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プロローグ:はじまりと予感
「ひとりひとりの“らしさ”」
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雑貨屋の帰り道、ぼくらはちょっとだけ寄り道をした。
目指すのは、町のはしっこにある小さな丘。
上までのぼると、川と橋と、遠くの畑まで見える展望広場がある。
町のみんなは「展望広場」って呼んでるけど、ぼくらにとっては「秘密の特等席」みたいな場所だ。
坂道を登って、広場のベンチに座ると、ちょうど風がふいてきた。
心地よい風が、日差しをやさしくさましてくれる。
「はぁ~、ここって、やっぱ気持ちいいね~!」
アカネがベンチの背もたれにぐーっとのけぞって、足をぶらぶらさせる。
「早く夏休み来ないかなーっ! も~、あと何日? 宿題とかは、ぜーんぶあとにして、いっつもここに来たい!」
「でもさ、夏休みって、宿題が山ほどあるんだよ。ドリルに自由研究、読書感想文、それに絵日記も……ちゃんと計画たてないと」
と、ショウがまじめな顔で言いだした。
「また出た、“ショウの計画マシーン”!」
アカネがからかうように笑うと、ショウはむっとした顔で答えた。
「べつにマシーンじゃないよ。ちゃんと計画立ててやらないと、最後に泣くのはアカネだと思うけど」
「なっ……アタシは泣かないしっ! 毎年なんとかなるし!」
「“なんとか”って言ってる時点で、計画失敗してるようなもんだよ……」
ふたりのやりとりを、ヒナちゃんがくすくす笑いながら聞いていた。
ヒナちゃんはランドセルから、小さな袋を取り出すと、中から飴玉を一つぼくの方へ差し出した。
「これ、さっきのアカネちゃん家で買ったやつ。しゅわしゅわあめ青りんご味、よかったらどうぞ」
「えっ、いいの?」
「うん、食べたらしゃべるのちょっと大変になるけど……おいしいよ」
ぼくはお礼を言って、それを口に入れた。
しゅわしゅわする感覚と青リンゴの甘さが口の中にひろがってとっても美味しい。
……ヒナちゃんは、やっぱりやさしい。
おとなしいけど、ぼくたちのことをちゃんと見ててくれて、誰かが困ってたら、そっと手をさしのべてくれる。
その笑顔は、なんだか、“かわいくて特別”に見える気がした。
(……いや、なに考えてんだ、ぼく)
ぼくはあわてて空を見上げた。入道雲が、ゆっくりと流れていく。
「ねえ、ヒナって、将来はなにになりたいの?」
アカネが急に聞いた。
「え? えっとね……お菓子作る人とか、かわいい雑貨をつくるお店の人とか、そういうの……かな?」
「わ~、それいいじゃん! アタシもやってみたいな~!」
「アカネちゃんは……うーん、元気屋さん?」
「なに?それっ!」
「わかる!ほら、アカネってさ、落ち込んでる人いたらすぐに笑わせるでしょ? だから、そういう“元気をあげるお店”とかやってそう」
ショウのひとことに、みんなが笑った。
「じゃあ、ショウは? あれだ、やっぱり先生?」
「うーん、ぼくは……町の図書館の職員さんとかかな。静かで、いろんな本に囲まれて、でも誰かが調べものに来たら、そっと手助けしてあげるような人」
「似合うーっ! メガネとかかけてそう!」
「……もうかけてるよ」
ショウのツッコミに、また笑いがこぼれた。
ぼくらは笑って、しゃべって、風に吹かれて。
ひとりひとり、ちがう“らしさ”があって、それをからかったり、ほめあったり。
だけどそれが、すごく心地よくて、毎日がすごく楽しいんだ。
目指すのは、町のはしっこにある小さな丘。
上までのぼると、川と橋と、遠くの畑まで見える展望広場がある。
町のみんなは「展望広場」って呼んでるけど、ぼくらにとっては「秘密の特等席」みたいな場所だ。
坂道を登って、広場のベンチに座ると、ちょうど風がふいてきた。
心地よい風が、日差しをやさしくさましてくれる。
「はぁ~、ここって、やっぱ気持ちいいね~!」
アカネがベンチの背もたれにぐーっとのけぞって、足をぶらぶらさせる。
「早く夏休み来ないかなーっ! も~、あと何日? 宿題とかは、ぜーんぶあとにして、いっつもここに来たい!」
「でもさ、夏休みって、宿題が山ほどあるんだよ。ドリルに自由研究、読書感想文、それに絵日記も……ちゃんと計画たてないと」
と、ショウがまじめな顔で言いだした。
「また出た、“ショウの計画マシーン”!」
アカネがからかうように笑うと、ショウはむっとした顔で答えた。
「べつにマシーンじゃないよ。ちゃんと計画立ててやらないと、最後に泣くのはアカネだと思うけど」
「なっ……アタシは泣かないしっ! 毎年なんとかなるし!」
「“なんとか”って言ってる時点で、計画失敗してるようなもんだよ……」
ふたりのやりとりを、ヒナちゃんがくすくす笑いながら聞いていた。
ヒナちゃんはランドセルから、小さな袋を取り出すと、中から飴玉を一つぼくの方へ差し出した。
「これ、さっきのアカネちゃん家で買ったやつ。しゅわしゅわあめ青りんご味、よかったらどうぞ」
「えっ、いいの?」
「うん、食べたらしゃべるのちょっと大変になるけど……おいしいよ」
ぼくはお礼を言って、それを口に入れた。
しゅわしゅわする感覚と青リンゴの甘さが口の中にひろがってとっても美味しい。
……ヒナちゃんは、やっぱりやさしい。
おとなしいけど、ぼくたちのことをちゃんと見ててくれて、誰かが困ってたら、そっと手をさしのべてくれる。
その笑顔は、なんだか、“かわいくて特別”に見える気がした。
(……いや、なに考えてんだ、ぼく)
ぼくはあわてて空を見上げた。入道雲が、ゆっくりと流れていく。
「ねえ、ヒナって、将来はなにになりたいの?」
アカネが急に聞いた。
「え? えっとね……お菓子作る人とか、かわいい雑貨をつくるお店の人とか、そういうの……かな?」
「わ~、それいいじゃん! アタシもやってみたいな~!」
「アカネちゃんは……うーん、元気屋さん?」
「なに?それっ!」
「わかる!ほら、アカネってさ、落ち込んでる人いたらすぐに笑わせるでしょ? だから、そういう“元気をあげるお店”とかやってそう」
ショウのひとことに、みんなが笑った。
「じゃあ、ショウは? あれだ、やっぱり先生?」
「うーん、ぼくは……町の図書館の職員さんとかかな。静かで、いろんな本に囲まれて、でも誰かが調べものに来たら、そっと手助けしてあげるような人」
「似合うーっ! メガネとかかけてそう!」
「……もうかけてるよ」
ショウのツッコミに、また笑いがこぼれた。
ぼくらは笑って、しゃべって、風に吹かれて。
ひとりひとり、ちがう“らしさ”があって、それをからかったり、ほめあったり。
だけどそれが、すごく心地よくて、毎日がすごく楽しいんだ。
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