27 / 65
第27話 想定外と想定通り(1)
しおりを挟む
「ふうー。今日も遊んだ! 遊んだ! 勝った後のラムネは美味いぜ」
よく晴れた昼下がり。翼が分捕ったベーゴマを左手でジャラジャラさせながら、右手に持ったラムネを煽る。
「うーん、またずいぶんと負け込んじゃったなあ。これじゃあ、次のお小遣いの日まで持たないかも」
分捕られた被害者、こと香が苦笑する。
「そんなことねえだろ。最初は本当にクソ雑魚だったが、今日は五回に一回くらいは勝てるようになってきたじゃねえか」
「うん。祐樹に特訓してもらってるからね」
「香は器用な方だし、呑み込みは早いんだよ。独楽廻しの腕の方はもう十分だ。ただ、ベーゴマの改造は、経験がものを言うみたいなところがあるしな」
俺は香を気遣って言った。
俺の望み通り、香と俺とはお互いを名前で呼び捨てにする程度には仲良くなった。
このメンバーの中では希少な男性陣だからな。よっぽどのヘマをしなければ、勝手に仲良くなれる。
「うん。色々試してみるよ。ベーソードもおもしろかったけど、ベーゴマは自分で色々イジれる楽しみがあるよね」
「その調子だ。道具ならいくらでも貸してやるから」
「先輩風吹かせちゃって。ゆうくんにチ〇コ巻きを教えて上げたのは誰だったかなあ」
みかちゃんが、俺の頬にアイスの袋を当てて、耳たぶに唇があたるような距離で囁いてくる。
巻き方の名前はド直球だが、本当にそういう通称だからしょうがないんだよなあ。
「み、みか姉、それは言わないでよ」
俺は弟キャラっぽい年相応の照れを見せつつ呟いた。
「……独楽の運動は物理科学です。金属の材質と形状から適切な重心の設定することが重要かと」
「ありがとう。でも、遠慮しておくよ。こういうのは自分でやらなきゃ意味がないんだ」
祈の提案に、香は将来ファンクラブができるほどのイケメンスマイルで応えた。
「それでこそ男だ! よしっ! オレのラムネを分けてやるよ。飲め!」
「う、うん……。ありがとう」
香は顔を赤くしながらも、翼から差し出された飲みかけのラムネを受け取る。
(くそっ。香くんさ。そこの俺っ娘じゃなくて、ぷひ子って言う、魅力的な女の子が側にいるって気付こうよ)
香くん親友化計画は上々だが、俺のもう一つの野望、ぷひ子押し付け計画の方は、全く上手くいっていない。
俺の意図に反して、親友氏は翼に好意を持っているようだった。
まあ、出会いが出会いだけに無理もないんだけどね。
これも、俺が本来のフラグを捻じ曲げた代償なのだろう。
あ、もちろん、今の俺たちの世界線では、翼を男だと勘違いするようなラブコメアクシデントは起きていない。いや、正確にいえば、すぐに勘違いが解けた、というべきか。
本編で主人公が翼を男だと勘違いするような展開が許されたのは、接触時間が短かったからだ。すなわち、主人公と翼の夏の一日だけの思い出だったから、ギリギリ女を男と勘違いするのも許されただけであって、これだけ何日も友達として接していて、女だと気づかないのはいくらなんでも無理がある。
(多分、大丈夫、だろうな。香と翼は原作では関係性が薄いし)
原作において、香と翼の絡みはほぼゼロに近い。変なフラグが立つことはないだろう。ならば、香の自由恋愛に任せておく他はない。感情の誘導はできても、強制はできない。
「……不思議です。足が速いとかならともかく、何で一遊戯の手腕ごときが、集団内での序列を決めるのか。やはり、人間はホイシンガの言うところの、ホモルーデンスということなのでしょうか」
「あー、祈ちゃんもそういうの苦手なんだー、私もね。かけっこはいつもビリなんだあ。ベーゴマも難しくて回せないの。あっちで一緒におままごとしよっ!」
ぷひ子が勝手に祈を仲間認定し、袖を引く。ぷひ子はメシマズキャラだしな。一応、発酵食品の選球眼と作成能力だけは異常に優れている設定があるので、そういう系の料理だけは上手いが、普通の料理はからっきしできない。
なお、くもソラのファンディスクで描かれたヒロインとくっついた後の「その後」のエピソードにより、こいつと結婚した場合、毎日、ご飯と漬け物類だけの坊主みたいな食生活が待っていることは確定している。
だから、俺は君のルートだけは特に回避したいんだよ。ぷひ子くん。
「いや、苦手とか、そういうことではないんですけど、お付き合いします。……ちなみに、この人形、元は娼婦の設定だったってご存じですか?」
祈ちゃんがボソっと嫌な豆知識を呟きながら、ぷひ子に従う。
「渚も混ぜてー!」
渚ちゃんが二人にひっついていった。
「あー、じゃあ、私も混ぜてもらっちゃおうかなー」
みかちゃんが三人に加わる。もちろん、おままごとがしたい訳ではなく、彼女たちをフォローするためだろう。ぷひ子は天然で、祈は渡る世間は鬼はないことはない的な徹底的なリアリティ重視の脚本を構成するので、そのままだと渚ちゃんがギャン泣きする展開になるからね。
さすがみかちゃん、インドア人間・アウトドア人間の両方に対応できる万能人材、最高!勝手に空気を読んで、退屈してそうな娘や、寂しそうに積極的に声をかけてくれる、くもソラの良心や。
ほんまみかちゃんはええ娘やでえ。なんでこんないい娘が、ほとんどのルートで、あんなに口に出すのもはばかられるようなひどい目に遭わされるのかわからないよ。くもソラのライターは絶対性格が悪い(断定)。
よく晴れた昼下がり。翼が分捕ったベーゴマを左手でジャラジャラさせながら、右手に持ったラムネを煽る。
「うーん、またずいぶんと負け込んじゃったなあ。これじゃあ、次のお小遣いの日まで持たないかも」
分捕られた被害者、こと香が苦笑する。
「そんなことねえだろ。最初は本当にクソ雑魚だったが、今日は五回に一回くらいは勝てるようになってきたじゃねえか」
「うん。祐樹に特訓してもらってるからね」
「香は器用な方だし、呑み込みは早いんだよ。独楽廻しの腕の方はもう十分だ。ただ、ベーゴマの改造は、経験がものを言うみたいなところがあるしな」
俺は香を気遣って言った。
俺の望み通り、香と俺とはお互いを名前で呼び捨てにする程度には仲良くなった。
このメンバーの中では希少な男性陣だからな。よっぽどのヘマをしなければ、勝手に仲良くなれる。
「うん。色々試してみるよ。ベーソードもおもしろかったけど、ベーゴマは自分で色々イジれる楽しみがあるよね」
「その調子だ。道具ならいくらでも貸してやるから」
「先輩風吹かせちゃって。ゆうくんにチ〇コ巻きを教えて上げたのは誰だったかなあ」
みかちゃんが、俺の頬にアイスの袋を当てて、耳たぶに唇があたるような距離で囁いてくる。
巻き方の名前はド直球だが、本当にそういう通称だからしょうがないんだよなあ。
「み、みか姉、それは言わないでよ」
俺は弟キャラっぽい年相応の照れを見せつつ呟いた。
「……独楽の運動は物理科学です。金属の材質と形状から適切な重心の設定することが重要かと」
「ありがとう。でも、遠慮しておくよ。こういうのは自分でやらなきゃ意味がないんだ」
祈の提案に、香は将来ファンクラブができるほどのイケメンスマイルで応えた。
「それでこそ男だ! よしっ! オレのラムネを分けてやるよ。飲め!」
「う、うん……。ありがとう」
香は顔を赤くしながらも、翼から差し出された飲みかけのラムネを受け取る。
(くそっ。香くんさ。そこの俺っ娘じゃなくて、ぷひ子って言う、魅力的な女の子が側にいるって気付こうよ)
香くん親友化計画は上々だが、俺のもう一つの野望、ぷひ子押し付け計画の方は、全く上手くいっていない。
俺の意図に反して、親友氏は翼に好意を持っているようだった。
まあ、出会いが出会いだけに無理もないんだけどね。
これも、俺が本来のフラグを捻じ曲げた代償なのだろう。
あ、もちろん、今の俺たちの世界線では、翼を男だと勘違いするようなラブコメアクシデントは起きていない。いや、正確にいえば、すぐに勘違いが解けた、というべきか。
本編で主人公が翼を男だと勘違いするような展開が許されたのは、接触時間が短かったからだ。すなわち、主人公と翼の夏の一日だけの思い出だったから、ギリギリ女を男と勘違いするのも許されただけであって、これだけ何日も友達として接していて、女だと気づかないのはいくらなんでも無理がある。
(多分、大丈夫、だろうな。香と翼は原作では関係性が薄いし)
原作において、香と翼の絡みはほぼゼロに近い。変なフラグが立つことはないだろう。ならば、香の自由恋愛に任せておく他はない。感情の誘導はできても、強制はできない。
「……不思議です。足が速いとかならともかく、何で一遊戯の手腕ごときが、集団内での序列を決めるのか。やはり、人間はホイシンガの言うところの、ホモルーデンスということなのでしょうか」
「あー、祈ちゃんもそういうの苦手なんだー、私もね。かけっこはいつもビリなんだあ。ベーゴマも難しくて回せないの。あっちで一緒におままごとしよっ!」
ぷひ子が勝手に祈を仲間認定し、袖を引く。ぷひ子はメシマズキャラだしな。一応、発酵食品の選球眼と作成能力だけは異常に優れている設定があるので、そういう系の料理だけは上手いが、普通の料理はからっきしできない。
なお、くもソラのファンディスクで描かれたヒロインとくっついた後の「その後」のエピソードにより、こいつと結婚した場合、毎日、ご飯と漬け物類だけの坊主みたいな食生活が待っていることは確定している。
だから、俺は君のルートだけは特に回避したいんだよ。ぷひ子くん。
「いや、苦手とか、そういうことではないんですけど、お付き合いします。……ちなみに、この人形、元は娼婦の設定だったってご存じですか?」
祈ちゃんがボソっと嫌な豆知識を呟きながら、ぷひ子に従う。
「渚も混ぜてー!」
渚ちゃんが二人にひっついていった。
「あー、じゃあ、私も混ぜてもらっちゃおうかなー」
みかちゃんが三人に加わる。もちろん、おままごとがしたい訳ではなく、彼女たちをフォローするためだろう。ぷひ子は天然で、祈は渡る世間は鬼はないことはない的な徹底的なリアリティ重視の脚本を構成するので、そのままだと渚ちゃんがギャン泣きする展開になるからね。
さすがみかちゃん、インドア人間・アウトドア人間の両方に対応できる万能人材、最高!勝手に空気を読んで、退屈してそうな娘や、寂しそうに積極的に声をかけてくれる、くもソラの良心や。
ほんまみかちゃんはええ娘やでえ。なんでこんないい娘が、ほとんどのルートで、あんなに口に出すのもはばかられるようなひどい目に遭わされるのかわからないよ。くもソラのライターは絶対性格が悪い(断定)。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる