泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――

穂積潜

文字の大きさ
42 / 65

第42話 愛の形は人それぞれ(3)

しおりを挟む
「……お風呂、頂きましたー。えへへ。ぷひちゃんのパジャマ借りちゃった」



 みかちゃんが袖足らずのパジャマを着て、照れくさそうに言う。



 メインヒロイン特権でぷひ子の着替えは俺の家に常備されてるからな。それを使ったのだろう。



「うん。はい、麦茶」



 俺はコップにいれておいた麦茶をみかちゃんに差し出す。



「ありがと」



 みかちゃんはそれを受け取り、半分ぐらいまで飲み干した。



 そのまま、なんとなく二人並んでソファーに座る。



「それでね……。改めて、聞くけど、ゆうくんが私のうちを助けてくれたんだよね」



「――うん。どうやら、俺にはお金を稼ぐ才能があるみたいだから、それでみか姉のうちが助かるならいいかなって思って」



「そうなんだ……。うん。じゃあ、やっぱり、もう、私はゆうくんのものなんだ」



 みかちゃんはコップに口をつけながら、神妙な面持ちで頷いた。



「俺のものって?」



「あのね。パパとママが、うちにはゆうくんに返すようなお金がないから、代わりに私がゆうくんにご奉仕しなさいって」



 あー、つまり、本編のヤクザ屋さんの立ち位置が俺ってことか。



 まあ、俺がみかちゃんに手を出さなければ変なフラグは立たないだろう。



「奉仕なんていらないよ。見返りが欲しくてやった訳じゃないし」



「でも、100円や、500円の話じゃないでしょ。詳しいことまでは知らないけど、すごい額のお金だってことくらいはわかるわ」



「ねえ、みか姉。例えば、さ。俺が海で溺れてて、その場にみか姉しか助けられる人がいないとしたら、どうする?」



「もちろん、飛び込んで助けるわ。お姉ちゃんだもん」



 みかちゃんが即答した。



 実際、いくつかのルートでは主人公を庇って死ぬからね。みかちゃんは。



「その時に、後で俺から何か欲しいと思う?」



「そんなこと、考える余裕ないと思う」



「それと同じだよ。俺のやったことも」



「ありがとう、ゆうくん。ゆうくんの言いたいことはわかった」



「そっか。よかった」



 俺はほっと息を吐き出す。



 みたか、この完璧な主人公ムーブを! 青春時代をギャルゲーに費やした経験は伊達じゃ――



「でもそれはそれとしてご奉仕はするね!」



 みかちゃんは俺の自己満足を一瞬で吹き飛ばす。



「えっと……どうして?」



「あのね。パパとママが、私はゆうくんのものだって言った時、実は、ちょっと嬉しかったの。一生返せないようなお金の代わりに、私がゆうくんのものになるっていうなら、私はずっとゆうくんの側にいられることになるから」



「それはお金を介さなくても一緒だよ。俺たちは、幼馴染だし、みか姉は、みか姉だし……」



「一緒じゃないよ。お姉ちゃんっていっても、本物じゃないわ。幼馴染じゃずっと一緒にはいられない。私はぷひちゃんみたいに家が隣じゃないから、朝起こしにいったり、晩ご飯を一緒に食べたりもできない。ほら、こんな風にパジャマを置いていったりも。でも、ゆうくんのものになったら、全部できるよね。ゆうくんなら、私を大切に飼ってくれるでしょ?」



 みかちゃんは、そう言って上目遣いで俺を見る。



 これはみかちゃんの隠れドスケベな所が全面に出たな。



 さすがにギャルゲーのセオリーとして、これを拒絶するのは無理だ。トラウマ発動して、いきなり鬱フラグが立ちかねない。



「わかった……。じゃあ、ご奉仕はともかく、みか姉にお願いする仕事、考えておくよ。それでいい?」



(まあ、いずれバレることだし、仕方ないか。計画を早めよう)



 本当は、高校生か、早くても中学生くらいで『普通』の仮面を投げ捨てるつもりだったが、それが今になっただけだ。みかちゃんが有能であることは本編でも証明されてるし、今から訓練して、俺の秘書的な役割でも果たしてもらうとしよう。



「わかった! じゃあ、そのお仕事が決まるまで、私、ゆうくんのお手伝いさんをやるね!」



 みかちゃんが決定事項のようにそう宣言する。



 将来の生徒会長だけあって、リーダーシップを発揮する時はするのだ。このムッツリ姉は。



「うん。でも、無理のない範囲でね……」



 「ぷひ子の嫉妬ゲージが溜まるから嫌です」とも言えない俺は、控えめにそう付け加えるんで精一杯なのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...