異世界の神子は、逆ハーを望まない

一花八華

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第1章

セシル視点 【湖の中で】5話裏

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 魔力を使ったせいで、ほんの少し気だるい。
 駄目だな。こんな低級魔法で疲れるなんて。
 昔は、もっと使えたのに。

 必死で 死に物狂いで覚えた魔法も……魔力が無いんじゃ使えない。

 神子に無能って言ったけど。

 本当に無能なのは、僕だ。

 誰にも気付かれたくない。いや、いっそ気付かれて無能とバレれば楽になれるかな。下らない虚勢もはらずに、楽に生きられるかも。

 そんな風に考え事をしてたら、突然背中を押された。バランスを崩し、倒れたら湖の中に落ちた。
 
 なんなの?この女。
 人が、物思いに耽ってるとこ、突き落とすなんて性格悪すぎだろ!って怒鳴ったら、自分まで入ってきてそのまま追いかけられた。

 はぁ?意味がわかんなすぎる!行動が読めないよ!

 水遊びがしたかった。ってあんたいくつなんだよ!?15くらいだろ?って思ってたら19って……いや。童顔だなって思ったけど……中身も幼いよね。うん。僕より、下だ。こいつ。

 てか、さっきからすっごい笑う。何がそんなに面白いわけ?濡れながら、笑う顔。なんか、見るとドキドキするんだけど。

 ーほんとムカつく。

 それにさ。あんた、その服、神子服だからって油断してるみたいだけど。所々、透けてるからね。濡れてまとわりついて……体のラインとか……その……色々 危険な事になってんのわかってんの!?

 ほんと馬鹿。こいつ馬鹿すぎる!

 ヴォルフとルドルフ帰ってきたら、こんな姿 見せられないんだけど!?

 ─って言ったら

 魔法で乾かせだって?

 ─はぁ。やっぱり、知らないんだ。魔力の事も。僕が、どんな気持ちで魔法を使ったかなんて、気付いてない。まぁ、何も知らないコイツが、知るわけなんてなかったんだけど……少しムカついて

 そんなに魔法使って欲しいなら、あんたの魔力 僕に分けてよ。
 
 って言ってやった。だって、たくさんあるんだから、いいだろ? 例え、受け渡しの為に、繋がらないといけないとしても……僕は欲しい。喉から手がでる程、ソレが欲しい。

 だから「分けてよ」って言ったら

 あっさり 「いいよ」って
  「セシル君だったらいい」って

  ……馬鹿なんだ。こいつ。

 意味わかって言ってんの?

 あっやっぱりわかってない。

 はぁ。もう、意地悪するつもりで言ったのに……なんかこっちがダメージ受けてるんだけど。


 あーヤバイ。繋がるの、唇だけでいいよね?

 てか、それ以上とか 無理だし。
 今は、それだけで。
 
 背伸びして、こいつの顔に近づく。
 濡れた黒髪が、色っぽくて すごくドキドキする。

  見つめ合うと、息が止まりそう。

  あぁ。ごめん。何にも知らないんだよね。
  うん。

 こんなカタチで、奪ってごめん。

 でも、僕は欲しいんだ。いいよね?ちょうだい



 君の初めてを……僕にちょうだい。


 今さら 嫌だって言っても 止められないから。
 止めてあげない。


 いいって言ったのは、君だもの。

 
 早まる鼓動を抑えて

 僕は 彼女にキスをした。

 
 啄むように。
 小さな音を立てて。


 何度も

 何度も

 キスをした。



 

 
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