ある魔王兄弟の話し

子々々

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依存※

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香で焚かれた花の甘い匂いが部屋に充満し、ランプの申し訳程度の明かりで室内を照らす。
その明かりによって二つ重なるシルエットが映し出されていた。
そのシルエットから、焚かれた香よりも甘い声が漏れていた。

「ん…はぁ……んぅ…」

兄の上に跨り、緩やかな動きで腰を上下に動かす。
達するには刺激が足りないが、中の粘膜をゆっくり擦られる感覚が良いのかずっと同じ動きを繰り返していた。

「っ……、おい、シア、そろそろ……」
「まぁだだめ」

無意識のうちに細い腰を掴もうとするが、やんわりと静止される。
何故?と不満気に見上げるも弟はくすくすと笑うばかりである。
シアは良いだろうがフィドゥはそろそろ限界だった。
奥の奥まで突いて、蹂躙して、種付けしたい。本能のままそうしたいが、弟がそれを許さない。
今日の主導権は弟が握っている。
特にどうやって決めているかじゃなく、シアが今日は自分で動きたいとお願いしてくるのだ。
普段はフィドゥの好き勝手させている分、こうして気紛れにお願いされては断る理由が無かった。
それを理解していて良いタイミングを見計らって主導権を握ろうとしてくるから余計タチが悪い。
シアは生殺し状態で苦しむ兄の姿を見るのが好きだった。
どこまでも真面目で律儀なせいでそれが逆に自分の首を絞めているにも気づかず、極上の餌を前に待てをされ続けられる、そんな躾けられた従順な犬を見て愉しむ。
肉体は抱かれる側ではあるが、精神性はこの通り最悪な吸血鬼なのだ、彼は。

「はぁ…兄上…兄上……」

甘い声色で、顔中にキスの雨を降らしてくる。
仮面は外され顕になった渦巻く模様の金色の瞳。その瞼の上にもキスを落とす。
フィドゥの眼はいわゆる邪眼と呼ばれているもので、あまりにも強力過ぎるが故、人にも魔族にも忌み嫌われている。
そのせいで一族から爪弾きされていたところを先代魔王に拾われ、例の鉄の仮面をくれたのだ。
実際彼の眼は強力だ。本気で使われたらシアだってひとたまりもない。でも、兄の眼が堪らなく好きだった。眼を抉り出し、ホルマリンに浸けて…いやいっそ兄ごと蝋人形にしてガラスケースで飾りたい。

「……おい、何を考えている」
「ん?兄上を一生保存したいなぁって……」
「お前ならやりかねんから恐ろしいんだよな」
「えぇ~、冗談なのに」
「お前の普段の行いを見てると冗談が冗談に聞こえないんだ」

ひど~い、と言いつつも顔はやはり楽しげだった。
そして止めていた腰を上げたと思ったら、一気に奥まで落としてきた。
突然の強い刺激にフィドゥは危うく吐精しかけるもなんとか耐えたが、シアは容赦なく腰を振るってくる。

「あ、はぁ…あぁ……ンっ、あに、うえ…はやく、ちょうだい?あにうえの…せーえき、ほし、い……」
「だったら…んっ……もっとがんばって腰をふれ……」

いつまでもやられっぱなしは癪に触る。軽く尻を叩けば先程よりも締めつけが良くなった気がする。

「それとも、先にイかせてやろうか?」
「あっ!だ、だめっ…そこ、そんなに…ンぁっ……擦らないでっ……ぁあッ!」

ダラダラ蜜を溢すソレを掴んで乱暴に擦ってあげれば今度はシアが苦悶の表情を浮かべる番となった。苦悶といっても表情そのものは快楽で恍惚としていた。
シア自身を擦る手を止めずに空いた手で腰を掴み突き上げてやれば甲高い声が室内に響き渡った。
それが決定打になったのか、フィドゥの手の中でシアは達した。だが、フィドゥはなおも擦る手も、動かす腰も止めようとはしなかった。

「ま…待って兄上!?ぁあ゛ぁっ…イった…イっからぁ…ァ゛ア…とま…とまってぇ…っ!!」
「オレはまだ出して無いぞ」
「やぁ、らめぇ…っんんん…っ!あぅ…ッあっ…とま、って゛ぇ…ッはやく、あぅ、っやめ、あ゛ぁっ!」

どくりと中に大量の精が吐き出されたのと同時に、シアは再び吐精した。二度目の精は勢いを完全に無くしていた。
だが休んでる暇なんて無い。寧ろここからが本番だ。
フィドゥが突然起き上がったと思ったら息も絶え絶えなシアをベッドに押し倒して片脚を持ち上げ肩に掛ける。

「ちょっとまって…きょうは、わたしが…しゅどうけん…にぎるひ、だよね……?」
「お前に全部任せていたら夜が明けるし、お前だってオレが動かないとイけれないだろ?」
「そ……れは……」

いくら精神的に優位に立っていようが肉体が満足してなければ意味が無い。
自分から仕掛けてきたとはいえ、長年兄に抱かれ続けた体は兄がいないとイけれなくなった。
自慰や玩具、あるいは他の人を使っても決定的な快楽が得られない。
いくら兄をいじめ支配しようとも、兄がいないと文字通り生きていけない体になってしまったのだ。
首を絞めたのは自分も同じだ。
その事実にシアはとうとう白旗を挙げた。

「……おね、がい…兄上……いっぱい突いて、中に沢山、だして……」
「っ……お前っなぁ!」

珍しくしおらしい姿に完全に煽られたフィドゥは、衰えをみせない己自身を根元まで入れると悲鳴のような喘ぎ声が上がった。
前立腺をごりごり押し潰して結腸まで突いてあげるとシアはまた達した。
今日は達するのが早いなと冷静な頭で考えていたが、恐らくフィドゥを揶揄うのを優先させていたせいで焦らされ続けた体はとっくの前に限界を迎えていたのだろう。
弟は頭は良いが、変なところで詰めが甘かったりする。
だからこうして立場が一気に逆転されるのだ。

「ん…っ!あっ…んんん…っ!やぁ、らめぇ…っむり、らからあ゛…ッすき、あぅっ!すっ、きぃ……っひっ…!?うあ、ぁああっんッ、あっ、あんっあ…ッッ!」

シアがいないと満たされないのは自分も同じだ。自分から離れるのだけは絶対に許さない。
だから徹底的に体を躾けて依存させるのだ。
お互いに。
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