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プロローグ:はじまりと予感
「夏が来る前の教室で」
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教室の中が、ざわざわしていた。
六時間目の終わりのチャイムが鳴って、終わりの回のために帰る準備をみんなしている。
あっちでもこっちでも机をガタガタ動かしたり、下敷きをパタパタあおいだりしてる。
「よーし! アタシ、決めた!」
アカネの声が教室に響いた。
「夏休み、川でBBQしようよ! ぜったい楽しいから! 川のとこ、うちのおじいちゃんの畑の近く使っていいって言ってたし!」
「……えっと、BBQもいいけど、その前に宿題の計画立てた方がいいと思うな」
ショウが、冷静にノートを開きながら言う。
「もう! ショウはそればっかり! 夏休みってのは、まずワクワクすることから始めるべきなの!」
「でも毎年、アカネは最後に泣くじゃん」
「うぐっ……それは……気合でなんとかするし!」
いつもどおりの、アカネとショウのやりとり。
ぼくは笑いながら、その向こうの窓際にいるヒナちゃんの方を見た。
ヒナちゃんは、窓の外を見ながら、ほんの少しだけ笑っていた。
やわらかい髪が肩のところで揺れてて、陽の光がほっぺに反射してる。
その笑顔を見ていると、胸の奥のほうがじんわりあたたかくなってくる。
実は、誰にも言ってないけど、ぼくはヒナちゃんのこと、気になってる。
「ねー、日直ー、帰りのあいさつまだー?」
誰かが声をかける。
「えっ!? あっ、そ、そうだった!」
日直の男子があわてて立ちあがって、もう一人の日直と顔を見合わせた。
「……それでは、起立! 礼っ! えーと……よ、よい夏休みを!」
「ちがうだろー!」
「明日もあるってば!」
「終わり会のはじまりでしょー」
クラス中に、笑いが起こった。
「いいから座れ~~」
誰かがそう言って、さらに笑いがおきる。
そのあと、担任のミズキ先生が、いつものように黒板の前に立って、手をパンパンとたたいた。
「みんな~、もう少しがんばったら、いよいよ夏休みね! でもね、ケガとか事故とかには、ほんと~に気をつけること! あと、あんまり夜ふかしもしない! わかった?」
「はーい!」
「返事だけはいいなあ、もう!」
先生がニコッと笑うと、みんなもつられて笑った。
チャイムが鳴ると、ランドセルをバタバタ背負って、教室を出る。
ぼくらも急いで教室を出る。
ちゃんと、約束してあるからだ。
「ランドセル置いてすぐ集合! 自転車で風になるぞ~!」
アカネが叫びながら教室を飛び出していく。
家にランドセルを投げこむように置いて、ぼくは急いで自転車にまたがった。
坂道の上から、アカネがすでにこっちを見てる。
「はやくーっ!」
「おまたせっ!」
ショウとヒナちゃんもそれぞれの自転車でやってきて、四人そろったところで
「せーの!」
ガッ、とペダルをこぐ。
坂道をいっきに下る風。
耳のすぐ横を、シュウッと音が走っていく。
少し湿った草のにおいと、遠くで焼ける夕日のあかるさが、目の前にひろがる。
「やっほーっ!」
アカネちゃんの声が風にのって響いた。
たどりついたのは、町の人気店「やまもとベーカリー」。
この町でいちばんのパン屋さんで、なかでも子どもたちに人気なのが
「かき氷ください!」
ぼくらが声をそろえて言うと、おじさんが笑いながらかき氷を作ってくれる。
このお店はパン屋さんだけど夏だけ特別にかき氷を売ってるんだ。
しかも練乳をかけてある特別なやつ。
冷たくて、夏にぴったりの味。
「う~ん、冷たくてしあわせ~!」
アカネが目を細めて言う。
「でもこれ、食べるの早すぎると頭キーンってなるから気をつけてね」
ショウがお母さんみたいなこと言って、みんなで大笑いした。
ぼくらはパン屋の前のベンチに座って、それぞれのかき氷をかじっていた。
六時間目の終わりのチャイムが鳴って、終わりの回のために帰る準備をみんなしている。
あっちでもこっちでも机をガタガタ動かしたり、下敷きをパタパタあおいだりしてる。
「よーし! アタシ、決めた!」
アカネの声が教室に響いた。
「夏休み、川でBBQしようよ! ぜったい楽しいから! 川のとこ、うちのおじいちゃんの畑の近く使っていいって言ってたし!」
「……えっと、BBQもいいけど、その前に宿題の計画立てた方がいいと思うな」
ショウが、冷静にノートを開きながら言う。
「もう! ショウはそればっかり! 夏休みってのは、まずワクワクすることから始めるべきなの!」
「でも毎年、アカネは最後に泣くじゃん」
「うぐっ……それは……気合でなんとかするし!」
いつもどおりの、アカネとショウのやりとり。
ぼくは笑いながら、その向こうの窓際にいるヒナちゃんの方を見た。
ヒナちゃんは、窓の外を見ながら、ほんの少しだけ笑っていた。
やわらかい髪が肩のところで揺れてて、陽の光がほっぺに反射してる。
その笑顔を見ていると、胸の奥のほうがじんわりあたたかくなってくる。
実は、誰にも言ってないけど、ぼくはヒナちゃんのこと、気になってる。
「ねー、日直ー、帰りのあいさつまだー?」
誰かが声をかける。
「えっ!? あっ、そ、そうだった!」
日直の男子があわてて立ちあがって、もう一人の日直と顔を見合わせた。
「……それでは、起立! 礼っ! えーと……よ、よい夏休みを!」
「ちがうだろー!」
「明日もあるってば!」
「終わり会のはじまりでしょー」
クラス中に、笑いが起こった。
「いいから座れ~~」
誰かがそう言って、さらに笑いがおきる。
そのあと、担任のミズキ先生が、いつものように黒板の前に立って、手をパンパンとたたいた。
「みんな~、もう少しがんばったら、いよいよ夏休みね! でもね、ケガとか事故とかには、ほんと~に気をつけること! あと、あんまり夜ふかしもしない! わかった?」
「はーい!」
「返事だけはいいなあ、もう!」
先生がニコッと笑うと、みんなもつられて笑った。
チャイムが鳴ると、ランドセルをバタバタ背負って、教室を出る。
ぼくらも急いで教室を出る。
ちゃんと、約束してあるからだ。
「ランドセル置いてすぐ集合! 自転車で風になるぞ~!」
アカネが叫びながら教室を飛び出していく。
家にランドセルを投げこむように置いて、ぼくは急いで自転車にまたがった。
坂道の上から、アカネがすでにこっちを見てる。
「はやくーっ!」
「おまたせっ!」
ショウとヒナちゃんもそれぞれの自転車でやってきて、四人そろったところで
「せーの!」
ガッ、とペダルをこぐ。
坂道をいっきに下る風。
耳のすぐ横を、シュウッと音が走っていく。
少し湿った草のにおいと、遠くで焼ける夕日のあかるさが、目の前にひろがる。
「やっほーっ!」
アカネちゃんの声が風にのって響いた。
たどりついたのは、町の人気店「やまもとベーカリー」。
この町でいちばんのパン屋さんで、なかでも子どもたちに人気なのが
「かき氷ください!」
ぼくらが声をそろえて言うと、おじさんが笑いながらかき氷を作ってくれる。
このお店はパン屋さんだけど夏だけ特別にかき氷を売ってるんだ。
しかも練乳をかけてある特別なやつ。
冷たくて、夏にぴったりの味。
「う~ん、冷たくてしあわせ~!」
アカネが目を細めて言う。
「でもこれ、食べるの早すぎると頭キーンってなるから気をつけてね」
ショウがお母さんみたいなこと言って、みんなで大笑いした。
ぼくらはパン屋の前のベンチに座って、それぞれのかき氷をかじっていた。
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