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エピローグ
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あなたの笑顔が好きです。
だから俺、長谷川智也は誰よりも幸福を望み、彼女に対して強欲になることを許して貰えるでしょうか。
「高校卒業おめでとう、智也くん!」
「ありがとう、ちゆりさん」
自室にて、祝賀を受ける。
あれから四年後、十八歳。
第一志望の高校へと通い、勉強に部活、年上の女性との交際に日々の青春を満喫して卒業を迎えた。
「これからは同じ社会人としてよろしくお願いしますね、先輩」
「うん! びしばし鍛えるからね、覚悟しといて」
と、冗談交じりに微笑む。
ちゆりさんは大学卒業後、中小企業の事務員に就職。各繁忙期中は忙しいようで去年は仕事に追われていた。
俺はというと春から製造業に内定している。特に面白味ない選択だが、これでいい。
ちなみにヒロ兄は大学在籍中に出来た夢、薬剤師を目指して去年から大学院に進学。今年は国家資格を得る大事な年なので異様に気合が入ってた。
みな、大差はあれど未来に前進していた。目に見えない成長も胸に抱いて。
「智也くん、本当に大きくなったよね。前はあんなに小さかったのに。あと付き合い始めの頃はまだ声も高くて」
「いや、いつの話してるの」
確かに中学の時は、身長も彼女より低くてコンプレックスだった。でも高校中盤には成長痛が来るほど伸びて、今ではちゆりさんの額に余裕でキスが出来る。まあ、一番のお気に入りはシャンプーの心地いい香りがする髪に口付けをすることだけど。
「……もう」
ちゆりさんは頬を膨らませる。
彼女の柔肌を独占するように、後ろから抱きしめ、顔はよく見えないが耳が真っ赤になっていた。
「照れて、可愛い。逆にその辺りは変わってないよね、ちゆりさんは」
「むっ、失礼な。わたしだってちゃんと成長してるよ」
「ふーん、例えば?」
少し悪戯に問う。これには興味津々。
そそっかしいところも、ちょっと天然なところも。包丁を扱うのが苦手なところも、にゃこ吉に同族なのではと思われるくらい好かれているところも。全部引っ括めて俺は愛おしい。
が、彼女自身が抱く成長とは単純に関心がある。暫く無言の空気に笑いが込み上げてきた。
「ちょ、笑うなんて酷い!」
「ごめんて。ないのかと思って」
「ある、あるよ!」
必死な訴えに嘲笑の濁流が。おっと、これ以上は嫌われてしまう。と、刹那。羞恥心に交えて、彼女は答えた。
「と、智也くんのことが好き、から……大好きになった、とか」
「っ!」
これは……してやられた。
可愛いの暴力というか、愛しさの爆発とでも例えるべきか。――否、どっちも意味わからないし、表現も引くレベルで微妙。
「智也くん? もしかして……照れてたり、します?」
「べ、別に。ってか、それ本人目の前にして平気で言えるとか俺のこと好き過ぎじゃんって思っただけだし」
「うん、好きだよ。大好き! それに、こういったことこそ本人に直接言わないと意味ないでしょ?」
ぐはっ。
本当に、この人は……っ。
恋人にそんなこと言われて嬉しくないわけがない。だったら、俺も。
「俺も。俺も、ちゆりさんのこと誰よりも好き。愛してる」
「っ……あ、ありがとう」
甘ったるい空気が流れる。
この四年、喧嘩には区分されない程度の言い合いも、すれ違いだって時々あった。それでも俺たちを繋ぎ止めたのは、絆と信頼であると今では堂々と言える。だから――。
「あの、さ。ちゆりさんさえよければ、なんだけど……俺の仕事が安定したら、一緒に住まない?」
えっ、と驚き顔がこちらを向く。
無理もない。それは前置きもなく、唐突に放った提案であって。尚且つ、割と本気なのだから。
「それって、同棲しようってこと?」
「……そう、なるね。ちゆりさんと朝から夜まで共に過ごしたい。端的に言えば、未来が欲しいってこと」
クサイ台詞かもしれない。でも、真っ直ぐに伝える以外の選択はなかった。
「ちゆりさん、俺じゃダメですか?」
まだ春の中盤、三月上旬。
俺は人生のパートナーを申請し、彼女は嬉しそうに承諾した。
この先、何があろうとも。どんな困難が待ち受けていようとも。
長谷川智也と天崎ちゆりは――互いを尊重しあう最高の家族になることを未来に誓った。
だから俺、長谷川智也は誰よりも幸福を望み、彼女に対して強欲になることを許して貰えるでしょうか。
「高校卒業おめでとう、智也くん!」
「ありがとう、ちゆりさん」
自室にて、祝賀を受ける。
あれから四年後、十八歳。
第一志望の高校へと通い、勉強に部活、年上の女性との交際に日々の青春を満喫して卒業を迎えた。
「これからは同じ社会人としてよろしくお願いしますね、先輩」
「うん! びしばし鍛えるからね、覚悟しといて」
と、冗談交じりに微笑む。
ちゆりさんは大学卒業後、中小企業の事務員に就職。各繁忙期中は忙しいようで去年は仕事に追われていた。
俺はというと春から製造業に内定している。特に面白味ない選択だが、これでいい。
ちなみにヒロ兄は大学在籍中に出来た夢、薬剤師を目指して去年から大学院に進学。今年は国家資格を得る大事な年なので異様に気合が入ってた。
みな、大差はあれど未来に前進していた。目に見えない成長も胸に抱いて。
「智也くん、本当に大きくなったよね。前はあんなに小さかったのに。あと付き合い始めの頃はまだ声も高くて」
「いや、いつの話してるの」
確かに中学の時は、身長も彼女より低くてコンプレックスだった。でも高校中盤には成長痛が来るほど伸びて、今ではちゆりさんの額に余裕でキスが出来る。まあ、一番のお気に入りはシャンプーの心地いい香りがする髪に口付けをすることだけど。
「……もう」
ちゆりさんは頬を膨らませる。
彼女の柔肌を独占するように、後ろから抱きしめ、顔はよく見えないが耳が真っ赤になっていた。
「照れて、可愛い。逆にその辺りは変わってないよね、ちゆりさんは」
「むっ、失礼な。わたしだってちゃんと成長してるよ」
「ふーん、例えば?」
少し悪戯に問う。これには興味津々。
そそっかしいところも、ちょっと天然なところも。包丁を扱うのが苦手なところも、にゃこ吉に同族なのではと思われるくらい好かれているところも。全部引っ括めて俺は愛おしい。
が、彼女自身が抱く成長とは単純に関心がある。暫く無言の空気に笑いが込み上げてきた。
「ちょ、笑うなんて酷い!」
「ごめんて。ないのかと思って」
「ある、あるよ!」
必死な訴えに嘲笑の濁流が。おっと、これ以上は嫌われてしまう。と、刹那。羞恥心に交えて、彼女は答えた。
「と、智也くんのことが好き、から……大好きになった、とか」
「っ!」
これは……してやられた。
可愛いの暴力というか、愛しさの爆発とでも例えるべきか。――否、どっちも意味わからないし、表現も引くレベルで微妙。
「智也くん? もしかして……照れてたり、します?」
「べ、別に。ってか、それ本人目の前にして平気で言えるとか俺のこと好き過ぎじゃんって思っただけだし」
「うん、好きだよ。大好き! それに、こういったことこそ本人に直接言わないと意味ないでしょ?」
ぐはっ。
本当に、この人は……っ。
恋人にそんなこと言われて嬉しくないわけがない。だったら、俺も。
「俺も。俺も、ちゆりさんのこと誰よりも好き。愛してる」
「っ……あ、ありがとう」
甘ったるい空気が流れる。
この四年、喧嘩には区分されない程度の言い合いも、すれ違いだって時々あった。それでも俺たちを繋ぎ止めたのは、絆と信頼であると今では堂々と言える。だから――。
「あの、さ。ちゆりさんさえよければ、なんだけど……俺の仕事が安定したら、一緒に住まない?」
えっ、と驚き顔がこちらを向く。
無理もない。それは前置きもなく、唐突に放った提案であって。尚且つ、割と本気なのだから。
「それって、同棲しようってこと?」
「……そう、なるね。ちゆりさんと朝から夜まで共に過ごしたい。端的に言えば、未来が欲しいってこと」
クサイ台詞かもしれない。でも、真っ直ぐに伝える以外の選択はなかった。
「ちゆりさん、俺じゃダメですか?」
まだ春の中盤、三月上旬。
俺は人生のパートナーを申請し、彼女は嬉しそうに承諾した。
この先、何があろうとも。どんな困難が待ち受けていようとも。
長谷川智也と天崎ちゆりは――互いを尊重しあう最高の家族になることを未来に誓った。
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