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第21話 眼鏡っ娘は衰退しました(2)
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(ああ、ほら。引いてる。眼鏡っ娘の人見知りスキルがめっちゃ発動してんじゃん)
「……」
突如話しかけられた眼鏡っ娘は、急に押し黙り、俺っ娘を警戒の眼差しで見つめた。
眼鏡っ娘と俺っ娘は、作中での絡みはほぼない。でも、コンプレックスの塊である眼鏡っ娘はこういう、よくいえば豪快な、悪く言えば無神経な陽キャは絶対嫌いだからな。長く接触させとくとストレスがヤバイ。引き離すか。
「ほら。ここ図書館だからさ、もうちょっと声を落として」
俺は『本当は俺もはしゃぎたいんだけど』的なニュアンスも出しつつ、俺っ娘をたしなめる。
「ワリィ、ワリィ。オレ、普段は図書館なんてこねーんだけどさ。虫捕りにいくはずだった森が急に立ち入り禁止になっててよ。クーラー目当てで涼みにきたんだ。ったく、オオクワいっぱいとりてーから、わざわざばーちゃん家に帰省したっつうのに、ついてねえぜ」
オレっ娘が声のボリュームを下げて言う。
あ、それ完全に俺のせいっすね。すいません。でも、おかげで俺っ娘ちゃんが、ぬばたまの姫の呪いを浴びて進化したヤバ蟲にさされて昆虫人間になっちゃうピンチはなくなったんだから、感謝してくれてもいいんだよ?
「森には近づかない方がいいよ。怖いおじさんが見張ってるらしいし」
もちろん、俺が雇ったんだけど。
「だよなー。忍び込もうと思っても無理だったわ。よっぽどスゲーのが採れるのかな。ヘラクレスオオカブトとかよ!」
オレっ娘は、もう図書館では静かにするというマナーを忘れたのか、再び興奮気味に言った。
「ヘラクレスオオカブトは中央アメリカから南アメリカに分布しています。日本にはいませんよ」
眼鏡っ娘は、俺っ娘に冷たい視線を注ぎながら言った。
「ふーん。まあ、いいや! 涼んだし! 水も飲んだし! これから、外でかくれんぼしようぜ! だるまさんが転んだとかでもいいぞ」
でも、俺っ娘は基本鈍感なので、眼鏡っ娘の抱いている悪感情には気付かずにそんなことを言う。ほんと水と油。相性悪いね。眼鏡っ娘も俺っ娘も、不人気ジャンル同士、仲良くやればいいのに。
後、かくれんぼとか、かごめかごめとか、だるまさんんが転んだとか、わらべ遊び系をやると伝奇的にヤバイフラグが立つからNG。
「俺も行きたいけど、夏休みの宿題が終わってないから、やらなくちゃいけないんだ。幼馴染も待たせてるし」
「そんなのやらなくてもいいだろ。どうせ小学生には退学もねえしな。宿題を全部踏み倒したところでどうってことないぜ!」
「『精神的に向上心のない者はばかだ』」
眼鏡っ娘がボソりと呟く。
「ああ!? なんだ、喧嘩売ってんのか? お前」
「いえ。読書感想文の構想を練ってただけです。他意はありません」
眼鏡っ娘は、本棚の旧千円札おじさん作の『こころ』の背表紙を撫でていった。
眼鏡っち、さっき、走れメロスで終わらせたって言うてましたやん。キミ。
「ったく、なんかよくわかんねーけど、暗いなー。オサゲメガネもちょっとは外に出ねーと、その内、オケラになっちまうぜ」
「素敵なあだ名をつけて頂き、ありがとうございます。お返しに私からも――あなたは、虫がお好きなんですね。では、ザムザさんなんていかがでしょう」
この上なく安直なあだ名をつけられた眼鏡っ子は、チクりと刺すような声でいった。
やめましょうよ。毒虫と俺っ娘ちゃんの組み合わせはマジで洒落にならないから!
俺っ娘ちゃんは、本当にある朝起きたら毒虫になっていちゃう可能性を秘めてるリアルカフカ系女子だから!
「おっ、何か知らないけど、ロボットみたいでかっこいいな! 気に入ったぜ! そいつは変形するのか?」
「変形はしませんが、変身はしますよ」
「へー、いいじゃん! 虫で変身ってことは、やっぱり、ライダー系か? じゃあ、今日はみんなでザムザごっこするか! どんなキャラか教えてくれよ!」
「え、ちょっちょっと!」
俺っ娘が眼鏡っ娘の腕を引いて連れていこうとする。
眼鏡っ娘は、知的キャラのテンプレに乗っ取り、舌戦には強いが、物理攻撃には弱いのよね。
「おいおい、待って。悪いけど、その子は俺の方が先に約束してたんだよ。読書感想文の書き方を教えてもらう予定でさ。そうだよね?」
「は、はい……」
「なんだよ。チェッ。つまんねーの」
「ごめんね。お詫びと言ったらなんだけど、今度、川釣りでもする? イワナがよく釣れるスポットを教えるよ。竿も倉庫にあるから」
「おっ、本当か! 約束だぜ。オレは、翼。鳥羽翼(とばつばさ)」
「成瀬祐樹。よろしく」
気さくに握手を求めてくるオレっ娘――翼の手を、俺は握り返した。
「んで、お前ん家はどこらへん?」
「庭にトーテムポール――変な置物がある家だよ」
「あー、あそこか! わかったぜ! じゃ、今度、行くからよろしくな!」
翼は颯爽と去って行った。
「……」
突如話しかけられた眼鏡っ娘は、急に押し黙り、俺っ娘を警戒の眼差しで見つめた。
眼鏡っ娘と俺っ娘は、作中での絡みはほぼない。でも、コンプレックスの塊である眼鏡っ娘はこういう、よくいえば豪快な、悪く言えば無神経な陽キャは絶対嫌いだからな。長く接触させとくとストレスがヤバイ。引き離すか。
「ほら。ここ図書館だからさ、もうちょっと声を落として」
俺は『本当は俺もはしゃぎたいんだけど』的なニュアンスも出しつつ、俺っ娘をたしなめる。
「ワリィ、ワリィ。オレ、普段は図書館なんてこねーんだけどさ。虫捕りにいくはずだった森が急に立ち入り禁止になっててよ。クーラー目当てで涼みにきたんだ。ったく、オオクワいっぱいとりてーから、わざわざばーちゃん家に帰省したっつうのに、ついてねえぜ」
オレっ娘が声のボリュームを下げて言う。
あ、それ完全に俺のせいっすね。すいません。でも、おかげで俺っ娘ちゃんが、ぬばたまの姫の呪いを浴びて進化したヤバ蟲にさされて昆虫人間になっちゃうピンチはなくなったんだから、感謝してくれてもいいんだよ?
「森には近づかない方がいいよ。怖いおじさんが見張ってるらしいし」
もちろん、俺が雇ったんだけど。
「だよなー。忍び込もうと思っても無理だったわ。よっぽどスゲーのが採れるのかな。ヘラクレスオオカブトとかよ!」
オレっ娘は、もう図書館では静かにするというマナーを忘れたのか、再び興奮気味に言った。
「ヘラクレスオオカブトは中央アメリカから南アメリカに分布しています。日本にはいませんよ」
眼鏡っ娘は、俺っ娘に冷たい視線を注ぎながら言った。
「ふーん。まあ、いいや! 涼んだし! 水も飲んだし! これから、外でかくれんぼしようぜ! だるまさんが転んだとかでもいいぞ」
でも、俺っ娘は基本鈍感なので、眼鏡っ娘の抱いている悪感情には気付かずにそんなことを言う。ほんと水と油。相性悪いね。眼鏡っ娘も俺っ娘も、不人気ジャンル同士、仲良くやればいいのに。
後、かくれんぼとか、かごめかごめとか、だるまさんんが転んだとか、わらべ遊び系をやると伝奇的にヤバイフラグが立つからNG。
「俺も行きたいけど、夏休みの宿題が終わってないから、やらなくちゃいけないんだ。幼馴染も待たせてるし」
「そんなのやらなくてもいいだろ。どうせ小学生には退学もねえしな。宿題を全部踏み倒したところでどうってことないぜ!」
「『精神的に向上心のない者はばかだ』」
眼鏡っ娘がボソりと呟く。
「ああ!? なんだ、喧嘩売ってんのか? お前」
「いえ。読書感想文の構想を練ってただけです。他意はありません」
眼鏡っ娘は、本棚の旧千円札おじさん作の『こころ』の背表紙を撫でていった。
眼鏡っち、さっき、走れメロスで終わらせたって言うてましたやん。キミ。
「ったく、なんかよくわかんねーけど、暗いなー。オサゲメガネもちょっとは外に出ねーと、その内、オケラになっちまうぜ」
「素敵なあだ名をつけて頂き、ありがとうございます。お返しに私からも――あなたは、虫がお好きなんですね。では、ザムザさんなんていかがでしょう」
この上なく安直なあだ名をつけられた眼鏡っ子は、チクりと刺すような声でいった。
やめましょうよ。毒虫と俺っ娘ちゃんの組み合わせはマジで洒落にならないから!
俺っ娘ちゃんは、本当にある朝起きたら毒虫になっていちゃう可能性を秘めてるリアルカフカ系女子だから!
「おっ、何か知らないけど、ロボットみたいでかっこいいな! 気に入ったぜ! そいつは変形するのか?」
「変形はしませんが、変身はしますよ」
「へー、いいじゃん! 虫で変身ってことは、やっぱり、ライダー系か? じゃあ、今日はみんなでザムザごっこするか! どんなキャラか教えてくれよ!」
「え、ちょっちょっと!」
俺っ娘が眼鏡っ娘の腕を引いて連れていこうとする。
眼鏡っ娘は、知的キャラのテンプレに乗っ取り、舌戦には強いが、物理攻撃には弱いのよね。
「おいおい、待って。悪いけど、その子は俺の方が先に約束してたんだよ。読書感想文の書き方を教えてもらう予定でさ。そうだよね?」
「は、はい……」
「なんだよ。チェッ。つまんねーの」
「ごめんね。お詫びと言ったらなんだけど、今度、川釣りでもする? イワナがよく釣れるスポットを教えるよ。竿も倉庫にあるから」
「おっ、本当か! 約束だぜ。オレは、翼。鳥羽翼(とばつばさ)」
「成瀬祐樹。よろしく」
気さくに握手を求めてくるオレっ娘――翼の手を、俺は握り返した。
「んで、お前ん家はどこらへん?」
「庭にトーテムポール――変な置物がある家だよ」
「あー、あそこか! わかったぜ! じゃ、今度、行くからよろしくな!」
翼は颯爽と去って行った。
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