるが、何かを知っている様子は無く、ただ首を横に振るばかり。
マイアはロルフに、この現象が広域魔法である可能性があること、自分も気づいたら眠っていたが、レンに起こしてもらったことを伝えた。
ロルフはしばらく考え込んでいたが、先に口を開いたのはレンだった。
「あの……それで、どうして僕らは大丈夫なんですか……?」
「ううむ……何か共通点でもあれば、分かりやすいんだが……」
「共通、点……」
その言葉を聞いて、マイアはハッとして顔を上げた。
「マスター、レンは……いやレン『も』、無魔力症なのです。」
「えっ」
レンはそれを聞いて、驚いて目を丸くしたが、マイアは構わず話を進めた。
「この魔法、体内の魔力に干渉して、対象を眠らせているのかもしれません。」
「そうか! それなら、マイアが一度眠ってしまった理由も説明がつく。恐らく今は自分の能力で、魔法を継続的に打ち消してるんだ。」
「! 魔法を……?」
咄嗟に目を抑える。
そういわれてみると確かに、力が発動している感覚があった。
「じゃあ、私の力を使えば、他の人も……!」
「いや、それはダメだ。自分の体と他人の体じゃ、訳が違う。継続的な魔法の打ち消しなんかしたら、すぐに魔力切れを起こすぞ。」
「……そう、ですね……」
魔力が尽きれば、私もまた眠ってしまうだろう。
今の状態だってどれくらいの時間保っていられるのか、予想もできない。
事態は思ったよりも深刻だった。
「とにかく、魔法の発生源を特定しないとな。レンさん、何か心当たりはないか?」
「えっ、あっ、いや……こんなこと、僕も初めてで……。あっ、でも、マイアさんなら、魔力の流れから方向がわかるかも……?」
「確かに。試してみますね。」
そういって、目に集中しようとした時だった。
突然、三人のいる廊下に、大きな影がかかった。
咄嗟に窓の外へ視線を走らせる。
「……?!」
夕日を背に、大きな影となった、巨大な二対の羽。
そして、一対の触角と、三対の脚。ふさふさとした、丸い体。
きらきらとした鱗粉のようなものをまき散らしながら、ゆっくりと優雅に飛行するそれは、あまりにも大きな『蛾』だった。
魔力の波は、まさにその鱗粉のようなものから広がっていた。
「な、なんだよ……あんな魔物、見たことないよ……!」
「あれが……原因、なのですか……?!」
「……まずいぞ。」
ロルフが苦虫を嚙み潰したような顔で、その魔物の進む先へと目をやった。
「あの方向は街だ。あれが魔力のある全員を強制的に眠らせてしまうなら、火事なんかの二次災害で、とんでもない被害が出るぞ……!」
「!!」
それを聞いて、考えるよりも早く、マイアの体は駆け出していた。
レンとロルフが驚いて、その背に顔を向ける。
「マイアさん!?」
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