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第1章
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しおりを挟む─木陰に身を委ね、ヴォルフとルドルフさんの帰りを待つ。二人とも、何処まで行ったんだろう。此処で待つように言われてたんだけど……。
「ねぇ」
隣に座るセシル君が、私に声をかけてくる。 その声に思わず、体がびくっと反応する。すると、はぁ……。っと小さなため息をつかれた。
「別に、とって喰うわけじゃないから……。ていうか、僕は あれ以上は、するつもりないし」
【あれ以上】っという言葉に反応し、顔が火照り 湯気がでそうになる。
「魔力を分け与える為には、繋がる必要がある。知らなかったの?」
また、セシル君の呆れた声がする。うう。知りませんでしたぁ!すみません!これから勉強します。
「知らなかったなら、無闇に 【分け与える】とか言っちゃだめだよ。僕だったから、キスですんだけど。他の奴……ヴォルフとかだと……うん。駄目だからね。しちゃ駄目だし、言っちゃ駄目」
うっ……ヴォルフだと、軽く一線を越えて行くのが目に浮かびます。
「気をつけ……ます」
「そうして」
チラッとセシル君を見ると 何故かにこにこしてた。あれかな、魔力が補充できた事がよっぽど嬉しかったのかな。お陰で私も 服も乾いて さっぱりしたけど。
だめだ。心のキャパをゆうに越えてる。女の子のような顔してても……セシル君は男の子だもの。おっ……男の子と……ききき……キスしただなんて。
しかも、軽いキスだったけど、その、何度も。
「何?さっきから 顔真っ赤だけど」
こちらを覗き込んでくる セシル君に、思わず ぎゃっ!っと叫んで逃げ出す。
「ちょっと。人の顔見て逃げるなんて、失礼だよ。それに……」
「逃げられると、追いかけたくなるんだけど。」
ニヤリと悪い顔を浮かべたセシル君。ジリジリと間合いを詰められる。
「ねぇ。もう一回する? あんたの魔力 すごく甘いの。心をとかされるくらい。僕……あんたのこと……」
うっとりしたような目で、見つめられて 早鐘がなる。うおおおぉおぉ! 誰だ!この美少年は!あれだ!これ、はっ犯罪だ!だめな奴!お巡りさんコイツです!ってヤラレる奴!
「セ……セセセ……セシル君!?」
思わず涙目で見上げると、セシル君はふっと笑い、私の額にデコピンをした。
「ははっ。あんた 初心すぎ。経験ないわけじゃないだろに」
そんな風に笑われて、ズキンと心に痛みが走る。
「……ない……わよ」
「へ?」
「男性が苦手だったんだもの……それに、こんな性格だし……今まで、なんの経験もないわよ……」
こども相手に、大人気ないってわかってる。でも、経験がない事を笑われて……胸に刺さった棘から、鈍い痛みが走る。
「年上からかって、可笑しかった? 私の事、嫌ってたもんね。良かったわね。馬鹿にできて」
ファーストキスだったのに……確かに、焦ってたし、嫌いじゃない相手なら、処女だって捨ててもいいかと思ってた。
でも、やっぱり 初めては、好きな人としたい。
恋だって、まだなのに。
やだな。泣きたくなんかないのに。悔しくて、勝手に涙が零れてくる。ぼろぼろと零れ出す涙が、止まらない。
「ふっ……ふっく。ふぇっ……くふっ…」
「もしかして、キスも……初めてだったの?」
セシル君の手が恐る恐る、私の頭に触れる。黙り込む私に彼は息を飲んだ。
「ごめん。……大切なモノ……奪っちゃって」
そう言って、優しく、腫れ物に触れるように そっと頭を撫でられる。
「でも、その……僕も……初めてだったから。あぁ……こんなの慰めにならないって解ってるけど」
彼の手に力が籠るのを感じる。
「……僕は、僕の初めてが神子……ミコトでよかったと思ってる。それに、ミコトの初めてが……僕だって事が……ごめん。─正直……嬉しい」
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