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第2章:手づくりの夢に乗って(テーマ:目標の共有と一致団結)
「やってみせてやる!」
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次の日の昼下がり。
ぼくらは町のはずれにある公園に集まっていた。
お目当ては、いつも遊んでるドーム型のすべり台。
すべるためじゃなくて、その下にできるちょうどいい日かげスペースを“会議室”として使うためだ。
「やっぱり、舟って言ったら木じゃない?」
アカネがおしりの下に敷いたレジャーシートの上で、足を組みながら言った。
「木はいいけど、重くなりすぎると沈むかも……」
ショウがメモ帳に計算を書きながら真顔でつっこむ。
「じゃあ発泡スチロールは? 軽いし、ぷかぷか浮きそう!」
「でもそれ、強度が……」
「それに、底が抜けたりしたら沈んじゃうよねぇ……」
ヒナちゃんが不安そうに言った。
「じゃあ木とスチロールをまぜて使う? 外側だけ木にして、なかに浮く素材いれてさ!」
「おっ、それナイスかも!」
「それで、舟の形はさ……」
みんながいっせいにあれこれ言い始めたそのときだった。
「ふ~~ん」
背後から、ちょっと鼻にかかったような声がした。
「舟のレースぅ? へぇ~、子どもが勝てるとでも思ってんの?」
ぼくらがふり返ると、そこにいたのは……やっぱりトシオだった。
「なっ……! なんであんたがここにいんのよ!」
アカネが立ちあがる。
「別に~。ここ、公園だし~。だれがいてもいいでしょ?」
「……またイジワルいいにきたの?」
ショウが眉をひそめて言う。
「やってみなきゃわかんないだろ!」
トシオの嫌味な言い方に思わずボクは強く言い返してしまった。
「ふ~ん。でも、どうせ負けると思うけど? あんなの、大人だって本気出すんだぜ? おまえらみたいなチビチームじゃ無理じゃね?」
「なっ……! 絶対勝ってやるし!」
アカネが、目を真ん丸にして言い返した。
「やれるもんならやってみな、っての!どうせ負けて泣くんだろ、じゃあな」
そう言ってトシオがふり向いたその先に
「おーい、トシオー!」
白い軽トラックがとまっていて、そこからひょこっと顔を出したのは、トシオのお父さんだった。
「……またお前、人のことからかってんのか!?」
「べっ、別になんもしてねーしっ!」
トシオはあせったように叫ぶと、そそくさと公園をあとにした。
「すまんね、うちのバカ息子が。イジワルばっか言ってんだろ? ごめんな~」
「い、いえ……」
ぼくたちは、ちょっとびっくりしながらも頭を下げた。
トシオのお父さんのトラックが遠ざかると、アカネがぎゅっと手を握った。
「よしっ。あんなふうに言われて、やらないなんてありえない! 絶対やる! 絶対勝つ!」
「……うん!」
ヒナちゃんもふんわりとうなずいた。
「じゃあ、ぼくは科学の力で本気出す!」
ショウが目をきらきらさせて立ちあがる。
その日の夜、ショウは自宅の書斎で、父さんと向かい合っていた。
父さんは大学で物理を教えていて、ショウの“頼れる先生”でもある。
「お父さん、舟ってどうやって作るの?」
「うん?……あぁ、町おこしのイベント出るのか?」
「うん。だから最強の舟を作りたいんだ!」
「最強か、なかなか大変だな。そうだな……舟に大事なことは大きく3つあるんだ」
父さんは手元のノートを開き、すぐにサラサラとペンを走らせた。
描かれたのは水に浮かぶ舟の横から見た図。
「まずは浮く力"浮力"だ。この舟が水に浮いているのは、水をこれだけ押しのけてるからなんだ」
「……水を押しのける?」
「うん。“アルキメデスの原理”っていってね。舟が水に入ると、そのぶんの水がよけて逃げるんだ。そして、そのよけた水の重さと同じ分だけ、下から“浮かせる力”が働く」
「ってことは、舟が押しのける水が多ければ、それだけ浮きやすいってこと?」
「正解。だから、舟は“軽くて”“大きくて”“沈みにくい形”がいいんだ」
「ふむふむ……発泡スチロールが使える理由、わかってきたかも!」
ショウが目をキラッとさせると、父さんはさらにもう一枚のページに図を描きはじめた。
「それから、進む仕組みも大事だよ。これを"推進力"って言うんだ」
「……推進力?」
「そう。“オールで水を後ろに押すと、舟が前に進む”。これは“作用・反作用の法則”ってやつでね、水を後ろに押した反動で舟が前に進むんだ」
「じゃあ、力を入れてバシャッていっぱいこげば、それだけスピードが出るんだ!」
「その通り。でも、バランスが悪いとすぐに転ぶ。安定性も考えないとね」
父さんは舟の断面図に丸を書いて、重心と浮心を描き加える。
「舟の下の方に重いものがあると、ぐらつきにくくなる。これを“重心を低くする”って言うんだ。ちょうど、おもちゃの“起きあがりこぼし”みたいな感じだよ」
「じゃあ……舟の底にちょっとだけ重い板とかを入れてみようかな?」
「いいアイディアだな。ただし、重すぎると浮力をこえちゃうから注意だぞ」
「その他には舟の横にフロートっていって浮くための補助を付けるのもいいな」
「わかった!」
ショウは一心にノートにメモを取りはじめた。
父さんの声とペンの音だけが、夜の静かな部屋にやさしく響く。
「軽くて、水をたくさん押しのけて、安定してて、ちゃんと進む舟かぁ……」
ショウはノートに「理想の舟」とタイトルをつけて、図とともに書き残した。
「これで、ちゃんとした“舟の先生”になれそうだぞ……!」
夜の部屋に、ショウの静かなやる気が光っていた。
ぼくらは町のはずれにある公園に集まっていた。
お目当ては、いつも遊んでるドーム型のすべり台。
すべるためじゃなくて、その下にできるちょうどいい日かげスペースを“会議室”として使うためだ。
「やっぱり、舟って言ったら木じゃない?」
アカネがおしりの下に敷いたレジャーシートの上で、足を組みながら言った。
「木はいいけど、重くなりすぎると沈むかも……」
ショウがメモ帳に計算を書きながら真顔でつっこむ。
「じゃあ発泡スチロールは? 軽いし、ぷかぷか浮きそう!」
「でもそれ、強度が……」
「それに、底が抜けたりしたら沈んじゃうよねぇ……」
ヒナちゃんが不安そうに言った。
「じゃあ木とスチロールをまぜて使う? 外側だけ木にして、なかに浮く素材いれてさ!」
「おっ、それナイスかも!」
「それで、舟の形はさ……」
みんながいっせいにあれこれ言い始めたそのときだった。
「ふ~~ん」
背後から、ちょっと鼻にかかったような声がした。
「舟のレースぅ? へぇ~、子どもが勝てるとでも思ってんの?」
ぼくらがふり返ると、そこにいたのは……やっぱりトシオだった。
「なっ……! なんであんたがここにいんのよ!」
アカネが立ちあがる。
「別に~。ここ、公園だし~。だれがいてもいいでしょ?」
「……またイジワルいいにきたの?」
ショウが眉をひそめて言う。
「やってみなきゃわかんないだろ!」
トシオの嫌味な言い方に思わずボクは強く言い返してしまった。
「ふ~ん。でも、どうせ負けると思うけど? あんなの、大人だって本気出すんだぜ? おまえらみたいなチビチームじゃ無理じゃね?」
「なっ……! 絶対勝ってやるし!」
アカネが、目を真ん丸にして言い返した。
「やれるもんならやってみな、っての!どうせ負けて泣くんだろ、じゃあな」
そう言ってトシオがふり向いたその先に
「おーい、トシオー!」
白い軽トラックがとまっていて、そこからひょこっと顔を出したのは、トシオのお父さんだった。
「……またお前、人のことからかってんのか!?」
「べっ、別になんもしてねーしっ!」
トシオはあせったように叫ぶと、そそくさと公園をあとにした。
「すまんね、うちのバカ息子が。イジワルばっか言ってんだろ? ごめんな~」
「い、いえ……」
ぼくたちは、ちょっとびっくりしながらも頭を下げた。
トシオのお父さんのトラックが遠ざかると、アカネがぎゅっと手を握った。
「よしっ。あんなふうに言われて、やらないなんてありえない! 絶対やる! 絶対勝つ!」
「……うん!」
ヒナちゃんもふんわりとうなずいた。
「じゃあ、ぼくは科学の力で本気出す!」
ショウが目をきらきらさせて立ちあがる。
その日の夜、ショウは自宅の書斎で、父さんと向かい合っていた。
父さんは大学で物理を教えていて、ショウの“頼れる先生”でもある。
「お父さん、舟ってどうやって作るの?」
「うん?……あぁ、町おこしのイベント出るのか?」
「うん。だから最強の舟を作りたいんだ!」
「最強か、なかなか大変だな。そうだな……舟に大事なことは大きく3つあるんだ」
父さんは手元のノートを開き、すぐにサラサラとペンを走らせた。
描かれたのは水に浮かぶ舟の横から見た図。
「まずは浮く力"浮力"だ。この舟が水に浮いているのは、水をこれだけ押しのけてるからなんだ」
「……水を押しのける?」
「うん。“アルキメデスの原理”っていってね。舟が水に入ると、そのぶんの水がよけて逃げるんだ。そして、そのよけた水の重さと同じ分だけ、下から“浮かせる力”が働く」
「ってことは、舟が押しのける水が多ければ、それだけ浮きやすいってこと?」
「正解。だから、舟は“軽くて”“大きくて”“沈みにくい形”がいいんだ」
「ふむふむ……発泡スチロールが使える理由、わかってきたかも!」
ショウが目をキラッとさせると、父さんはさらにもう一枚のページに図を描きはじめた。
「それから、進む仕組みも大事だよ。これを"推進力"って言うんだ」
「……推進力?」
「そう。“オールで水を後ろに押すと、舟が前に進む”。これは“作用・反作用の法則”ってやつでね、水を後ろに押した反動で舟が前に進むんだ」
「じゃあ、力を入れてバシャッていっぱいこげば、それだけスピードが出るんだ!」
「その通り。でも、バランスが悪いとすぐに転ぶ。安定性も考えないとね」
父さんは舟の断面図に丸を書いて、重心と浮心を描き加える。
「舟の下の方に重いものがあると、ぐらつきにくくなる。これを“重心を低くする”って言うんだ。ちょうど、おもちゃの“起きあがりこぼし”みたいな感じだよ」
「じゃあ……舟の底にちょっとだけ重い板とかを入れてみようかな?」
「いいアイディアだな。ただし、重すぎると浮力をこえちゃうから注意だぞ」
「その他には舟の横にフロートっていって浮くための補助を付けるのもいいな」
「わかった!」
ショウは一心にノートにメモを取りはじめた。
父さんの声とペンの音だけが、夜の静かな部屋にやさしく響く。
「軽くて、水をたくさん押しのけて、安定してて、ちゃんと進む舟かぁ……」
ショウはノートに「理想の舟」とタイトルをつけて、図とともに書き残した。
「これで、ちゃんとした“舟の先生”になれそうだぞ……!」
夜の部屋に、ショウの静かなやる気が光っていた。
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