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第6章:風を味方に(テーマ:知恵と協力が、力に勝るときがある)
「スタートライン」
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「どん!」って太鼓の音が鳴った、その瞬間。
カラフルな手づくり舟たちが、いっせいに川へとすべり出した。
「いっけええええええ!!」
アカネの大声が、空に響いた。
先頭で両手を突き出して叫ぶアカネのうしろで、ショウが声を張りあげる。
「おちついて! 漕ぎのリズム、合わせて!」
ぼくらの舟は、ちょっとだけ遅れて水にのった。
思ってたより流れがゆっくりで、大人たちの舟がどんどん先に進んでいく。
「くっ……出遅れた!」
ぼくは、ぐっと歯を食いしばった。
後ろから、観客たちの声が聞こえてくる。
「やっぱり小学生には無理があるんじゃ……」
「子どもには早かったかなあ」
その声に、ヒナちゃんがすこしだけうつむきかけた。
「まだこれからだ!」
そう、自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。
「最後まであきらめなきゃ、なにが起きるかわかんない!」
ぼくの声に、みんながふっと顔を上げた。
「そーだそーだ! いくぞー! 五つ星!!」
って、トシオが叫ぶ。
「……言いかた、ちょっとダサいけど気持ちはわかる」
ってショウが苦笑いした。
舟は、じわじわと川の真ん中に出ていく。
その先には……なにか浮かんでる?
「うわ、なんだこれ!?」
川の幅いっぱいに、でっかい浮き輪たちがぷかぷかしてる。
虹色、ドーナツ型、イルカの形……まるでおもちゃの海だ。
「さっきのルール説明で言ってた“ゆらゆらゾーン”だ!」ってショウが言った。
「くそー! こりゃ進みにくそうだぞ」
ほかのチームも苦戦してる。
青年団の舟が浮き輪に乗りあげて止まっちゃって、「あー!戻って戻って!」って、もう大騒ぎ。
パパズの舟も、ふらふらしながらよけようとしてるけど、すごくバランスが悪そうだった。
「アカネ、右! 右にもっと回して!」
「わかってるってば!」
「ヒナちゃん、飾りの紐が浮き輪に引っかかりそう!」
「いま直す! ショウくん、少しだけ止めて!」
舟がガクッと傾いたそのとき、アカネとヒナちゃんが同時に体をぐっと倒してバランスをとってくれた。
「ナイスコンビネーション!!」って、トシオが叫ぶ。
ぼくらの舟は、なんとか浮き輪の迷路をスイスイぬけていく。
「やった……!」
「だいぶ追いついたよ!!」
そんなふうに言いながらも、みんな笑ってた。
顔が、パッと明るくなってた。
そのすぐ前には、のんびりした顔の老人会の舟が見えてきた。
「おおい、追いついちゃった!?」
そしたら、ふわっと手をふってくれて、
「ふぉっふぉっふぉ、若いのう。これからじゃよ頑張れ」って。
なんだか、それがうれしかった。
観客の声援が、川沿いから聞こえてくる。
「がんばれー! 子どもたちー!!」
「いちばんいい顔してるよ!」
……うん。
たしかに、今のぼくら、すっごく楽しい顔してる気がする。
「次のゾーン、行こう!」
まだまだ先は長い。
ぼくらの挑戦は、ここからが本番だった。
浮き輪ゾーンを抜けたぼくらの舟は、ちょっとだけ順位を上げてた。
でも、そんなの一瞬のことだった。
「うおーっ! あの大学生、速すぎる!」
「さすがに筋肉の量がちがうな……」
前の方では、大学生チームと青年団の舟が肩を並べて、すごいスピードで水を切っていく。
水面は風もなくて、しん……としてる。
だから、体のちからだけで進む速さが、そのまま順位になっちゃう。
「くそっ……やっぱ体力じゃ勝てねえか!」
トシオが、息を切らしながらオールを握る手に力を込めた。
ヒナちゃんも、だまって、おでこに汗をにじませながら必死に漕ぎつづけてる。
「わたし、もうちょっと腕に筋肉ほしかったな……」
「気持ちは伝わるよ……」
気づけば、ぼくらの舟は、少しずつ前の舟たちから引き離されてた。
……だけど。
「……風さえ吹けば、“アレ”が使えるのに……!」
ショウが小さくつぶやいた声に、アカネの目がピカッと光った。
「じゃあ、それまでは持ちこたえなきゃね! あたしら、まだ負けてない!」
「そうだよ。あきらめるのは、最後の最後!」
ヒナちゃんの声が、舟をまたひと押ししてくれる。
「肩痛い~~~!」
「手にマメできそう……!」
弱音もちょっと出るけど、すぐに誰かが
「がんばれ!」
「あとちょっと!」
って励まし返してくれる。
こんなときって、不思議と前に進める気がするんだ。
川の両がわには、家族たちがいっぱい並んでて、みんな声を上げてくれてる。
「うちの子あそこ!」
「がんばれー! トシオー!」
トシオのお母さんが、すっごい大声で名前を呼んでて、思わず笑っちゃった。
「母ちゃんちょっと恥ずかしいぃ……」
「いけー! 五つ星フラワードラゴン号ーッ!!」
……誰だ今の!? って思ったら、町内放送のマイクを持った帽子のおじさんが、川べりで実況を始めてた。
「さあ、皆さん、後半戦に入りましたこのカヌーレース。現在先頭は大学生チーム! それを追うのは青年団! 大人のチームに食らいつく、小学生チーム! キラキラ五つ星! 彼らの底力に注目です!」
「実況ついてる~!?」
「うひゃっ、緊張してきた!」
笑い声が舟の上でこぼれるけど、みんなオールを握る手は止めなかった。
みんな、信じてた。
あれが来るってことを。
ショウが、ふっと空を見上げて、ぽつりとつぶやいた。
「風よ、来い……!」
そのときだった。
遠くから、ざわ……って草木が揺れる音がした。
「……きた!」
ヒナちゃんがささやいた。
頬にふれた風が、ゆっくりと、ぼくらの舟にも届いてきていた。
カラフルな手づくり舟たちが、いっせいに川へとすべり出した。
「いっけええええええ!!」
アカネの大声が、空に響いた。
先頭で両手を突き出して叫ぶアカネのうしろで、ショウが声を張りあげる。
「おちついて! 漕ぎのリズム、合わせて!」
ぼくらの舟は、ちょっとだけ遅れて水にのった。
思ってたより流れがゆっくりで、大人たちの舟がどんどん先に進んでいく。
「くっ……出遅れた!」
ぼくは、ぐっと歯を食いしばった。
後ろから、観客たちの声が聞こえてくる。
「やっぱり小学生には無理があるんじゃ……」
「子どもには早かったかなあ」
その声に、ヒナちゃんがすこしだけうつむきかけた。
「まだこれからだ!」
そう、自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。
「最後まであきらめなきゃ、なにが起きるかわかんない!」
ぼくの声に、みんながふっと顔を上げた。
「そーだそーだ! いくぞー! 五つ星!!」
って、トシオが叫ぶ。
「……言いかた、ちょっとダサいけど気持ちはわかる」
ってショウが苦笑いした。
舟は、じわじわと川の真ん中に出ていく。
その先には……なにか浮かんでる?
「うわ、なんだこれ!?」
川の幅いっぱいに、でっかい浮き輪たちがぷかぷかしてる。
虹色、ドーナツ型、イルカの形……まるでおもちゃの海だ。
「さっきのルール説明で言ってた“ゆらゆらゾーン”だ!」ってショウが言った。
「くそー! こりゃ進みにくそうだぞ」
ほかのチームも苦戦してる。
青年団の舟が浮き輪に乗りあげて止まっちゃって、「あー!戻って戻って!」って、もう大騒ぎ。
パパズの舟も、ふらふらしながらよけようとしてるけど、すごくバランスが悪そうだった。
「アカネ、右! 右にもっと回して!」
「わかってるってば!」
「ヒナちゃん、飾りの紐が浮き輪に引っかかりそう!」
「いま直す! ショウくん、少しだけ止めて!」
舟がガクッと傾いたそのとき、アカネとヒナちゃんが同時に体をぐっと倒してバランスをとってくれた。
「ナイスコンビネーション!!」って、トシオが叫ぶ。
ぼくらの舟は、なんとか浮き輪の迷路をスイスイぬけていく。
「やった……!」
「だいぶ追いついたよ!!」
そんなふうに言いながらも、みんな笑ってた。
顔が、パッと明るくなってた。
そのすぐ前には、のんびりした顔の老人会の舟が見えてきた。
「おおい、追いついちゃった!?」
そしたら、ふわっと手をふってくれて、
「ふぉっふぉっふぉ、若いのう。これからじゃよ頑張れ」って。
なんだか、それがうれしかった。
観客の声援が、川沿いから聞こえてくる。
「がんばれー! 子どもたちー!!」
「いちばんいい顔してるよ!」
……うん。
たしかに、今のぼくら、すっごく楽しい顔してる気がする。
「次のゾーン、行こう!」
まだまだ先は長い。
ぼくらの挑戦は、ここからが本番だった。
浮き輪ゾーンを抜けたぼくらの舟は、ちょっとだけ順位を上げてた。
でも、そんなの一瞬のことだった。
「うおーっ! あの大学生、速すぎる!」
「さすがに筋肉の量がちがうな……」
前の方では、大学生チームと青年団の舟が肩を並べて、すごいスピードで水を切っていく。
水面は風もなくて、しん……としてる。
だから、体のちからだけで進む速さが、そのまま順位になっちゃう。
「くそっ……やっぱ体力じゃ勝てねえか!」
トシオが、息を切らしながらオールを握る手に力を込めた。
ヒナちゃんも、だまって、おでこに汗をにじませながら必死に漕ぎつづけてる。
「わたし、もうちょっと腕に筋肉ほしかったな……」
「気持ちは伝わるよ……」
気づけば、ぼくらの舟は、少しずつ前の舟たちから引き離されてた。
……だけど。
「……風さえ吹けば、“アレ”が使えるのに……!」
ショウが小さくつぶやいた声に、アカネの目がピカッと光った。
「じゃあ、それまでは持ちこたえなきゃね! あたしら、まだ負けてない!」
「そうだよ。あきらめるのは、最後の最後!」
ヒナちゃんの声が、舟をまたひと押ししてくれる。
「肩痛い~~~!」
「手にマメできそう……!」
弱音もちょっと出るけど、すぐに誰かが
「がんばれ!」
「あとちょっと!」
って励まし返してくれる。
こんなときって、不思議と前に進める気がするんだ。
川の両がわには、家族たちがいっぱい並んでて、みんな声を上げてくれてる。
「うちの子あそこ!」
「がんばれー! トシオー!」
トシオのお母さんが、すっごい大声で名前を呼んでて、思わず笑っちゃった。
「母ちゃんちょっと恥ずかしいぃ……」
「いけー! 五つ星フラワードラゴン号ーッ!!」
……誰だ今の!? って思ったら、町内放送のマイクを持った帽子のおじさんが、川べりで実況を始めてた。
「さあ、皆さん、後半戦に入りましたこのカヌーレース。現在先頭は大学生チーム! それを追うのは青年団! 大人のチームに食らいつく、小学生チーム! キラキラ五つ星! 彼らの底力に注目です!」
「実況ついてる~!?」
「うひゃっ、緊張してきた!」
笑い声が舟の上でこぼれるけど、みんなオールを握る手は止めなかった。
みんな、信じてた。
あれが来るってことを。
ショウが、ふっと空を見上げて、ぽつりとつぶやいた。
「風よ、来い……!」
そのときだった。
遠くから、ざわ……って草木が揺れる音がした。
「……きた!」
ヒナちゃんがささやいた。
頬にふれた風が、ゆっくりと、ぼくらの舟にも届いてきていた。
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