輝け五つ星ーぼくらの川下り大作戦ー

ひとりさんぽ(一人三歩)

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プロローグ:はじまりと予感

「いつもの帰り道」

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 ピーンポーン。

 アカネの家でもある雑貨店。

 むとう商店のドアを開けると、いつもこの音が鳴る。
 
 なんど聞いても、耳がうれしくなる音だ。

 ぼくら四人は、ランドセルを背負ったまま、ぞろぞろと中に入った。

 「アタシはこれにするーっ!」

 真っ先に飛び付いたのはアカネだった。

 お菓子の冷凍ケースを開けて、ずらりとならぶアイスキャンディーをのぞきこむ。

 「ハルも、ショウも、ヒナも、早くえらばないと溶けちゃうよ!」

 「え、もう決めたの? はやっ」

 「今日ね、なんかすっごくツイてる気がするんだよね! そんでこれ!」

 アカネが取り出したのは、ソーダ味のアイス。

 くじつきの棒がついてるやつだ。

 ぼくらもそれぞれ選び入り口の横にある休憩スペースに移動する。
 
 ぺりぺりとビニールをはがしながら、ガブッとかじる。

 すっきりとしたソーダの甘さが口いっぱいに広がる。

 「……おっ……みてっ!? これ、やっぱり当たりだーっ!!」

 「うそ!? まじで!?」

 「やったーっ! もう一本だよ! アタシ、今日すごい!」

 アカネは手をぐいっと上にあげて、アイスの棒を見せびらかすように振った。

 そこには、うっすらと「アタリ」の文字。
 
 ぼくとショウは目を丸くして、それを見た。

 「ほんとにツイてたな、今日は……」

 「くっそー、うらやましい。ぼくはいつも『はずれ』ばっかりだよ」

 「ショウくん、くじ運なさすぎだもんねぇ」

 ヒナちゃんがくすっと笑う。

 ぼくもつられて笑ってしまった。

 「……なにぃ、そんな笑うなら、ハルくん勝負だ!」

 と、ショウがかざしたのは、食べ終わったばかりのアイスの棒。
 
 ぼくも負けじと、自分の棒をかまえた。

 「いざ、勝負!」

 「ぬおおおおおっ!」

 小さなアイスの棒がぶつかる。
 
 いま考えると、なんの勝負だったんだろう。

 でもそのときは、真剣だった。

 顔を赤くして、棒をつかって「真剣勝負」を始めてしまった。

 「またやってる~、ふたりとも!」

 ヒナちゃんがあきれ顔で笑いながら言った。

 「男子って、いつもそんなの好きだよねぇ……」

 「ハルー、ショウー、店のなかではほどほどにねぇ~」

 奥から、アカネのお母さんの声がとんできた。
 
 それと同時に、常連のおばちゃんがレジのところでにこにこして言った。

 「ほんとに、いつも仲良しねぇ。見てて元気になるわぁ~」

 「えへへ~。アタシたち、チームなんですっ!」

 アカネが元気いっぱいに答えると、おばちゃんが笑いながらうなずいた。
 
 「チームかぁ。いいわねぇ。わたしにも、そんな頃があったかなぁ……」

 そのとき、店の奥の長イスでは、おじいさんがアカネのおばあちゃんと話していた。

 「昔はねぇ、ガラス玉ってのが流行ってたんだよ。ガラス玉。色が透けてて、光にかざすとキレイでね。子どもたちは夢中になって集めたもんさ」

 「へえー!」

 「ガチャポンなんてない時代だったけど、あのガラス玉は、宝物だったなぁ。大事に、きんちゃく袋に入れて持ち歩いたもんだよ」

 ヒナちゃんが興味津々で質問する。

 「ガラス玉って、いまもどこかに売ってますか?」

 「うーん、探せばあるかもしれないねえ。ほら、こういう話が出ると、探したくなるだろ?」

 「うんっ」

 「じゃあ、夏休みの宿題にでもするかい。『ガラス玉を見つける旅』ってのはどうだい?」

 「わあ、楽しそう!」

 ヒナちゃんの笑顔がまぶしくて、ドキドキして思わずぼくは目をそらしてしまった。
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