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第1章

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 冷たい床の感触に目が覚める。
 見回すと其処は、何処かの神殿らしき場所。魔方陣のような幾何学模様が、私の足下に描かれている。

(ナニコレ? 何かの撮影?)

 床に座り込む私の周りを、外国人のコスプレ集団が囲っている。 それにしても本格的だな。魔術師に騎士。それに一際目立つ、赤に金の装飾の衣装の男性。
立派な髭を蓄えて、まるで王様みたい。

「おおっ。召喚は成功したようだな」

「陛下。そのようで」

 陛下?王様?それにしても頭が痛い。じんじんと痺れて思考回路が繋がらない。

 「神子よ……そなたがくるのを待ち望んでおったぞ」

  頭がぼんやりする。それって私に言ってるの?

「……神子? 私は美琴なんだけど……人違いです」

「何か知らないけど、私を巻き込まないでくれますか? 撮影とかそういうの興味ないから……」

 なんだか、此処にいちゃダメな予感がする。逃げなきゃ。でも、身体に力が入らない。

「いやいや。ガッツリ巻き込ませていただきますぞ。何しろ貴女様は神子で、この世界を唯一救える存在ですからな」

 野太い声で、お髭のおじさんがそう告げる。

 世界を救う? 
 だれが?
 どうやって?

 それに答えてくれる人は、誰もいなかった。



◇◇◇


「神子殿、頭の方は大丈夫か?」
 
 護衛の一人が、声をかけてくる。

「ええ。残念な事に頭は正常なようです」

 混乱から覚めた私は今、城下をとぼとぼと歩いている……右を見ても左を見ても、見覚えのない風景。中世ヨーロッパ風? いや、まるでファンタジーのような街並み……此処は間違いなく異世界だ。

 なりきり集団は、本物だった。言語が通じたのは、神子として召喚されたかららしい。この世界を救へと召喚された。そうして戸惑う私は、拒否する間もなく魔王城へ行け! と旅に出され今に至る。

 ー神子専用衣装に着替えさせられて。

 これ、どう見てもウェディングドレスにしか見えない。

 純白ひらひらドレス……こんな格好で魔王討伐

 悪目立ちして仕方ないよね。大丈夫なの?これで歩いてたら、魔王の配下とかに見つかるよ?ーっと護衛の一人に告げるが、決まりだから問題無い。と返された。

 問題あるでしょ!どーみても!これ、旅する格好じゃないよ! こんなので戦えないよ!? いや、戦う気もないけどね!?

 ーこの旅は、色々とおかしい。衣装もそうだけれど、護衛も変!

 護衛に付いたのは、騎士が二人に魔術師一人。
たった四人(そのうちの一人は、名だけの神子の私)で魔王討伐。

 ーここで私は問いたい。

  本気で討伐する気あるのかと。

  少数精鋭?
 まさか! このパーティで、やっていけるとでも?
 
 ガタイはいいが、寡黙で近寄りずらい 堅物騎士。
 スキンシップが多く、ちゃらい眼帯隻眼の色男。
 フードを目深に被り、口を開けば罵詈雑言を浴びせてくる少年魔術師。

 みんなイケメンだけれど、イケメンで魔王を倒せますかー?

 答えは、NOー!

  そんな面子で、魔王討伐できるわけがない!

 「はぁ。この世界に、私何も愛着ないのに……」

 この世界の事は、この世界の人間が救うべきじゃないの? 

 神様……私、一体どうなるんでしょうか?






  
 
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