泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――

穂積潜

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第27話 想定外と想定通り(1)

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「ふうー。今日も遊んだ! 遊んだ! 勝った後のラムネは美味いぜ」



 よく晴れた昼下がり。翼が分捕ったベーゴマを左手でジャラジャラさせながら、右手に持ったラムネを煽る。



「うーん、またずいぶんと負け込んじゃったなあ。これじゃあ、次のお小遣いの日まで持たないかも」



 分捕られた被害者、こと香が苦笑する。



「そんなことねえだろ。最初は本当にクソ雑魚だったが、今日は五回に一回くらいは勝てるようになってきたじゃねえか」



「うん。祐樹に特訓してもらってるからね」



「香は器用な方だし、呑み込みは早いんだよ。独楽廻しの腕の方はもう十分だ。ただ、ベーゴマの改造は、経験がものを言うみたいなところがあるしな」



 俺は香を気遣って言った。



 俺の望み通り、香と俺とはお互いを名前で呼び捨てにする程度には仲良くなった。



 このメンバーの中では希少な男性陣だからな。よっぽどのヘマをしなければ、勝手に仲良くなれる。



「うん。色々試してみるよ。ベーソードもおもしろかったけど、ベーゴマは自分で色々イジれる楽しみがあるよね」



「その調子だ。道具ならいくらでも貸してやるから」



「先輩風吹かせちゃって。ゆうくんにチ〇コ巻きを教えて上げたのは誰だったかなあ」



 みかちゃんが、俺の頬にアイスの袋を当てて、耳たぶに唇があたるような距離で囁いてくる。



 巻き方の名前はド直球だが、本当にそういう通称だからしょうがないんだよなあ。



「み、みか姉、それは言わないでよ」



 俺は弟キャラっぽい年相応の照れを見せつつ呟いた。



「……独楽の運動は物理科学です。金属の材質と形状から適切な重心の設定することが重要かと」



「ありがとう。でも、遠慮しておくよ。こういうのは自分でやらなきゃ意味がないんだ」



 祈の提案に、香は将来ファンクラブができるほどのイケメンスマイルで応えた。



「それでこそ男だ! よしっ! オレのラムネを分けてやるよ。飲め!」



「う、うん……。ありがとう」



 香は顔を赤くしながらも、翼から差し出された飲みかけのラムネを受け取る。



(くそっ。香くんさ。そこの俺っ娘じゃなくて、ぷひ子って言う、魅力的な女の子が側にいるって気付こうよ)



 香くん親友化計画は上々だが、俺のもう一つの野望、ぷひ子押し付け計画の方は、全く上手くいっていない。



 俺の意図に反して、親友氏は翼に好意を持っているようだった。



 まあ、出会いが出会いだけに無理もないんだけどね。



 これも、俺が本来のフラグを捻じ曲げた代償なのだろう。



 あ、もちろん、今の俺たちの世界線では、翼を男だと勘違いするようなラブコメアクシデントは起きていない。いや、正確にいえば、すぐに勘違いが解けた、というべきか。



 本編で主人公が翼を男だと勘違いするような展開が許されたのは、接触時間が短かったからだ。すなわち、主人公と翼の夏の一日だけの思い出だったから、ギリギリ女を男と勘違いするのも許されただけであって、これだけ何日も友達として接していて、女だと気づかないのはいくらなんでも無理がある。



(多分、大丈夫、だろうな。香と翼は原作では関係性が薄いし)



 原作において、香と翼の絡みはほぼゼロに近い。変なフラグが立つことはないだろう。ならば、香の自由恋愛に任せておく他はない。感情の誘導はできても、強制はできない。



「……不思議です。足が速いとかならともかく、何で一遊戯の手腕ごときが、集団内での序列を決めるのか。やはり、人間はホイシンガの言うところの、ホモルーデンスということなのでしょうか」



「あー、祈ちゃんもそういうの苦手なんだー、私もね。かけっこはいつもビリなんだあ。ベーゴマも難しくて回せないの。あっちで一緒におままごとしよっ!」



 ぷひ子が勝手に祈を仲間認定し、袖を引く。ぷひ子はメシマズキャラだしな。一応、発酵食品の選球眼と作成能力だけは異常に優れている設定があるので、そういう系の料理だけは上手いが、普通の料理はからっきしできない。



 なお、くもソラのファンディスクで描かれたヒロインとくっついた後の「その後」のエピソードにより、こいつと結婚した場合、毎日、ご飯と漬け物類だけの坊主みたいな食生活が待っていることは確定している。



 だから、俺は君のルートだけは特に回避したいんだよ。ぷひ子くん。



「いや、苦手とか、そういうことではないんですけど、お付き合いします。……ちなみに、この人形、元は娼婦の設定だったってご存じですか?」



 祈ちゃんがボソっと嫌な豆知識を呟きながら、ぷひ子に従う。



「渚も混ぜてー!」



 渚ちゃんが二人にひっついていった。



「あー、じゃあ、私も混ぜてもらっちゃおうかなー」



 みかちゃんが三人に加わる。もちろん、おままごとがしたい訳ではなく、彼女たちをフォローするためだろう。ぷひ子は天然で、祈は渡る世間は鬼はないことはない的な徹底的なリアリティ重視の脚本を構成するので、そのままだと渚ちゃんがギャン泣きする展開になるからね。



 さすがみかちゃん、インドア人間・アウトドア人間の両方に対応できる万能人材、最高!勝手に空気を読んで、退屈してそうな娘や、寂しそうに積極的に声をかけてくれる、くもソラの良心や。



 ほんまみかちゃんはええ娘やでえ。なんでこんないい娘が、ほとんどのルートで、あんなに口に出すのもはばかられるようなひどい目に遭わされるのかわからないよ。くもソラのライターは絶対性格が悪い(断定)。
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