28 / 65
第28話 想定外と想定通り(2)
しおりを挟む
「っつても、アレだなあ。なんか、もうちょっとワクワクすることがしてえな。結局、虫捕りもできてねえしよ。なんつーか、こう、オレの中の宝探し欲が全然満たされてねーんだよ。やっぱり、森に忍び込むか?」
翼がウズウズと身体を微動させながら言う。
「森はさすがにやめといた方がいいんじゃないか? オオクワガタを盗みにやってきた余所者が病院送りにされたらしいし」
俺は難色を示す。つーか、この俺っ娘め。隙あらば森に近づこうとするな。殺すぞ。そんなにリアルザムザになりてーか。
「うーん、じゃあ、肝試しなんてどうかな? 夏っぽいし、楽しいと思うけど」
よくぞ言ってくれた香くん。君がそのフラグを立ててくれるのを待ってたんだよ。
「おっ、肝試し、いいんじゃね? 『毒蛾伯爵の館』とかどうだ?」
俺はそう言って、珍しく自分からフラグを建てに行く。
「毒蛾伯爵の館ってなんだ?」
「この村に来る途中で見なかったか? 丘の上にある洋館だよ。蔦がいっぱい絡まっててさ。いかにもお化けかなにかが出そうな感じの」
「あー! あのなんか殺人事件が起きそうなとこな!」
翼が合点のいったように頷く。
「僕も車の中からちらっと見た程度だけど、かなり古くて、立派なお屋敷だよね。でも、何で『毒蛾伯爵の館』って言うの?」
「ただの噂話よ。昔、この村の森で珍しい蛾が採れるっていう噂を聞いた外国の昆虫学者でもある伯爵が、あのお屋敷を建てたの。それで、地元の女性と恋に落ちて結ばれたんだけど、実は伯爵は本国に妻子がいたの。その事実を知り、いつか捨てられるんじゃないかと思った女性は、伯爵に蛾の毒を与えて少しずつ弱らせていった。自分ではなにもできないようにして、永遠に伯爵をこの地に留まらせるために。色々あって、最後は女性と伯爵は互いに刺し違えて亡くなるの。そんな忌まわしい出来事があってから、今でもあの洋館からは時折、苦しむ伯爵のうめき声や女性のすすり泣く声が聞こえるとか。そんな悪評もあって、洋館には買い手もつかず、ずっと無人らしいわ」
おままごとのフォローをしていたみかちゃんが、こちらへ振り向いてそう解説した。
「そんな由来が……。いかにも肝試しにぴったりな感じだね」
「あの館、私も気になってました。郷土史には伯爵なる人物があの屋敷を建てたところまでは記されているのですが、それ以上の情報はなく……。この村の規模からいえば、かなりの大きな出来事であったはずですが、不自然なまでに記述が少ないんですよね。まるで、誰かが意図的に消させたかのように」
祈が考え込むように、顎に手を当てる。
かなりヤバそうなフラグに見えるだろ?
実は大したことないんだなこれが。
「ま、真実かどうかともかく、おもしろそうだろ? 肝試しをやるならあそこしかないって」
「オシッ。決まりだ。早速今晩いくぞ。24時にあの自販機の前だ。あっ、当たり前だが、親に黙って出て来いよ。見張りつきの肝試しとかつまんねーからな」
翼が駄菓子屋の横に設置されたそれを指して言う。また、リスク増し増し頂きました。
俺は結論を知ってるから、敢えてこのフラグを踏みにいけるけど、初回プレイの時はめちゃくちゃ迷ったよね。明らかに死亡フラグっぽいもん。
「えー、やだー。お化け怖いよー!」
「渚もいやー!」
ぷひ子と渚が首をブンブン横に振って拒否する。
本編では、肝試しに行くメンバーは、ぷひ子、みかちゃん、主人公、香の四人だ。ぷひ子はやはり、肝試しを怖がるが、みかちゃんと主人公を二人きりにしたくない嫉妬心から、参加を決める。今の世界線ではどういう結論に達するかは不明だが、それはどうでもいい。今、重要なのは、俺があの館に特定の時刻に行くことだからな。
「来たくねーやつは来るな! ママのおっぱいでも吸って寝とけ! あ、だけど、親にチクんじゃねーぞ。それだけは守れよ。おい、祐樹、香。お前らは当然来るだろ? 玉ついてるもんな?」
翼がそう言って釘を刺す。
「そりゃ俺が言い出しっぺだしな。行くよ」
俺は頷いた。
「僕も行くよ」
香も決然と言った。本編では、『ぷひ子にかっこ悪いところを見せたくないから行く』という設定だったが、それが今は『翼にかっこ悪いところは見せたくないから行く』にすり替わった感じだろうか。
「私はおすすめできないなあ……。でも、止めても行っちゃうだろうし、だったら、近くで見守りたいかも。自宅待機してても、どうせ気になって眠れないだろうし」
みかちゃんは『しょうがないにゃあ』といった感じで参加を表明する。
「そうですね……。普通に犯罪ですが、こういうのは子どもの時しか許されない逸脱ですし、経験しておくのも悪くないかもしれません。郷土史の真相に迫る手がかりもあるかもしれませんし」
祈は案外乗り気だ。お堅いキャラに見えて、知的好奇心は旺盛だからね。
「おっしゃ。そこの豚子とガキ以外は全員参加だな!」
「ううー、みんな行くのー? じゃ、じゃあ、私も行こうかなー」
「うーん。うーん。やっぱり、渚も行くー。渚だけ仲間外れとかいやー!」
翼が挑発的にそう言うと、最終的には、嫌がっていた二人も、渋々参加を表明した。
こうして俺たちは、全員で噂の洋館へと肝試しをすることになった。
翼がウズウズと身体を微動させながら言う。
「森はさすがにやめといた方がいいんじゃないか? オオクワガタを盗みにやってきた余所者が病院送りにされたらしいし」
俺は難色を示す。つーか、この俺っ娘め。隙あらば森に近づこうとするな。殺すぞ。そんなにリアルザムザになりてーか。
「うーん、じゃあ、肝試しなんてどうかな? 夏っぽいし、楽しいと思うけど」
よくぞ言ってくれた香くん。君がそのフラグを立ててくれるのを待ってたんだよ。
「おっ、肝試し、いいんじゃね? 『毒蛾伯爵の館』とかどうだ?」
俺はそう言って、珍しく自分からフラグを建てに行く。
「毒蛾伯爵の館ってなんだ?」
「この村に来る途中で見なかったか? 丘の上にある洋館だよ。蔦がいっぱい絡まっててさ。いかにもお化けかなにかが出そうな感じの」
「あー! あのなんか殺人事件が起きそうなとこな!」
翼が合点のいったように頷く。
「僕も車の中からちらっと見た程度だけど、かなり古くて、立派なお屋敷だよね。でも、何で『毒蛾伯爵の館』って言うの?」
「ただの噂話よ。昔、この村の森で珍しい蛾が採れるっていう噂を聞いた外国の昆虫学者でもある伯爵が、あのお屋敷を建てたの。それで、地元の女性と恋に落ちて結ばれたんだけど、実は伯爵は本国に妻子がいたの。その事実を知り、いつか捨てられるんじゃないかと思った女性は、伯爵に蛾の毒を与えて少しずつ弱らせていった。自分ではなにもできないようにして、永遠に伯爵をこの地に留まらせるために。色々あって、最後は女性と伯爵は互いに刺し違えて亡くなるの。そんな忌まわしい出来事があってから、今でもあの洋館からは時折、苦しむ伯爵のうめき声や女性のすすり泣く声が聞こえるとか。そんな悪評もあって、洋館には買い手もつかず、ずっと無人らしいわ」
おままごとのフォローをしていたみかちゃんが、こちらへ振り向いてそう解説した。
「そんな由来が……。いかにも肝試しにぴったりな感じだね」
「あの館、私も気になってました。郷土史には伯爵なる人物があの屋敷を建てたところまでは記されているのですが、それ以上の情報はなく……。この村の規模からいえば、かなりの大きな出来事であったはずですが、不自然なまでに記述が少ないんですよね。まるで、誰かが意図的に消させたかのように」
祈が考え込むように、顎に手を当てる。
かなりヤバそうなフラグに見えるだろ?
実は大したことないんだなこれが。
「ま、真実かどうかともかく、おもしろそうだろ? 肝試しをやるならあそこしかないって」
「オシッ。決まりだ。早速今晩いくぞ。24時にあの自販機の前だ。あっ、当たり前だが、親に黙って出て来いよ。見張りつきの肝試しとかつまんねーからな」
翼が駄菓子屋の横に設置されたそれを指して言う。また、リスク増し増し頂きました。
俺は結論を知ってるから、敢えてこのフラグを踏みにいけるけど、初回プレイの時はめちゃくちゃ迷ったよね。明らかに死亡フラグっぽいもん。
「えー、やだー。お化け怖いよー!」
「渚もいやー!」
ぷひ子と渚が首をブンブン横に振って拒否する。
本編では、肝試しに行くメンバーは、ぷひ子、みかちゃん、主人公、香の四人だ。ぷひ子はやはり、肝試しを怖がるが、みかちゃんと主人公を二人きりにしたくない嫉妬心から、参加を決める。今の世界線ではどういう結論に達するかは不明だが、それはどうでもいい。今、重要なのは、俺があの館に特定の時刻に行くことだからな。
「来たくねーやつは来るな! ママのおっぱいでも吸って寝とけ! あ、だけど、親にチクんじゃねーぞ。それだけは守れよ。おい、祐樹、香。お前らは当然来るだろ? 玉ついてるもんな?」
翼がそう言って釘を刺す。
「そりゃ俺が言い出しっぺだしな。行くよ」
俺は頷いた。
「僕も行くよ」
香も決然と言った。本編では、『ぷひ子にかっこ悪いところを見せたくないから行く』という設定だったが、それが今は『翼にかっこ悪いところは見せたくないから行く』にすり替わった感じだろうか。
「私はおすすめできないなあ……。でも、止めても行っちゃうだろうし、だったら、近くで見守りたいかも。自宅待機してても、どうせ気になって眠れないだろうし」
みかちゃんは『しょうがないにゃあ』といった感じで参加を表明する。
「そうですね……。普通に犯罪ですが、こういうのは子どもの時しか許されない逸脱ですし、経験しておくのも悪くないかもしれません。郷土史の真相に迫る手がかりもあるかもしれませんし」
祈は案外乗り気だ。お堅いキャラに見えて、知的好奇心は旺盛だからね。
「おっしゃ。そこの豚子とガキ以外は全員参加だな!」
「ううー、みんな行くのー? じゃ、じゃあ、私も行こうかなー」
「うーん。うーん。やっぱり、渚も行くー。渚だけ仲間外れとかいやー!」
翼が挑発的にそう言うと、最終的には、嫌がっていた二人も、渋々参加を表明した。
こうして俺たちは、全員で噂の洋館へと肝試しをすることになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる